深夜、通常ならドールの皆は鞄の中で眠りについているのだが、こんな時間に雛苺の鞄が開かれた。
「…目が覚めちゃったの…」
原因は今日泊まりに来ている巴の飲んでいたコーヒーを一口もらったせいだ。
巴が飲んでいるそれがやたらと気になってせがんで飲ませてもらったが、ブラックだったから一口飲んでもうダメだった。
幼い雛苺にはブラックは苦すぎて、同時にカフェインの効果もてきめんだ。
その結果、こんな時間に目が覚めてしまった。
何度か目を瞑って寝ようと試みたがどうしても寝れず、雛苺は部屋を出て行った。
(巴とのり、まだ起きてるかな…)
もしかしたらまだ二人が起きているかもしれないと、淡い期待を抱いて一階リビングへ向かう。
起きていれば二人に相手をしてもらえるかも、と。
だけどリビングの明かりは消えていて一切の無人の状態。
雛苺は二人と遊ぶのは諦めて鞄に戻ろうと、そこから廊下へ出た。
だがそこで聞き慣れぬ声が聞こえ、その方へと耳を向ける。
(…巴の声なの…)
声が聞こえたのはのりの部屋の声ので、まだ起きてるのかと思ってそっちへ向かう。
のりの部屋の前まで来ると、扉が少し開いていて中からさっきの声が聞こえてきている。
雛苺はそこから部屋を覗き込んで中の様子を探ると、驚いたように目が大きく開かれた。
(…二人とも裸んぼさんなの…)
扉の向こうではのりと巴がベッド上で体を重ね合っていた。
二人とも雛苺が覗いている事などつゆ知らず、夢中でお互いの体を求め合い続けている。
「んっ…! の、のりさん…そこ…!」
「巴ちゃん、ここがいいの…?」
「んあっ! ち…乳首抓っちゃ…あぁぅ!」
「巴ちゃん可愛い…大好きよ…」
「…私も大好き…です…」
「うん…一緒に気持ち良くなろ…」
「は、はい…」
(…凄いの…)
目の前で繰り広げられている情事から目が離せなくなり、息を呑んでそれを凝視する。
更に情事はエスカレートしていき、雛苺もそれを観察するのに夢中になっていった。
(巴ものりもあんなに声を…でも、何だか嬉しそうなの…)
深いキスを交わし秘所をお互いに弄り合っている二人を見て、そんな事を思った。
嫌がる素振りの無い、どこか幸せそうな雰囲気。
それで、雛苺にある考えが浮かんだ。
(ヒナも真紅を喜ばせてあげたいの…)
目の前の光景を見ていて真紅の顔が浮かび、期待で胸が高まった。
自分も真紅にあんな事をしてあげたら喜んでくれるだろうか、褒めてくれるだろうか、と。
そんな事を思って雛苺はそこを後にし、自分の鞄へと戻って行った。
―※―※―※―※―
翌日、真紅が部屋で一人読書をしていると雛苺がニコニコとしながらやってきた。
その可愛らしい笑顔に真紅は少し微笑んで本を置いた。
「どうしたの雛苺。何か良い事でもあったのかしら?」
「あのね、ヒナ、真紅に喜んでもらいたいの」
「私に? そう、何をしてくれるの?」
少し驚きつつもその心遣いが嬉しく、真紅は期待を込めてそう問いかけた。
それを聞いて、雛苺は真紅に近付いて行くと…。
「んむっ!?」
そのまま唇を奪った。いきなりの事で激しく動揺し、真紅の目が大きく開かれる。
更にそのまま雛苺は舌を真紅の口にねじ込み、舌と舌を絡め合わせていく。
(…巴とのりもこうしてたの…)
昨日の二人の様子を思い出しつつそれを真似ようとし、真紅の後頭部に手を回して真紅を押し倒した。
舌と舌を絡め合わせる度に淫らな水音が響き、それが二人の神経を痺れさしていった。
