84pの小説 遊義皇21話


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第一条 A&BVS壱&弐という組み合わせの場合、A→壱→B→弐→A、のローテーションでゲームが進行する。
第二条 攻撃宣言は、後攻1ターン目からとする。
第三条 パートナー同士は、ライフポイント・フィールド・墓地・除外置き場・勝敗を共有するものとする。
第四条 パートナーのターンが来るたびに、自分自身のデュエルディスクは待機状態になり、手札・デッキは無いものとして扱われ、サレンダー等の権利確認以外の入力ができない。
例:壱のモンスターがある状態で弐のターンになった場合、そのモンスターは弐が操作し、壱は手札に誘発即時効果のモンスター等が有っても使用できない。



二封気&空蝉
  • LP:6300
  • 二封気:手札5
  • 空蝉:手札0
  • モンスター:なし
  • 魔法・罠:なし

ウォンビック&神次郎
  • LP:5600
  • ウォンビック:手札2
  • 神次郎:手札1
  • モンスター:〔越境トークン〕
  • 魔法・罠:伏せ 伏せ 伏せ






   「手札から〔ゲール・ドグラ〕ァッ!」


ゲール・ドグラ 地属性 昆虫族 レベル2 ATK650 DEF600
3000ライフポイントを払って発動する。
自分の融合デッキからモンスター1体を墓地に捨てる。


虫には間違いないが、なんの虫がモチーフなのかはよくわからない異形のモンスター。
貧相な羽に貧相な毒針、そんな中で凶暴な視線と効果だけが出番を待つ爆弾のように妙に艶やかに光る。


   「優先権によりそのまま効果発動ォッ!
    ライフを3000払って、デッキから〔十二眼の暴攻竜〕を墓地に捨てるッ!」

二封気LP:4300→1300
Exデッキ:十二眼の暴攻竜


   「そして、手札より〔ロウ・ブレイク・フュージョン〕ッ!
    墓地に存在する〔十二眼の暴攻竜〕と〔カオス・ソルジャー〕を融合ォッ!」

ロウ・ブレイク・フュージョン 通常魔法
自分フィールド上または墓地から、
融合モンスターカードによって決められたレベル5以上のモンスターを除外し、融合モンスター1体を特殊召喚する。
このカードで融合素材とするモンスターに同名モンスターを使うことはできない。(この特殊召喚は融合召喚扱いとする)

   「…〔龍の鏡〕のマイナーチェンジか…ッ!」


   「融合召喚! 〔 創始界竜総督アドミラル・オブ・ジェネシス 〕ゥッ!!!」


墓地:十二眼の暴功竜→除外
墓地:カオス・ソルジャー →墓地
Exデッキ:創始界竜総督→場

創始界竜総督(ドラゴンアドミラル・オブ・ジェネシス) 光属性 ドラゴン族 レベル12 ATK8000 DEF8000
「カオス・ソルジャー」+「十二眼の暴攻竜」
「青眼の究極竜」+「黒炎防護戦士」
「真紅眼の守護竜」+「究極竜騎士」
このカードは融合召喚でしか召喚できず、上記の3組の内の1つを融合しなければならない。
またこのカードのコントローラーのバトルフェイズ中、このカード以外の全てのカードの攻撃力・守備力は0となり、効果は無効となる。
(このカードは自分のスタンバイフェイズに融合デッキに戻る。)(オリカ)


   「始めの〔未来融合〕で〔ユーフォロイド・ファイター〕は…ッ!
    秋蒔きのごとく、種を蒔いたというわけか…ッ! このための種をッ!」


   「このカードの前ではバトルフェイズ中ならば、全ての効果は無効となる! 戦神ってわけだッ!
    そのトークンには影響ないんだろうが…起動効果なら問題もねえ、バトルフェイズ!」


   「ならば、バトルフェイズに入る前に止めるしかあるまいッ!
    手札の〔エフェクト・ヴェーラー〕の効果発動! 〔創始界竜総督〕の効果を無効にする!」

手札:エフェクト・ヴェーラー →墓地

エフェクト・ヴェーラー 光属性 魔法使い族 レベル1 ATK0 DEF0
チューナー:このカードを手札から墓地へ送り、相手フィールド上に表側表示で存在する効果モンスター1体を選択して発動する。
選択した相手モンスターの効果をエンドフェイズ時まで無効にする。この効果は相手のメインフェイズ時のみ発動する事ができる。

