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都と名乗った少女を前に、かれんと理子は、この子美人だなと思った。
かれんも理子も、容姿に関しては決してレベルの低い方ではないが、
都と名乗ったこの少女は、自分達よりもワンランク上の美人に見えたのだ。
全体的に整った顔立ちの中で、ふわふわとウェーブのかかった髪と、ややタレ目気味の
目つきは、優しげなお姉さんといった雰囲気で、この国の女子にしてはやや高めの身長と、
服の上からでも良いと分かるプロポーションは、まるでモデルのようだ。

「こちらこそ、はじめまして。アタシは赤坂理子。こっちは……」
「あ、は、はじめまして、一条かれんです」
「ウフフ、よかった。みなさん、殺し合いには乗っていないみたいですね」
「ウン、アタシ達は安全よ。とりあえず立ち話も何だし、上がって」
「はい」

こうして、三人軽く自己紹介をした後、情報交換のために家の中へ入っていった。
この時のあまりにもスムーズな合流に疑問を持つ者は、この中にはおらず、
かれんも理子も、都に対しては友好的な人で良かったとしか思わなかった。
そうして、かれんと理子がちよ達と情報交換をした部屋に都を連れて来ると、情報交換が始まった。

「ところで、宮崎さんはどうしてあそこに立っていたんですか?」
「実は、ずいぶん前に一条さん達がここに入っていくのが見えたんですけど……、
今までずっと、どうしようか迷っていたんです」
「でも、思い切って来てくれたところだったのね?」
「はい、それで……うちの学校の人見かけませんでしたか?特にダンくん、栄花段十朗は、あたしの彼氏なんです」
「彼氏…それは心配ね。でも、アタシはこの場所からほとんど動いていないから……」
「私は朝の内にこの村全体を回ってみたんですけど、阪東さん達以外には誰とも会いませんでした」
「あとは、隣の部屋で寝てるカトーくんくらい?」
「阪東さん?カトーくん?」
「阪東サン達は今チョットいないんだけど、カトーくんは隣の部屋で寝てるのよ」

その話をきっかけに、かれんと理子はこの島で体験したことや、阪東達から聞いたこと、
そして自分達の目指すプログラムの終了条件について語っていった。

「そうですか……それで、塚本さんは今、村役場に?」
「はい、大きなソファのある部屋に……」
(ふーん、そういうことだったのね)

かれん達が天満を村役場に運んだのは、都がこの家から目を離しているタイミングだったため、
この家の前までやって来たとき天満がいないのを不思議に思い、かれんがドアを開けるまで、
都はその場で立ち止まってしまっていたのだが、話を聞いて納得した。

(それにしても、時間切れで助かるなんて、んなコトあるかっつーの。
その阪東とちよって子も、そう思って離れたんだろうな。ま、戻って来ないでしょうね)

都が、ここまで聞いた話からそんな事を考えていると、理子が黙ている都に声をかけた。

「で、宮崎さんの方はアタシ達に会うまでに何かあった?良かったら教えてほしいんだけど」
「あら、そうですね。ごめんなさい、あたしったら」
「その、さっきの話で出た強い光や、銃声や、死体については…何か知りませんか?」

かれんの質問に、都は内心ほくそ笑んだ。ここまで都は、話の合間に感想を漏らしたり、
相槌を打ったりしていただけで、ずっと大人しい女の子を演じた。
そんな様子を見た理子とかれんは、この都こそが犯人だとは露ほども思わなかったのだ。

「実は…知っています。あたし、その場にいましたから」
「え、そうなの!?」
「はい、その死体の人は多分、西園寺世界さんです。あたし達、襲われたんです」
「その……誰に…ですか?」
「言いにくいんですけど……、一条さんと同じ制服を着た、金髪の女の子でした」
「え……沢近、さん?」

同じ矢神の仲間が殺し合いに乗っている。それはかれんが最も恐れていたことだった。
都の話を聞いたかれんは、頭の中が真っ白になった。
しかし、そんなかれんを無視して都の話は続いていく。

「あたしと西園寺さんが出会ってすぐでした。あたし達が今みたいに話をしていると、
その人……、沢近さんが突然現れて、閃光弾と言うのでしょうか?
何か光の出る手榴弾みたいな物を投げてきたんです」

