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copyrightは自然な権利ではなく、奨励のためのインセンティブだった可能性
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hibiki
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- 世界最初の特許法は「むやみやたらな独占付与の禁止法」 としてスタートしたことを皆さんに知っておいてもらいたい。もちろん、 copyright というのもこの営業独占からスタートしたことは言うまでもない。
- 「特許(patent)」はもともと独占付与に関する「国家の権利」 であり、発明者に与えられる「私的な財産権」ではないことに注意。しかも、 最初は発明それ自体ではなく、 あくまでも新産業立ち上げのインセンティヴとして容認されたものであることに注意。
ところが16世紀末から17世紀始め頃になると、 開封勅許状による特権付与が乱発されるようになる。だって、 王様は一筆書くだけでいいのに対して、 独占利益は特権を与えられた人の莫大な富となるから。費用負担者は一般の庶民だし。 そこで貴族に対する単なる恩寵として特権が付与されるようになった。 そしてついに、 パンだのエールだのといった日常品にまでどこかの貴族が特権を主張し、 伝統的なギルドの営業権を犯すようになってきた。 やがて高騰する日常品の価格にムカついたイングランド臣民は1600年ころから 「反独占 (anti-monopoly)」運動を開始し、暴動を起こしたりするようになった。
そこで、ジェイムズ 1世は、1623年に「独占法 (Statute of Monopoly)」を発布して、 それまで乱発されていた特権を(嫌々)停止することにした。ただし、 特権付与による産業育成効果は無視できなかったので、(1) 国内に存在しない産業を新たに誘致する場合、あるいは (2) 国内に存在しなかった新産業のネタとなるような発明を実施する場合、については、 letter patentによる独占付与を14年間あるいは21年間に限って認めましょう、 とした。これなら、いずれも既存の市場が存在しないわけだから、 この特権付与によって被害をこうむる人はいない。 そして新産業立ち上げのリスクを取って事業化に成功した人には14年間あるいは21年 間の独占利益が保証されることになるわけだ。この「独占法」 が実は世界最初の成文特許法と言われている。
独占法では「王国内での発明」(外国で他の人が発明したものでも、 国内に最初に持ち込めば、持ち込んだ人が inventor) が独占権付与の条件とされたから、ある技術や産物が「発明」 かどうかが問題にされるようになったというわけ。ここで大事なことは仮に「発明」 だったとしても、国内産業に貢献しないようなものや、単に発明しただけで 「実施しなかった」人には特権は付与されなかったということ。 あくまでも産業振興策なんだから。
このように、実は世界最初の特許法は「むやみやたらな独占付与の禁止法」 としてスタートしたことを皆さんに知っておいてもらいたい。もちろん、 copyright というのもこの営業独占からスタートしたことは言うまでもない。
『コピーライトの史的展開(3)』 の冒頭あたりを参照してほしい。
もう一つ付言しておけば「特許(patent)」はもともと独占付与に関する「国家の権利」 であり、発明者に与えられる「私的な財産権」ではないことに注意。しかも、 最初は発明それ自体ではなく、 あくまでも新産業立ち上げのインセンティヴとして容認されたものであることに注意。
このような歴史を知れば、レッシグ先生が「著作権」や「特許」の保護について、 産業政策的な検討、経済研究をすべきであると主張する理由がわかるだろう。