84pの小説 遊義皇第一話(旧)


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衝撃! グールズ崩壊!?
先日行われたKC共催のデュエルイベント、
バトルシティにてグールズが事実上の解散をしている事が判明した、
その理由は総帥・腹心の続く敗北とも言われているが、真偽の程は定かではない。
これに次ぎ、第二のカードハント組織「制々正念党」の活動の活性化が予想される。
以上、大波社発行、「デュエリストニュース」の見出し記事より抜粋。

(二封気視点)
   「ちょっとごめんなさい、このディスクに新カードを対応ってどうやるの?」
   「それは電源を入れる度にKCの衛星からカードデータが自動で送信されます。」
福助とのデュエルから数ヵ月後、結果としてこの店の存在が認知される良いCMになり、店の初めとしては中々良好だ。
   「最初は子供をいじめる変な人かと思ってたけど、話してみると良い人ですねぇ。」
   「いや、だから苛めてませんって。」
近所のおばさんと談笑してる最中、珍しく刃咲や壱華と一緒ではなく、福助は一人で来た。
   「店長ー、来たよー!」
   「おー、よく来たな福助ぇ! ……今日は刃咲や壱華と一緒じゃないのか?」
   「うん、二人とも風邪ひいちゃったからお休みです、今日は1人ですが、宜しくお願いします。」
俺がデュエルをするのが当然のように思ってるな、コイツ。
   「お前や刃咲のおかげで店が繁盛しててな、
    今日も予約されたディスクの特殊改造が有るから今日はパスだ。」
   「でも刃咲君は『ダメ大人の仕事は仕事にあらず』って言ってるよ?」
刃咲に言われるのは慣れちまったが……福助にまで言われるとグサ、っとくる。
   「じゃあおばさんと遊びましょうか? おばさんもディスク買ったのよ。」
   「うん! お願いします!」
福助とおばさんは、ノリノリで広場へ走っていく。
やっぱり良いなァ、こういう店が村にひとつあればデュエル相手も簡単に見付かる。
   「……さてと、そろそろデュエルディスクを改造するか。」
通常のデュエルディスクには、メインデッキが50枚・融合デッキは10枚までしか入らないので、
それ以上の枚数が必要な場合は、自分で改造するのが常となっている。
   「にしても一日15台は多すぎるよなぁ…そこの人、どう思う?」
   「アレ…気配消せてませんでした? 貴方に教わった通リにやったんですけど。」
声と共に扉をカラカラ鳴らせながら、一つの気配が入ってくる。
   「完璧だったぞ、全く気配感じなかったからな。」
平静を保ちつつ相手の正体を探る、……ああ、正念党のホーティックか!
   「それでは、どうして俺が隠れているところが判ったんですか?」
   「俺な、一人で何かしてる時は定期的に『誰か居るな』と言うことにしてるんだ。
    誰か居たら奇襲は避けられるし、誰も居なかったら一人で虚しくなるだけだ。」
苦笑いの口を押さえるホーティック、にしてもどうしてコイツがオセロ村まで来たかは分からないな。
   「あ、引っ掛けなんですか……覚えておきますよ、二封気さん。」
   「それより何の用だ? 俺は正念党ともカードハントとも縁を切ったぞ。」
   「簡単に言いますね、『最強のレアハンターの猩々鬼』さん。」
   「繰り返すようだが、猩々鬼(しょうじょうき)の名もカードハントと一緒に捨てた。」
解説すると俺が所属していたカードハント組織は最大手のグールズでは無く、無名な制々正念党という小さな組織で、
正念党はグールズに比べると戦力は十分の一、保有レアは千分の一とされる組織だった。
   「で? 本題は何だ? グールズに負けそうだから俺に戻れと?」
   「いいえ、我々が勝利しました、グールズは崩壊です。」
完全に寝耳にミミズを入れられたお笑い芸人状態だ、ナンデスカーッ(※作者注、動揺が脳内解説にまで伝わってます。
   「崩壊って……嘘だろ?」
   「いえ、事実です、先日の海馬コーポレーションのイベント『バトルシティ』にて、総帥・腹心が引退し、
    構成員達がそれぞれリーダーとして旗揚げして別組織として組み上がりつつあります。」
……それはまあ、納得だな、あの総帥は部下に町の中に三日間断食してパントマイムを続けさせるのもザラで、
挙句に部下を洗脳したりしても、組織として成立していたのは総帥のカリスマ性ゆえ、
その総帥が抜けてオマケに腹心まで消えたならば、他に全員が納得するリーダーなんぞ存在する筈も無い。