そこで都はいったん言葉を切り、目の前の二人の様子をうかがった。
かれんは明らかにショックを受けているようだ。
理子も、そんなかれんの様子は気付いているみたいだが、
話の続きが気になるのか、それとも途中で話を止めては都に悪いと思っているのか、
「それで?」と、先を促した。

「それで、あたしはたまたま目をそらしたので大丈夫だったのですが、西園寺さんは
それで目をやられてしまったみたいで……、その後、あたしは持っていた銃を撃ちながら
逃げたんですけど、西園寺さんは……。あたし、西園寺さんを見捨てて逃げたんです」
「それは……仕方なかったと思うワ。その銃はまだ持ってる?」
「はい、この中に」

理子は、都がそう言って差し出したデイバッグを受け取ると、中身を確認した。
その中には、理子やかれんにも支給されている物の他に、都が言った通り、
オートマチック拳銃(FN ハイパワー)が1丁と、予備のマガジンが3つ入っていた。
本当に何発か撃った後の銃なのだろう。その銃からは、火薬が燃えた後の臭いがした。

「宮崎さん、この銃、アタシ達で預かってもいいかしら?」
「それは…、困ります。あたしはこの後ダンくんを探しに行きたいんです。
その時、また誰かに襲われたらどうするんですか?」
「そうだケド……ねえ、かれんちゃん?」

都に反論され、かれんに話を振ってみた理子だったが、かれんは「沢近さんが……」と
呟くばかりで、まだショックから立ち直れていないようだ。

「とにかく返してください!あたしは、ダンくんを探しに行くんです!」
「待って!チョット待って!」

苛立った都は理子が持つ銃に手をかけ、理子から銃を奪い取ろうとするが、理子も奪われまいとして、二人はもみ合いになった。

「や、やめて、二人ともやめてください!」

そんな二人を見て、やっと我に返ったかれんがやめるように呼びかけるが、二人とも譲らない。

「返してください!これ、元々あたしのですよ!」
「ダメ!ダメだったら!!」
「きゃあ!」

もみ合っているうちに、とうとう理子が都を投げ飛ばしてしまった。
合気道道場の娘で、並の男子なら投げ飛ばせてしまう理子にとって、
都を投げるなど簡単なことだ。

「……くうぅー」
「あ、ゴメン!大丈夫!?」

しかし、なるべく穏便にこの場を収めたいと思っていた理子は、出来ればこんな事は
したくなかった。今の投げは、ほとんど無意識に出てしまったのだ。
理子は慌てて都に駆け寄ろうとしたが、その前に都がガバッと身を起こした。

「え?」
「死ね!!」

都の手には、いつの間にか黒光りするリボルバーが握られており、それを見た理子が
驚いて足を止めた瞬間、そのリボルバーが火を吹いた。

パァン!

「ウソ……イヤ……」

都のリボルバー(スターム ルガー・ブラックホーク)が放ったマグナム弾は、
理子の腹部に直撃し、理子はその場に崩れ落ちた。

「……三…ちゃ、ん」

こうして、理子は唐突にその生涯を終えたのだった。

「痛ぅ、この銃、反動強いわね」

都はそう言いながら立ち上がると、理子が落したFNハイパワーを拾い上げた。

「やっぱり、あたしが使うにはこっちの方がいいか」

そんな事を言いながら、都は自分の手に戻ったFNハイパワーをかれんに向けた。

「え?……え!?」

かれんは目の前で起こった事が信じられず、さっきから棒立ちのままだ。

パン!パン!

「ああ!!」

そんなかれんに2発の9ミリ弾が襲いかかり、かれんは悲鳴を上げてその場に倒れこんだ。

「そうだ一条さん、さっきの話だけど、嬢があたしを襲ったってのは……嘘よ」

かれんが倒れると、都はスタームルガーを自分のデイバッグに入れながらかれんに語りかけた。
その時、隣りの部屋からガタンという音がした。

「あ、そういえば、もう一人いたんだっけ」

都はその音を聞いて廊下に出ると、ちょうど隣の部屋から男が出てくるところだった。
直接会うのは初めてだが、その男が加東秀吉である事は、理子とかれんから話を聞いていた
都には、すぐにわかる。
阪東に気絶させられてから今まで、ずっと眠っていた秀吉だったが、都が理子を撃った銃声で
目を覚まし、続けて聞こえてきた、かれんが撃たれた銃声を聞いてただ事では無いと飛び起きたのだ。

「テメェ、一体何をしやがった!?」

廊下に立つ都を睨みつけた秀吉だったが、都は彼の視線を受け流し、黙ってその手に握るFNハイパワーを秀吉に向けた。

パン!パン!

