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海馬VS闇バクラ 中編

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ヘリコプターが海馬ランド特設ヘリポートに降りた瞬間からワタシ達は作戦を開始した、

   「ハラカド! お前は放送室に行き、例の暗号で亜紋を放送室を呼べ!」


   「ラジャーッ!」


ワタシ、ハラカド・ヅェベッタは、ヘリの中でモクバ様に聞いた作戦を実行すべく、放送室へと走った。
その作戦とは、モクバ様と今回保護すべき亜紋様がお互いの事を、冗談で〔阿修羅〕と〔トロイ・ホース〕と呼び合っていた事から、『エスパー伊藤』とかいう男には気付かれずに、亜門様だけに集合場所を伝えられる、暗号と言うわけだ。


   「KC特務隊のハラカドです、放送用のマイクをお貸しいただきた…」


うぃびしゃぅおぅぇええん!


放送室……すなわち、親と逸れた迷子達を保護する『迷子センター』も兼任している。
ワタシ達は固定の休日がとれないので忘れていましたが、今日は日曜日、迷子センターが忙しくなるのも当たり前だ。


   「はい? お迎えですか? お名前を伺っても良いですかー!?」


人当たりの良さそうな…ここの責任者と思しき学生が子供たちの超えに負けない声で聞き返した。



しゅびどぅばじゅびどぅばああああ!



   「父母では有りません! ケ!エ!シ!イ!の特務隊です!」



あべしむだむだむまさにげどぉおおお!



   「ケエシイ地方から着たトクムさんですね、息子さんの名前をお伺いしてよろしいですか?」



うぃびしゃぅおぅぇええん!



   「聞け! 人の話を! ワタシは副社長モクバ様からの勅命でここまで来た! 放送用マイクを貸せと言ってるんだ!」


   「………なるほどな、亜紋の野郎が呼んだ助けってのはモクバだったのか、世界ってのは狭いな。」


   「え?」


学生は態度を豹変させて懐からナイフを探り出し、ワタシの左腕を深々とえぐった。


   「……くっ…。」


痛みに対し、ワタシは思わず膝を付いた。


   「ヒャーハハハハハハァ!
    オレに知られずに亜紋のクソガキに合流場所を伝えるには放送室が一番だからなァ!
    オレがここで待ち伏せするのは当たり前だぜェ?」


なおも強くなる子供たちの泣き声――気付くべきだった――KCが揃えた最高の人材がいて、子供達が大泣きしているはずが無い。
子供たちは見抜いていたのだ、この男が生粋の悪人だということを。


   「さぁて、オレをシカトして亜紋と合流するための合言葉を吐け。
    放送室に来たってことは、モクバと亜門で合言葉があるんだろ?」


   「言うわけが……」


ベキィッ!


男は手近に有ったパイプ椅子を握りしめ、遠心力を付けて俺の頭部を殴り付けた。


   「…っがッぁ!」


   「テメーはただ、職務質問を受ける不審者みたいに質問にただ答えてればいいんだよ。」


倒れたワタシの頭を踏みつけ、一層強くなる子供たちの泣き声に掻き消されないように、大声でかつ高圧的に喋る。


   「――貴様はどうして亜紋様を追っている? 彼に何か有るのか? その理由しだ…っグ!」


   「質問しているのはオレだ、質問に質問で返すとテストで0点なの知ってるか、マヌケ。」


ワタシは頭を踏まれながらも、腹筋と背筋を駆使して男の足ごと吹っ飛ばして……動けない、なんだ!? これは!?
伊藤の脚力自体は貧弱だ、まるで『休日は家でボードゲームのフィギア作ってます!』と大声で叫んでるような貧弱な圧迫。
それでも……瀬人様の製作した特訓メニューを5年間こなしているワタシが起き上がれない。


   「日本人って無駄な努力って好きだよな。 腕力だけじゃこの圧力は振り払えないんだよ。」


   「賭けます、賭けるのは俺の闇の力です――表に賭けます。」


ピ~~~ン。
子供たちの泣く声の中に混ざった小さな子供の声と、続けざまに響くコイントスの音。


   「まさか……『そこ』に居たのかッ!?」


   「――エスパー伊藤、俺もテメェと同じように推理してな。
    モクバが待ち合わせするなら放送室に来て呼び出すだろうってな――表だ!」


突如、ワタシの体に掛かっていた重圧が消えた。


   「俺の闇の力はお前よりも少ないが、それでも千年ペンタクルスで増やせば――お前の闇の力を一時的に無力化するぐらいはできるぜ。」


   「束縛しきれねぇ…っく……。」


   「行け! 黒スーツのオッサン!」


2人の会話の意味が分からないが、ここで学生風の男……いや、エスパー伊藤を叩かない理由はない。


   「うォルァあああああ!」


ばがァ!


