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 早咲きの椿の花が、首を切られたようにぽとりと落ちた。苔むす岩の上で、
寒気のするほど紅く際立つそれに続くように、赤い液体が散っている。師走の
午後、覇気のない陽光はその温い赤を覚束なげに照らす。紅、赤、赤……辿り
ゆけば、鮮やかな道しるべの終わるそこで、二人の男が微動だにせず睨み合っ
ていた。

 一人は血塗れた日本刀を構えて立つ、長身の男だ。鋭い眼光。研ぎすまされ
た刃のごとき印象を与える彼は、まるで武士のようだった。その静かな、だが
曰く言いがたい威圧感のある佇まいは何の乱れも見せていないが、彼の左肩か
らは血液が滲みだし、制服の肩口を赤黒く染めている。そこを掠めた鉛玉に肉
を抉られた痕だ。深いものでないとはいえ、痛みを感じていないはずもなかっ
たが、彼は顔色ひとつ変えていない。

 もう一人は地面に片膝をついたまま、両手で小型の拳銃を構える金髪の男だ。
その銃口は間違いようもなく、自分の首筋に刀を突きつける男の左胸に向けら
れていた。鮮やかに染め上げられた前髪の隙間からのぞく眼光は、男の対峙す
る相手のそれとはまた違った強い光を放っている。この男もまた、言葉にうつ
せぬ苛烈な空気を纏ってそこに存在していた。刀を構える男からは背中側なの
で見えていないが、わざと短く誂えられた制服の右脇腹はスパリと裂けて口を
開けている。そこから見え隠れする皮膚には、浅いながらも刀に裂かれた幅十
センチほどの裂傷があり、血液がじとり、と染みだしていた。

 風に揺れる椿の葉の音と、鳶の鳴く細い声だけが、張りつめた静寂の中で奇
妙に響く。言葉のない二人の対峙は、ほんの数瞬前に始まった。そして彼らは
今、互いの隙を見出せぬままに動きを止めているのだ。

 この二人の男たちに何があったのか。そして今、何が起こっているのか。そ
れを知るには、時計を少しばかり巻き戻す必要がある。





 寒空にかかった太陽が、一番高い場所から滑り落ちた午後二時頃、銛之塚崇
は道を急いでいた。すでにその手で葬った二人の女たちを追いかける際、邪魔
をさせないために気絶させた須王環を、少し離れた場所に放置したままだった
からだ。須王のもとを離れてから、まださほどの時間は経っていなかったが、
誰かが気絶している須王に気づいて襲わないとも限らない。榊と神楽を追いか
けたあのときの判断が間違っていたとは思っていない銛之塚だが、草木に隠し
たとはいえ、須王の身を危険に晒したことについては幾分の後悔があった。

(……誰にも見つかるなよ、環)

 ひき結んだ口許からその言葉がこぼれることはなかったが、彼の胸をよぎる
のは悪い予感ばかりだ。人を殺めたばかりの彼だからこそ、襲撃の可能性を高
く見積もってしまう。銛之塚は知っているのだ。もし自分が、草むらに気絶し
て倒れている男を見たらどうするか、を。それが自分の仲間でなければ、銛之
塚は容赦なく殺すだろう。わかり切った事だ。

 重なる落ち葉をを踏みしだく銛之塚の足に力が入る。彼の心に、自らの手で
葬った二人の女たちへの哀悼の思いはすでになかった。いや……彼とて人の命
を奪うことにためらいが全くなかったわけではない。庶民の日常からはかけ離
れた生活を送っていようとも、所詮は一介の高校生である彼にとって、他者を
殺害するという行為は、容易なものであるはずがなかった……本来ならば、だ。

 銛之塚には目的がある。同じ学校の人間を生かし、皆で元の場所に帰る、と
いう目的が。だが、それは表向きに過ぎない。仲間を守り、無事に帰る……そ
れが彼の希望だというなら、彼は藤岡を失ったとき、もっと――有り体に言う
ならば、ショックを、受けてもいいはずだった。須王のように、彼女への自覚
のない恋心を抱いているわけではないにせよ、藤岡の存在はすでにホスト部と
いう組織にとって大きなものとなっていたのだから。

 にもかかわらず銛之塚は、さほどの衝撃を受けることもなく……あくまでも
冷静に、放送の内容に対処している。彼にとって、彼女が欠けたことは「どう
でもいいこと」ではなかったが、大きく動揺するほどのことでもなかった。そ
れはつまり、銛之塚の真の目的が、「皆で帰る」ことではない、という事実を
示唆している。

 この戦いの始まった当初、銛之塚は、埴之塚の姿がこの島にないことを確認
した。つまるところ、彼は自らの主君をこの場で守る必要がなくなったのであ
る。だからこそ、彼の目的は「戦ってでも桜蘭の人間を守り、皆で帰る」とい
うものに姿を変えた。

