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財政学5

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経済安定化政策


乗数効果

政府支出乗数
  • 政府支出Gを増加させたときの効果を分析

Y1=C+I1+G1
=c0 + c1Y1 + I1 + G1
=1/1-c1(c0 + I1 + G1) …①

次に政府支出GのみをG1からG2に増加させ、
このときの均衡国民所得がY2であるとする

Y2 = 1/1-c1(c0 + I1 + G2) …②

②-①

Y2 - Y1 = 1/1-c1(G2-G1)

ΔY=1/1-c1 ・ ΔG


以上より、政府支出をΔGだけ増加させると、
国民所得はその1/(1-c1)倍だけ増加することになる。


このような 1/(1-c1)を政府支出乗数という。


【例】 限界消費性向が0.6の時、政府支出を4兆円増加させる
ΔY=1/(1-0.6)×4
ΔY=2.5×4=10
  • 国民所得は10兆円増加する




租税乗数

  • 政府が減税したときの効果を分析する
  • これまでのモデルに固定税Tを組み入れる

C=c0 + c1(Y-T)

Y=c0 + c1(Y-T) + I + G
Y=1/(1-c1)(c0 - c1T + I + G)


ΔY=(-c1/1-c1)ΔT

このような -c1/1-c1 を租税乗数という。


【例】限界消費性向が0.6のとき、4兆円の減税を実施
ΔY=(-0.6/1-0.6)×-4
ΔY=1.5×4=6
  • 国民所得は6兆円増加する


  • 政府支出を増加させたときの乗数効果の方が、減税を実施したときの乗数効果より大きく、より効果的な政策であると言える。




均衡予算乗数の定理

  • 政府が増税により資金を調達し、政府支出を増加させた場合の効果
    • 乗数は常に1となる。

【例】
政府支出を4兆円増加させるため、財源を増税により賄う場合、国民所得は4兆円増加する。


所得税を導入したときの乗数効果

T=tY [T:税額、t:税率、Y:国民所得]

Y=C+I+G
=c0 + c1(Y-T)+I+G
=c0 + c1(Y-tY)+I + G
=1/1-c1(1-t)×(c0 + I + G)
となり、これを政府支出の変化分と国民所得の変化分の式に変換すると、
が得られる。
これが所得税を導入したときの政府支出乗数。

【例】限界消費性向が0.6、税率0.4のとき、政府支出を4兆円増加させる。

ΔY=1/1-0.6(1-0.4)×4
ΔY=1/0.64 ×4=25/16 ×4=6,25
  • 国民所得は6.25兆円増加する



  • 財政政策ではクラウディング・アウトが生じる
  • 金融政策ではクラウディング・アウトは生じない



マクロ経済モデルを用いた計算例

【例】
Y=C+I+G
C=60+0.8Y
I=40+1000r
G=100
M/P=L
M=400、P=1
L=0.8Y-1000r

1.均衡国民所得と均衡利子率を求めよ
2.政府支出を30増加させたとき、国民所得と利子率はどうなるか
3.名目マネーサプライを20増加させたとき、国民所得と利子率はどうなるか


Y=C+I+G
=60+0.8Y+40-1000r+100
0.2Y+1000r=200 … ①

M/P=L
400=0.8Y-1000r
0.8Y-1000r = 400 …②

①+②
0.2Y+0.8Y=200+400 → Y=600

Y=600を①に代入
0.2×600+1000r=200
r=0.08

均衡国民所得は600、均衡利子率は0.08(8%)


Y=C+I+G
Y=60 + 0.8Y + 40 - 1000r + G
0.2Y+1000r= 100 +G
0.2ΔY + 1000Δr = ΔG

ΔG=30
0.2ΔY + 1000Δr =30 … ③


M/P =L
M/P = 0.8Y - 1000r
0.8ΔY - 1000Δr = 0 … ④

③+④
ΔY=30

ΔY=30を④に代入
0.8×30 - 1000Δr=0
Δr=0.024

国民所得は30増加し、利子率は0.024(2.4%)上昇する


0.2ΔY + 1000Δr = ΔG
金融政策をとるとき、ΔGは変化しないので0
0.2ΔY + 1000Δr = 0 … ⑤

貨幣市場
0.8ΔY - 1000Δr = Δ(M/P)
0.8ΔY - 1000Δr = 20 … ⑥

⑤+⑥
ΔY=20
⑤に代入する
0.2×20 + 1000Δr=0
Δr=-0.004

国民所得は20増加し、利子率は0.004(0.4%)低下する





初期ケインジアン


流動性のわな:貨幣需要の利子弾力性が無限大になった状態(LM曲線が水平)
  • この時、財政政策は有効、金融政策は無効。


投資の利子弾力性がゼロ(非弾力的)→IS曲線が垂直
  • この時、財政政策は有効、金融政策は無効


古典派の貨幣数量説

  • 貨幣の投機的需要は考えず、取引的需要のみを考慮する
  • LM曲線垂直→財政政策は無効(完全なクラウディング・アウトが生じる)


