NWの七夕2009
織姫・彦星の願いを空に
リレーSS部門 作品一覧
テーマ:NW的七夕伝承(昔話や神話的なもの)
参加者一覧
#国民番号順です。
国民番号 |
PC名 |
藩国 |
参加話回 |
03-00565-01 |
那限・ソーマ=キユウ・逢真 |
FEG |
7 |
04-00096-01 |
夜國涼華 |
海法よけ藩国 |
1・3・8・最終話 |
04-00770-01 |
不離参 |
海法よけ藩国 |
5 |
15-00301-01 |
蘭堂 風光 |
ナニワアームズ商藩国 |
6 |
18-00343-01 |
鈴藤 瑞樹 |
詩歌藩国 |
4 |
36-00695-01 |
みぽりん |
神聖巫連盟 |
2 |
第一話
04-00096-01:夜國涼華:海法よけ藩国
ここ、NW(ニューワールド)には、色んな人種が色んな文化を持ち、生活を営んでいました。
森に住むもの。砂漠で生きるもの。太陽を愛するもの。極寒に対応するもの。
そんなそれぞれ個々に異なる文化を持つ、このNWの中に人種・習慣・文化に関係なく、言い伝えられている七夕の伝承がありました。
それは、多少の言い伝えの違いはありますが、どこの人々もほぼ同じ伝承を知っている、七夕の物語-
/*/
NWという世界、そのある藩国に、一人の少女がいました。
身体は小柄でしたが、努力家で真っ直ぐ素直な少女でした。
第二話
36-00695-01:みぽりん:神聖巫連盟
ある日少女は藩国の子供達と木に登って遊んでおりました。
するすると木に登ることができた子供達は、木の上で「ヤッホー」と叫んだり木の実を摘んで食べたり楽しそうです。
少女も木に登ろうとしましたが、背が低いので枝に手が届きません。
少女に、木の上から木の実が落ちてきました。
「うまいよ、食べなよ」
少女はありがたく食べました。
木の実はなぜか塩辛い味がしました。
「どうして泣くの?」
木から降りてきた子供達は少女に気づき、心配そうに少女をみました。
「具合がわるいの?」
少女は首を横に振りました。
「どこか痛いの?」
少し考えて、少女は首を横にふりました。
少女の様子をみていた子供が、まだ幼かった頃の自分の気持を思い起こして、木に登りたいの?とそっと聞きました。
少女はその子供の目をしばらく見つめたあと、こくりと頷きました。
しばらく考えた後、子供達は、木に登れたら涙は止まる?と聞きました。
少女は自分の心にききました。そして木に登れたら涙が止まるようなふうに思ったので、こくりと頷きました。
「じゃあ登ろう」
子供達は少女の手を取りました。
第三話
04-00096-01:夜國涼華:海法よけ藩国
少女は一人の少年の手を取り、恐々とでもしっかりとその手を掴んで、登っていきます。
途中、肌を切りそうな小枝がありましたが、それは先に登っていく少年の手で摘まれていました。
少女がそれに気付いたのは、枝に登りきる少し手前、先に上りついた少年が手のひらを払うようにして、下へ落としていたいくつかの小枝を見てからでした。
涙で少し赤くなった目じりを少し気にしながら、少年と他の子供達の手に引っ張り上げられ、やっと登りきった一枝の上。
乾いた涙を拭い、その枝の上で少女が見たもの。
それはオレンジ色に染まった空と、大きくオレンジ色に輝く太陽、そしてその傍で輝き始めた一番星でした。
「うわぁ…綺麗…」
「涙、止まったね」
少女の横で笑う少年。
その笑みは優しいものでした。
少女は、その少年の顔は知っていましたが名前は知りません。
こんな綺麗な景色を見ながら、名前を聞くのはなんかちょっと違う気がして…
だから少女は、恥ずかしそうに俯きながら小さな声で言いました。
「あ、ありがと…」
第四話
18-00343-01:鈴藤 瑞樹:詩歌藩国
「あ、ありがと…」
少女は、恥ずかしそうに俯きながら小さな声で言いました。
それを聞いて、少年は嬉しそうに笑いました。
ついでに少女の頭を優しく撫でてやりました。
なんとなく、そうしてやりたくなったのでした。
少年は一人っ子で、兄弟姉妹がいませんでした。
友達はたくさんいましたし、父や母は愛情を持って接してくれましたが、できれば妹か弟がほしいと少年は常々思っていました。
そんな夢がかなったような気分になって、少年はとても嬉しくなりました。
少女と少年が木のてっぺんで夕焼け空を見ているうちに、ほかの子供たちはひとり、またひとりと家路につき、ついにはみんないなくなってしまいました。
とうとう日が暮れて空は藍色に染まり、二人きりになってしまっても少女は帰ろうとしません。
少女はずぅっと風景を眺め続けていました。
夜色の空に輝く星、街の家々にともる明かり、静まり返った森の木々、そして空の星を映し出した川の様子。
それはまるで、その日に見た風景を忘れないよう、目に焼き付けているようでした。
第五話
04-00770-01:不離参:海法よけ藩国
「良い景色だね…。」
少年はそう言うと、優しく微笑みました。
「星が映って流れる、あの川の向こうに見える。灯りの中に僕の家があるんだ…。もう帰らないと…。君も帰らないと、お父さんとお母さんが心配するよ?」
少年は、妹みたいに感じられる少女に名残惜しそうに、そう告げました。
「…。うん。まだ景色見てたいけど、もう帰る。」
少女は、しばらく考えると、同意しました。
「よし。じゃあ降りようか。危ないから、気を付けて。」
