僕は"欠陥品"なんだよ。
ある日突然、妹が呟いた言葉に私は疑問を浮かべた。
「分からない? そうか、うーん……」
彼女はしばらく考えた後にパッと閃いたように話し始めた。
「人間ってのは大量にコピーされた一枚の紙なんだ。それらに何ら変わりはない」
パラパラと大量の紙を素早くめくってみせる。
それを見てると何だか頭がボーッとする。
それを見てると何だか頭がボーッとする。
「すると必ず……ほらね」
一枚だけ端っこの折れた紙を取り出す。
「ここに折り目がある。これは"欠陥"だ」
──言霊遊戯
「つまり、貴女には"欠陥"があると言うんですか?」
「そうだね。そんなものさ」
妹の言葉に私は更に疑問符を浮かべた。
この十七年間一緒に過ごしていて、そんなことを思ったことがない。
この十七年間一緒に過ごしていて、そんなことを思ったことがない。
「何処が、ですか?」
「うん、説明しにくいんだけど……僕には"感情"がない」
「"感情"ですか」
「そう、"感情"。と言っても"喜怒哀楽"とはちょっと違う」
何だか訳が分からなくなった。
「例えば、"大嫌い"と言われたらほとんどの人は傷つく。でも僕は、」
「傷付かない、んですか?」
「そう」
妹はそっとナイフを自分の指に食い込ませた。
細い傷口からじわりと血が滲んだ。
細い傷口からじわりと血が滲んだ。
「体を傷付けるのは簡単だ。でも心はそうでもない」
妹は振りかざしたナイフを私の顔の横すれすれに突き立てた。
「怖い?」
ゆると首を振る。
妹を怖がることなんて、そんなバカなことはない。
妹を怖がることなんて、そんなバカなことはない。
妹が私の首に口付ける。
「"大嫌い"だよ。翠星石」
──……嗚呼。
なんて、悲しい言葉。
吐いた言葉は私の四肢を締め付ける。
なんて、悲しい言葉。
吐いた言葉は私の四肢を締め付ける。
「ねぇ、悲しい?」
悲しいに決まってる。大好きな貴女にそんなことを言われて。
「本当、かな?」
何を言っているのだろう、この妹は。
「ねぇ、よく考えて"翠星石"。一回こっきりの"勝負"だよ」
人差し指を唇の前で立てて、口の端を吊り上げた"妹"。
私は彼女の表情から目が離せなくなる。
私は彼女の表情から目が離せなくなる。
「僕達は"双子"だ。"二つ"なんだよ」
トン、と両の人差し指を叩いた。
何故だろう、頭がくらくらする。
何故だろう、頭がくらくらする。
「僕は君が大嫌いだよ、翠星石。だから、君は僕が大嫌いなんだ」
異瞳が私を覗く。紅翠に写った私は何て奇妙な顔をしているんだろう。
「だってそうでしょう。僕は君が大嫌いなんだから、君も"同じ"なはずだよ」
大嫌い。
そんなわけないのに。どうして、蒼星石はそんなことを言うんだろう。
そんなわけないのに。どうして、蒼星石はそんなことを言うんだろう。
「"僕"は"君"で、"君"は"僕"だ。僕達は"一つ"だ」
悲しい。
悲しい。
──────。
悲しい。
──────。
「そうせっ……、」
「ダメ。喋っちゃダメだよ。僕の声を聞くんだ。」
「っや──!」
慌てて耳を塞ぐが、彼女の声は直接脳を掴みえぐるように響く。
気分が悪い、吐きそうだ。
気分が悪い、吐きそうだ。
「"僕と君"は一つだったんだ。それが、"分裂"した」
気がおかしくなる。
お願い、もう喋らないで。
お願い、もう喋らないで。
「戻ろうよ、翠星石」
──一つに。
「蒼星石──」
戻る。何に。どうして。私は。何で。私は一つ。貴方は一つ。二人は二つ。二人は一つ。
「僕達は"一つ"だ」
あれだけ酷く響いた彼女の声が心地よい。
「ありがとう、翠星石」
蒼星石が私の手をとり、その甲にゆっくりと唇を落とす。
きゅう。と喉が鳴った。
きゅう。と喉が鳴った。
嬉しい。
「ねぇ、君は嬉しい?」
嬉しい。
嬉しい。
嬉しい。
「僕は分からない。感情がないから」
大丈夫。貴女の"欠陥"は私が埋めてあげる。
「そう、だね。僕達はずっと一緒だ」
限りない永久を私は貴女と過ごしていく。
「嬉しい? 本当に?」
彼女の唇がゆらゆらと揺れる。
「"感情"がないのは、"僕"だ」
「"僕"は、"君"だ」
「"感情"がないのは、"君"だ」
「"僕"は、"君"だ」
「"感情"がないのは、"君"だ」
嗚呼、そうか。
"感情"がないのが"貴女"で、"貴女"は"私"で、"感情"がないのが"私"で。
"感情"がないのが"貴女"で、"貴女"は"私"で、"感情"がないのが"私"で。
ちょっと待って、蒼星石。
難しい、分からない。
難しい、分からない。
「大丈夫。気にしないで、"僕達"は一つだよ」
──大丈夫。
優しく耳元で言われてしまえば気持ちよくて目を瞑った。
優しく耳元で言われてしまえば気持ちよくて目を瞑った。
「"大嫌い"だよ。翠星石」
私は何も言わず、彼女の背にすがりついた。
終わり
- 私、小鳥さんの頭なんで、わかりづらい、、、、。
、、、と言うか、解からない。 -- 胡蝶 (2011-04-04 14:33:46)