   「っち、〔手札抹殺〕が裏目にでたか…! アレで引かれたッ!」


   「裏目かどうかは、攻撃しなくちゃ分からないぜっっ!」


〔創始界竜総督〕の持つ、カードの効果を無効にする効果は失われた。
攻撃を躊躇させる為の最後の足掻きか、創始界竜総督を葬る為の布石か。


   「ここまで来て!引くわけはいかねぇよ!
    越境トークンを攻撃!  断・首・刃アドミラル・エグゼキューション ッ!」


効果を無効にされたとはいえ、創始界竜総督の攻撃力は脅威の8000。
〔越境トークン〕の攻撃力を0にできなくとも、戦闘の結果には何ら影響しない。


   「引けないのは俺とて変わらんッ!
    バトルフェイズに入ったことにより、ライフを500払って〔血の代償〕を発動!
    俺は通常召喚の権利を得る!」


血の代償 永続罠
500ライフポイントを払う事で、モンスター1体を通常召喚する。
この効果は自分のメインフェイズ及び相手ターンのバトルフェイズ時にのみ発動する事ができる。


ウォンビックLP:1600→1100


ハリケーンで戻された事でフィールドから姿を消していた血の代償が再び発動される。
通常召喚の権利―――――ここで創始界竜総督の攻撃をかわすには………こうするしかない。


   「俺は〔越境トークン〕をリリースし、モンスターをセットする!
    さらに、おジャマの特性を受け継いだ〔越境トークン〕の特性により、1000のダメージッ!」


越境トークン 光属性 戦士族 レベル8 ATK3000 DEF2500
「デーモンと名のつくモンスター」+「おジャマと名のつくモンスター」+「霞の谷と名のつくモンスター」
1ターンに1度、サイコロを1回振り、出た目の数だけフィールド上に存在するカードを持ち主の手札に戻す。
この効果を発動するターン、このカードは攻撃する事ができない。
このカードが破壊以外の方法でフィールドを離れた時、相手プレイヤーに1000ポイントのダメージを与える。
(トークン)

二封気LP1300→300


   「ずうっ!?」


〔創始界竜総督〕の尋常ではない攻撃力を以ってしても、守備モンスター相手にはダメージを与えることは適わない。
一撃必殺故に、二発目を許されないデメリット故に、出したターンに決まらないのはあまりにも痛い。


   「…ッチぃっ! 今伏せられたモンスターにそのまま攻撃だ!」


○創始界竜総督Atk8000  ×ドラゴン・アイスDef2200

ドラゴン・アイス 水属性 ドラゴン族 レベル5 ATK1800 DEF2200
相手がモンスターの特殊召喚に成功した時、
自分の手札を1枚捨てる事で、このカードを手札または墓地から特殊召喚する。
「ドラゴン・アイス」はフィールド上に1枚しか表側表示で存在できない。

   「伏せカードを2枚セットして………終了だ!(手札1・伏せ2)」


   「ふん、私の〔血の代償〕や敵の〔手札抹殺〕に頼ったとはいえ、ここはよく耐えたと褒めてやろう!
    盾代わりのウォンビック・ブラックマインよ、ここは神の剣たる私が決めてやろう! ドローッ!
    …私は〔ライトロード・モンク エイリン〕を召喚!」


ライトロード・モンク エイリン 光属性 戦士族 レベル4 ATK1600 DEF1000
このカードが守備表示モンスターを攻撃した場合、
ダメージ計算前にそのモンスターをデッキに戻す。
このカードが自分フィールド上に表側表示で存在する限り、
自分のエンドフェイズ毎に、自分のデッキの上からカードを3枚墓地に送る。


   「〔エイリン〕で〔ゲール・ドグラ〕を攻撃!」


   「させねえッ! 〔皆既日蝕の書〕を発動!」

皆既日食の書 速攻魔法
フィールド上に表側表示で存在するモンスターを全て裏側守備表示にする。
このターンのエンドフェイズ時に相手フィールド上に裏側守備表示で存在するモンスターを全て表側守備表示にし、
その枚数分だけ相手はデッキからカードをドローする。

