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はち ◆kr0AbkBuKU氏

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35名前: はち ◆kr0AbkBuKU 投稿日: 2006/05/03(水) 19:11:13 0
その頃、僕は17歳で馬鹿で童貞だった。
初めて出来た「彼女」にはしゃいでどーしょーもない間違いばかりをした。
彼女は、地味目だけど可愛くて、性格も少し硬いけど優しく、今から思えば理想的な日本人女性だったかも知れない。

僕は17歳で馬鹿で童貞だったから、エロい事がしたくて仕方なかった。
教室ではセックスの話が溢れていて(男クラだった)自分が取り残された気持ちもあったし、非童貞の友人に対して憧れもあった。
だから僕は、彼女が出来た=セックスが出来ると思って彼女にエロい事を沢山したんだ。
彼女も処女で、二人の足並みは17歳の時間間隔から見ると星の動きを観察する程にゆっくりとした物に感じられた。


37名前: はち ◆kr0AbkBuKU 投稿日: 2006/05/03(水) 19:14:43 0
学校の帰りに待ち合わせたり、休みの日には街に出かけたり、二人での時間を積み重ねた。
でも、セックスはしていなかった。
そんな折、彼女が海外に行った。
僕は、ここぞとばかりに浮気をして童貞を捨てようと企んだ。
結局、彼女が帰国した時も僕は相変わらず童貞だった。

そんなこんなで2年の月日が流れて僕は高校を卒業した。
彼女は1歳下だったので受験生になった。
二人の時間は極端に減った。
合わない日々は続き、電話やメールも少なくなった。
二人の間を繋ぐ物は情という希薄な物になってしまったんだと僕は思った。


40名前: はち ◆kr0AbkBuKU 投稿日: 2006/05/03(水) 19:18:58 0
世間一般に言う自然消滅ってヤツに近い物になった。
倦怠期なんて立派な物では無かった。
僕はやっぱり童貞でセックスがしたかったし、このまま終わってしまうのも仕方ないなんて楽観的に思った。

そしてアッサリと二人の関係は終わった。
きっと、彼女も限界を感じていたんだろう。と、僕は思った。

その後、僕は童貞じゃなくなって、何人かの女の子とセックスをした。

学校を卒業して、街の楽器屋さんで働き始めた。
楽器が大好きで、楽器に囲まれる生活はきっと夢のようだと妄想していたけど、案の定現実とギャップがあった。
それでも僕は、楽器が大好きだったので畑違いな楽器の事でも勉強してそれなりの信用を獲得した。
得意な分野を任せてもらえて充実した日々だった。


41名前: はち ◆kr0AbkBuKU 投稿日: 2006/05/03(水) 19:23:50 0
ある日僕は職場の先輩の家にギターを教わりに行っていた。
携帯電話が鳴った。

彼女だった。

17歳で馬鹿で童貞だった頃とは違う番号だったので、在り得ないと思っていたが彼女だった。
でも、その電話は浮ついた物ではなく、何故だか叱られた。
そして彼女は言った

「変わってないね。」

悔しかった。
17歳で馬鹿で童貞だった頃の僕は、精神論が罷り通ると思い込んでるガキだった。
でも、その時の僕は、精神論なんて全く無意味な物だと思い、人付き合いなんて下らないと思ってた。
だから、彼女に対しても今更何がどーなるとも思ってなくて、冷たい物言いだったと思う。

彼女は多分、見たんだ。
僕が、17歳で馬鹿で童貞だった頃も、その時も、彼女を人としてなんて見ちゃいない事を。


44名前: はち ◆kr0AbkBuKU 投稿日: 2006/05/03(水) 19:40:37 0
僕は別れて何年も経っていたし、彼女と復縁なんて在り得ない事だと思っていたけど、彼女の存在が胸に深く深く根付いていた。
彼女と別れた事は自分の人生において大きな失敗のひとつだと思ってた。

だから、だからこそ、彼女との邂逅なんて望んでなかった。
甘っちょろい思いは自分の中にあるだけでいいと思っていた。瘡蓋みたいなもんで、ちょっと痒いだけだと。いずれ剥がれて、そこに瘡蓋があった事すら忘れるんだと。
そう思っていたのに僕と彼女は再び繋がった。繋がってしまった。

僕は、彼女の番号を登録しなかった。
自分から連絡する事なんてないし、彼女からの連絡も二度となければいいと思っていた。
だけど神様は意地悪な悪戯がお好きなようで、彼女から僕への連絡は途絶えなかった。
彼女の声を聴く度に僕の胸は締め付けられた。
後悔や自責の念に苦しみ続ける事が、僕に出来る唯一の贖罪なのかも知れない。そう思った。


45名前: はち ◆kr0AbkBuKU 投稿日: 2006/05/03(水) 19:46:14 0
その時僕は付き合っている子がいた。
その子は無垢に僕へ好意を寄せてくれて、気取らずに一緒に居れる居心地の良い子だった。
そんな子だから、僕は彼女との事を言えなかった。
きっと、言っても許されたと思う。僕が昔の彼女と連絡があろうと無垢に好きでいてくれると思う。
だけど、言えなかった。
保身だよ。言って傷付くのはその子じゃなくて僕だと思ったから。

僕は彼女と何度か遊んだ。
けどそれは友達として遊んだだけで、性的な事や、男女としての接触は全く無く。

彼女は、付き合ってた頃より大人びて、何だか自分が取り残されたみたいに感じた。
でも、根本的な部分は変わってなくて、癖や仕草はあの頃のままで、そうやって昔と重ねて見ている自分が恥ずかしく思った。


46名前: はち ◆kr0AbkBuKU 投稿日: 2006/05/03(水) 19:52:11 0
ある日、彼女からメールがきた。
彼女は昔から自分に自信をもてない子で、今でもそんなような事で思い悩んでいるようだった。
僕は、珍しくマジレスをした。
僕が惚れた彼女の事を悪く言わないでやって欲しいって返信した。

その後、電話をする機会があったから何が原因で悩んでいたのか聞いてみた。
彼女は言った。
「フラれて凹んでた。」
凄くショックだった。
別れて何年も経つんだから、それぞれの世界があって、それぞれの恋愛がある事ぐらい理解してたけどショックだった。
悟られたくなくて「だっせーだっせー」と騒ぎ立てた。
凄く、ショックだった。

お互いに社会人なので僕と彼女の連絡は極僅かだった。
僕はまた、自分からは連絡をしないようにした。
平穏を望んだんだ。

僕と彼女の繋がりは再び無くなった。


47名前: はち ◆kr0AbkBuKU 投稿日: 2006/05/03(水) 19:57:01 0
僕は、彼女と別れてしまったあの日からずっと一人なんだと思う。
誰に対しても嘘を持っていて、弱味を見せたくなくて、自分を演じ続けている。
付き合ってる子との生活は、過去最長になった。
成り行き的に一緒に暮らすようになった。
その子とくっついて寝ていても、僕は一人だった。

彼女と居た頃が、彼女と居た時間だけが、僕が一人じゃない時だった。
これからも僕はずっと一人なんだと思う。

彼女が生きている限り、平和を望む。
せめて彼女が幸せを選択出来る世界であって欲しい。



おちまい。

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