ローゼンメイデン百合スレまとめ@ウィキ

距離感

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rozen-yuri

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距離感


彼女への気持ちを自覚したのは、最近のことじゃない。
何個か前の時代から。
気づいてからは、彼女と少し距離を置くようになった。

「蒼星石、最近どうしたんですか?」

今の一つ前の時代に、一回だけ聞かれた。
そのときの僕は、確か曖昧に濁したはずだ。
君を意識していた、なんて言えるわけないから。

「だったら良いんですけどね……」

そう呟いた彼女の顔は、心配そうに眉が下がっていて。
その顔を僕がさせている、と思うと申し訳ない気持ちと嬉しい気持ちが混じって複雑になる。
けれど。

「蒼星石は大事な妹ですから」

その言葉が嬉しくて、嫌いだった。
彼女にとって僕は大切な『妹』でしか無いという事を示していて。
僕が望んでいるのは、姉妹の絆じゃない。もっと違う―― 

今のマスターの目的を聞いたとき、悩んだ。
ある女を殺したいと。けれどもすぐに分かった。
マスターが、その女性を愛していたことも。自分の影に縛られていたことも。
薔薇乙女の力を悪用するべきではない。
彼女にその目的を告げたらきっと拒否するだろう。
だから先に僕が契約した。もう後に退けぬように。

「君の姉も起こしていいかね」

マスターの言葉に僕は頷いた。
彼女に選ばせなくてはいけない。
もういつまでも二人で一人ではいけないから。
今の関係から抜け出すためにも。僕は『一人』にならなくてはならない 

予想通りだった。
彼女はマスターを拒否して、すがるような目でこちらを見つめた。
僕は決して彼女に同意しない。双子でいつも一緒に居たけれど。
考え方までもが同じではないから。

「いくら蒼星石でも……!」

彼女は僕からマスターを庇うように、僕に立ちはだかった。
その瞳には、戸惑いとわずかな敵意に似たようなものが入っていて。
そこで僕は気づくことができた。
お互いがお互いに依存していたわけじゃない。
僕が彼女に依存していたことを。

屋敷に彼女達を呼んだとき僕は覚悟を決めた。
マスターの影を打ち破ったときの、衝撃は凄まじいもので。
意識がどんどん遠のいていって、そもそも人形には痛覚なんてないはずなのに、胸がとても痛い。

「嫌です……嫌ですよ蒼星石ぃ」

僕の体からローザミスティカが抜けたとき。
彼女の顔は涙で濡れていて、僕はそれを指でぬぐった。
間接がギシギシと悲鳴をあげている。
彼女の声が、どんどん遠のいていって。
視界が、まるでジグソーパルズのピースが外れていくように、所々映らなくなる。
もう自分が何を喋っているのかさえ分からない。
聴覚が視覚が失われていく。

大好き……いや。


愛しているよ翠星石。

僅かな視界に写った彼女の泣き顔と黒い羽を最後に、僕の意識は完全に途絶えた。


                                    end

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