ローゼンメイデン百合スレまとめ@ウィキ

短編 薔薇×雪華

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rozen-yuri

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あの時の自分は本当に馬鹿だと思った。
「貴女に分かるわけない…!」
 目の前で目を丸くしている彼女はぶたれた頬を押さえながらこちらを見ている。
「きらきぃ、お姉ちゃん…?」
「うるさい!」
 もうその子の声も聞きたくなくて、耳を塞いでその場にしゃがみこんだ。
「お姉ちゃん…」
 足跡でその子が近づいてくるのが分かった。
「大丈夫…?」
 きっとあまりよく現状を分かってないのだろう。
 私の肩に手をかけ、目の前にしゃがみこんだ。
「お姉ちゃん、嫌?…私の目があるのが…」
 先天的なもので、私は生まれつき右目がない。
 遺伝子異常、それ以上は医者も言わなかった。いや、言えなかったかもしれない。
 全く同じ日に生まれた従兄弟の薔薇水晶は何の欠落もなかった。
 別段気にしてなかったが、この時、原因は分からなかったがカッと癇癪を起こしてしまったのだ。
 誰が悪いわけでもない。でも誰かに当たらなければ気がすまなかったのだろう。


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「お姉ちゃん…私の、目…嫌?」
 何も答えずにいると、薔薇水晶が不意に離れた。
 何があったか分からなかったので、頭を上げると、薔薇水晶の背中姿。
「ばら、しぃ?」
 名前を呼んでも、振り返らなかった。
 物音がした、と思うと包丁を持ってこちらに歩いてきた。
「っ…ばらしぃちゃん!」
 殺される、と思った。尻餅を付いて薔薇水晶を見つめるが、薔薇水晶の顔に何の色も浮かんでいなかった。
「ひっ……ぅあ…っ」
 怖くて逃げ出そうと思ったが、薔薇水晶はそれ以上近づいてこようとしない。
 薔薇水晶はニコリと笑うと自分の左目に突き刺した。
「きゃぁぁああぁぁ…!」
 自分でもどうやって叫んだか分からない。
「これで…嫌わないでくれる…?」
 痛みを感じていないのだろうか、無表情──むしろ、笑の腕に抱かれて動けなかった。


ばらきら夫婦(婦婦?)

薔「はぁ…」
 家計簿を見ながら溜息を吐くばらしー。
雪「どうしたの、ばらしーちゃん。溜息吐いて」
薔「…今月ちょっと赤字なんだ…」
雪「あぁ、そうなのね…何が一番大変なのかしら?」
薔「…一番はやっぱり食費だね…」
雪「確かに最近物価が上がってますわね…」
薔「…うん…。…それもあるけど…」
雪「けど?」
薔「きらきー姉ちゃんが大食いだから大変なんだよ…! 普通の人の二、三倍は食べてるんだよ…!」
雪「あら、そんなに食べてる?」
薔「食べてるよ…今だってバケツサイズのアイス食べてるし…。…それパーティ用だよ?」
雪「あら、そうだったの。てっきり一人用かと思ってましたわ」
薔「そんなわけ無いじゃん…。…はぁ…」
雪「そんな顔しないでください…。私が食べ過ぎてしまうのはばらしーちゃんのせいでもありますわ」
薔「え?」
雪「ばらしーちゃんの料理が美味しくて、いつもいつもたくさん食べてしまうんですわ。いくら食べても飽きませんもの」
薔「…う…またそんな嬉しいこと言うんだから…」
雪「だって事実ですわ。そんな自慢の妹で、奥さんなのよ、ばらしーちゃんは」
 そう言って頭を撫でる雪華綺晶。
薔(…そう言われたらまた沢山作りたくなっちゃう…。…私も甘いよね…)


 お姉ちゃんと私はいつでも一緒だった。産まれた時も、立った時も、言葉を喋った時も。笑いあって、悲しんで、喧嘩して。謝る時も同時だった。
 ある日、私のせいで事故に巻き込んでしまった。私がボーっとしてたから、車に気付かなかったから、お姉ちゃんは私を庇おうとした。その時、私は左目の光を失った。けれど、お姉ちゃんは右目自体を失ってしまった。
 何度も、何度も、謝った。お姉ちゃんは、大丈夫だと笑ってくれた。それが何度も続いた。
 ある日、私はお姉ちゃんは言った。

「私の右目、お姉ちゃんにあげる」

 そしたら感じた、頬の痛み。お姉ちゃんを見たら、顔を真っ赤にして、涙をポロポロと溢して、言った。

「貴方がいない世界なんて、見えなくてもいい!貴方がいなくなってしまうなら、私は不完全でも構わない…」

 自分の頬にも感じた、温かな雫。その後、ギュッと抱き締められた。

「だから……私の側からいなくならないで…っ」

 その時から、私とお姉ちゃんは一心同体。お姉ちゃんの右目が見えないなら、私がお姉ちゃんの右目になる。私の左目が見えないなら、お姉ちゃんが私の左目になる。
 私達はずっと、一緒だよ。


end


薔「お姉ちゃん、夕ごはん出来たよ」
雪「あら、いい匂いがすると思ったら…」
薔「今日はキムチ鍋にしてみたの」
雪「体が温まりそうですね。最近は寒くなってきましたから、お鍋をするには丁度いいですし」
薔「味は…どうかな?」
雪「モグモグモグ…美味しいですよ。モグモグモグ…とてもいい辛さです」
薔「良かったぁ~」
雪「ばらしーちゃんは食べないんですか?」
薔「うん、今はまだいいの…」
雪「後で食べるのですか?」
薔「うん」
雪「そんなことを言ってると、私が全部食べちゃうかもしれませんよ?」
薔「…食べてもいいよ」
雪「もしかして、具合が悪いのですか?」
薔「ううん、元気だよ。お腹も空いてるけど、胸がいっぱいで…」
雪「元気ならいいですけど…。なんだか変なばらしーちゃんですね」
薔「エヘヘ」



お姉ちゃん、心配させてごめんね。
私はね、具合が悪いんじゃなくて、美味しそうに食べるお姉ちゃんの姿を見てたら、
なんだか凄く幸せを感じて、胸がいっぱいになっちゃったの。

こんな風に、お姉ちゃんが喜んでくれると私も嬉しいよ。
お姉ちゃんの為に、これからもずっとずっとお料理を作っていきたいな。
これからもずっとずっと笑顔を見ていたいな。
大好きなお姉ちゃんの傍で…――。

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