やがて雛苺が苦しくなって口を離すと、唾液と唾液がアーチを結んでから真紅の顔にそれが垂れた。
真紅は状況がよく飲み込めておらず、惚けた表情を浮かべて雛苺の顔を見ながら口を開いた。
「ひ…雛苺、何を…」
「昨日、巴とのりがこうしてたの。二人とも凄く嬉しそうだったのよ」
「巴とのりが…? ただの関係じゃないと思ってたけどそこまで…」
二人の関係を知って真紅は惚けながらも驚きを隠せない。
そうしている間に雛苺は服を脱ぎ始め、真紅は慌てて目を逸らした。
「ちょ、ちょっと…」
「二人とも裸んぼさんだったの。だから真紅も一緒に裸んぼさんになって欲しいの」
服を全部脱ぎ終えた雛苺は、今度は真紅の服を脱がしに掛かった。
「ひ、雛苺…こら…!」
こら、と言いつつも上気した真紅は、これからの快感を期待して抵抗しようとしない。
しかし複雑な構造の服に手間取り、なかなか上手く脱がせる事が出来なかった。
「うゆ…どうやって脱ぐのか分かんないの…」
そうしている間に焦ってきて、雛苺の目に薄っすらと涙が浮かび始める。
それを見て真紅はしょうがない、とでも言いたげに溜息を吐くと雛苺を手で制した。
「真紅…?」
「自分で脱ぐから…ちょっと待ってなさい」
「…うん…」
それから真紅は言ったとおり自分で服を脱ぎ、そこで改めてお互いに見つめ合うと照れ臭さから少し笑い合った。
「真紅、顔が真っ赤なの」
「雛苺こそ…。それで、ここからどうするのかしら?」
真紅がそう尋ねると、雛苺は少し迷ってから押し倒し、そのまま真紅の小ぶりな胸に手を這わせた。
手に力を入れて揉んだり、乳首を摘まんだりする度に真紅の口から声が漏れる。
「んっ…あ…」
(…真紅のおっぱい気持ち良いの…)
動かす度に吸い付いてくるような胸の感触に、雛苺も興奮して息が荒くなってくる。
しばらくその感触を楽しんでいたが、ツンと立った乳首を見て手を離し今度はそれを口に含んだ。
そのまま吸いたて舐め回すと、真紅の体がそれに合わせて跳ねてより大きな声が漏れる。
「あぁっ、うあ…!!」
「ちゅ…おっぱい、美味しいの…」
「うんっ…! 美味しいって…何も出ないわ…!」
「…でも…すごく甘い気がするの…」
尚も夢中になり、まるで乳飲み子のように真紅の乳首を吸いたてる。
それに最初は喘ぎ声を上げて身を捩じらせていた真紅だったが、その快感に堪えようと歯を食いしばると手を雛苺の胸に伸ばした。
ほとんど膨らみの無い胸の乳首を摘まむと、雛苺の体がピンとなって口を離した。
「んぁっ!」
「本当に甘いの…? 私にも味わわせてくれない…?」
「え…でも…」
「私に喜んでもらいたいんじゃなかったかしら?」
「う…分かったの…」
雛苺は少し恐怖感を感じながらも当初の目的を思い出し、自分の胸を真紅に差し出した。
真紅はそれにまず舌を這わせて嘗め回す。それで雛苺の顔が快楽に染まり始めた。
「んっ…くすぐったいの…」
言うとおりくすぐったそうに身を捩る雛苺の胸に手を這わせ、膨らみを強調させるとそれを自分がされた様に吸い始めた。
これまで感じた事の無い強い快感に、雛苺の体が大きく跳ねる。
それでも胸が口から離れないよう、雛苺の背に手を回して固定したまま更に音を立てて吸い続ける。
「やあぁっ! 凄い…気持ち良いの…!」
「ちゅる…ちゅぅ…本当ね、確かに甘いわ…」
満足そうに笑みを浮かべて呟き、しっかり味わうように乳首を吸う真紅。
