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「勝負だ! 俺と勝負して、俺が勝ったら殺し合いなんて止めろ!」

出会った瞬間に言ってきた。二度目。この島に来て二度目。
ありえないことだが、実際に目の前で起こっている。
一度目は背伸びをしているが、まだまだ体格も出来上がっていない一人の中学生。
次に、警報の音に導かれやってきた分校内
そこで今現在、出会った直後の少年。彼も中学生どころか小学生とも言えるほどの体格。
その小柄なドングリ頭の少年が発した言葉の前提には、既に目前にいる自分がこのプログラムに乗っているというものがある。
まあ、銃器を持っていたら、そう思われるかも知れないが
そんなもので、この男は判断していないと直ぐに分かった。
その小柄な見た目からは検討も付かない、銃器を恐れない男気
男の中で漢を売っているからこそ分かる、隠されたその度量。
七原秋也とはまた違う色だが同じことを言ってきた。
少年の言葉は軽くない。それは、同じことを言い切った七原を見届けたことで理解している。
殺すことが優先と分かってはいたが、男として勝負しないわけにいかなかった。
手に持つショットガンを降ろし、得意の空手の構えを取る。

「俺は花澤三郎……ゼットンでいい、名前は?」

目線は合わせない、周りの邪魔な椅子、机を蹴散らしていく。

「栄花段十朗……ダンでいいぞぉ」

語尾に特徴の残る声で返してくるが
先ほどの声よりも、こちらの声の方が地だと三郎は無意識に思う。

「……よし、こい」
「うおおぉぉぉぉ」

怒号と共に、栄花が突っ込んでくるが、簡単に避ける。
そして、丸太のようなハイキックを、容赦なく栄花の後頭部目掛けて蹴り出した。
どこか、ニブい感触が足元に伝わりながらも、小さな体躯は黒板へと叩きつけられる。
……一撃、男として最初から全力を出した。
傍目から見たら、勝負には見えなかったかも知れないが、七原とは一回り違う男として認めた証拠。
持てる力、全てを使って振り切った足。場合によっては、死亡しているかもしれないほどの威力だったはずだ。
その感触は自分の足にも届いている。

……それとなく、予想はしていた。だが、目前でその光景を目にするとやはり驚く。
簡単に言うと、目の前の男は立とうとしている。
足を震わせながらも立とうと、手を黒板に付きながらも必死に

「ま……まだまだぁ」

相変わらず、語尾は緩い。
だが、その姿に緩さは微塵もない。
地元でもその辺の奴は、この一撃で戦意喪失どころか、気絶する。
その一撃を喰らいながらも、戦意の衰えない、むしろ闘志が目に見えるようである。
その姿は、つい先ほど戦った七原秋也と被る。
栄花という人物と、己の中にある七原のビジョンが被さっていく。
遂に立ち上がり、体当たりを仕掛けてくる。
その姿も、ただの体当たりであるが七原のあの気迫の拳が背後に見える。
幾度となく、避けに避けて、動揺している間に当たった体当たり。
対して、痛みもなかったがそれを悟ったのか、今度は体勢を前かがみにし、頭を向けて突撃してくる。
そして、今度はその姿に七原の蹴りが被さっていく。
避けながらも数発の拳を当ててはいるが、これも七原と同様に効かない。
いや、効いているのだろう……だが、彼らは耐える。
彼らは意識を刈り取らない限り向かってくる。
それだけの精神を持っている。
最初にあの声で対決を挑まれなかったら、確実に誤解していたであろう、その容姿と声
七原もそうだった、普段出会っていたら間違いなく只のお調子者のガキと思っていただろう。
だが、二人の黄金とは言えないが、泥だらけの精神、喰らい付く精神
それは、鈴蘭高校名物、一年戦争を制した三郎であっても持ち得ないものだった。
だからこそ、それを断つには、再び己の得意技であり、最高の威力を誇るハイキックを当てる。
それしか倒す術はないだろう。
だが、もう一度頭部への蹴りを繰り出せば、今度こそ殺してしまうかも知れないという葛藤もある。

――殺す覚悟はできている

だが、どうしても戸惑ってしまう。栄花とその重なる七原を見ると、希望というものが薄っすらと見えるのではないか?
そう思ってしまう……人を殺すなんて、幼い頃からの良心が無意識に反抗する……
同校のカラス達も、きっとそっち寄りだ……そうだ、あの坊屋春道も恐らく……
負けよう……わざと負けてしまって、この二人と夢を見よう……そんな淡い妄想が頭を過ぎる。