 ……そう、彼が主君のもとに返るためには、仲間を多く生き残らせる必要が
ある。だから彼は他者を排斥してでも守るのだ、自らの仲間を。生まれながら
の従者たる彼にとって、主君のもとへの帰還とは、唯一にして崇高なる使命で
ある。「ひとごろし」という、高く厚い壁を越えてでも、遂げねばならぬほど
に。

 『島の中の全ての人間を客として扱う』『誰も傷つけるな』、と金髪の王は
言った。銛之塚はその言葉に頷かず、桜蘭生還の切り札となることを選んだ。
銛之塚の主君はここにいない埴之塚ただ一人であるから、彼は王たる須王の言
葉にすら、従う必要はないのだ。

 すでに銛ノ塚家と埴之塚家とは親戚であり、法律的には彼らの間に主従関係
などない。とはいえ、彼の身体に流れる血はその主従関係を破ることを良しと
しなかった。もはや遺伝子レヴェルで刷り込まれている従者としての本能は、
かくも強く彼を突き動かす。無論、彼の主君もまた、桜蘭の他の仲間が無事に
帰ることを望むであろうから、その意味でもできる限り仲間を守る必要はある
のだ。が、最終的には一人になったとしても、自分が主君のもとに帰れるのな
らそれでもいい……と銛之塚は心の奥底では考えている。ただし、それはあく
までも無自覚に、だが。

 本能の声を聞いて、榊と神楽を迷うことなく殺した彼は、自らの使命を果た
すために、すべきことをしたに過ぎない。その崇高な使命のために捨て石とし
た命を、なぜ悔やんだり、悼んだりせねばならぬというのか。死んだ命には、
それだけの価値しかない。心をよせるだけ時間の無駄だ。それよりも、自分の
守るべき者のもとに急ぐことが先決、そう銛之塚は考える。この場において、
そして埴之塚の従者として、全くもって彼は正しい。正しいが、それはもはや、
人間の持つべき何か大切なものを失った姿といえるだろう。それを咎めうる者
は、まだ……目覚めない。

 金髪の王はトンネル脇の草木に抱かれて、失意の中で静かに眠っていた。そ
こに現れた悪魔もまた金髪である事実を、もうすぐ銛之塚は知ることになる。





 「……よっしゃ……ヤルか」

 そう呟いてから、三橋貴志の手が倒れている男の喉元に伸びるまでは速かっ
た。もとより、腹が決まってしまえば無駄に迷ったりはしないのが三橋だ。こ
ういう場合、逡巡と言う言葉は、彼の辞書にない。

 手を頚にかけながら、三橋は自分と同じ金髪の男の顔を見やる。睫毛の長い
優男だ。男の顔立ちについては何ら感じるところもなかったが、自分が殺す人
間の顔くらいは覚えておこう、と三橋は思った。きっと自分は大阪の顔を忘れ
ない。それと同じように、この優男の顔も忘れないでいよう、と。

(あー……何つーか、ムニッつーかグニッつーかゴリッつーか、こう、気持ち
ワリーな、これ……)

 かつて下らない小物の命を奪いかけたときの三橋は、頭に血が上っていた。
おかげで、その男の首の肉の感触などは全くその手に残っていない。今は生温
い体温と、男の薄い皮膚の感触が手のひらから鮮明に伝わってきている。気管
が親指の下でグリュ、と逃げるのを感じて、何とも奇妙な心持ちになった。一
体自分は何をしているのだろう、三橋は思う。この男を殺すべきなのは確かだ
し、音も返り血も避けられる絞殺が方法として間違っていないのも確かだ、だ
から迷いはしないが、嫌悪感は拭えなかった。徐々に込める力を強くしていく
と、三橋の親指のある場所よりも上のあたりから、男の皮膚が次第に赤黒くな
ってくるのがわかる。それがどうにも気味の悪いものに思えて、少しばかり彼
は手の力を緩めた。

 ……そのとき、手のひらの下で喉元が不自然に動いた気がしたのだが、それ
を訝しむ暇など彼にはなかった。背中に尋常ならざる殺気を感じたからだ。

 すぐさま両手を優男の首もとから離した三橋は、後ろを振り向かなかった。
その一瞬が命取りになることを、本能が彼に教えている。何かが振り下ろされ
る、その気配。反射的に態勢を低くし、左に飛ぶ。鋭い切れ味の何かが、右脇
腹を擦っていったのを感じたが、その痛みを気にしているような場合ではない。
身体を捻って足を引きつけながら着地してすぐ、彼は敵の方向へと向き直った。
ポケットから素早く引っぱり出した自分の武器を即座に構え、力いっぱい引き
金を引くことも忘れずに。

 ズガァン、と銃声が響く。刀を振り抜いた直後の、わずかに隙のできた銛之
塚の左の肩口を、三橋の銃弾が抉りとる。この小型拳銃の撃った瞬間の反動は
それほどのものではないが、照準をきちんと合わせる間もなく引き金を引いた
ためか、銃口が上を向いたようだ。

(チクショウ、しくじった……!)