創始界竜総督 攻撃表示→裏側守備表示
ゲール・ドグラ 攻撃表示→裏側守備表示
ライトロード・モンク エイリン 攻撃表示→裏側守備表示


   「くッ、止められたかッ!」


今の防御は理想的、といえる防御だった。
〔ゲール・ドグラ〕への攻撃をかわしただけでなく、〔創始界竜総督〕がスタンバイフェイズに戻ることも防いだ。


   「だが〔皆既日蝕の書〕のもう1つの効果を忘れたとは言わせんっ!
    1枚伏せ、ターン終了! 私の場のモンスターは全て表になり、カードを2枚ドロー!」


おジャマ・イエロー 裏側守備表示→表側守備表示
ライトロード・モンク エイリン 裏側守備表示→表側守備表示
デッキ:2枚→手札


   「さらに、〔エイリン〕の効果により3枚のカードが墓地へ落ちる。
    来い! 〔ライトロード・ビースト ウォルフ〕ッ!」


   「なにぃっ!?」

ライトロード・ビースト ウォルフ 光属性 獣戦士族 レベル4 ATK2100 DEF300
このカードは通常召喚できない。
このカードがデッキから墓地に送られた時、このカードを自分フィールド上に特殊召喚する。


デッキ:墓守の番兵→墓地
デッキ:ADチェンジャー→墓地
デッキ:神の宣告→墓地


   「…オイ、墓地に送られていないと思うのだが?」


   「ええい! 〔ウォルフ〕めぇえええ!
    神をも恐れぬカードよ! 命拾いをさせてやったぞ、空蝉! 列効ッ!
    お前たちのターンだぁ!(手札0・伏せ3)」


   「そりゃどうも…。
    俺のターン! 墓地の〔アイツ〕をゲームから除外し、〔聖炎の大天使 ミカエル〕を特殊召喚!」

聖炎の大天使 ミカエル 炎属性 天使族 レベル8 ATK2800 DEF2800
このカードは通常召喚できない。
フィールドまたは墓地に存在する炎属性・天使族モンスター1体をゲームから除外した場合にのみ、このカードを特殊召喚できる。
このカードが戦闘によってモンスターを破壊し墓地へ送った時、以下の効果から1つを選択して適応する。
●破壊したモンスターの攻撃力分のダメージを相手ライフに与える。
●破壊したモンスターの効果を無効にし、持ち主のデッキの一番下に戻す。

〔ラファエル〕と同じく、全然天使っぽくはない。
メタリックスフィアな容姿にフレイムペイントで、学童向けの新しいオモチャか何かのようだ。
一応、申し訳程度に両刃の剣が装着されているが、それだけである。


   「攻撃力が高いから強いと思うのが素人のあさはかさよォッ!
    いかなるカードも無効にして破壊すれば、たかだか1枚の紙切れよッ〔神の宣告〕ッ!!」

神の宣告 カウンター罠
ライフポイントを半分払って発動する。
魔法・罠カードの発動、モンスターの召喚・反転召喚・特殊召喚のどれか1つを無効にし破壊する。


神次郎LP:1100→550
×聖炎の大天使 ミカエル→墓地


前のターンに〔エイリン〕の効果で落ちたのは、〔ADチェンジャー〕。
〔ゲール・ドグラ〕を攻撃表示にされて攻撃されれば、即座にゲームエンド。
だが、攻撃表示にされても攻撃力950未満のモンスターならば繋がる、〔エイリン〕さえ倒せば繋がる。


   「〔創始界竜総督〕を反転召喚し、バトルフェイズ。 〔エイリン〕にアタックだ。」


○創始界竜総督Atk8000  ×ライトロード・モンク エイリンDef0


   「ターン終了。(手札0・伏せ1)」


これで神次郎達の場に残っているのは〔おジャマ・イエロー〕のみ。
しかし、次のスタンバイフェイズには〔創始界竜総督〕も消滅し、双方に攻め手がなくなる。


   「俺のターン…〔血の代償〕を墓地へ送り、〔マジック・プランター〕を発動。」

マジック・プランター 通常魔法
自分フィールド上に表側表示で存在する永続罠カード1枚を墓地へ送って発動する。
自分のデッキからカードを2枚ドローする。

場:血の代償→墓地
デッキ:2枚→手札


   「カードを2枚セット、ターン終了。(手札0・伏せ4)」


カードをセットし、ターンを終えるウォンビック。
顔には出していないが焦っているのは二封気、現在場に出ているカードは全て二封気のカード。
当然、そのカード及びデッキ内のカードの組み合わせで出来ることは把握している。
逆転や延命ができるカードも何枚かあるし、問題はそのカードを引けるかどうか。


