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遊義皇第九話(旧)

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絵本作家筋肉博士氏の新作、「ニック・シルバー船長に英語を学ぼう! 顎力(がくりょく)強化!」発売。
幼児向け絵本として20年前から発売されている「ニック・シルバーシリーズ」の第53冊目が今月4日に発売される。
このシリーズは冒頭1~5ページは幼児向けの英語から始まるのだが、途中から不自然すぎる流れで特定の筋肉の鍛え方に変わり
そのコミカルな絵と強引なストーリーから子供にも人気が有り、トレーニング内容も医学的見地から見ても斬新かつ効率的と定評がある。
以上、月間ブックコレクション2月号、編集部プッシュベストテンページより抜粋。(ちなみに順位は2位。)

(ジロウ・ジン視点…誰?)
   『だああああああああ!』
ヴァイソンダーヅの連中は拳銃を神経質っぽく規則的に発砲してくる、
工夫が無いな、これだから武力に頼らなければカードハントも出来んのだ。
私達正念党ニューヨーク支部はシャモン様が来るまで連中を拠点のビルから逃がさず、
可能な限り戦力を減らすように命令を受け、突入した。
だが、正直な話を言うと私の部隊27名はヴァイソンダーヅを全滅させる事も出来る戦力と意思が有り、シャモン第1幹部の空振り出動は確定されている。
   「私に続け部下達!」
私は弾幕を物ともせずにビルの廊下を走り抜けていくが、相手は最初から放っていた殺す気ゼロの足狙いの銃を撃つ手を休めはしない、
…まあ仮に心臓をライフルで狙われたところで効かんがな。
   「んなぁ…バカな! 弾丸が刺さrブファ!」
驚愕に打ち震えながら私の鉄拳に殴り倒されたヴァイソンダーヅの使い走り、っふ。
   「っふふふふ、私達の部隊が着ているヘルメットや服は第3幹部発明、その名も『アルティメット・ファイヤー・アーマー』!
    このスーツはN○SAもびっくりの耐久力でなぁ、ロケットエンジン搭載のタクシーが突っ込んできても生き残れるかもしれないと言う優れ物だ!」
質問用に一人だけ攻撃しなかった名も無き正念党員は、部下達に後ろ手に縛られながらも私に歯向かって来た。
   「『かもしれない』って未定なのかよ! しかもそんなタクシーねぇし!
    そして見逃す所だったがスーツネーミングの方向性がダサい!」
   「んで、威張ってるけど隊長の手柄、って訳でもないよね。」
副隊長のナマイキが喋る、アホウが。
   「轢かれる機会が無いならそれに越したこと無し! 手柄はこれから立てる!
    忘れるところだったがネーミングは製作者のホーティックの趣味だ! そんな当たり前の事も分からんのか!」
…まったく部下も敵もアホウだらけが…。
   「さて…貴様等の首領、ウォンビック・ブラックマインはどこに居る?」
ブラックマインは身長240センチオーバーの筋骨隆々と行った黒人男性、
ここまで7階建てビルの1~5階を制圧したが、そんな目立つ容姿のヤツが居ればこの私が見逃すはずが無い。
   「言うわけ有るかぁああああ! くらえ!」
男が手首のスナップのみで投げた香水のビンのようなものをかわす事も無く堂々と顔面(ヘルメットだが)で受け止める私。
   「ふっ、こんな物が何を……う?」
突如として遠のく私の意識…睡眠薬…か…?
   「隊長! 動けますか!?」
く、部下達……すまない、私が起きるまで時間を稼いでくれ…。
   「お前ら喜べ! 隊長の意識が飛んだぞ!」
   『よっしゃああああ!』
…どういう意味だ、アホウ部下ども。

