夜が明けてWest Waeld Innを引き払う頃にはもうすっかり思い出していた。
そう、思い出すってのがしっくりくるな。
ふと忘れてた思い出が鮮明に蘇るみたいな、そんな感じで膨大な記憶を思い出したんだ。
givenのこと、奇跡のこと、過去のgiven達が何をしてきたのか、もちろんaramの事も。
思い出したということは過去のgivenてのは半分俺みたいなもんだ。
そういう意味ではaramの言ってた事は当たりだな。
昨日の俺と今日の俺は半分だけ別のヤツになったんだ。
givenは俺で103代目だったので103を数で表してciii(*1)と思ったんだが、だが呼びづらかろうとciivとそのときから名乗ることにした。
新しい俺の最初の旅はLeyawiinにすることにした。
俺のために最後の時間を使ってくれたaramを弔うためにさ。
Leyawiinへの道すがら記憶を整理しつつわかったことがある。
まず、historyは記憶は継承するけど感覚は継承しないってことだ。
つまりは言葉というかイメージというかちゃんと整理されている考えについては覚えているけど、身体的な感覚やカンみたいなものは受け継がれないというわけだ。
言わば視覚と聴覚を元にした記憶は残るけど触角嗅覚味覚は残らないと。
その証拠としてhistoryによって(だと思うけど)過去のgivenが習得した魔法は全て思い出した。
ただ、思い出しただけで魔法技術が上達したわけでもないから使えないんだがな。
奇跡はこんなとこでも欠陥ばかりだ。
話術はMaster近くまで上達したような気がする。
まぁ口から出るもんはほとんどがhistoryにあるからなんだろう。
時々自分でも驚くほどのでまかせが口から出やがる。
逆に体術や剣術なんかの身体能力は全く変わってないようだ。
そういう意味ではやれることなんてのは大して変わるわけじゃない。
artifactはなぜかそのartifactを造ったgivenが代替わりするとほとんど全部がその能力を失うみたいだ。
ほとんどと言ったのはいくつか能力を残したままのartifactがあるから。
何人かのgivenがその秘密を探ろうとした覚えはあるが結局良く分からないってとこだな。
aramの家はLeyawiinの北にあるWater's Edgeにあった。
優しそうなダンナがaramの墓の前で涙を零してたよ。
俺は結局遠くから祈るだけだった。
だってそうだろ?
見ず知らずの俺がaramの知り合いのような顔でダンナと顔あわせるわけにはいかないじゃないか。ダンナはaramがgivenだったのも知らないんだぜ?
あの日以来俺は神様ってやつになっちまった。
それが幸せなのかはいまだによく分からねぇ。
とりあえず思い出したけど使えねえ魔法を何とかしようと魔法ギルドに入ったってのは別の話だな。
*1 ローマ数字で100はc