「て、手加減なんかいらないぞぉ」

!!!
対面する目の前、体中の痣と違い、澄み切った瞳で訴えてくる。
彼は本気で来ている。これは男の勝負だと、手加減なんてものはいらないと全身から告げてくる。
……そうだ……殺すなんて話は次の話。
この勝負自体を汚すわけにはいかない。
伊達に不良はやってない。勝負に対しての純度は人以上に求める人種だ。
プログラムも、七原も、何もかも関係ない!
ただ、勝つ。勝つ為には刈り取る。
――栄花の意識を

二人の間の空気が止まる。
そして、沸騰する。

「うおおおおぉぉぉ」
「おおおおおおおぉぉぉぉ」



■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■


れんげの使用した拡声器の声を、掻き消す音量で鳴らし続けていた
警報機の音が止んで、どれ程の時間が経過しただろうか
その方向へと歩を進める二人の少女は
お互いの思いも違えば、体型も違う
それでも地を踏みしめ、一歩一歩と足を進めていた。

「どうやら、あそこから聞こえたようですね」

あそこと呼ばれた方向を覗くと
そこには、地震でも起きたら即倒しそうなほどに、脆く見える木造の建物が目に映った。
二人は、顔を見合わせるだけで互いの肯定を認め、その木造の建物……平瀬村分校跡へと進む。

分校跡の入り口を通過すると、二人の肌が何者かの気配を捉える。

「誰かいますね」
「ええ、そのようですね」

口調がかなり似ている二人
桂言葉と川添珠姫は二人とも剣士と言えるほどの実力者
その二人が、分校内にいる誰かの気配を感じることは当然のことであった。
そもそも、警報音の発信先の可能性が高い施設。
足を踏み入れる前から警戒はしていた。

「なんか、音が聞こえないですか?」

珠姫が左右を見渡し、桂へと聞きやる。

「確かに聞こえますね……この音は……」

何かが叩きつけられるような音
それも、重いもの。まるで人一人分の重さ。

「桂さん、急いで行きましょう! 向こうです」

珠姫は桂に声を掛けながらも、走り出す。
その疾走は正義の為。人が襲われているならば、自分は守らねばならない。
それが正義の―――正義の味方だから

そして、辿りついた教室の一室
そこのドアは開いており、中には珠姫の予想するとおり二人の人物がいた。

「うぅ……タマちゃん」
「栄花くん!」

珠樹が声を荒げるのも当然
目の前の級友、栄花段十郎は今にも死にそうなほど
身体中を腫らしており、顔周りには痣、目は既に色を失いかけ
黒板に背を持たれて倒れ込んでいた。

「……栄花くんをこんな目にあわせたのは貴方ですか?」

貴方ですか?
そんな問い普通ならば存在しない。存在し得ない。
このプログラム、この殺し合い、この場において対面する二人
片方はボロボロ、片方の拳にはしっかりとした血糊
問いを向ける以前の問題。聞くほうがおかしい。
しかし、珠姫は尋ねる。正義であるがゆえに問う。貴方ですかと

「はい、自分ですけど」

動きやすくする為か、黒板の周りの椅子や机は、その声の主の後ろに広がっている。
わざわざ用意されたかのような、黒板周りの空間
その中、軽く肩を揺らしながらも仁王立ちで返事を返す男、花澤三郎を強く睨み付ける。

「なんでこんなことを?」

睨み付けながらも再度の質問
桂の時と同じようなミスはしない為の確認。
また、誤解で人と対立してはならない。

「……ちが……いや……優勝する為です」

優勝……たった二文字
この二文字が告げる意味はただ一つ
栄花を傷つけた理由は殺す為
その理由他ならない。
これで相手の選別が全て終わった。
珠姫はそれを認めると、即座に手に持つ日本刀に力を込める。
正義の味方、正義を実行するときが今来た。