(刃咲視点)
   「僕のバトルフェイズで〔エレメント・ドラゴン〕で〔灼岩魔獣〕を撃破し、風のエレメントパワー連続攻撃でトドメです!」
ガチャピンスナフキンLP1800→1300→0
   「うああああ!」
   「ガチャスナのライフが0に為ったからターンはスキップされ、俺のターン(手札4)!
   〔アルティメット・インセクト〕でアフロに直接攻撃だ!」
アフロ侍LP2400→0
   「ヌゥ…。」
   「今のがタッグデュエルかぁ、楽しかったね! 刃咲くん!」
   「俺はそれより次の反応が楽しみだ。」
最後の屋根上待機変人集(俺が命名)を撃破し、福助と共に今までのニックから続いている伝統パターンを待った。
   「お前のかーちゃんデーベソ!」
   「ムーミン谷に帰っちまえー!」
謎の捨てゼリフを残して泣きながら走り去るのがアイツらの流儀らしい…子供の喧嘩か、ダメ大人ども。
   「今日は沢山デュエルできて良かったね♪ 刃咲くん♪」
   「数はデュエルできたけど内容は軽かったぜ? これなら夢で見た無個性女の方が強かったぞ。」
今回来たヤツは星3~星4のいわゆる並のレベルだが、昨日の夢で見た女は明らかに5よりも上だった・・・夢だけどな。
   「さあ! あとはクロックさんの手札交換を見極めるだけだ! クロックさーん!」
大声でオッサンを呼ぶ福助が、この上なく国営放送の教育番組っぽい。
………、
………、
…面白いくらいの沈黙。
ガラス戸を堂々と横に引き…、
   「クロックさーん? 二封気さー…上ぉ多!?」
そのままの姿勢で悲鳴を上げるフク…って、冷静に状況分析してる場合じゃねぇ!
   「どうしたフク!」
そこにはダメ大人2号ことクロック・ジェフが頭から血を流して倒れていた――。
   「生きてはいるな…二封気は!?」
   「い…居ないよ!?」
出口である刀都屋出入り口の前でオレ達がさっきまでデュエルしていて、その間誰も出ていない。
…これは完全な密室殺人だ!
※1、死んでません。
※2、刀都屋には裏口が有ります。
※3、この小説は「遊戯王」のパロディです、間違っても「探偵歩けば人が死ぬ」系列のパロディではありません。

(作者視点)
ヴァイソンダーヅ所有ビル屋上、無駄に強い風に煽られながら2人の男は1つの「山」を横目に立っていた。
   「ふはははははは! ちょっと待ったァ!」
一人目の男…神次郎はさっき睡眠薬の量が少なかったからかかったからなのかは知らないが、ほんの数分で目を覚まし、
自称天才的な閃き(カン)で、ラスボスのウォンビックは拠点とするビルの屋上に居ると読み、見事的中した。
   「突然現れ大声出すとはカラスかお前は? カラスでも名前ぐらいは名乗れるんだろう? 何者だ?」
いや、名前が「カァー」とか「アホウ」とかじゃない限りカラスは名乗れないと思いますよ…あ、アホウか。
   「私の名は正念党第5幹部にしてニューヨーク支部長、神 次郎(ジン・ジロウ)!
    悪の巣窟ヴァイソンダーヅを率いるウォンビック・ブラックマイン!
    正義と英知と力と技とスピードと根性と愛と……とかで貴様を倒す男だ!
    そして部下達! 貴様等の失敗は寛大にも私が尻拭いしてやろう! 寛大にな! ふははははァア!」
屋上の隅に山の様に積み上げられた意識の無い部下達に向かって更に声を張り上げたアホウ。
   「…一つ尋ねるが…お前は他の連中のように硬い服を着てないのか。」
   「当然! 服が重くて貯水タンクに登れなかったから脱いだ!」
この人は部下が積み上げられている中、登場シーンの為に服を脱ぎ必死で貯水タンクに登った、と言う事らしい。
   「私からも質問が有る! どうやって『アルティメット・ファイヤー・アーマー』を着込んだ部下達を倒した!」
   「……確かにその服は硬かった、だが例えるならタッパーにプリンを入れて振り回す様に…中身に振動を与える拳を使った。」
例えが逆に分かり難い、つーか普通はそんな事はしない。
   「なるほどな! ところで! 私はどうやってここから降りたら良いのだろうか!?」
   「……ケンダマのボールのように飛び降りたら良いじゃないか。」
剣玉の玉が落ちたら拙いと思います、紐が切れてます。
   「足を挫いたり関節が外れたりしたら痛いじゃないか! そんな事も分からんのかアホウが!」
   「……貴様、本当は大馬鹿だろう。」
正解。
   「バカって言った方がアホウなんだぞ! アホウが!」
この後、ジンさんはウォンビック自慢の身長240センチで降ろされ、
更に「登る時に手が汚れた!」と主張し、手を洗いに行ってからデュエルを開始した…なんだこの人。

   『デュエル!』
お互いの開始宣言と共に、ジンは髪を掻き上げてヘアバンドで…ホウキまたはパイナップルのようなヘアースタイルで固定した。
   「……それはお前の自由だが…お前だぞ、先攻。」
既にジンのディスクの液晶は先攻を示す「GO!」が表記されている。
   「カードドロー!(手札6枚) モンスターを裏側守備表示で召喚して、2枚の伏せカードを出してエンドだ。(手札4・伏せ1)」
特に代わり映えも無い、が様子見と言う意味ではある意味で妥当なプレイングで済ませた。
   「普通…だな(手札6枚)、俺は手札を4枚セットして終了だ。(手札2・伏せ4)」
自分の戦術を貫くと言う、初手にとても重要なある意味で妥当なプレイング…あれ?
   「ふゥははは(手札5枚)はははは! 貴様は私の作戦に嵌ったァ! 伏せカード発動!〔ハーピィの竹箒〕!」