 左胸を狙った銃撃が上に逸れたことを悔やむ三橋の隙をついて、再び剣を構
えた銛之塚の冷たい眼が彼を見下ろす。けれども、首筋に銛之塚の冷たい刃が
触れかけたときにはもう、三橋もまた相手の左胸に照準を合わせ終えていたの
だった。





(熱、い……)

 肩を撃たれた、その衝撃はかなり強かった。銃で撃たれたことなど、さすが
の銛之塚にもない。痛い、というより熱い、と感じる。血が流れだすのを感じ
ながら、しかし身体は勝手に刀を構えていた。そうでなければ、二発目の弾丸
がはなたれて、すぐさま死んでいただろう。

「……」

 しくじった、と銛之塚は胸の内で呟く。実際に口に出すことはしなかったが、
その声のない呟きには、ある種の驚嘆が滲んでいた。この謎の金髪男の恐るべ
き反射神経は、高い運動能力と戦闘力を誇る――その彼でさえ主君たる埴之塚
には及ばないのであるが――銛之塚にとってすら、驚きの対象であったのだ。

 地面に横たわる須王の身体に跨がり、首もとに手を伸ばしていた金髪――三
橋貴志――は、完全に銛之塚に背を向けていた。その無防備な背中を見た銛之
塚は、声を上げて須王に触れるのをやめさせることよりも、ひとおもいに葬っ
てしまえばいい、と考えた。そのほうが効率がいい、そう思える程度に、三橋
の背中は隙だらけだった。これなら、離れた場所から銃で撃ったりするより、
切りつけた方が確実だ……丁度、神楽を葬ったときのように。あのときも銃は
何発も外したが、刀を使ったときは一瞬で切り伏せたではないか。銃の腕に覚
えなどないが、竹刀といえど、剣の腕ならば覚えのある銛之塚の判断は、そう
したものだった。

 ……そして、すぐさま彼は、できるだけ気配を消して素早く三橋に近づく。

 銛之塚は、まるでよどみのない――それはもはや美しさすら感じさせた――
なめらかな動きで、必要な限り深く踏み込み、素晴らしいスピードで三橋の背
中に向けて刀を振り下ろした。本来、避けることなどできないはずの間合いだ
った。実際、銛之塚は剣を振り下ろしたとき、すでに殺害を確信していたほど
だ。刃が閃く残像さえ残りそうな、鋭い剣さばき。それにもかかわらず、銛之
塚の剣は布と皮膚を裂いただけで、虚しく宙を切った。

(馬鹿、な……!)

 ……まさかこの男、武道か何かの経験でもあるのだろうか。銛之塚は瞬間的
にそう考えたが、すぐにそれを否定した。もしそうした経験があるというなら、
あんなに隙だらけの背中を人に晒したりはしないだろう、と思ったからだ。信
じがたいことだが、この謎の金髪男は、自分が絶対だと感じた間合いですら仕
留められぬほどの速度で「ただ動いた」のだ……銛之塚はそう結論づける。そ
してその推察は正しい。三橋は、生来の反射神経に起因するスピードという能
力において、銛之塚を上回っていたのだから。いみじくも彼はかつて、ある敵
を前にしてこう宣ったではないか……『速いだけのパンチなら、いくらでも打
てる』と。

 三橋貴志は、武道も格闘技もやったことのない、ずぶの素人だ。ただ、生ま
れつき驚異的な反射神経と運動能力とを備えているだけなのである。銛之塚が
その身体に染込ませている、剣の心得のごときものは、三橋にはない。せいぜ
いが赤坂理子の家の道場で真似事をしたくらいで、そのときも結局は我流の喧
嘩に持ち込んでしまった三橋だ。剣と剣の勝負なら、初めから銛之塚に軍配が
上がっていただろう。修練の経験を持たぬ彼の身体は、銛之塚のように、その
瞬間瞬間での「正しい」型を覚えてなどいはしないのだから。

 だが、銛之塚が刀を振り下ろした瞬間、三橋のやるべきことはまずそれを避
けること、そしてすぐ反撃すること、その2つだけだった。だから三橋の身体
は勝手に動いたのだ。今そこにある危機を、最も高い確率で回避するために。

 刃の閃いたそのとき、三橋の身体が、いや、その身体を構成する細胞のひと
つひとつが、最速で反応した。右から左へと振り下ろされるその刀の軌道を避
けるために、三橋の本能は、自然に彼を左前方へと低い姿勢で飛ばせる。身体
を捻って地面に左から着地したときにはすでに、両足を胴体に引きつけていた
から、彼は瞬きほどの間もおかずに態勢を立て直した。片膝を立てて銛之塚に
向き直った三橋の姿に銛之塚は、背筋を冷たいものが駆け上がる、という感覚
を生まれて初めて味わった。