やがて雛苺がその快感を得るのに夢中になり、跳ねるのが収まるともう片方の乳首を片手で摘まむ。
度重なってやってきた快感に喘ぎ声が更に大きくなり、雛苺の開けっ放しの口から唾液が垂れていく。
「やっ…はぁ…! しん…くぅ…!」
胸を愛撫され続けていると、少しづつ目の前が白くなってきて下半身がジンジンしてきた。
その変化に真紅も気が付き、口を離して雛苺の顔を覗きこんだ。
「雛苺…イきそうなの?」
「イく…? なんなの、それ…」
「イくっていうのは…その、凄く気持ち良くなって、目の前が白くなる事よ。どう?」
「…何だか…目の前が白く…」
「そう…じゃあ、一緒に気持ち良くなりましょう」
「一緒に…うん…」
真紅のその台詞で昨日の巴とのりの最後を思い出して頷いた。
それから二人は口付けを交わし、お互いの秘所に手を這わせた。
「…二人とも…ここを弄くってたの…」
「ええ…それで私と同じように、手を動かしなさい…」
そう言うと雛苺は頷き、真紅が先に雛苺の秘所に中指を差し込んだ。
同時に雛苺の体が強張り、中指が締め付けられる。
「うあぁ…中に指が…!」
「一本できついわね…ほら、雛苺も私に…」
「う、うん…」
雛苺は意識を搾り出すと手を動かし、同じように真紅の中へと指を差し入れる。
中に入ってきたことで真紅にも強い快感が走り、体が強張る。
「うっ…んん…!!」
「し、真紅…痛いの…?」
「大丈夫…そのまま中で指を動かしなさい…私も動かすから…」
「分かったの…」
言われたとおり、真紅の中で指を動かし掻き回し、それに応える様に雛苺の中でも指が動き始めた。
動かす度に強い快感がお互いに走り、淫らな声と音が耳に入って更に興奮していく。
「うっあ…真紅…真紅ぅ…!!」
「雛…苺…! 好き…好きよ…!」
「ヒナも…ヒナも好きなの…!!」
何度も何度も確かめ合うようにお互いの名前を呼び合う。
二人の秘所からは愛液が止め処なく溢れ、時には指を動かすと飛沫が飛んで床に染みを作っていく。
そうしていると目の前が白くなってきて、意識が飛びそうになってきた。
「真紅…! もう…!」
「わ…私も…!」
「し、真…うああぁぁっ!」
「雛いち…あああぁぁっ!」
お互いに強く抱きしめあったまま同時に絶頂を迎え、体が仰け反り指が強く締め付けられた。
やがて締め付ける力が弱まると指を引き抜き、見つめ合うと軽い口付けを交わした。
「雛苺…」
「真紅…喜んでくれたの…?」
「ええ…とても…」
笑顔でそう言われて嬉しくなり、雛苺も微笑んだ。
―※―※―※―※―
「雛苺、こんな事は私以外にしてはダメよ」
二人とも服を着終えて落ち着くと、真紅はそう問いかけた。
「どうして?」
「こういうのは、お互い好き合ってないとただの苦しみでしか過ぎないの。あの二人が幸せそうだったのも、好き合っていたからよ」
「そう言えば、二人とも大好きって言い合ってたの…」
「でしょう? それに…私も言ったでしょう? 好きって…」
その時を思い出し、真紅は少し頬を赤く染める。
「…ヒナも真紅の事好きって言ったの…」
「覚えてるわ。もし好きでもないドールからこんな事されたら、平手打ちして張り倒しているわ」
「…真紅…」
「好きよ、雛苺」
「…大好きなの、真紅…」
真紅に抱きしめられ、雛苺も嬉しそうに真紅を抱きしめ返した。
二人のその表情は、本当に幸せそうな笑顔だった。
終わり