   「俺のターン!」


二封気の次に控えるのは神次郎。
これまでの戦いの中で、彼のデッキの中はアタッカーだらけな事がわかっている。
〔皆既日蝕〕で手札も強化してしまった今、このターンがラストチャンスだった。


   「…ドローッ!」


ドローカード:〔融合〕


この状況では、いや、このデュエルではもう何の役にも立たないカード。
二封気は一度視線を切り、再び戻すが、やはりそこに有るのは〔封魔の呪印〕で封印された〔融合〕があるだけ。
後は〔創始界竜総督〕が消え、ターンを終了するだけ。


   「何を引いたかは知らんが、これで終わりだ。伏せカード発動、〔おジャマピン〕。」

おジャマピン 通常罠
相手フィールド上に「おジャマトークン」(獣族・光・星2・攻0/守1000)を1体守備表示で特殊召喚する。
(生け贄召喚のための生け贄にはできない)
「おジャマトークン」が破壊された時、トークンのコントローラーは1体につき300ポイントダメージを受ける。
(KOBオリジナル)


おジャマトークン→場


   「………!?」


ダメ出し、と言わんばかりにウォンビックの最後の攻撃が動いていた。


   「借りるぞ、ジロウ。 〔ヒーロー・ブラスト〕だ。」

ヒーロー・ブラスト 通常罠
自分の墓地に存在する「E・HERO」と名のついた通常モンスター1体を選択し手札に加える。
そのモンスターの攻撃力以下の相手フィールド上表側表示モンスター1体を破壊する。

   「墓地に存在する〔アナザー・ネオス〕を手札に戻す。
    そして、このカードよりも攻撃力の低いモンスター、〔おジャマトークン〕を破壊する。」


   「これは、ヤベェっ?!」


〔おジャマトークン〕には、破壊された時にコントローラーに300のダメージを与える効果を持っている。
二封気の残りライフは300、ジャスト。
地面が割れ、颯爽と〔アナザー・ネオス〕が飛び出す。
そして華麗な蹴りが宙を切った。


   「早くトドメを刺したかった…って気持ちは分かるがな、ここは礼を言わせて貰うわ。
    “助かったぜ” だ。」


   「…なに?」


   「伏せカード発動ぉぉぉ! 〔合身〕ッ!!」

合身 通常罠
融合カードに定められたモンスターを融合する。


   「なに!?」


   「〔創始界竜総督〕が消えるのを待ってから発動していたら、それで終わりだった。
    1フェイズ、動くのが早かったな。 〔創始界竜総督〕と〔おジャマトークン〕を融合!」


場:創始界竜総督→墓地
場:おジャマトークン→消滅
Exデッキ:神の化身→場


神の化身 光属性 ドラゴン族 レベル6 ATK2500 DEF1300
このカードは融合召喚でしか特殊召喚できない。
2体の元々の属性が同じモンスターを融合素材とする。このカードの属性は、融合素材にしたモンスターの属性になる。


墓地:E・HERO アナザー・ネオス→手札


ウォンビックの墓地には、相手の特殊召喚時に手札1枚をコストに復活するドラゴン・アイスがいる。
しかし、チェーン1のヒーロー・ブラストの効果処理によって、その発動タイミングさえも逃してしまう。