 ……確かに三橋は、彼の主君たる埴之塚に比べれば弱いだろう。本気の埴之
塚なら、そもそも銛之塚に背中などとらせないに違いない。だが、いくらあの
規格外の強さの人物を毎日眺めている銛之塚とて、その相手と本当の意味での
命のとりあいなどしたことはなかったし、する必要もなかった。埴之塚は彼に
とって、仕える相手でこそあれ、敵対する相手ではないのだから。今まで彼が
対峙してきた相手の中で、ここまで銛之塚を心胆寒からしめる男など、一人も
いなかった。

 初めて知る類の恐怖と、振り下ろした剣が獲物をしとめそこねたことに銛之
塚が気をとられた、そのほんの僅かの間に、三橋はポケットから銃を引っぱり
出し、引き金を引いてみせた。それは三橋にとっても、まだたった一度の経験
しかない行為であったから、急いで撃ってなお的に当てる、などという離れ業
は望むべくもない。かなりの近距離であったにもかかわらず、その銃弾が逸れ
たおかげで、銛之塚は生き延びた。そして逆に、銃を撃ったあとの三橋にでき
た一瞬の隙をついて、再び剣を構え、三橋の首に突きつけたのである。さすが
に首を刎ね落とすことまではかなわず、倒れている須王の脚を間に挟んで左右
にわかれたまま、両者睨み合いとなった。

 ここで話は冒頭に戻る……息のつまるような対峙はしかし、眠れる王の覚醒
によって、ある結末を迎えることになった。





 喉を押しつぶされる強い痛みと、それが急に薄れる感覚に引かれ、須王環の
意識は僅かずつ浮上した。初めは事態が理解できなかったし、ゆっくりと瞼の
開かれた目にも、青い空しか見えなかった。何が起こったのだろう、と回らぬ
頭で思考を始めたそのとき、すぐ近くで響いた不穏な音――当時の須王にはわ
からなかったが、それは三橋が銛之塚を撃った音だった――で、須王の意識は
完全に覚醒する。咄嗟に起き上がろうとしたが、身体は意識よりも回復が幾分
遅れた。金縛りにあったかのように動かない四肢にゾッとしながら、意志に従
って動く眼球だけで、須王は音の響いてきた足下の方を見やる。

 その狭い視界にまず飛び込んだのは、血まみれの日本刀とその持ち主の銛之
塚の姿。三橋の金の髪も無論目に入ったが、地面に寝たままの彼の視野におい
ては、片膝をついた低い態勢の三橋ではなく、立っている銛之塚の方が先に目
に映る。しかもその視認した相手がよく知る人間であり、つい先頃、自分の延
髄を強打して「お客様」を追いかけていった銛之塚とあっては、彼の意識がそ
ちらにばかり捕われるのも無理はない。自然、須王の視線は、血に染まった日
本刀の刃から銛之塚自身へと移り、そしてもう一度刀身を柄から先へと辿った。

 ……その抜き身の刃が、今にも金髪の男の首を刎ねんと押し当てられている
ではないか。須王とて、金髪の男が銃を構えているのに気づかなかったわけで
はないが、立っている銛之塚と、膝をついている男との体勢の差からしても、
そのときの彼の目に、金髪の男は苦し紛れに銃口を向けている、というふうに
しか見えなかった。

 覚醒したばかりの意識、寝ていたために狭くなっていた視野、神楽と三橋の
血を吸って赤に染まった日本刀、銛之塚が須王の左の足許に立っていたが故に
見えなかったその肩の負傷、逆にそのためにはっきりと見えてしまった三橋の
首に突きつけられている刃、そして、銛之塚が須王の命令を聞かずに二人の女
を殺すために追いかけた、その事実。

 それら全てが須王の認識にフィルターをかけた。すなわち、銛之塚がこの金
髪の男を襲っている、と須王は瞬間、思い込んだ。まさかその金髪男が、自分
を先ほどまで襲っていたなどとは、知る由もない。いまだ意識に繋がり切らぬ
身体をほとんど無理矢理起こし、つぶれた声で須王は叫ぶ。

「っ、ダ、ぇだっ、銛先ぱ……っ!」

 言葉になり切らぬその叫びはしかし、二人の男の膠着状態を引き裂くには十
分だった。男たちはどちらも一瞬、隙をつかれた格好で視線を須王へやる。人
間は予測しない物事が起こると、どうしてもそちらを見てしまうものだ。彼ら
もまた、例外ではなかった。とはいえ、三橋は自分の首の左横に触れている刃
の感触で、ハッ、と事態を思い出す。そしてもう一度、対峙していた銛之塚へ
と目をやった。

 ……銛之塚の視線はまだ、三橋に戻されていなかった。自分の名を呼ばれた
ことについ反応してしまった銛之塚は、ほんの僅か、現状に復帰するのが遅れ
たのだ。それをみすみす見逃す三橋ではない。刃から首を反らしつつ、躊躇う
ことなく彼は引き金を引いた。

(今度こそ当たりやがれ、チクショウ……!)