今度も2発、都が放った銃弾は確実に秀吉に命中し、当然秀吉はその場に倒れるはずだった。

「ぐっ、テ、テメェ!」

しかし秀吉は、苦悶の表情を浮かべながらも踏みとどまり、都に近づいていく。

「え?…この!」

パン!

さらに1発、これでFNハイパワーの中にある弾はすべて撃ち尽くした。

「うぐ……、へっ、弾切れか?」

放たれた銃弾は、今度も確実に秀吉の胸に命中したが秀吉は倒れず、
逆に都の銃の弾切れに気付くと、今度はうすら笑いすら浮かべ、都に向かっていった。

(なんで?なんで倒れないの?)

秀吉が倒れないのは、服の下に着た防弾チョッキが秀吉の期待通りの性能を発揮している
おかげだが、それに気付いていない都からは、秀吉が銃弾をものともせずに向かってきているように見えた。

(落ち着け!効いてはいた。でも弾を換える暇も、もう一つの銃を取り出す隙も無い)

防弾チョッキを着ていても、銃弾の衝撃が全て防げるわけではない。
都が撃った数だけ、秀吉はその身にボディブローを受けたようなものなのだ。
都は防弾チョッキには気付かなくても、そんな秀吉の表情の変化には気付いていた。

(それなら!)

都は一瞬で決断すると踵を返し、家の外へと走って行った。

「待ちやがれ!」

秀吉もすかさず都を追ったが、都の銃と阪東の拳にやられた痛みで、どうしても足が鈍る。
普段の秀吉ならそう簡単には逃がさないだろうが、今の秀吉は、家から出る前に都を捕まえる事は出来ず、外への逃走を許してしまった。

「くそ、逃がさねーぞ」

それでも秀吉は諦めず、都を追って家の外へと飛び出した。
素早く辺りを見渡すと、都が近くの草むらに飛び込む姿が見えた。

「待て!!」

それを追いかけて草むらに飛び込んだ秀吉が目にしたのは、軍用ライフル(コルトM4カービン)を構える都の姿だった。
そしてそれが、秀吉がこの世で目にした最後の光景となった。

タタタァン!

3点バースト機能により、立て続けに3発発射された軍用ライフルの銃弾は、
秀吉の着ている防弾チョッキを貫通して秀吉の命を奪い去った。

「はぁ…はぁ…、危なかった……」

都はかれん達と接触する前の準備として、この場所に今使ったライフルをはじめ、多くの武器を隠していたのだ。
大量の武器を持ち込んでは、かれん達を警戒させてしまうだろうが、
今のように何かあったときには、すぐ取りに戻れるように、だ。

「ふうん、防弾チョッキだったのか」

なぜ秀吉に銃弾が効かなかったのか?
その理由を探るため、コルトM4カービンで死体となった秀吉の体を突っついていた都は、
秀吉がそれらしい物を着こんでいたのを確認した。タネが分かれば、なんてことない。

「この銃、凄いんだ」

FNハイパワー弾では防弾チョッキに防がれてしまうが、軍用ライフルの弾は防弾チョッキなど容易く貫通する。
そんな知識など無かった都は、ただ強力な攻撃をと思って使っただけだったが、
ライフル弾の思いもよらなかった威力に感心し、こんな銃が自分の手に渡って良かったと素直に思った。

「さて…と、ダンくんを探しに行かなくちゃ」

FNハイパワーのマガジンを交換し、スタームルガーをスカートの中へ戻すと、
都は地図を広げて次にどうするか考え始めた。
余談だが、銃を太ももにベルトで止めて隠すのは西園寺世界がやっていた事だ。
世界を嬲り殺しにする際、都は世界の太ももにベルトが巻いてあったのを見て、
それまで世界がどこに銃を隠していたのか理解し、世界からそのベルトを奪うと、
彼女を真似てスタームルガーはスカートの中に隠す事にしたのだ。
そしてそれは、先ほど赤坂理子を殺すのに役立ったし、この先も役に立つかもしれない。
そんな風に思い都は再びスタームルガーをスカートの中、太ももにベルトで止めて隠した。