   「〔ゲール・ドグラ〕を反転召喚し、バトルフェイズ。
    〔神の化身〕で、〔おジャマ・イエロー〕を攻撃ッ!!」

○神の化身Atk2500  ×おジャマ・イエローDef1000


   「〔ゲール・ドグラ〕! マグラスピンでダイレクトアタック!」


ウォンビックLP:550→0


第21話 勝っても拭えぬ負け犬根性





デュエルブレイン:矮鶏様

編集・作成:84g






   「…1フェイズ差…か。
    早すぎても見えん、勝利というヤツは…。」


   「…ふん! 私の〔神の化身〕や〔神次郎の宣告〕を渡さねば、負けはしなかったわッ!」


   「そうだな。 お前ら連携良いわ。
    〔神の化身〕分、追いついて追い越せたって感じだったしな。」


云いつつ、エクストラデッキから2枚の〔神の化身〕を抜き出し、スローなカード手裏剣で渡す。
空蝉も抜き出し、例のルール用USBと交換する。


   「タッグ専門か? お前ら?
    攻撃とか防御とか、やたらに息が合ってたぜ?」


   「ッな…!? ふざけるぬァぁッ!
    四つの国家の血統を継ぐ私が、こんな単血人種と二人三脚専門なんぞできるくぁっ!」


空蝉の質問に、神次郎はキレて応える。
彼にとっては、ひとりで戦うことに最も意義があるのだろう。


   「それはそれとして、俺に会ったってことはシャモンに云わない方が良いぞ?
    …お前たちとはまたデュエルしたいからな。」


   「…? どういう意味だ?」


   「あいつの性格からすると、俺(二封気)に会ったのに何も云わなかった…って云ったら多分…。
    “電話越しででも俺がデュエルするよ!”
    “もう両手足ブっ千切ってでもいいから連れてきてよ!”
    …とか云って、お前らの骨の一本や二本折るかもしれないからな。」


二封気のモノマネ交じりの説明に、“云いそうだなぁ”と肯くクロック。


   「…云わんわけにもいかんだろう。
    怒りを買ったら買ったときの話だ。 さっさと帰るぞ。」


   「了解です。」


   「ふん…次は勝つからなァっ! 空蝉高差っ! 列効二封気ッ!」


   「あぁー…じゃ、まあ俺からは応援もできねぇけど、ほどほどに、な。
    っと、云い忘れだ。 二封気。 耳貸せ。」


ウォンビックと神次郎がデュエルディスクを持ち運びできるサイズまで分解する最中、クロックは声を絞った。


   「? なんだ?」


   「…近くまで福助と蕎祐が来てるぞ。
    なんでも、全力のお前とデュエルしてぇ…とかなんとか福助が云ってた。
    ナニワカップに参戦するって云ってたな。」


人外的なまでの聴力を持つ元音楽家の神次郎、身体能力のスペックがいちいち規格外なウォンビックに聞こえない程度の細い声。
声量とは裏腹に、その言葉が二封気に与えた衝撃は小さくなかった。


   「…追ってきてるのか。 アイツら。」


   「あぁー、まあ、どうするかは任すけどな。 ただ福助も頑張ってんだ。 無視とかするなよ。」


“任す”といいつつ、無視は禁止らしい。
クロック自身も気が付いていないが、まあ、そういうことだ。


   「…OK。 考えておくわ。
    サンキュな、クロック。」


   「あぁー、そういうのは全部終ってからにしろよ。
    …死ぬなよ、お前も。」


   「…なんの話をしてるのかは知らんが、帰るぞ。 クロック。」



いつの間にか普通の調子で喋っていた2人。
慌てながらもクロックは神次郎・ウォンビック・トガと共に背を向け、大通りへと足早に去っていった。
しかし、ウォンビックの歩幅が他のメンバーの三倍近いので、途中でトガを抱きかかえ、クロックを担いだ。


   「乗らんでも遅れん!」


とかいいつつ、神次郎は小走りになり、それを見届けてからウォンビックも小走りになる。
それを見て、神次郎は次は全力疾走で追いつくだけではなく、全力でウォンビックを追い越す。
やめとけばいいのに、ウォンビックも走り出してみたりし…途端に四人の姿は見えなくなった。


   「…で、あいつらは誰だったんだ? やたらに強かったが。」


終ってみて、空蝉は至極当然の質問をした。
彼らが誰であろうと、二転三転するデュエルをしたら誰でも良かった――答えを聞くまでは。


   「ん? ああ、正念党って聞いたことないか? そこの最高幹部の七人衆。」


凍りついた。
自分が捜し求める正念党の手掛かりが、あんなに近くにあったことに。



   「な…マジだぁっ!?」


   「うん。」


子供のような二封気の答えに、空蝉は走っていた。
既に見えなくなっており、追いつくには偶然を必要とするのかもしれない。
そんな空蝉の理性を振り切り、空蝉の激情は肉体を支配していた。


