ローゼンメイデン百合スレまとめ@ウィキ

言霊遊戯

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匿名ユーザー

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 僕は"欠陥品"なんだよ。


 ある日突然、妹が呟いた言葉に私は疑問を浮かべた。


「分からない? そうか、うーん……」


 彼女はしばらく考えた後にパッと閃いたように話し始めた。


「人間ってのは大量にコピーされた一枚の紙なんだ。それらに何ら変わりはない」


 パラパラと大量の紙を素早くめくってみせる。
 それを見てると何だか頭がボーッとする。


「すると必ず……ほらね」


 一枚だけ端っこの折れた紙を取り出す。


「ここに折り目がある。これは"欠陥"だ」


 ──言霊遊戯


「つまり、貴女には"欠陥"があると言うんですか?」

「そうだね。そんなものさ」


 妹の言葉に私は更に疑問符を浮かべた。
 この十七年間一緒に過ごしていて、そんなことを思ったことがない。


「何処が、ですか?」

「うん、説明しにくいんだけど……僕には"感情"がない」

「"感情"ですか」

「そう、"感情"。と言っても"喜怒哀楽"とはちょっと違う」

 何だか訳が分からなくなった。

「例えば、"大嫌い"と言われたらほとんどの人は傷つく。でも僕は、」

「傷付かない、んですか?」

「そう」


 妹はそっとナイフを自分の指に食い込ませた。
 細い傷口からじわりと血が滲んだ。


「体を傷付けるのは簡単だ。でも心はそうでもない」


 妹は振りかざしたナイフを私の顔の横すれすれに突き立てた。

「怖い?」


 ゆると首を振る。
 妹を怖がることなんて、そんなバカなことはない。

 妹が私の首に口付ける。


「"大嫌い"だよ。翠星石」


 ──……嗚呼。
 なんて、悲しい言葉。
 吐いた言葉は私の四肢を締め付ける。


「ねぇ、悲しい?」


 悲しいに決まってる。大好きな貴女にそんなことを言われて。


「本当、かな?」


 何を言っているのだろう、この妹は。


「ねぇ、よく考えて"翠星石"。一回こっきりの"勝負"だよ」


 人差し指を唇の前で立てて、口の端を吊り上げた"妹"。
 私は彼女の表情から目が離せなくなる。


「僕達は"双子"だ。"二つ"なんだよ」


 トン、と両の人差し指を叩いた。
 何故だろう、頭がくらくらする。


「僕は君が大嫌いだよ、翠星石。だから、君は僕が大嫌いなんだ」

 異瞳が私を覗く。紅翠に写った私は何て奇妙な顔をしているんだろう。


「だってそうでしょう。僕は君が大嫌いなんだから、君も"同じ"なはずだよ」


 大嫌い。
 そんなわけないのに。どうして、蒼星石はそんなことを言うんだろう。


「"僕"は"君"で、"君"は"僕"だ。僕達は"一つ"だ」

 悲しい。
 悲しい。
 ──────。


「そうせっ……、」

「ダメ。喋っちゃダメだよ。僕の声を聞くんだ。」

「っや──!」


 慌てて耳を塞ぐが、彼女の声は直接脳を掴みえぐるように響く。
 気分が悪い、吐きそうだ。

「"僕と君"は一つだったんだ。それが、"分裂"した」


 気がおかしくなる。
 お願い、もう喋らないで。


「戻ろうよ、翠星石」


 ──一つに。


「蒼星石──」


 戻る。何に。どうして。私は。何で。私は一つ。貴方は一つ。二人は二つ。二人は一つ。


「僕達は"一つ"だ」


 あれだけ酷く響いた彼女の声が心地よい。

「ありがとう、翠星石」


 蒼星石が私の手をとり、その甲にゆっくりと唇を落とす。
 きゅう。と喉が鳴った。

 嬉しい。


「ねぇ、君は嬉しい?」


 嬉しい。
 嬉しい。


「僕は分からない。感情がないから」


 大丈夫。貴女の"欠陥"は私が埋めてあげる。


「そう、だね。僕達はずっと一緒だ」


 限りない永久を私は貴女と過ごしていく。


「嬉しい? 本当に?」


 彼女の唇がゆらゆらと揺れる。


「"感情"がないのは、"僕"だ」
「"僕"は、"君"だ」
「"感情"がないのは、"君"だ」


 嗚呼、そうか。
 "感情"がないのが"貴女"で、"貴女"は"私"で、"感情"がないのが"私"で。

 ちょっと待って、蒼星石。
 難しい、分からない。


「大丈夫。気にしないで、"僕達"は一つだよ」


 ──大丈夫。
 優しく耳元で言われてしまえば気持ちよくて目を瞑った。


「"大嫌い"だよ。翠星石」


 私は何も言わず、彼女の背にすがりついた。


終わり


  • 私、小鳥さんの頭なんで、わかりづらい、、、、。
    、、、と言うか、解からない。 -- 胡蝶 (2011-04-04 14:33:46)
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