少年は、そう言うと、手をさしだしました。
「…ありがと…。」
少女は、礼を言うと少年の手をとり、二人は、するすると木を降りて行きました。
「君、木登り練習すれば、すぐ登れるようになるよ。きっと。じゃあ気を付けて。僕はもう行くね?」
そう少年が言い、帰路につこうとした時です。
「…。あの…。木登り教えて…。またここで…。」
少女は、そう言うと、少年を見つめました。
「いいよ。また今度ね。」
帰路につきかけた、少年は振り返ると、少女に向かって、優しく微笑みました。そして、今度こそ、帰って行きました。
少女は、帰路につきながら、今日のことや先程の景色を思い浮かべていました。
また、少年と会うのを楽しみにしながら。
第六話
15-00301-01:蘭堂 風光:ナニワアームズ商藩国
「…。あの…。木登り教えて…。またここで…。」
「いいよ。また今度ね。」
この約束は残念ながら果たされる事は無く、少年とはそれっきりで、少年が約束した木に再び訪れる事はありませんでした。
お互いに名前の知らない少女と少年の接点はこの一本の木だけであり、少女は少年のその後を確かめる術を持たないのでした。
目を瞑れば鮮やかに思い出す、少年と共に見た風景を胸に秘め、少女は日々を懸命に過ごしていきました。
こうして月日は流れ、少女はスクスクと育ち、見目麗しい娘へと成長していました。
今でも目蓋の裏側には夜景が焼き付いており、少女いや娘は時折、今や大樹に成長した木の元に訪れて当時を懐かしんでいました。
第七話
03-00565-01:那限・ソーマ=キユウ・逢真@FEG
娘はその日も大樹に訪れ、昔を思い出していました。
閉じた目蓋の裏に、名前も知らない少年と一緒に見た樹の上の夜景を映しながら。
「お嬢さん。どうかしましたか?」
振り向くとそこにはフードを目深に被った人が一人立っていました。
娘は昔を懐かしみながらフードの人に昔話を語り始めました。
かつて、この樹であった小さな出会いを。
「……もう一度見られますよ。その少年と」
話を聞き終えたフードの人はそう答えました。
フードの人の言葉があまりにハッキリしていたので、娘は不思議になって尋ねます。
「なぜわかるのですか?」
その問いに、フードの人は大樹の幹に触れながら答えます。
まるでそれが当たり前の事であるかのように。
「想いは力になりますから。その想いを忘れないでいれば、想いはきっと遂げられるでしょう」
「まるで魔法みたいですね」
「私は魔法使いでも魔術師でもないので魔法は使えません。ですが、きっとこの大樹が力を貸してくれますよ」
娘の言葉にフードの人は笑ってそう答えると、娘に背を向けて去っていきました。
遠くなっていくフードの人の背中を見つめながら娘はあらためて思いました。
「もう一度、あの少年とあの夜景を見たいな」と。
第八話
04-00096-01:夜國涼華:海法よけ藩国
― もう一度、あの少年とあの夜景を見たいな ―
娘がフードの人と出会った日から数日後。
その日は夏になるといつしか行われるようになった風習『星巡り』の日でした。
生まれてきた命を喜び、死者を弔い星へ見送り、農業の豊作を願う一夜限りの小さな風習でした。
夏、星々が輝く夜、川に死者を送る小さな笹の船を流し、木々に命の喜びや豊作の願いを書いた紙を飾り、空へ送る。
それが村々家々で行われていた、その日。
娘はそっとあの木へと行ってみました。
少し小高い場所にあるそこは、麓に見える家々の明かりを照らし、死者を送る小さな笹の船を流す人々が手に持つ明かりが川沿いに輝いていました。
「星巡り…星さん、もし巡り合わせを叶えてくださるなら、私にあの少年を逢わせてくださいませんか?」
そう、少女が星へ願った時でした。
「誰か、いるの?」
低く澄んだ、耳に優しい青年の声に、娘は振り向きました。
最終話
04-00096-01:夜國涼華:海法よけ藩国
振り向くと、そこに一人の青年が立っていました。
声変わりもあって、知らぬ声ではありましたが、そこに立っている青年には、確かにあの少年の面影が残っていて…
「貴方は…」
「君は…もしかして、あの時の…」
「木登りを教えてくれる、約束した、よね?」
少女のその言葉に、はっとする青年。
「ごめん…約束果たせ無くて」
「ううん…」
小さく頭を振る少女は、小さくでも嬉しそうな声で言った。
「会えたから…星が巡り合わせてくれたから…」
「僕も…ここにくれば君にもう一度会えるかもしれない、って思ったんだ」
優しく微笑む青年。その青年の微笑みは、確かに昔のあの少年のものでした。
「でも木登りは、無理かな…」
苦笑気味で言う青年。
そんな青年を見て微笑む少女。
「そんなこと、無いよ?」
クスリ、と笑うと二人は手を取り合い、あの木を登りました。
見える景色は、あの時とは違うけれども…
そして、少女と青年は約束しました。
- また星巡りの日のここで逢おう -
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それから、幾年かがすぎ。
毎年毎年、この木の元で年に一度の星巡りに逢って愛を育んだ少女と青年は、数年後結婚しました。
星々と木々の祝福を受けて、二人は末永く幸せに暮らした、と言い伝えられています。
あなたも星巡りの日。
大切なあの人に逢いにいきませんか?
【終わり】
最終更新:2009年08月03日 19:20