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第十一話『異常と正常』後編

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匿名ユーザー

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人の怒りとは実に単純だ
その場、その瞬間では湧き出てくる感情が何重にも積み重ねられる
言葉が言葉に拍車をかけて、公共の場にも関わらず大声で口論したり、
暴力に至れば、相手にどんな重傷を負わせようが気の済むまでやめないなんて事もあるだろう
だけどそれは、本当にその場限りの勢いに過ぎない
少し冷静になって日記でもつけようとすれば、その時と同じ気分で相手への誹謗を書けるわけがないのだ
それなのに…私を取り巻く、この黒い感情は…
ずっと前からあって、すぐに消えるものではないぐらいにまで成長してしまっていた

それは嫉妬と呼ばれる感情――

年甲斐もない…情けない
そもそも蒼星石の心が雪華綺晶に移ったわけではないだろうに…
なかなか彼女が自分のものになってくれない焦りが、こうしたモヤモヤした気分を作り出す

本当はもっと、ラブラブな関係になりたかった
もちろん、嫌がる蒼星石を苛めることも楽しいけど…それは肌を重ねる時だけでいい
普段はラブラブ、ベッドでは主従関係
それが理想だ
でもこのままだと、私が狂うか蒼星石が壊れるか…
いずれにしても、時間をかけることは決していい結果を導きそうにない

「先…生…?」
「…入りなさい」
「ちょっと…うわっ!」

強引に部屋へ連れ込んで、鍵を閉めた


第十一話『異常と正常』後編


私は普段から厳しく言うことはあっても、感情を剥き出しにして怒鳴ったりするタイプではない
だからさっき蒼星石を連れながら皆のいる場所を横切った時、珍しく怒っている私の態度に視線が集まった
何事か?と、明日には蒼星石も質問責めに合うだろう

いっそバラしてしまいましょうか…私たちの関係を…

そんなこと言ったら、蒼星石は泣きそうになりながら止めるに決まっている
今ですら、こんなに怯えているのだから…

「はぁ…」
「……………」

露骨な溜め息を吐くと、重たい沈黙が周囲に広がる
私の怒りは、あまりにも一方的だと自覚できるほどに理不尽だ

「せんせ…」
「蒼星石」
「は、はいっ」

痺れを切らしたのか、何か言おうとする蒼星石
でも私の言葉がそれを遮った
どうせ聞きたいことはわかっている
『何を怒っているのですか』でしょう?
自分でもわからない
ただ雪華綺晶を可愛いと言った事実に、耐えきれないほどの悔しさが込み上げただけ
いつからこんなヒステリックになったのか…
欲しいものは全て手に入れてきたけど、それまでと明らかに違うから?
恣意的選択だけでは到達できない、人間的な感情の壁があるから?

「………」

彼女は再び沈黙に浸る私の顔色を伺っている
その顔には、私への恐れが浮かんでいた
…それが全てを物語り、私に訴えてくる
所詮、私と蒼星石を繋ぐものは恐怖と権力による支配だけなのだと
そんなことは知っている
知っているからこそ――

「ごめん…なさい…」
「…だめよ。許さない」

より強い支配で、トドメとばかりに締め付けてしまう
重い空気の中、選んだ末の謝罪の言葉
何故怒られているのかすらわからない状態で、何をどう言えばいいのか…
私が蒼星石の立場なら、きっとそろそろ相手を殴っている

そこまで考えて、ふと頭を過ぎった一つの思い

あぁ…だから私に不満が溜まるのか…と…
それは誉めてくれないのも当然だ…

「…せんせ…?あの…ちょっと…?」
「…」

目線を同じにして、近寄ってみる
動揺の色を隠せない蒼星石は、困ったような…だけどどこか、受け入れるような表情をしてきた
私の怒りを察し、ただ事ではないと悟る…
そして、いつものように身体を差し出せば機嫌が取れる
そういった思考回路からの安心感だろうか

だけど、私は押し倒さない

身体に触れもしない

服すらも、手をかけない

ただひたすら、近くで目を見つめるだけ…

「……ぅ…」

何もされない状況は、返ってプレッシャーを与えられるだろう
固唾を飲んで見つめ返してくる蒼星石は、明らかに怯えている

「私はねぇ…蒼星石…」
「は…い…」

ようやく話し始めた私の口を注意深く観察しながら、真剣な表情は崩さない
言葉なんかよりも、何をされるかで頭がいっぱいと言う感じか…

「好きよぉ…アナタのことが…」
「…?」
「好きって言ってるのよ…」
「…」

思えば、気持ちを直球で伝えるのは初めてか
いつも“私のもの”という、上から目線だったから…

「だから、アナタが雪華綺晶を可愛いといった時は素直にショックだったわねぇ…」
「あ、あれは…違うんです…」
「私も言われたことないのに…」
「僕は…その…」

理由なんて知れている
小動物に向けて言うような可愛さだろう
そんなくだらないことで腹を立てているのか…理解してみれば、我ながら本当に情けなくなる
だけど素直に赦す気にはなれなかった