「じゃあ、私に切られても文句は言えませんね」
「ええ、確かにそうですが貴方では僕に適いませんよ」

未だ仁王立ちの三郎は、静かに珠姫に告げる。

「そんなことわかりません」

何かを見透かされたように告げられた言葉
その言葉を吹き飛ばすように、珠姫は声を噤む。

「まあいいです、その日本刀でかかってくれば分か」

―――カチャ

三郎の声を遮るように、後ろ
教室の後ろ扉ではない。
教室の後方でもない。
花澤三郎その人の真後ろから耳を刺激する音
そして、その音の発生源に存在する人物……桂言葉

珠姫も目に映っていながら気づかないほどの静けさ。
最初から教室にいた珠姫、栄花、三郎の三人が桂を認識したのは今このとき
日本刀を鞘から抜いたこの瞬間になって、ようやく桂の接近に気づいた。

「…ります。クソッ」

刀を抜いた桂を瞳に映したと同時に教室の隅へと駆け寄る。
いや、駆け寄るではない。逃走。
まさにその言葉が似合う姿で窓から外へと逃げ出していく。

「川添さん、追いますよ!!」

先ほどまでの静けさも一変、走りながら珠姫に叫ぶ。

「待ってください桂さん、栄花君の治療の方が先です」

追う必要はない。その点を実に突く指摘で桂の追尾を静止する。

「そうですか、まあ私も無理に追うつもりはありませんが……」
「ありがとうございます、栄花君気絶してるみたいで」

少し残念そうな気配はあるものの、顔の筋
表情というものを一切変えない桂は只、栄花を抱える珠姫を見つめる

彼女が見つめる視線の先にあるものは、自分と誠を重ねたものだろうか
それは誰にも分からない。彼女、桂言葉の眼の色は変わらない。


【G-3/分校内/1日目-昼】



【川添珠姫@BAMBOO BLADE】
 [状態]:健康 右頬と咽に薄い刀傷
 [装備]:二尺七寸の日本刀
 [道具]:支給品一式 確認済支給品0~1
 [思考]
1:栄花の治療をする
2:栄花段十朗、桑原鞘子、千葉紀梨乃、宮崎都と合流
3:言葉を監視する。もし誰かに危害を加えようとしたら……
4:人は殺さない、乗った人は無力化する。……だがどうやって?
5:一人も殺さず正義の味方として、このプログラムを破壊する。
6:花澤を危険人物と認識


【桂言葉@School Days】
 [状態]:健康
 [装備]:三尺五寸の日本刀
 [道具]:支給品一式 確認済支給品0~2 
 [思考]
基本:全ては誠くんのために。優勝狙いだが最終的にどうするかは誠次第
1:ひとまずは珠姫に従う
2:伊藤誠、清浦刹那、西園寺世界、加藤乙女との合流
3:川添珠姫を利用し尽くす
4:誠の無事と意思を確認するまでは積極的に戦わない
  ただし誠を害する可能性がある者は何をしてでも殺す
※誠以外の人間に対して心を閉ざしました。普通に会話はできます。
 色々と変化していますが、本質は変わっていません
※伊藤誠と合流するか、何か言葉にとって衝撃的な出来事があれば元に戻る かもしれません


【栄花段十朗@BAMBOO BLADE】
【状態】:重症 後頭部に強い打撲
【装備】:
【所持品】、デイパック、筆記用具、時計、コンパス、地図、狙撃用スコープ
【思考・行動】
0:………
1:分校やその近くで争いが起きた場合、なんとかしてそれを止める
  そしてその方法を考える。それ以外での接触はなるべく避ける
2:室江高のメンバーと合流する。



※その他の支給品は用務員室に、
 モシン・ナガンM1891/30及び予備弾35発は分校跡のどこかに隠されています





「はあ、はあ……彼女は……」

自分は覚悟というものを決めた。
その覚悟とは人を殺す覚悟。
民家においてきたハルヒ、七原
彼らは必ず殺す、他校の生徒も殺す。
そして、自分達、鈴蘭高校が優勝する。
その覚悟も決意も固めたはずだったが、栄花という男に揺らされた。
だが、先ほど自分の目の前に現れた少女。
彼女を感じて、現実を思い知った。
名前は知らない、逃げるときにもう一人の少女が名前を叫んでいた気がしたが
そんなものを聞く余裕すらなかった。
動作、仕草、表情、気配、そして何より……あの眼
目が合った瞬間に分かった。

