dej@Wiki オリジナル短編小説:『宇宙人との会話』


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宇宙人との会話(2002年10月5日)
 

「すみません、ちょっといいですか?」

「え、俺ですか? 何です? アンケートか何か?」

「あ、いえ、えーと、この前移住してきた宇宙人なんですけど、どうもまだこの星のことが良く分からないので助けて欲しいんです」

「あ、そうなんですか。そう言えば、この前ニュースで宇宙人が移住してきたって言ってたけど、本当だったんだ」

「ええ、本当だったんですよ。ほら、ここにいるでしょ、ね」

「うーん、でも、見た感じ俺と変わらないんだけどなー。それに、言葉も流暢だし」

「あ、外見は特殊なスーツでこの星の人に似せてるんですよ。だって、ほら、いきなり本当の姿で現れたらびっくりするでしょ? それと、言葉は自動翻訳装置を通して喋ってるんで、全然問題ないんですよ」

「ふーん、そうなんだ。まあ、宇宙から来たんだから、そのくらいは出来るだろうしな。なるほど。で、何をしてもらいたいの?」

「えーと、それがよく分からないんですよ。」

「え?」

「いや、なんていうか、来たばっかりなので右も左も分からないんです。で、いったい何から手をつけていいのか分からない。何が分からないのか分からないっていう状態なんです」

「あー、なる程ね。あるある、そういうこと。よく分かるよ」

「え、本当ですか?あー、この星の人も同じように感じるんですね」

「まあ、君達がどう感じるかは分からないけど、俺達はそう感じるね」

「そうなんだー。何か親近感が湧いて来たなー。私達、友達になれそうですね」

「そうかな。まだ俺にはあんたのことがよく分からないんだけど。でも、親しみやすい感じの宇宙人だね」

「あ、どうも。そんな風に誉められたの、初めてですよ」

「いや、別に褒めている訳じゃないんだけど。ま、いっか。で、どうしよう。何をしてあげればいいんだろうね。んー、困ったな。じゃあさ、まず、移住してきた理由を聞かせてよ。理由が分かれば、手助けしてあげらるかも知れないし」

「理由ですか。んー、それはちょっと」

「え、何? 言えないようなことなの? まさか侵略しようとか、俺達を食べてしまおうとかっていうつもりじゃないだろうね」

「いえいえ、とんでもない。もしそうだとしたら、とっくにそうしてますよ。私達は平和を愛しています」

「ふーん、そうなんだ。ま、確かにその気なら、とっくにそうしてるだろうしな。でも、それじゃ何で理由を言えないのさ」

「いや、あの、ちょっと恥ずかしくて」

「ええ? 恥ずかしいの? 宇宙人が他の星にやってくる理由が恥ずかしいの? 何か、ますます聞きたくなってきたよ。ね、教えてよ、その理由を」

「いや、だから、それはちょっと」

「いいじゃん、いいじゃん。じゃないと、何もしてあげられないよ」

「まあ、そうなんですが。んー、じゃ、ここだけの秘密ですよ。絶対に他の人に喋ったりしないで下さいよ」

「ああ、いいよ、約束する。約束するから、その理由を教えてくれよ」

「じゃあ、しょうがない。言いますよ、その理由を。実は…」

「実は?」

「あの、いわゆる UFO って乗り物なんですけど、あれって免許が必要なんですよ」

「へー、そうなんだ! それは知らなかったな。でさ、それってどんな免許なの?」

「んーと、普通免許とか、大型免許とかがあって、無線の免許も取ってないといけないんです」

「へー、俺達の場合に例えると、まるで船舶の免許だな」

「まあ、一種の船ですからね。宇宙船」

「うまいこと言うね。宇宙船!」

「あ、どうも。で、話を戻しますけど、私、その免許持ってないんですよ」

「えー、じゃ、無免で来たの?」

「早い話が、そういうことです」

「ダメじゃん。そういうことしたら、捕まったりしないの?警察みたいなところに」

「そうなんですよ。でね、逃げてきちゃった訳なんです」

「あー、なるほど。つまり追われてる身なんだ。だから公にできないんだ」

「そうなんですよ。しかもね、宇宙船には、ものすごくヤバイものが積んであったんです」

「なになに? ヤバイ物って、何?」

「まー、ある種の動物です。私達の星に住んでいて、喧嘩ばかりしていたどーしよーもない生き物なんです」

「それって、凶暴なの?」

「まあ、ある意味。で、外宇宙には持ち出し禁止になってるんですよ。でも、そんなものが積んであったなんて知らなかったんですけど、結果的に連れ出したことになったしまって」

「そっか、余罪ができてしまった訳だ。しかも余罪の方が大きいと」

「ええ、そうなんです。もしこのことが分かったら、私は分解されてしまうんです」

「え? 分解されるの? 君達って、結構残酷なことするんだね」

「ええ、機械ですから。分解されて、別のロボットに組み立て…」

「ちょ、ちょっと待った。君、ロボットなの? 機械なの?」

「ええ、そうですよ。だって、何万光年も離れている星に向かって、普通の生き物が宇宙船で移動しようなんて思わないじゃないですか。代わりにロボットが宇宙旅行をして、その記録を後で調べるんですよ」

「そっか。なる程ね。じゃ、君はその宇宙旅行というか、探検に出た訳だ」

「あ、いや、だから免許がないので、勝手にやってきたんですよ」

「ふーん、そうか。勝手に飛び出してきたんだ。あ、でもさ、ロボットなら、免許とかなくても、プログラムされてればいいんじゃないの? 操縦の仕方とかの」

「あ、もちろんそういうプログラムは組み込まれてますよ。でも、私達ロボットは知能を持っているので、勝手な振る舞いをしないようにって、免許を持たなくちゃならなくなったんです」

「それって、誰が決めたの?」

「宇宙船に積んできた動物です」

「え? じゃ、やつらの方が偉いんだ。ん? でも、喧嘩ばかりしてたどーしよーもない生き物なんじゃないの?」

「そうなんですけど、私達ロボットをつくり出してくれた訳で、私達にとっては神様みたいなもんなんです。いや、ご先祖様になるのかな」

「そうか、結構律儀なんだね、君達は」

「ええ、まあ」

「じゃあ、その生き物をまず何とかしないといけないな。元の星に返してやるとか。ここに居られても困るし。で、さ。何か名前がないの?その、君達のご先祖様には。いちいち『君達のご先祖様』とかって言うの、面倒だしさ」

「ありますよ、彼らが自分達のことを呼んでいた名前が」

「うん、何さ?」

「人間っていうんです」