第三章「don't stop!」

  • 第3章「don't stop!」

あの日から何日か経った。しかし、俺の身の周りには何の変化もなかった。拘束されてからのことは何も覚えていない。
気がついたらどこかの河川敷に放り出されていた。だが拘束されたからといって、右手に謎の文様が現れたり、
突然目が三つに増えたりはしなかった。だが一つ変わったことがあった。
キャベツの態度だ。
いつものように俺がHRギリギリに教室に入っても、キャベツが以前のようにギリギリ登校記録をカウントすることはない。
ただ席に座って顔に似合わないしかめっ面をしているだけだ。
まったく。
自然とそんな声が出そうになる。いったい俺が何をしたってんだ?
前は昼飯だってよく一緒に食べてたのに。
ふと窓の外を見る。小鳥が一羽、のんきそうに鳴いていた。はぁ。
「おまえはいいよなぁ」
心からそう思う。


その頃、郊外の雑居ビル。
「南雲さん、そろそろ時間です。」
「あぁ、わかった。」
南雲と呼ばれた男は座っていたダンボールから腰を上げた。表に止めてある車に向かう。
「で?なんか分かったのか?高杉。」
「はい、一応目撃者はいたんですが、なにせ80がらみの老人で。」
言いながら高杉は車を発進させた。
南雲と高杉は城東署の刑事である。今はこの近辺に出没する不審な集団を追っている。
しかし今回の事案は主に公安部が仕切っているので、南雲たちはどちらかというと下っ端のほうになる。
「しかし公安部の連中も人使いが荒いですね、これで今日の聞き込みは12件目ですよ。」
「まったくだ。」
南雲は今日16本目になる煙草に火をつけた。
「南雲さん車内では吸わないで下さいよ!」
「おぅ、悪いな。」
二人を乗せた車はレインボーブリッジを越え、お台場に入った。

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最終更新:2008年05月09日 20:33
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