(えーっと、確かこの村は一条が全部回ったんだっけ。
阪東とちよは、多分戻らないだろうし……、その二人とは後で仕切り直しね)

先ほど、理子やかれん達から聞いた事を思い出しながら、都は今後の行動を考えてゆく。

(他に人が集まりそうな場所は、平瀬村と氷川村か。ここから近いのは平瀬村ね)

鎌石村にこれだけ人が集まっていたのだから、他の二つの村にも人は集まっているだろう。
そして、その中には都の彼氏、栄花段十朗がいるかもしれない。
そう考え、都はとりあえず近い方の村、平瀬村へ向かう事にした。

(もしかしたら、あいつがいるかも知れないし、ね)

都が平瀬村に向かう事にした理由はもう一つある。
放送で名前が呼ばれなかった沢近愛理だ。
彼女が海に飛び込んだ地点から北側は、都が播磨を突き落としたような崖になっているので、
沢近が生きているなら、そこから南側で海から上がった可能性が高い。
だとすると、該当するのは平瀬村付近だ。


132 :それぞれの事情とそれぞれの結末 ◆xXon72.MI. :2009/09/26(土) 18:03:47
「待っててダンくん、絶対に一緒に帰ろうね。待ってなさいお嬢、絶対に殺してあげるわ」

最後に、武器と一緒にこの場に隠しておいた播磨のサングラスと天満のリボンをデイバッグに突っ込むと、都は鎌石村を後にし、平瀬村へ向かって歩き出した。

【C-2/1日目 午後】

【宮崎都@BAMBOO BLADE】
【状態】:健康 
【装備】:コルトM4カービン(27/30) スタームルガーブラックホーク(6/6)
    服装は、室江高制服のスカートと女物のブラウス、ダウンジャケット
【状態】:支給品一式 播磨のサングラス(天満のリボン付き) 閃光弾×2
スペツナズナイフ二本 FNハイパワー(13/13) FNハイパワー予備弾13×2
手榴弾×2 コルト M4 カービンの予備マガジン×2
スタームルガーブラックホークの予備弾29

【思考・行動】
基本:栄花段十朗と生き残る
1:平瀬村へ行く
2:栄花段十朗を探す。他校の人間は殺す
3:室江高校の人間は誰も殺せないだろうとアテにしていません


【その他】
支給品一式×3 手榴弾×2 スペツナズナイフ一本 閃光弾×1は、
都が一条かれん達を監視していた家に隠しました。



民家を出た阪東とちよは村役場の横を通り過ぎ、鎌石村の中央へ向かって歩いていた。

「それで、何か思いついたか?」
「えっと、何についてですか?」

歩きながら阪東はそんな質問をちよに投げかけたが、考える事が多すぎるせいだろう、
ちよはどれについての事か分からなかったようだ。

「この島からの脱出についてだ。それがどうにかならねーと、他の事考えても仕方ねー」
「あ、そうですね」
「で、何か考えたか?」
「えーと、この島から脱出するにはまず、必要な事が何なのか、考えないといけません」
「ま、そうだろうな…、で、何が必要なんだ?」
「島から出るために船が必要だったりすると思うんですけど……まずはこれです」

そう言って、ちよは自分の首を指さした。

「……首輪か」
「はい、これがある限り、いくら逃げようとしても駄目なんです。まずはこれを外さないと」

あの教室での光景が二人の脳裏によみがえる。
そう、どんなに阪東達が足掻いたとしても、これを爆破されればそれで終わりなのだ。

「それで?」
「あとは…とにかく首輪をよく見てみないと。阪東さんの首輪見せてもらっていいですか?
自分のは見えませんから」
「ああ、それはオレも同じだな。オレもちよのを見せてもらおーか」
「あ、それじゃあお先にどうぞ」
ちよはそう言うと、阪東から首輪が見やすいように顎を少し持ち上げ、目を閉じた。
その仕草は、まるでキスを待つ乙女のようだが、ちよがやっても色気は皆無だ。

「どれ……」

阪東は身をかがめ、ちよの首輪を指でつまんで観察した。改めて見ると、かなりごつい。
無理に外そうとすると爆発するらしいが、これはそもそも、そう簡単に外せそうにない。