 そう、今度こそ、弾丸は真直ぐに銛之塚の心臓をめがけて飛んでいった、は
ずだった。それが的を外したのは、三橋が照準を合わせそこねていたからでは
ない。銛之塚が三橋を殺害しようとしているのを止めようと必死になった須王
の動きが、邪魔をしたのだ。

 必死で起き上がった須王は、三橋が引き金を引くよりも先に銛之塚の腕に縋
りついていた。その重みで銛之塚の身体は右に傾く。そのために三橋の銃弾は
狙った心臓を大きく左に外し……銛之塚の左の二の腕の中腹に突き刺さり、神
経を傷つけて骨を砕き、止まった。その衝撃で銛之塚の身体は後方へと数歩後
ずさり、両手で握っていたはずの刀から、神経をやられた左腕が外れる。咄嗟
に銛之塚は、腕に絡んだままの須王を右手の力だけで振り落とし、必死で三橋
の首に向けて刀を振った。斜めに体勢が崩れたままのその一撃を、身体を縮め
ることでギリギリ避けた三橋は、三度目の正直、とばかりに銛之塚の胸めがけ
てまたも引き金を引いたが、それはまた、須王によって妨げられる。

「銛、せ、ぱっ……!」

 体勢を崩していた銛之塚の身体を守るように、須王は立ちあがって彼の前に
躍り出た。銃弾に背を向けた須王は、右の肩甲骨のあたりを撃たれ、あまりの
痛みに意識を飛ばす。

「……っああ!」
「環っ!」

 須王の悲痛な叫びに、銛之塚の彼を呼ぶ声が重なる。そのまま須王の身体は
銛之塚のほうへと倒れ込み、その重みを支える形で、銛之塚は地面に仰向けに
倒れ込んだ。

 ……そんな好機を、金髪の悪魔が見逃すはずもない。

 三橋はすぐさま、折り重なって倒れた2人の上にのしかかる。最後の抵抗と
ばかりに銛之塚が刀を持ったままの右腕を振り上げたとき、三橋はすでに銛之
塚の眉間に銃口を突きつけていた。

 くぐもった銃声が響く。小口径の非力な銃弾ではあったが、ぴたりと皮膚に
銃口をあてたまま撃ち出したそれは、銛之塚の前頭骨を砕き、三層の髄膜を突
き抜け……前頭葉の中間を、両脳の内壁を傷つけながら真直ぐに突き進み、間
脳で止まった。一瞬、銛之塚の身体はぶるりと大きく痙攣し、振り上げた右腕
がぐらりと傾ぐ。刀を離さぬままのその腕は、ド、と音をたてて地面に叩き付
けられた……それが、忠臣・銛之塚崇の、最期だった。





 4発の弾丸を失いながらも、強敵であった銛之塚を倒した三橋は、よろよろ
と立ちあがる。不可抗力とはいえ、目立つ音を上げすぎた。早くこの場から立
ち去らねばならない、と彼は思う。しかし、さすがに戦闘の精神的なダメージ
が大きかった。肉体的にはさほどの傷は負っていないが、あまりにも激しい、
極限の攻防だった。三橋は、緩慢な動作で、脇に放り出したままになっていた
デイパックから水を出して口に含む。それでやっとひと心地ついて、先のこと
を考えはじめた。

(……チクショウ、すげー疲れた……あー……つーか、もう、これで3人かヨ、
 信じらんねェな……)

 春日歩を無学寺で殺害してから数時間、このほんの短い時の中で、これだけ
の数の他者を葬った自分に、三橋は愕然とする。今更のように、春日によって
つけられた右腕の傷がチリリ、と痛んだ。春日の命を奪って以来、胸の奥に宿
ったままの青い炎のような怒りが、また彼を包む。

(……こんなマネさせたヤツらは、絶対許さねェ)

 自分の誇りに傷をつけた、この下らない殺し合いを始めた奴ら。全部終わっ
たら、そいつら全員に絶対に復讐してみせる。三橋はその誓いを新たにした。
失われたものを取り返すためではなく、失った代償を相手に払わせるために。
そして、自分の誇りとすでに奪われた仲間の命、それ以上のものを何も失わな
いために。

「……おい、理子、お前……どこいんだよ、バカ女」

 ぼそり、と呟く三橋の頭にぼんやりと浮かぶのは、なぜか赤坂理子の怒った
顔だった。自分で思い浮かべるその顔に、チッ、かわいくねェ女、と悪態をつ
いたあと、ブン、っと一回頭を振って、倒れたままの男2人を見やる。これか
らどちらに向かおうか、考えているうちに、自分の右手の銃に視線がいった。

(あー、結構弾撃っちまった、武器足りねえ……)