   「…逃がさねぇ、逃がさねえぞ…正念党…!」


――見逃してくよお…大事な…カードなんだよォ
――別に構いませんよ。


ホーティックを見つけ出し、倒しても自分の無様な命乞いの記憶が払拭されるとは限らない。
だが、消えないとしても、取り戻しに行かなければならないのだ。 自分の言葉を。



   「居たッ!」


人生には、感情が客観的確率を越えることが多々存在する。
それを人は奇跡と呼ぶわけだが、この日も空蝉の激情が実を結んだ。
見えた。 ウォンビックの巨大な背中が。


   「オイ! 待て! お前らッ!」


両手が千切れて飛んでしまうんじゃないか、と思わせるほどに振り回す空蝉。
それはウォンビックたちの耳に届き、瞳に写った。


   「なんだ? 空蝉…だな?」


   「フフン! 私たちの見送りか! 中々に礼儀を弁えているな!」


神次郎の解釈に納得したのか、ウォンビックは応えるように軽く手を振った。
大きく振りたかっただろうが、既にウォンビックの両肩にはクロックとトガが乗っている。


   「今は花を預けるが…次は骨の髄まで負けをしみこませてくれるわ!」


   「また会おう! 楽しみにしている!」


   「…っ!」


敗者たる二人には、卑屈さなど微塵もなかった。
空蝉の身体と心は、数秒間、動けなくなっていた。


   「落とさないつもりだが…落としても恨むなよ。」


   「はいっ! ブラックマイン様!」


   「あぁー、ま、安全跳躍で頼むわ。」



そして、正念党員たちは大きく跳躍した。
マシラ(猿)の如く…というべきか、猿以上の動きでビルや電信柱の上や横を無音で駆け抜けていく。
ウォンビックにいたっては二人も担いでいるが、その二人に落下の不安を与えないほどの流麗さも備えている。


   「…ウ…クソォッ!」


追いかけられなかった。
あんなことをやる身体能力は空蝉にはないが、有ったとしても追いかけられなかっただろう。
負けたはずの二人の言葉は、次の勝利を信じる言葉だった。
レアハンターである彼ら以上に、ホーティックに負けたときの自分は醜かった。


   「…小さすぎるじゃないか…俺は…ッ!」


一時、心が折れた。
気高い敗者たる二人の澄み切った言葉に。
なぜ自分もあの言葉が云えなかったのか、悔恨が空蝉の身体を金縛っていた。


   「しゃあねえ、二封気のところに戻って、正念党のことを聞き出さなくちゃァならねえな。」


大通りで人目も気にせずに独り言を云う空蝉を制するようになる携帯電話、着メロは…空蝉の彼女からだった。


   「…もしもし、高差だ。」


   「 (私だ、ザインだ。 さっさと帰って来い。)」


いつもどおり、男のような口調で空蝉の彼女ことザインは空蝉の事情も聞かずに用件だけを押し付ける。


   「ちょっと待ってくれよ、ザイン。
    俺、ちょっとこれから二封気のところに行って、正念党のことを聞かなくちゃならないんだよ。」


   「(…二封気が正念党の情報を知っているのか?)」


   「いや、分からねえけど、可能性はあるんだ。」


   「(高差、二封気の電話番号は持っているのだろう?)」


   「ん、ああ、知ってるけど…。」


   「(なら後で電話で聞け。
     電話で答えられないような情報なら、会っても教えてはくれないだろう。)」


   「…わかった。 今すぐ帰る。」


その言葉を合図に、ザインは電話を切った。
――本来ならば今すぐ確かめたいところだった。
しかし、ザインの云うことにも一理あり、冷静さを持っている状態では空蝉はザインへの拒否権を持つことができなかった。


   「ふう…とにかく、正念党七人衆が来てるってことは…次のナニワカップで動く!
    迎え撃ってやるぜ…ホーティック・モーガンッ!」


人垣なんか気にしない、それでも空蝉は叫んでいた。 自分自身への誓いを。
やはり、全ては明日、ナニワカップだ。

















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