「…………」
「ん…くく…きゃは、阪東さん、くすぐったいですー」

しばらく阪東がちよの首輪をいじっていると、突然ちよが声を上げて笑いだした。
どうやら、阪東が首輪をいじっている間、ずっと我慢していたようだ。

「おお、悪いな」
「ふぅ、それじゃあ私も阪東さんのを見てもいいですか?」
「ああ、ホレ」
「じゃあ、失礼します」

ちよは阪東の肩に手を置くと、首輪に顔を近づけたり離したり、覗き込んだりして色々な角度から見てみた。
しかし、学校の成績は優秀だが、だからと言って機械の知識が豊富なわけではないちよには、
結局大したことは分からなかったようで、最後に「やっぱり、よくわからないですねー」と言って、阪東から離れた

「オイ、お前は触られてくすぐったかったからそうしたんだろうがな……」
「はい?」
「お前の息が首にかかるのも、結構くすぐったかったぞ」
「あ、ごめんなさーい」
「まあ、いーけどな。それで、やっぱり分からねーか?」
「はい……うーん、あとは……ちょっと考えてみますね」

機械の事は分からないちよだが、この首輪に政府が求めている機能を想像予想して、首輪の中身を推理する事は出来る。

「まず……爆弾が入っているのは間違いないですよね」
「ああ、最初に死んだガキはそれで殺された」
「あと電波を送って爆破できるように、その電波の受信機、それから……、禁止エリアに
入ったかどうかわかるということは、居場所がわかる発信機とかも入っていると思います」
「俺達の居場所は筒抜けってわけか」
「…はい」
「クソッ」
「あとは……あ!」
「ん?」

ちょうど、そのタイミングでちよの腹の虫がぐーっと音を立てた。

「あ……阪東さん。ご飯にしませんか?」
「ああ、その方がいいらしーな」

ちよはまだ、この島に来てから今までの間、何も口にしていない。
そんなちよの提案で二人は腹ごしらえをする事となり、近くにあった郵便局に入って行った。

「それじゃあ、いただきます」

郵便局に入った二人は、普段は局員たちがいる奥側へと入って行き、そこで荷物の中から食料を取りだして食べ始めた。

「むぐむぐ、もぐもぐ……」

そうして食べていると、途中でちよがおもむろに席を立ち、郵便局のボールペンや
何かの受付用紙を取り出して、そこに文字を書き始めた。
デイバッグの中にも筆記用具は入っているが、ここは郵便局だ。
紙や書くものはあちこちにあり、デイバッグを開けるよりも、そちらを使った方が早かった。

「オイ、何やって……」
「いえ、お水が欲しいなと思いましてー」

一体何をやっているのかと声をかけた阪東に、ちよはシーッと口の前で人差し指を立て、
静かにというジェスチャーをしながら答えると、その紙を阪東に渡した。

『もしかしたら、首輪にはマイクがついていて、会話を聞かれているかもしれません。』

ちよが阪東に渡した紙には、そう書かれていた。

「!」

確かに今まで阪東は考えもしなかったが、参加者達の動向を知るには有効な手段だろう。
ちよは、先ほどの首輪の考察中にこの可能性に気付いたのだが、
もし、この予想が当たっていたとしたら、そのまま考察を続けるのは危険だと思い、
ちょうど自分の腹の虫が鳴ったのをきっかけに、話を中断したのだ。
政府は、都合が悪くなったら首輪を爆破できるのだから。

「オイ」

阪東は、ちよの書いた紙を見ると指をクイクイと動かし、
ちよに、近くへ来るようにというジェスチャーをした。

「はい」

それを見てちよが近寄ってくると、阪東はもう一度、ちよの首輪をマジマジと見つめた。
首輪の堅牢さに気を取られてさっきは気付かなかったが、いわれて見ると首輪にはそれらしい穴が空いている。
ひょっとしたら、これがマイクなのかもしれない。