 彼の持つFN M1906は、装弾数がマガジン内の6発と、薬室内の1発
……つまりは7発だ。そのうち1発を春日歩に撃ちこみ、今4発を使ってしま
った。となると、この銃にはもう、弾が2発しかないことになる。三橋自身は
この銃の装弾数までは知らないが、何となく拳銃の弾の数というものは5~6
発くらい(これは割合一般的な認識と言えるだろう)、とイメージしているの
で、そろそろ弾がなくなりかけていることくらいは何となく理解していた。予
備の弾もないので、こうなると新たに何か武器があったほうが良さそうだ、と
彼は考える。

(どうすっかな……あー、でもあの刀はねーワ)

 銛之塚がいまだ、握りしめたままの刀に三橋は目をやる。血まみれのそれを
持って歩く気にはさすがになれない。背中の傷が痛むのを感じて、彼は眉をひ
そめた。あの血のつき方では、どう考えても、自分以外の人間も切っていたに
違いない。誰のものかもわからない血液がまとわりつく刀というのは、どうも
ぞっとしなかった。


 そこで三橋は、転がったままの須王と銛之塚のデイパックに手をつける。武
器が入っていないか、探すことにしたのだった。まず手をつけたのは、須王の
デイパック。中から、彼は手つかずのままになっている紙包みを発見した。

(何だ、こりゃ……)

 べりべりと紙を剥がしてみると、何やら棒状のものが出てくる。手でさわっ
た感触は、どうも羊羹か何かのような、微妙な柔らかさだ。全部外の包み紙を
剥がし終えてみると、それはなんと、ダイナマイトであった。

「お、おおー……」

 意外なものの登場に、三橋は奇妙な感嘆の声をあげる。包みの中にはそれが
3本、綺麗にゴムひもで結わえられて入っていた。せっかくなのでこれはもら
うことにしよう、と三橋はいそいそと、それを自分のデイパックに移す。それ
から他のものも確認してはみたが、須王の支給武器はこれひとつだったようだ。
ついでに食料と水も拝借して、銛之塚のデイパックに移る。

 こちらは、開けたとたんに拳銃2丁と予備弾が顔を出す。三橋はそれらを手
にとると、予備の弾丸がS&W M10のものであることを確認し、弾数の多
いそちらを制服のパンツの右ポケットに突っ込み、尻のポケットに予備弾を突
っ込んで、自分の持っていた春日の銃とグロック17を、デイパックのすぐと
り出せる場所にしまい込んだ。他に出てきたトランシーバーは、持って行くか
どうかで迷ったが、サイズが大きいことと、武器にはならないことを考慮して、
そのままにしておくことにする。さらに3人分の水と食料も確認したが、須王
の分をすでに手に入れていた三橋としては、これを全部もって歩くのは面倒だ
と感じたため、一食分だけをとり出すと、その場で腹ごしらえをして、あとは
そのままにした。

 そこまでやったあと、簡単に背中の傷を治療して、三橋はデイパックを背負
う。銃声を聞いて駆けつけてきた誰かとはちあわせたりするのは、今の疲労を
考えれば避けたいところだった。後ろを振り返ることなく、彼は早足で歩き出
す。赤らみはじめた陽の光が、彼の金の髪を照らした。その行く手に、何があ
るのかはまだ、誰も知らない。


(Eー7 東崎トンネル付近 一日目/午後)
※このあとどこに行くかは、あとのかたにお任せします

【三橋貴志@今日から俺は!!】
【状態】右腕付け根に刺し傷(軽傷だが少し痛みはある)
    背中の右側に幅十数センチの切り傷(軽傷だが痛みはある)
    どちらもひとまずの手当て済 
    精神的疲労(大) 静かに深く怒り 表面的には精神安定
【装備】S&W M10(6/6)、S&W M10の予備弾(14)、鉄扇(重さ600g程度)
    グロック17(5/17)、FN M1906(2/6+1)、ダイナマイト
【所持品】支給品一式、シュノーケル、水中ゴーグル、十徳ナイフ、割り箸一膳
     水と食料のみ2人分
【思考】
基本:
軟葉高校の他の仲間たちはどう考えても人殺しなどできない。
だから、仲間を守るためには、他の学校の人間を殺すことも仕方ない。
全てが終わった後、プログラムの関係者全員に復讐する。

1:疲れた
2:腹一杯で満足
3:これからどこに向かうか考える
4:あいつら(坂持)に復讐する方法を考える





 須王環が再び目覚めたのは、三橋がその場を去ったあと、しばらく経ってか
らだった。三橋はあの戦いの最中、声を上げて意識を失った須王が死んだもの
と思い込んだが、実際には須王の命はまだ、繋がっていたのだ。彼の傷は致命
傷ではなかった。弾が入ったままの右肩甲骨の傷は、重傷であるにはちがいな
いが、命に別状はない。銃弾が骨で止まったおかげで、臓器に傷はついていな
かった。あのとき、彼はあまりの痛さで気を失ったに過ぎない。全く間抜けな
話ではあったが、おかげで三橋は彼を結果的に見逃すことになったのだ。

 ふらつく身体を支えて起きあがった須王は、自分の体の下にあった銛之塚の
遺体を見て、愕然とする。結局自分は銛之塚を守れなかった。いや、自分が、
銛之塚崇を殺したのだ。その苦い思いは須王を酷く苛んだ。