マネタリストの新貨幣数量説

市中消化の公債発行による場合
  • IS曲線が右にシフト
  • LM曲線が左にシフト

中央銀行引受の公債発行による場合
  • IS曲線が右にシフト
  • LM曲線も右にシフト




財政政策に関する批判


合理的期待形成学派
  • ルーカス、バロー
  • 合理的期待形成学派の主張によれば、ケインズ的な財政政策や金融政策は長期的にはもちろん、短期的にも無効。


サプライサイド経済学派
  • フェルドシュタインなどのサプライサイド経済学派は、経済の供給側を強化する政策を重視して生産性を高めるべきと主張。
    • 所得税減税、貯蓄優遇策、規制緩和など
    • レーガノミクスにおけるサプライサイド重視政策

政治経済学派
  • ブキャナン、ワグナー
  • 減税や財政支出の増加は国民に支持され、増税や政府支出の削減は国民に反対される
    →ケインズ的政策により、財政の赤字体質が慢性化し、経済活力の喪失やインフレの問題が発生すると批判。
  • 均衡予算の原則に戻るべきと主張


金融政策をめぐる新たな展開


フリードマンのk%ルール
  • 裁量的な金融政策は、その効果を発揮するまでに時間的な遅れ(タイム・ラグ)を伴うことから、かえって経済を不安定にすると指摘。
  • 毎年のマネーサプライ増加率を一定に維持する金融政策を主張(k%ルール)


量的緩和政策
  • 日本では2001年の3月に、デフレが解消するまでの期間、操作目標を無担保コールレートから日銀当座預金残高に変更することとした。


インフレターゲット




ビルト・イン・スタビライザー



政策ラグ
  • 認知ラグ
  • 実施ラグ
  • 波及ラグ:政策が実施されてから、その効果が表れるまでのラグ


  • 認知ラグでは、財政政策と金融政策の間で差はない。
  • 実施ラグでは、財政政策の方が大きい(予算編成などに時間を要する)
  • 波及ラグでは、金融政策の方が大きい


  • 認知ラグと実施ラグについては、ビルト・イン・スタビライザー(経済自動安定化機能)においてはゼロとなる。


ビルト・イン・スタビライザー

  • 税制による安定化機能
好景気 税収増 景気の過熱を抑制
不景気 税収減 景気の悪化を抑制


  • 失業保険制度による安定化機能
好景気 失業保険給付減 景気の過熱を抑制
不景気 失業保険給付増 景気の悪化を抑制


マスグレイブ=ミラーの指標

  • ビルト・イン・スタビライザーの経済安定化効果の大きさを測定する指標
  • 投資乗数が小さくなるほど、安定化効果は高い

マスグレイブ=ミラーの指標


[a:マスグレイブ=ミラーの指標、c1:限界消費性向、t:税率]

aは0から1の間の値をとる。
aが1に近づくほど安定化効果は大きくなる。



ビルト・イン・スタビライザー
  • 歳入面:累進所得税
  • 歳出面:失業保険
  • フィスカル・ドラッグという問題が指摘されている。


マンデル=フレミングモデル


国際収支=経常収支+資本収支


国際収支均衡線(BP曲線)
  • BP曲線が垂直:資本移動がない場合
  • BP曲線が水平:資本移動が完全な場合


IS-LM-BPモデル


資本移動が完全=BP曲線が水平
固定相場制 変動相場制
財政政策 ×
金融政策 ×

資本移動がない=BP曲線が垂直
固定相場制 変動相場制
財政政策 ×
金融政策 ×


ポリシーミックスと政策割当

ポリシーミックス:完全雇用の達成や国際収支均衡の達成などの政策目標を実現するために、財政政策と金融政策を組み合わせて用いること

ティンバーゲンの定理:n個の政策目標を達成するには、n個の独立した政策手段が必要



マンデルの政策割当
  • 国内均衡を達成するには財政政策
  • 国際均衡を達成するには金融政策





公債理論


公債の特徴
  • 任意性
  • 短期多収性
  • 負担の長期分散性
  • 貯蓄削減性
  • 景気の影響を受けにくい


ラーナーの公債論

  • ラーナーは、負担を「利用可能な資源の減少」と捉えた。
  • 公債は、将来世代への負担の転嫁は発生しない
    • 内国債を前提とした議論
    • 外国債では生じる

モディリアニの公債論

  • モディリアニは、負担を「資本蓄積の減少」と捉えた。
  • 課税による資本蓄積の減少分<公債発行による資本蓄積の減少分
  • 内国債・外国債の区別にかかわらず、将来世代に負担が転嫁される。

ブキャナンの公債論

  • ブキャナンは、負担を「支払いの強制性」と捉えた。
    • 任意に行われる支払いは強制ではない。
  • 公債を発行する世代には負担は生じない。
  • 公債を償還する世代には負担が生じる。
  • 内国債・外国債の区別にかかわらず、将来世代に負担が転嫁される。

ボーエン=デービス=コップの公債論

  • ボーエン=デービス=コップは、負担を「総消費量の減少」と捉えた。
  • 世代を超えて公債の償還が行われる場合には、公債を償還する世代の生涯消費量は減少するため、負担が生じる。


バローの公債論

  • バローは等価定理(中立命題)に基づき、公債と租税は経済活動に対して、まったく同一の効果をもたらすと主張。
  • 公債の発行による将来世代への負担の転嫁は生じない


リカードの等価定理
  • 租税の場合と公債の場合では、マクロ経済に与える効果はまったく同じ

バローの等価定理
  • 親から子に対してなされる遺産相続によって、将来世代への負担の転嫁は生じない。

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