「…反省してるぅ?」
「…はい…」
「許して欲しい?」
「はい…」
「…それなら、相応の償いをして貰わないと、筋が通らないわよねぇ?」
「…償い…ですか…?」

そう言って立ち上がると、私は小さな箱を手に取った
…本当なら、もっとカッコいいシチュエーションで渡したかったけど…
これはこれで、私らしいのかもしれない

「はい、コレ」
「…何ですか…コレ…?」
「開けてみれば、わかるんじゃないかしら?」

無駄に高級感が溢れる外装と箱の手触りで、開けなくてもわかるでしょうけど…

「!!…せ…先生…コレって…」
「そう、婚約指輪――エンゲージリングというやつかしら?」

銀のリングに、ダイヤモンドがついた基本的な婚約指輪
女の私が、こんなものを渡す方に回るとは…つくづく、おかしな話だ

「僕に…ですか?」
「他に誰がいるのよ」
「う、受け取れませんよ!こんな高価な物…」
「…これはね、値段じゃないでしょ?」
「え?…でも…」
「私の相手はアナタしかいない…アナタというたった一人の相手に渡す物だから、ちゃんとした物であるのは当たり前なのよぉ」

蒼星石はパニックになっている
…無理もない
婚約指輪自体は、女として憧れがあるだろう
でも今、私から受け取ることになるとは思ってもいなかったはずだから

「で、さっきの話に戻るのだけど」
「さっきの…?」
「私に許して欲しいなら…明日から卒業まで、それをずっとつけなさい…」
「え…えぇっ!?」

それがアナタの償いよ
と付け足して、蒼星石を見つめた
今までにないくらい、唖然とした表情をする
それも当然か…
首輪や縄よりも重く強い拘束具、笑顔で押し付けたのだから


  つづく

  • 次回、楽しみです。
    -- ばくばく (2011-03-30 17:30:24)
  • 人少なすぎて泣けた。でも、続きを楽しみに待ってます。 -- a (2011-04-10 21:16:20)
  • つづきが楽しみです。早く読みたい! -- える (2011-04-19 20:46:27)
  • 仕事が忙しくて全然読めなかった間に、いつの間にかこんなに話が進んでいて嬉しいです。いつまでも待ってますんでのんびりと続けてください! -- 名無しさん (2011-05-17 23:51:32)
  • もはや月刊どころか年刊になりつつあるこの作品…
    暖かい応援の言葉をいただけて、本当にありがたいです!
    もう少しで終わるとか宣言しといて、更新自体をなかなかしないと言うね…
    もうしばしお待ちください…頑張ります…はい… -- メル (2011-05-21 21:49:45)
  • 続きが楽しみです!
    でも無理はせず気楽にやってくださいね。
    -- 名無しさん (2011-08-13 00:41:27)
  • 本スレに書き込みできない…(T^T)
    まだ完成じゃないので、投下までにはいろいろ試行錯誤して頑張ります…。 -- メル (2011-10-09 00:58:06)
  • 楽しみにしています!
    早く続きが読みたいです♪ -- 名無しさん (2011-10-12 20:53:42)
  • そろそろ1年。
    カミングスーン…ですか? -- 0902号 (2012-02-19 16:27:55)
  • そろそろですか…? -- 名無しさん (2013-05-21 00:18:20)
  • 続きが気になりますぅ
    -- 名無しさん (2013-06-21 20:37:22)
  • まだ慌てるような時間じゃない -- ナナシ (2013-07-16 13:47:01)
  • まだかなまだかな~ -- 名無しさん (2013-08-13 00:07:19)
  • いつまでも待っています -- 名無しさん (2016-09-26 19:08:19)
  • 定期的に更新がないか見に来てしまう…
    待ってます -- 名無しさん (2018-05-27 22:08:22)
  • とても長い時間、お待たせしているのか、もう見ている人もいないであろうと思いますが
    中途半端に投げ出したままでは気分が悪いので、完結させたい。
    そう思っているのですが、更新ってどのようにすればよいのでしょうか。
    管理者様、ご覧になられておりますかね? -- メル (2019-08-28 00:42:04)
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