 三橋が銛之塚に向けて2発目の弾丸……つまりは、銛之塚の左腕を殺したあ
の弾を撃ったとき、須王は自分が状況を読み違えたらしいことに気づいた。も
とより頭の回転が速い彼は、ほんの一瞬前の自分が、様々な要因が重なったと
はいえ、とてつもなく大きな判断ミスを犯したことをすぐに理解した。

 銛之塚の刀を首に突きつけられていた金髪男は、苦し紛れとはいえ、銛之塚
を撃てる種類の人間であったのだ、そう認識しなおした瞬間、彼は縋りついて
いた腕から振り落とされる。そして銛之塚の一撃が空を切り、三橋がまたも銃
を構えた、それを見るか見ないかのタイミングで、須王の身体は銛之塚をかば
うように動いた。

 ほとんど無意識に身体が動いてそうしたのだったが、一度は銛之塚の命を救
えたものの、最終的には……須王の身体を支えた銛之塚が地面に倒れ、そこに
三橋が乗り上げて眉間を撃ち抜いたのだから、須王が銛之塚の勝機を奪った、
という言い方に語弊はない。

「もり、せんぱ、い……」

 須王の目から涙がこぼれる。仲間を守れなかった。守れないどころか、自分
が殺したようなものだ。この島の全ての人を「お客様」として扱って、全ての
人を救い出そうと決めた自分の、その判断は間違っていたのだろうか。自分の
その考えが、銛之塚を殺したとは言えないか。須王は自分を責める。

 王は傷ついた。深く、深く傷ついた。止めどなく流れる涙にぶれる視界の向
こうで、銛之塚はもの言わぬ骸となっている。その脇に転がる黒いデイパック
に、一瞬視線をとられた須王は、ハッ、と我に返った。

「あれは……!」

 三橋は、二人の荷物を引っ掻き回したあと、デイパックの口も締めずに放置
した。銛之塚のデイパックからは、彼が須王のために持って帰ってきたトラン
シーバーがとび出していたのだ。すぐにそこまで移動した須王は、それを起動
させてみたものの、トランシーバーというものの特性を思い出して、再びうな
だれた。トランシーバーは、相手方がそれに対応する受信機を持っていなけれ
ば、連絡を取ることができないタイプの通信機だ。つまるところ、彼の望む、
政府側との交渉には使えない。

 とはいえ、これを銛之塚が持ってきたのは、間違いなく自分のためだ、と須
王にはすぐ理解できた。通信手段を欲しがった自分のことを考えて、彼はこれ
をわざわざ持って帰ってきてくれたのだろう……それなのに、自分は。またも
落ち込みかけた須王だが、トランシーバーを目にしたことで、当初自分がしよ
うとしていたことを思い出し、何とか精神の安定をとり戻した。

(……そうだ、この島の全員を、救ってみせるんだ……キングとして!)

 今、ここで自分は大切な先輩の命を、自分の判断ミスがもとで失った。しか
し、だからといってそこで泣いて喚く、それが王のすることであろうか。違う。
ひとりの兵が倒れたとき、それにうちひしがれて心折れるようなことがあって
は、王として立つことはできない。どれほど傷つこうと、どれほど悔やもうと、
王は、人の上に立たねばならないのだ。それは王として生まれたものが、望む
と望まぬとに関わらず……果たさねばならぬ、使命であった。

 銛之塚を殺した男。あの金髪の男のことを、須王は確かに憎いと感じた。だ
が、結局は……こんな殺し合いの場に自分たちが放り込まれる、その状況以上
に憎むべきものなどありはしない。ならば、金でも、権力でも、何でも使って
この場を抜け出して……こんな状況をつくり出した人間には、それ相応の償い
をさせねばならない。何としても。

 奇しくも、須王は三橋と同じ答えを掴んでいた。この場を抜け出し、この場
に自分たちを誘い込んだ人間に、償いをさせる。全く同じ答えでありながら、
須王のそれはさらに懐が深かった。三橋は、全てを殺し、抜け出して……その
上で全てを償わせよう、そう考える。それに対して、須王は全てを救い、抜け
出して……その上で全てを償わせよう、そう考えていた。

 ……須王環の二つ名は王であり、三橋貴志の二つ名は悪魔である。光り輝く
黄金の髪をした二人の男は、まさにその名にふさわしく、この島で生きている。

 須王は背の傷の痛みに耐えながらも、優雅に立ちあがって腕を組んだ。彼は
傷ついた心のままに、何とか立ちあがってみせたのだ。もう一度、王として。

(……これからまずどうすればいいか、それを考えないといけない。そうだ、
 何よりも、我が娘ハルヒを捜さなければ。それから、通信手段の確保。でも、
 まずその前に、銛先輩を……)

