第五章「改変」


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  • 第5章「改変」

いつも通りだ。いつも通り五分前に登校し、いつも通り席に着く。
捜査したいとは言ったものだが、いざとなると俺には一体どのような力があり、いつ、どのような形で発揮されるのかよく分からない。家に帰ってから、試しに力を篭めてみたが、結果は皆無に等しく、撃ちたいと願っても効果はなかった。
わかる事は、俺はとんでもないことに首をつっこんじまったこと、俺には尋常ならざる能力があること(ただし制約付き)。
あの刑事達は言った。「日常が狂い始める」と。
実際・・・俺は通常と変わらぬ日常を過ごしてしまった。今日もいつも通り五分前に以下略・・・。

非日常から日常に移って一週間が経った。
狂うと言われた日常は変化を見せず、俺には分からないことだらけだった。
奴等、例の超人的能力者だが、あの程度の能力を以て、何故に世界を崩壊させうるような大事件を引き起こさないのか。
No.64と聞いたが、すれば番号を振り分けられる位の大多数の敵がいるのだろう。それ程の力を持ちながら、何故行動を起こさないのか。
そんな取り留めもない(本来ならば、何か閃いて行動を起こすべきなのだろうが、俺には何の意見も浮かんでこなかった)事を考えながら毎日を本当に無駄に過ごしていった。
ある日の事だ。まあ、ある日と言っても一週間後なのだが。
「一緒に帰ろー」
キャベツだった。今日は吹奏楽部だけ部活が無く、帰宅時は常に暇を持て余してる俺に、一緒に帰ろうと申し入れてきた訳である。
「おう」
当然、暇な俺は快諾する。いい加減に一人で帰るのは飽き飽きしていたし、いつもと違う事をすれば何か浮かんでくるのではないかと思ったからでもある。
家路に着く俺とキャベツ。思えば一緒に帰るのは小等部以来かも知れない。
「こうやって帰るのも久しぶりだね」
「部活に入ってからは全然噛み合わなかったもんな」
隣を歩く女子の、小等部から変わらない胸のぺったらこさと背に低さは、ランドセルを背負えばそのまま小学生に戻れるのではないかと錯覚させるほどだった。ある意味魅力的かも知れない。
「ん? あれ、なんだろ?」
立ち止まって南南東を指さすキャベツの指の先にあったのは、何かの屋台だった。
しかし、妙な屋台だった。今日はお祭りでもないし、屋台全体が黒っぽいシートで覆われていて、大凡怪しかったが、キャベツのその純真すぎる心は、その屋台をクレープの屋台だと彼女に思わせてしまったらしい。
「クレープ屋さんかなぁ?」
「違うと思うぞ・・・」

「やあ、いらっしゃい。お兄さん」
中からやけに元気な声が聞こえてくる。金髪の女性だった。見た感じでは完璧に大人というわけではなさそうだ。高校生のアルバイトでもあろうか。つか、本当にクレープ屋だったのか・・・
「ひとつください」
何処からどう見ても申し分ないくらいおかしなクレープ屋だ。クレープ屋だとわかったのは、屋台の中からは特有の甘ったるい匂いがしていたし、中を覗いてみると見慣れた鉄板やら冷蔵庫やらが置いてあったからである。まあ、怪しいことに代わりはないが。
注文を聞いて、手際好くクレープを作る店員。ただのどろどろだった生地は宛らライスペーパーのように薄く広がり、忽ち美味しそうなスイーツが完成した。ある種の道芸の様にも見えた。
「はい、出来上がりだよ。」
バケツリレー方式で俺はキャベツにクレープを渡す。
「ありがと~」
キャベツは本当に嬉しそうだ。俺も甘党であるから、その気持ちはよく分かる。
俺は貴方も如何ですかという店員の誘いを断り、代金を支払うと、さっさと下校路に戻った。

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