   「驚いたが……それこそ俺は関係ない、お前らだけで勝てるならそれで良いだろ。」
   「重要なのはこれからですよ、二封気さん、
    グールズが消え、これからカード強奪組織も増えるでしょう、
    新興勢力に対抗する意味でもグールズを根絶するのではなく、吸収するのが望ましい、
    そこでスカウト要員、戦力誇示の為にもあなたの協力が欲しいんです。」
   「……俺はもうどんな名目でもカードハントはしないし、衰えてるよ、
    今じゃ近所のガキ相手でもギリギリ勝つのがやっとだ。」
   「あのデュエルなら見ましたが、あれは貴方のデッキが40枚だったからでしょう、
    貴方のデッキの完成形である47枚ならば、あそこまで追い詰められる要因も無いでしょう? 」
……見てたと言う事は……『アキラ』か。
   「あの7枚を使えねぇ、カードハントで奪ったカードだからな、それに…。」
   「それに?」
訝しげに尋ねるホーティックに、俺はワザと深刻な顔をして口を開いた。
   「……あの7枚な、この店を建てる資金に売っちまった。」
   「え……ええーーーー!?」
   「いや、だって無学歴・無職・無収入の俺に店が手に入れるわけ無いじゃないか。」
即座にホーティックの微笑みに満ち溢れたツラに、どんどん怒りと激昂が染み渡っていく。
   「がぁああ!何考えてんだこのバカ野郎はアアアアア!」
掴み掛かるホーティックをかわして横に回る俺。
   「あれは灸焔三兄弟との死闘で奪い取ったカードだろ! 何を考えてるんだ!」
   「…それはお前には関係ないだろ。」
   「違う! あの3枚は俺達、正念党のトップ三人で奪い取ったカードだ!
    お前は俺や他の正念党を裏切ったんだ! 俺にはお前を殴る義務と権利がある!」
ヅガォッ!
騒々しく詰め寄ったホーティックは、逃れようとする俺の襟元を掴み、勢いで拳を顔面に叩き込んだ。
   「がぁっ……。」
殴った次の瞬間には刀京屋に入った時と同じ微笑に溢れた顔を形成した。
   「シャモンさんには『戻す価値も無い』と言っておきますね、
    ……あ、そこの人、もう入ってきても良いですよ、終わりましたから。」
俺の真似をしたホーティックの言葉に答え、そろりそろりと刀京屋に入ってくる福助、居たのか!?
   「ほんとだ、出てきてくれますね、『分かってるんだぞ宣言』。」
ホーティックは髪を濡らした福助と入れ替わるように店から出て行った、
……外には何時の間にか雨が降り始めてる。
   「……おばさんは洗濯物片付けに帰ったから、僕はこれを返しに来たんです。」
福助は力が抜けた左手でデュエルディスクをレジ台に置いた。
   「さっきの話は本当ですか?」
元レアハンターってのは出来れば知られたくはなったが……隠し通せないな、子供ながらに福助の目は真剣だ。
   「……本当だ。」
   「じゃあ、僕のドリアードデッキは不完全なデッキに負けたって事なんですねッ!?」
   「……は?」
糾弾されると思っていた言葉から掛け離れた叫び。
   「その7枚を入れた全力のデッキで、もう一度僕とドリアードデッキと勝負してください!」
   「お前はさっきの話を最初から聞いてたんだよな? 怖くないのか?」
   「二封気さんが元レアハンターかなんて関係ない!
    問題は僕が貴方に手加減されて、しかもドリアードを犠牲も犬死させてしまったことだ!」
聞いていたにしてはかなり見当外れな事を言う。
   「それでもあの七枚は無いんだよ、諦めろ。」
   「じゃあ、店売ってでもカードを買い戻してください!」
   「無理ゆーな。」
   「……とにかく!リベンジです! さあ広場へ!」
   「お前、デュエルディスク返しに来たんじゃないのか? 雨降ってるし、今はディスクは使えない。」
   「ならビジョン要りません、紙製フィールドで勝負です!」
皆さんは一戦くらいしてやれ、と思うかもしれませんが、
勝っても『手加減したデッキ』に勝ったことにしか為らず、負けたりしたら更に気が沈む。
   「あのなぁ…俺はこれらディスクを回想するから明日な。
    今日はとりあえず帰れ、雨ならビニール傘が余ってるから一本を貸すよ。」
そこまで言って、粘っても無駄と悟ったのか福助は俺の渡した傘を大人しく借りて帰っていった。
   「さて、改造の続きを…っと、…そこの奴、出て来いよ。」
今度は…誰も出て来なかった。


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