Malt?
ポートエレン
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malt
PORT ELLEN ポートエレン
最終更新2007-05-18
美しい港町に建つグレーの要塞 |
ポートエレンはそれなりに人気のある蒸留所だったが、今は蒸留をやめている。蒸留施設自体も無いかもしれない。自社あるいはボトラーがまだ在庫を持っているので商品は時々見かける。アイラということもあってプレミア価格だ。
ポートエレンはアイラで一番の港町の名前でもある。島の中心地ボウモアを出て、空港がポツンとある荒野を越えると港の香りや音が聞こえてくる。ああ、もうすぐ街だ、と思ったところに、「アライド」という大資本の看板と、グレーの巨大な要塞が現れる。ひょっとしたらアイラ島で一番大きな建物かもしれない。少なくとも日本の都会の目で見れば、アイラ島で唯一「工場」と呼んでいい建物だろう。
ポートエレンは今ではウイスキーの元になる発芽した麦、つまり「モルト」を造る大工場になっている。モルトスターと呼ばれるこの様な工場はスコットランド全体でもそんなに沢山は無い。
なかば意地でフロアモルティングという手作業の重労働でモルトの一部を自前で造っている蒸留所もあるが、事実上ほぼ100%のウイスキーがモルトスターが供給するモルトでウイスキーを造っていると言っていい。アイラモルトも例外ではない。これからどうなるかは誰にも分からない。
サントリーがボウモアを買ったのは、存外、そんな処に理由があったのかもしれない。コンクリートの床の上で蒸せる麦芽を鋤で混ぜ直すことこの道ン十年のおじさんが見せる、自身に滿ちた笑顔。