『たしかに、マイクがついてるかもな』

阪東も近くにあったボールペンを取ると、ちよが書いた字の下にそう書き足した。

それを見てちよは、さらにその下に書き足す。

『これから、脱出の相談するときは筆談にしましょう。』

仕方ねえなと思いながら、阪東は新しい紙を取り出し、筆談を続けた。

『カメラは?』

いちいち文章を書くのは面倒なので、阪東は短くそれだけ書くとちよに見せた。
イチイチ細かく書かなくても、ちよなら意図をくみ取ってくれるだろうと思ったのだ。

『もしカメラがついていたら、よく見れば分かると思います。』

阪東が思った通り、ちよは阪東が言いたかった事を正確に読み取り、的確な返事を返した。

『他には?』
『今はまだ、これ以上の事は分かりません。もう少し、考える時間をください。』

最後にそこまで書いて、この筆談は終了した。

「これ食ったら、村の反対側まで行くぞ。一条が午前中に見回ったらしいが、
一応自分の目で見てみてーからな」
「はい、わかりましたー」

筆談を終え、また二人が普通にしゃべりだしたその時だった。

タタタァン

二人の耳に銃声のような音が聞こえた。
この時点の二人はもちろん知らないが、これは都が秀吉を撃った銃声だ。
その前に、都が理子やかれんを撃ったときは屋内だったため、この二人のところまでは音が
届かなかったが、秀吉を撃ったのは屋外だったため、その音が阪東達のところまで届いたのだ。

「!!」
「ば、阪東さん!」
「ああ、銃声だ!」
「どど、どうしましょう?」
「荷物をまとめろ!戻るぞ!」

阪東はそう言うと、手早く荷物を片付けて立ち上がった。
それを見て、ちよも慌てて自分の荷物をデイバッグに詰め込めんだ。

そうして阪東達が民家に戻ったときには、すべてが終わった後だった。
民家に近づくと、まず阪東が草むらの中で横たわる秀吉を発見した。

「あれは……」
「どうしたんですか?」

身長の低いちよは草が邪魔で、まだ秀吉の姿を見つけられずにいた。

「お前は来るな」
「あ……はい」

“あれ”の時の二の舞にならないよう、阪東はちよを草むらの手前で待たせると、
自分一人で草むらの中へ入って行った。

(クソッ、防弾チョッキごとかよ)

秀吉は、防弾チョッキごと撃ち抜かれていた。

「阪東さん、どうですか?」
「こっちはダメだ。家の中に入るぞ」

こうなると、家に残っていたはずのもう二人の事も気になる。
阪東達は、急いで理子達がいるはずの民家へ向かった。

「ちよはここで待ってろ」
「…はい」

玄関に入ると、阪東は意識してちよの名前を呼び、ここで待つように言った。
ちよ自身はよく覚えていないが“あれ”の時の事があるのはわかっているので、
ちよも素直にそれに従い、家の奥へ入って行く阪東を見送った。


□ □ □


「はぁ…………はぁ…………はぁ…………」

かれんは都に撃たれた後、ずっと床に倒れたまま、痛みと死の恐怖に耐えていた。

(痛い……苦しい……)

かれんが浴びたふたつの銃弾は、それぞれかれんの腹と胸に命中していたが、
マグナム弾をその身に受けた理子がほとんど即死だったがのに対し、かれんが受けたのは
普通の9ミリ弾で、当たった場所もいわゆる急所では無かったため即死は免れていた。
しかし、すぐに手術が出来る病院に運び込まれたのなら助かったかもしれないが、
何の手当てもできないこの状況では、その傷も致命傷と何も変わりが無かった。

(私……このまま……死ぬの、かな?)

近くには、秀吉や阪東の手当てをしたときに使った救急箱が転がっているが、
撃たれたときのショックと、絶え間無く襲ってくる激痛、そして大量の出血のせいで
ほとんど自力で動く事が出来ないかれんは、自分の傷の応急処置すら出来なかった。

「はぁ…………はぁ…………」

どれだけの間、そうしていただろうか?
かれんの最期の時は着実に近づいてきていた。

(嫌……怖い…怖いよ……誰か、助けて……)

死に対する恐怖と、絶え間なく続く痛みに、かれんの精神力は限界に達していた。

「オイ、赤坂!一条!いるか!?」

阪東が開け放たれたままのドアからその部屋に入ったのは、そんな時だった。

「赤坂……ダメか!」

阪東は、まず倒れている理子を見つけて揺すってみたが、理子は何の反応も示さなかった。

「はぁ……はぁ……、阪、東、さん?」
「一条!」

その声に導かれ、阪東はその近くに横たわるかれん姿を見つけると、絶句した。
かれんは死んでこそいないが、服とその下の床は、かれん自身の血で真っ赤だった。

「はぁ……はぁ……良かっ、た……阪東、さん……」
「良くねーだろ!一体何があった!」

かれんの様子に驚く阪東をよそに、かれん自身は先ほどまでの恐怖心が嘘のように消え去り、顔に微笑みすら浮かべていた。

(そっか……私、一人ぼっちで死ぬのが怖かったんだ)

