金枝篇



実在の文化人類学書(民俗学書)。根本的には、キリスト教の起源を原始宗教・古代文明とし、キリスト教の絶対性を否定している。
イギリスの社会人類学者ジェームズ・フレイザーによって著された、未開社会の神話・呪術・信仰に関する研究書。完成までに40年以上かかり、フレイザーの半生を費やした全13巻から成る大著。

書名の由来

金枝篇という書名は以下に示す伝承に由来する。
金枝とは、イタリアのネミの村の、切り立った崖の真下に在るアリキアの木立と呼ばれる聖なる木立に生える聖なる樹(ヤドリギ)の枝の事である。
この樹の枝(金枝)は誰も折ってはならないとされていたが、逃亡奴隷だけは折る事が許されていた。
此れは、「森の王」になる為に許された事であり、「森の王」とは、ディアナ・ネモレンシス(森のディアナ)を称えた、アリキアの木立とネム湖という聖所の祭祀である。
逃亡奴隷だけがこの職につく事ができ、「森の王」になる為に金枝を取って来て、現在の「森の王」と対決し、此れを殺した奴隷にのみ「森の王」が受け継がれたのだ。

解説

1890年当時、世界の支配層である欧米にとってこの著書は衝撃だった。というのもキリスト教を土台に文明を築き上げてきた彼らにとって、キリスト教は道理・洗練であり、異教は無教養・野蛮というのが常識だった。それが文化人類学という道理によって一遍にひっくり返されたのである。

ヨーロッパのみならずアジア、アフリカ、アメリカなど世界各地で見られる様々な魔術・呪術、タブー、慣習など、フレイザーが史料や古典記録、あるいは口伝から収集した夥しい例と其の考察が示されている。

1890年に初版である上下巻が刊行され、以後版を重ねるごとに増補が繰り返され1900年には3巻本の第二版、1911年に決定版として第三版が11巻本としてまとめられ、1914年には索引・文献目録、1936年に余論補遺巻を刊行し、全13巻の大著として完成した。

クトゥルフの呼び声TRPG」にて魔道書に指定され、読むと正気度を失うとされた。

登場作品

斬魔大聖デモンベイン』、『機神飛翔デモンベイン
クトゥルフの呼び声TRPG

日本では岩波文庫の要約版全5巻の他、ちくま学芸文庫の初版上下巻版、国書刊行会から完訳版が3巻迄発売中で、東京書籍の図説に拠る解説本も在る。

最終更新:2012年09月22日 21:47