ハーピィの竹箒 通常魔法
ライフを2000ポイント払い、以下の効果から1つを選択して発動する。
●フィールド上の全ての魔法・罠カードを破壊する。
●自分のライフを半分にし、相手フィールド上の魔法・罠カードを全て除外する。(オリカ)

ジンLP8000→6000→3000
   「伏せカード発動だ、〔マジック・ジャマー〕。」

マジック・ジャマー カウンター罠
手札を1枚捨てる、魔法カードの発動と効果を無効にし破壊する。

ウォンビック手札→レベル制限D地区墓地へ。
ハーピィの竹箒、無効・破壊。
   「ふは! それで防いだつもりかァ! 裏守備の〔ウェポンサモナー〕を反転召喚して〔王室前のガーディアン〕をサーチ、
    そして〔クリッター〕を攻撃表示で召喚! 2体でアタック!」

ウェポン・サモナー 風属性 魔法使い族 レベル4 ATK1600 DEF1600
リバース:カード名に「ガーディアン」の文字が入っているカードを自分のデッキから1枚手札に加える。

クリッター 闇属性 悪魔族 レベル3 ATK1000 DEF600
このカードがフィールド上から墓地に送られた時、
自分のデッキから攻撃力1500以下のモンスター1体を選択し、お互いに確認して手札に加える。
その後デッキをシャッフルする。

   「〔聖なるバリア―ミラーフォース―〕発動だ。」
魔導師の放った魔術は180度
ウェポンサモナー・クリッター→破壊、墓地へ。

聖なるバリア-ミラーフォース- 通常罠
相手モンスターの攻撃宣言時に発動、相手フィールド上の攻撃表示のモンスターを全て破壊する。

   「ふふふふ…デッキから〔異次元の女戦士〕をサーチして、伏せカードを2枚セット、終了だ。(手札4・伏せ2)」
   「…ディオのラッシュ並みに無駄の多い戦術だな、このターンにお前は大量のライフを浪費したが、俺のライフは完全に無傷だ。」
ウォンビックの言葉を聞き、口元に尋常じゃない笑みを宿すジン。
   「やはり私の崇高な攻撃を理解できんのか、アホウが。
    このターン、私の攻撃によってお前は致命的なダメージを受けている。」
デッキに伸ばした手を止めて、表情で言葉の続きを促すウォンビック。
   「よく考えろ、このゲームは私の先攻、そしてまず〔ハーピィの竹箒〕1枚に対し、貴様は手札1枚と〔ジャマー〕を消費した、
    そして〔聖なるバリア〕で破壊された〔サモナー〕は既にサーチ済み、〔クリッター〕は墓地に送られる事が本来の役目だ。
    つまり実質タダ同然のモンスター達で禁止級の〔聖なるバリア〕が消せた…これで俺の2・5アド、初期手札半分の差だ。」
確かに上級者同士の戦いでは初期手札半分は大きい、だが、ライフは半分以上消えている。
   「そういえばグールズ健在時に聞いた事が有るな、第三実戦部隊隊長という名誉ある称号を持ちながら、
    使う戦術はスタンダード、通称『1枚の手札アドにライフ7999ポイント払う男』で知られる変人の話を。」
   「ふ、私は前総帥にすらもカードカウンティングで負けた事は無い!
    巨人よ! お前は既に私の術中に嵌っているのだ!」
カードカウンティングで負け無しって、後攻取ったことは無いんでしょうか、この人。
   「言葉を返すが既に俺の戦術も起動している……お前は今まで引いたカードの枚数を覚えているか?」
珍しく眉を潜めるホウキ頭のカラス。
   「初期ドロー5枚、ドローフェイズ2枚、その他〔クリッター〕・〔デコイチ〕で1枚ずつ補充で合計9枚、残りデッキは31枚だ。」
デュエルディスクを操作し自分のデッキ枚数を確認するホウキカラス。
   「まさか…。」
   「俺の戦術は『待ち』、貴様のデッキが切れるまでこのまま耐え続ける、
    このデュエルディスクは俺が付けているからそれほど大きくは見えないだろうが、
    実際は普通のサイズの3倍の大きさがありデッキスペースも3倍で150枚入り、
    限度枚数まで入れる事で先にデッキが切れるのは通常のデュエルディスク40枚入りのお前だ。」
   「私の高貴な記憶にも残っていたぞ、壁部隊総長で『不動不死』と呼ばれた男は。」
   「俺は攻撃のカードを捨て、完全に防御に突出する、貴様のドローブーストは俺にとっても好都合だ。」
お互いに惜しげもなく、自分のデッキパターンを暴露した理由は至極単純、暴露しても勝てる自信だが、別名ただの自慢合戦。
   「デュエルが遅れたな、カードを引くぞ。(手札2)」
かくして、完全防御者VSアドバンテージ執着者の地味な戦いの火蓋が切って落とされた。


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