 またも流れ出しそうになる涙を堪えながら、須王は銛之塚に向き直る。その
右手に握られたままだった刀をそっととりあげて、左手とともに胸の前に持ち
上げた。あまりうまく両手指を組ませることはできなかったが、足の向きを直
して、見開いたままだった目を閉じてやれば、それなりに棺の中の遺体のよう
には見える。顔に流れ落ちた血をそっと拭いてやり、傍に咲いていた紅い椿の
花を、落ちないように静かに手折ると、その痛々しい眉間の銃痕の上に置いて
やる。

「こんなことしか、できないけれど……」

 呟きながら、須王は銛之塚の傍らに跪き、黙祷を捧げた。言葉にすることす
らできぬ重たい後悔と、深い悲しみ、言い知れぬ怒り、今までの彼の何もかも
に対する感謝……その全てを、言葉のない祈りで捧げた。

 それから須王は、もう一度銛之塚の荷物に手を触れる。トランシーバーだけ
をとりだそうとして、自分の荷物の中に食料と水がないことに気づく。銛之塚
の荷物には逆に、数人分のそれが詰められたままだ。須王は少し考えたが、人
の食料に手をつけるというのは、いくらそれが亡くなった仲間のものとはいえ、
好ましいこととは思えなかった。銛之塚の荷物の口を締めると、先ほど整えた
遺体の脇に置く。

 ……そして、この先の道を決めようと、自分の荷物から地図を引っぱり出し
たとき、それは起こった。

 銛之塚は放送を聞いて、須王の参加者リストに死者の名と禁止エリアを記し
たあと、その二つを重ねてデイパックに戻していた。だから、須王は地図を手
にとろうとしたとき、同時に参加者リストも引き出してしまった。うっかり別
の紙も出してしまった、と思った須王は、それをバッグに戻そうとして……、
見て、しまった。

 ……藤岡ハルヒの名前に、鉛筆で黒々と、線が引かれているのを。

 須王は、瞬間、心臓が止まったかのような衝撃を受けた。なぜ、こんなこと
が。藤岡が死んだなんて、彼は知らなかった。聞いた覚えもない。嘘だ、これ
は、悪い冗談だ、そう思った。そこで、ハッ、と気づく。腕にはめていた時計
を見れば、とうに午後の16時をすぎている。なのに、自分は一度も放送を聞
いた覚えがないのだ。

 自分が気絶していた間に、放送が流れ……銛之塚が、その内容を記した。そ
うとしか思えなかった。須王は賢い男だ。それだけに、これほど確実性のある
推測を、嘘だと笑って済ませる愚かさを、持つことができなかった。

 ……藤岡ハルヒが、死んだ。

 その事実は、須王の何かを完全に壊してしまった。自分の与り知らぬところ
で、いつの間にか失われていた藤岡ハルヒの命。恋の自覚もできぬまま「娘」
と呼んで愛を注いだ、彼の誰より大切な女性の死。銛之塚の死を越えて、再び
王として立ちあがろうとしていた彼の、心の中の何か大切なものが、そこで全
て砕かれ……もう、還らない。

 リストを手に、ふらりと立ちあがった須王は、笑った。可笑しくて仕方がな
かった。何もかもが。なぜ自分は目覚めなかったのか、なぜ自分は救えなかっ
たのか、なぜ自分の知らぬところで彼女は命を落としてしまったのか、そもそ
もなぜ自分はこんなところにいるというのか? ああ、何もかもが。

 藤岡ハルヒがいない。藤岡ハルヒがいない。藤岡ハルヒがもう、いない……!
何と可笑しいことだろう。ほとんど、発作のように須王は笑い続けた。体中が
ぶるぶる震え、笑うことしかできなかった。背の傷の強烈な痛みすら、もはや
遠い。

 ……もうこんな世界は、消えてなくなればいいのだ。

 笑い続けて、手に持っていたリストはぐしゃぐしゃにつぶれ……声が嗄れて、
喉からヒュウヒュウと奇妙な音が鳴り始めたころ、そこに立っていたのは……
沈みはじめた太陽の真っ赤な光に灼かれる、気のふれた王様だけだった。



【銛之塚崇@桜蘭高校ホスト部 死亡】

(Eー7 東崎トンネル付近 一日目/夕方)
※このあとどこに行くかは、あとのかたにお任せします

【須王環@桜蘭高校ホスト部】
【状態】:右肩甲骨付近に盲管銃創(重傷) 完全に気がふれている
【装備】:なし
【所持品】:支給品一式、食料と水なし、トランシーバー
【思考・行動】
基本:こんな世界は消えてなくなれ
1:こんな世界は消えてなくなれ

注)須王は藤岡の死のショックで気がふれ、怪我の痛み等は忘れています。
  なお、銛之塚の遺体の横に、彼の使用していた血まみれの日本刀が落ちて
  います。その他の武器は全て三橋が持っていきました。銛之塚のデイパッ
  ク内には、支給品一式の他、食料3人分マイナス1食、水3人分が入って
  います。