   「っかはぁッ!」


伊藤の腹部に渾身の力で叩き込んだボディブロー…若干違和感が有るが、手応えは十二分。


   「……君が助けてくれたのかな? 少年?」


   「あんた、俺を助けに来てくれたんじゃないのか? 俺の名前は亜紋、モクバの友達なんだが。」


確かに、ヘリコプターの中でモクバ様に見せてもらった写真には似ている、だが……。


   「若すぎないか? 君?」


彼が写真そのままの姿だったならば、ワタシも伊藤もこの部屋に入った時点で気が付いていただろう。
しかし、写真では10代後半だった彼だが、目の前に居る少年は迷子ルームに居てもおかしくないぐらいの幼児である。


   「ん?……ああ、この姿な。
    返送の代わりに一回ギャンブルやってワザと負けて年齢を下げて…。
    ああ、オッサン、年齢貸してくれ、『良いよ』って言うだけで良いから。」


   「……? い、『良いですよ』?」


   「賭けます、賭けるのはオッサンの年齢7歳です、裏。」


ぴ~ん
少年はまたコインを投げて、受け取り…そこにはコインが表……なんだ? 急に体が軽くなった…?


   「…あ、ゴメン、外した、鏡を見てみな?」


ワタシは言われるまま鏡を見て――は!?


   「わ、若返ってる!? この姿…40代のワタシか!?」


   「……戻るにはオッサンの年齢を14借りて、それで勝てば良いんだけど?」


   「い、いや、ワタシはこれで良い!」


   「そ? じゃあ7歳を表に賭けます……よし、表…だな。」


一気に身長が伸びて、さっきまで大きかった巻くってあった袖や裾がピッタリと一致した。


   「君は…一体…?」


ワタシ達、KC特務隊は超能力やオカルトは信じてはいけない事になっているが…これは、KCの科学でも説明できない。


   「それよりもモクバと瀬人さんはどこに来ているんだ?
    エスパーにトドメをさせる人っつったら瀬人さんぐらいしか思いつかない。」


   「いや、今回は瀬人様は来ていません、モクバ様と特務隊のメンバーがワタシを含めて3人だけです。」


盛大に倒れこむ亜紋氏。


   「ウソだろおおおおおお! ちゃんと一緒に来てくれってモクバに言ったのにィィいいイイイ!」


   「どうかしましたか? 敵は…この伊藤以外にも居るんですか?」


   「居ねえよ、ただ……こいつはオッサンのボディブローぐらいじゃ倒せないってこ……」


刹那、ユラァァ、っと近くで何かが起き上がる感覚。


   「あ゛アァ…テメェ…しっかり腹がイカレちまったじゃねぇか。」


   「あ!? クソッ! 今回は起き上がるのが早いじゃねえかッ!」


何の前触れもなく立ち上がった伊藤、そんな…バカな……。


   「手応えは有ったぞッ!?」


   「俺もさ、ここに来るまでに何度かノックアウトしたんだけどよ。
    エスパーの奴、異常にバイタリティ高くてさぁ、トラックで轢き潰すぐらいのことをしても生き返るぜ?」


   「…轢いたんですか?」


   「いやいや、事故だって! 赤信号でなのに道路に出て、勝手に轢かれたんだからよ!」


なにか…なにか抜け穴は…そうだ、亜紋さんはここまで逃げてきたハズ!


   「亜紋さん、貴方はここまでどうやって来たんですか?」


   「答えは簡単、逃げの一手だオルァ!」


言って走り出した亜紋さん。


   「ちょ…それじゃ子供たちが人質に……」


   「ここまで見てて分かった! エスパーはプライドが高い! 子供や弱い奴を楯に取る事は無いッ!」


とりあえず信じて、ワタシもダッシュ…っぺぁ!?


   「にぃがぁ~すぅ~かぁ~。」


伊藤はワタシの下半身にしがみ付き、そのまま離さない。


   「っく……亜紋さん! まずお逃げください!」


   「安心しろ! 最初から助けられるとも、助けたいとも思わない!」


……なんだろう、自分で言う分には楽なのに、あそこまで断言されるとキツイ。


   「助けられない?……そうか、亜紋、テメェ、残りのコインが少ないんだな?」


伊藤の問いの意味も分からなかったが、とにかくワタシは伊藤の束縛から逃れるべく、両足に渾身の力を込め、伊藤を踏み潰す。


   「オラァ! オラオラオラ!」


   「っだ! ゲヒ! っぺぇ!」


蹴り飛ばしてるうちに、足から伝わってくる感触に違和感を覚えた。 これは人を蹴っている感触ではない。


   「……これは…まさか!?」


   「気が付いても、どうにもならねぇよ!」


この瞬間、伊藤はの首飾りが異様な輝きを放った瞬間、ワタシは意識を失った。


間間間間間間間間間間間間間間間間間間間間間間間間間間間間間間間間間間間間間間間間間間間間間
間間間間間間間間間間間間間間間間間間間間間間間間間間間間間間間間間間間間間間間間間間間間間