もちろん死ぬこと自体もとても怖いが、かれんが最も恐ろしいと感じていたのは、
誰にも看取られずに死ぬ事だった。
だから、阪東が来てくれて……、自分を看取ってくれる人が来てくれて、とても安心した。

「オイ、しっかりしろ」

驚きながらも阪東はかれんに歩み寄ると、かれんの肩と頭に手を添えて抱き起した。

「うっ……」

すると、かれんが小さくうめき声を上げ、かれんの体から床にボタボタと血が流れ落ちた。

(クソッ、こいつは駄目か?)

医学の知識など持っていない阪東から見ても、明らかに危険な血の量だ。
これは、残念だがどう見ても助かりそうにない。

「阪東、さん、お願いが……」
「ああ、何だ?」
「私が……、死ぬ、まで、このままで……」
「バッバカヤロー!」

阪東は、そんな事を言うかれんを叱咤しようとして、やめた。
今さらそんな事をしても、もう無駄だと思ったのだ。冷たいようだが、それは事実だった。

「……わかった、その代わり聞かせろ、何があった?誰にやられたんだ?」
「……宮、崎、さんです」

少し間があった後、かれんはそれだけ答えた。

「宮崎?どんなヤツだ?」

阪東はさらに質問を重ねたが、もうそれに答える時間は、かれんには残されていなかった。

「む、ら、役場の、奥…、し、資料棚の、な、か……」

それが分かっていたかれんは、最後にこれだけは言っておかなければと思い、
何とか声を絞り出すと、力尽きたように身体の力を抜き、目を閉じた。

「村役場?資料棚?どういうことだ?」
(ごめんなさい、阪東さん。もう、しゃべるの辛いんです)
「オイ、しっかりしろ!オイ!」
(このまま、寝かせて、くだ、さい……)
「一条?」
(おやすみ、なさ、い…………)

こうして、かれんは永遠の眠りに落ちて行った。


□ □ □


「あ、阪東さん。どうでしたか?」

玄関に座って阪東を待っていたちよは、阪東が戻ってくると立ち上がって尋ねた。

「村役場だ。行くぞ」

しかし阪東は、ちよの質問には答えず、それだけ言うと玄関を出て行った。

「え?待ってくださーい」

ちよも慌ててそれを追いかけて外へ出た。
そして、電気のつかない玄関では薄暗くて見えなかったが、
外に出てみると、阪東の手にべっとりと血が付いているのが分かった。

「阪東さん!!手に血が!」
「ああ、オレのじゃねーよ」

その血はかれんのものだ。しかし、かれんが死の間際に言っていた村役場というのが
気になった阪東は、その説明を後回しにしてそれだけ言うと、先を急ごうとした。
しかしそこで、阪東はちよの様子がおかしい事に気付いた。

「血……血が……血が……」

ちよの体は小刻みに震えており、焦点の合っていない様子の目には涙が溜まっている。

「おい、どうした?」
「血…、血……」
「血?…血が原因なのか?」

理由は分からないが、ちよがこうなったのは、阪東の手についた血を見たときからだ。
ならばと、阪東はデイバッグからペットボトルを取り出し、手についた血を洗い流した。
今まで何度か口を付けていたそのペットボトルは、それで一本、空になってしまった。

「ホレ、見てみろ!もう血はついてねーぞ!」
「あ……」

阪東が、血を洗い流した手をちよに見せると、ちよはその手を両手で掴み、
しばらくの間、その手をじーっと見ていたが、やがて落ち着くと、顔を阪東の方へ向け、
「ホントですね」と言って弱々しく笑った。