「――――彼女は既に人を殺している」

あのまま、あと一秒でも突っ立っていれば
頭と胴体は一生のお別れをしていただろうと思わせるほどの殺意。
喧嘩慣れしているからこそ、分かるもの
喧嘩はメンチから始まる。目を見れば相手の強さ、器のでかさが分かるといっても過言ではない。
だが、あの少女は異彩。目を見た瞬間に人を殺していると理解できた。

相手が自分を貫くときに出す雰囲気や目じゃない
あの坊屋春道を筆頭とする、鈴蘭高校のヤロウどもの目とは違い
彼女の目は全てを刈り取る目、相手の素性や事情はどうでもいい。
自分の目的の為にならば、全てを刈り取り、そこに躊躇という言葉は存在しない。
ゆえに強い。もう一人の幼き少女とは真逆の性質。

最初に対面した少女からは、多少の覇気は感じたものの、殺意というものが一切存在しなかった。
あのまま、戦っていても殺傷力の高いあんな獲物では、まともな一振りもできないとわかっていた。
真逆の性質を持つ二人が行動をともにしている理由は定かではないが、それも他人事ではない。
……まだ足りなかった。
殺す覚悟はできていた……だが人に殺される覚悟が足りなかった。
殺意を持った相手と初めて対面してわかった。
自分に足りなかったもの、それはまだ人を殺せていないということが重要ではない。

殺すということは殺されるということ。
喧嘩をするときでも、勝つこともあれば、負けることもある。
お互いがそれを認めて殴りあうからこそ、その喧嘩という戯言が無意識のうちに自分達の中でランクを上げていく。
周りもその喧嘩、タイマンを認めて兄弟、舎弟を作っていく。
それが、この場では殺し合いになっている。他校の生徒を殺しても、周りの人間が認めてくれることはないだろう。
クソ生意気な大人達は笑顔で認めてくれるだろうが、鈴蘭高校の生徒、秀吉や春道らが認めるわけがない。
自分も意識の根底では認めたくない。
でも、それは最初だけ、生き残ればいつか分かるときがくる。
自分の今の行動が正しかった……いや、正しくはなかったが、助かったと喜べる時がきっとくる。
そして、その為にも、もう一度、殺すこと、殺されることへの覚悟も必要となる。
一目見て逃げ出した、あの少女の眼、あれこそが自分の求めるもの。
あの眼……あの瞳に自分もならなければ、この島で生き残れやしない。
まともな精神、自分が尊敬を抱く精神、そんなものは必要ない
憧れてもいいが、彼らの先にあるものは死でしかない。
理想と現実は違う。そういう意味でも、自分は彼女に脅威を感じたが、感謝もしている。
彼女が現れなければ、栄花と共に理想を追っていたかも知れない。
いや、本当は何度も揺れている。栄花に会わなくても、鈴蘭の猛者どもに会っただけで変わっていた可能性も
とにかく、彼女と遭遇しなければ、理想の道を選んだかもしれない。
最早、あの目をしている人物はこの島において、一人や二人では効かないだろう。
今、この決断を出している自分は正解であるはず。


鈴蘭高校一年戦争覇者としての正解ではない。
―――それは大東亜共和国に生きる一人の学生としての正解。

栄花と最初の少女は知り合い
ならば、あのグループが鈴蘭の生徒を殺したりはしないだろう
目の違う彼女は気になるが、あの二人なら死んででも止めに入るはず。
あのグループは放置で問題ない。
それよりも、一刻も早く理想を追う同校の生徒達を保護し
他校の危険人物を減らしていく。
極力無理はしないが、多少の無茶は必要不可欠

三郎は進む。
足取りは軽くも重くもない、只、作業的に進めるだけである。


揺れる、少年は揺れる
どこまでも何時までも揺れる
その少年が青年へと変わり
瞳を黒く濁らせていくとき
花澤三郎はゼットンへと変貌していく



【G-3/森の中/1日目-昼】


【花澤三郎@クローズ】
[状態]:健康 少し疲労
[装備]:ショットガン(SPAS12) アーミーナイフ
[道具]:デイパック、支給品一式、単車のキー、ランダムアイテム1(武器ではない)
[思考]
基本:仲間を生かして帰す
1:俺は――――
2:覚悟を決める
3:ハルヒと秋也はこの手で殺す



※三郎がどこに向かうのかは次の書き手さんにお任せします




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