   「――妙だな。」


   「どうかなさいましたか? モクバ様?」


磯野に問われ、オレは考察を述べた。


   「ハラカドは剛三朗の頃からSPやってる爺様だけど…足は特務隊の中でも早い方だ、
    そのハラカドが行ってからもう40分は経つのにまだ亜紋を呼び出すアナウンスが聞こえてこない。」


   「そういえばそうッスね、ハラカド先輩に何かあったンスかね?」


   「放って置くわけにも行かないな、鰻睡、すぐに確認・そして情報を掴んだら無線機で連絡しろ。」


   「アイアイサーッス、ひとっ走り行ってくるッス。」


どっちが名前かすらよくわからない鰻睡バンスイ玖珂山クガヤマ、特務隊最年少23歳が走る。


   「それではモクバ様、我々は少々待機しましょう。」


   「……そうだな、休息は取れるうちに取った方が良い。」


カツーン カツーン カツーン カツーン

ごった返す数千、数万人の足音の中で、その音だけはやけに耳に付き、俺は体を反転し、振り返っていた。


   「ヤァ! 僕の名前はガジェソル君だよ! 星が四個だったのに、いつの間にか星6に為ってた可哀想な機会人間君だよ!」


足音が違うのも当たり前だ、マスコットキャラクターの足の裏には特殊な音のするパットが入っていて、モンスターの召喚音がなるようになっている。
疲れてんのかな、オレ。


   「あなたは新入りですか? 喋る時はもっと短く、かつ可愛らしい口調を使いなさいと上司に注意されませんでしたか?」


   「ヤァ、君達、僕とゲームしない? 僕はデュエルで使われないから最近はゲームしてないんだよ~。」


   「……お前の上司はどこの誰だ? 上司に直接―」


   「よせよ磯野、コイツもキャラクターを演じてる間に謝ったりできないだろ? ここはキャラクターを優先してゲームしてやるのが上司の対応だぜぃ。」


   「そ、そうですかな、モクバ様……それではガジェソルくんと私のジャンケン一本勝負を開始するッ!」


ノリノリじゃないか。


   『じゃーんけーん、ほい!』


磯野:パー
ガジェソル:チョキ


   「ヤァ! 僕の勝ちだね!」


   「負けてしまったぁああああ!」


……意外と負けず嫌いだな、磯野。


   「それじゃあ、魂を貰うよ! 罰ゲーム☆」


   「…え?」


キグルミが一瞬輝き、光が消えると同時に磯野は倒れ、ガジェソル君の虚ろな目に狂気が宿っていた。


   「ヤァ! 一緒に来てもらうよ! モクバ君!」


間間間間間間間間間間間間間間間間間間間間間間間間間間間間間間間間間間間間間間間間間間間間間
間間間間間間間間間間間間間間間間間間間間間間間間間間間間間間間間間間間間間間間間間間間間間


俺(亜門)はひたすら走っていた。
放送室で大分休めたので体力は問題ない、だが――特務隊を名乗るオッサンが瀬人さんは来ていないと言った時点で俺は勝機を失っていた。
コインはあと3枚、ハズれることを想定するとこれ以上は使えず、逃亡するにもペンタクルスは足りず、モクバと合流して、一緒に脱出する以外に選択の余地は無い。


   「なんだ、救護隊…か?」


この遊園地には似合わないリアルな白衣と担架、しかも担架は二組だ。
――こんな時の予感は、俺の意思に反して当たってしまう。
運ばれているのはモクバと、会ったことこそ無いが服装からして海馬コーポレーションの社員と思われる黒スーツ。
その場には、意識を失った二人の他に、壁にはスプレー缶か何かで書いたと思われるメモ書きで――『モクバといっしょにかえりたければ ちていコースターに一人でこい。』とこれ見よがしに書いてあった。
……まぁ、スプレーで漢字を書けとは言わない、だがそれでもマヌケに見えるんだからしょうがない。


   「ああああ! 磯野先輩! モクバ副社長!?」


人垣の中から一掃騒々しく騒ぐ黒スーツの青年、こいつもモクバの部下のようだが……あ、携帯電話出した、KCって書いてある、しかも基本色が白と青のブルーアイズカラー。


   「社長ッスか? オレッス、鰻睡ッス、大変なことになりました、副社長と磯野先輩が意識不明で…しかもハラカド先輩は行方不明ッス。」


電話の向こうからは怒鳴り声、結構離れているが聞き取れる。
……さて、俺はこの後…どうするかな……。


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