「もういいか?…だったら村役場に行くぞ。ワケは向こうで話してやる」
「はい」

ちよの返事を聞いて、阪東は再び村役場へと歩き出した。
ちよがまだ阪東の手を握ったままだったが、阪東は別にそれを振りほどこうとはしなかった。

「阪東さん、それで、赤坂さん達は…?」

そうして手をつないだ状態で歩きながら質問したちよに、阪東は無言で首を振って答えた。

「そう…ですか」

ちよもこの答えは予想しており、それほど大きくは驚かなかったが、
悲しみは隠しきれず、目からは涙がボロボロと零れた。

「赤坂さん……、一条さん……」
「…………」

阪東は黙ってちよの手を引き、村役場まで歩いた。



「そうですか、一条さんが…」
「ああ、こっちに何かあるんだろうよ」

村役場に到着すると、阪東は、秀吉や理子、そしてかれんがどういう状態だったかということと、かれんが最後に残した言葉をちよに伝えた。

「えーと、宮崎……、この人でしょうか?室江高校に宮崎都という人がいます」

ちよは繋いでいた手を離すと、デイバッグから名簿を取り出し宮崎という名を見つけた。

「そいつが一条達のカタキってわけだ」
「カタキ……」
「どうだ?カタキを討ちたいと思うか?」
「それは……、わかりません」

阪東にそう言われ、ちよは自信無さそうにうつむいた。

「一条さん達のことは……悔しいですけど、私はその人がどんな人なのか知らないですし」
「まあ、どっちにしろ今のままじゃ無理だろーな。
そいつは防弾チョッキをブチ抜くような銃を持ってんだ」
「はい…」

そんな事を話しているうちに、阪東達は目的の部屋に着いたようだ。

「ここか?」
「きっとそうですね。資料棚がたくさんあります」
「ああ、何かないか、手分けして探すぞ」
「はい」

そうして、ちよと阪東は手当たり次第に資料棚を調べていった。

「ん?コレは……」

阪東が何個目かの引き出しを開けた時、カラカラと引き出しの中で何かが転がった。
つまみ上げてみると、それはどうやら銃弾のようだ。数は8個。
さらに、同じ引き出しの奥には、銃の説明書が入っていた。

「こいつのか」

阪東はポケットに手を突っ込むと、ワルサーP38を取り出した。
先ほどの民家で、かれんの近くに転がっていたのを拾っていたのだ。
そして、説明書を読みながら弾を込めていく。
どうやらかれんが最後に言ったのは、自分が隠した支給品のありかだったようだ。

(ありがてーな)

これで、銃を持った相手とも互角だ。

「阪東さん!」

阪東がそんな事を考えていると、他の資料棚を調べていたちよが声を上げた。

「どうした?」
「こっち、この中です」

ちよが調べていた資料棚を促されるままに覗き込んだ阪東が目にしたのは、弓矢と銃が一緒になったような武器だった。

「ボウガンか」

阪東が手を伸ばし、それを持ちあげると、さらにその下からは矢が1ダース出てきた。
ワルサーP38は、元々は理子に支給された武器であり、最初、かれんに支給されていた武器はこれだったのだ。

「他にも何かあるかもな、もう少し調べてみるか」
「はい」

こうして二人はもう少しの間、村役場の中を調べていくのだった。
阪東とちよは、そうした作業に没頭することで、理子、かれん、秀吉の三人が
死んだことによるショックを和らげようとしていたのかもしれない。



【赤坂理子@今日から俺は!! 死亡】
【加東秀吉@クローズ 死亡】
【一条かれん@スクールランブル 死亡】
【残り23人】

【C-3 村役場/一日目 午後】

【阪東秀人@クローズ】
【状態】:疲労(中)、精神的ショック(中)  肉体損傷(中)
【装備】: クロスボウ(矢:12本)
【所持品】:支給品一式、鉄パイプ、トラロープ、ワルサーP38(弾数8/8)、鎌
【思考・行動】
1:村役場の中を調べる
2:襲ってくるなら誰であろうと叩きのめす
  ただし余程の事が無い限り殺す気は無い
4:この島から脱出する
5:くそったれ……!

【美浜ちよ@あずまんが大王】
【状態】:精神的ショック(一種のトラウマ化)
【装備】:なし
【所持品】:支給品一式
【思考・行動】
1:村役場の中を調べる
2:島からの脱出について考える

【その他】
  • 加東秀吉の持ち物(防弾チョッキ、アイスピック、支給品一式)は、
秀吉の死体が身につけたままです。
  • 理子とかれんの持ち物(支給品一式×4、整髪料、取っ手付き麺棒)は、
役場近くの民家の一室に放置されています。