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  • 第一章「日常」※
一人の少女が泣いていた。
ここは全てが灰色だ。
そして何もいない。
説明しがたい世界。
僕はこの少女に手を差し伸べてあげたい。
差し伸べていいだろうか?
「ダイジョウブ?」
「あなたはだぁれ?」
半べそで聞いてきた。
どこかで見たことのある状況。
しかし、思い出せない。
だが、懐かしい。
僕は・・・。
この少女を知っている!
・・・・・・・・・
チュン、チュン、チュン
がばっ!!!
「はぁ、はぁ、はぁ、」
・・・・・・・・・
{またこの夢か・・・いつもここで目が覚めるな・・・何なんだ一体!}
所詮夢だがなぜか僕はあの少女が救えない。
・・・分からない・・・
「ふぅ~・・・こんなこと考えてる時間ないか、あと五分で学校のチャイムだな」
(この朝から意味分からない事を抜かしているのが、この作品の主人公、ナイト)
(私立黒龍学園中等部2年D組、所属部活無し、若干不良は言ってるように見えるが正確はヘタレ)
(担任の先生が遅いだけにHRまでならギリギリ遅刻おk)
「ギリギリ着いたな」
ガラッ
「お~暁、おはよう。いつも通りHR終了ギリギリ登校記録更新現在295日」
「朝から五月蝿いな。キャベツ。頭悪いの移んだろ。しゃべんな。」
「なんだよその態度は!ぼくにむかってそんな口きくなんてとんでもないやつだな。」
(このキャベツと呼ばれる女。本名は、櫻木 玉菜(さくらぎ たまな)暁のいい相棒で小3からの腐れ縁)
(幼馴染みと言われるだけあって結構息があっている)
(背は小さく、小柄でかわいらしい幼子のような容姿、胸は洗濯板クラス)
席に荒々しく座る。
「くか~~~」
「気持ちよく寝てるな・・・起こしたほうがいいか?」
「ん?起こしたら?」
「あぁ、おい起きろ!甲殻類!お~~~~い!起きろよ海老!真っ赤になるまで煮て食っちまうぞ!」
「ふにゃ?なに?もう学校終わった?」
「{こいつ寝ぼけてんな・・・}そうさ、もう学校は終わりだ、また明日な。」
「おぉ、暁またな」
かばんを持って出て行く
ガラッ
戸をあけて出て行く
「ご愁傷様・・・」
(いま、騙されて帰っていったのは海老原 風義(えびはら かぜよし)通称、海老)
(バカでお調子者だがやるときはやってキレると手に負えないほどの暴君)
(キャベツと同じで小3からの幼馴染み・・・以下略)
がらっ!
教室の戸が開く。みんなが一斉に見る。
「遅れてすいませんわ~。道が込んでいたものなので・・・」
「先生歩きでしょうがwww」
間髪いれずに誰かが突っ込んだ。
クラスのそいつ以外はみんな思った・・・終わった・・・と・・・
「あっ!!!やべ!!!」
「今余計なこと言った不届きものはあとで島送りですので覚悟していてくださいな」
「ひぃっっ!ど、どうか御慈悲を・・・」
「却下ですわ」
(この酷く特徴的に話すボインな先生は樫原 秋野(かしばら あきの)という先生だ)
(教師としての自覚は無し、遅刻するし、お菓子持ってきて生徒と食べてるし)
(おっとりした性格かと思いきや、口調だけで、罰はとんでもないものばかり)
キーンコーンカーンコーン
「予鈴ですわ。授業に遅れないようにお願い致しますわよ」
先生はきてから2分弱で教員室へ戻っていった。

※wiki掲載時にズレが発生するため、表記変換を行なっております。


  • 第2章「目覚め」
「んあー、今日も疲れたな。」
独り言だ。今は放課後、俺は家路に着き、夕暮れ時の学園前には、暇を持て余した部活無所属生徒と、部活に精を出す熱血かつ爽快な生徒とがいた。俺は前者だ。
キャベツは吹奏楽、海老は陸上部。皆、中等部らしく部活に励んでいるが、俺は特に優れた、または得意な種目がないので、無所属だ。何かやってもいいのだが、毎日練習する気にならない。
「・・・」
俺は一人で帰る。近くには例の幼なじみ達が住んでいるのだが、部活終了まで結構あるし、そこまで待っていたらとうに日が暮れてしまうから(というか早く家に帰りたいから)待たずに帰る。
毎日同じ道を通る。小等部の頃は寄り道もしたものだが、大して面白いことが無いと学習すると、寄り道することが無くなった。
今日は何故だろう。どうしてか寄り道したくなってしまったのだ。おそらく何か眼を惹くものがあったに違いない。
俺は、出会ってしまったのだ。出来れば出会いたくなかった奴に。奴等に。

眼を惹かれるもの。俺にとってそれは、日常には有り得ないものが中たる。今日の場合は人だった。夏時だって言うのに分厚いコートを羽織っている。
ストーキングの趣味はないが、つい追いかけてしまった。これも「奴」の能力だったのだろうか?
追いかけると、コートを羽織った奴(男か女かもわからない)が、郊外に建っていた雑居ビルに入っていくのが見えた。
「しまったな・・・」
流石にビルの中まで入っていくのは憚られ、諦めて帰ろうとした時だった。
「暁 騎士君だね・・・」
後方から声が聞こえた。低い声だった。
「はい?」
俺は、振返らず答えた。ばれたかと思ったが、せめてもシラを切る事にした。振返らなかったのは、顔を見られると色々と面倒だからだ。まあ、ばれたらばれたでいいんだが。
「騎士君だね・・・」
なおも繰り返す声。妙に低いその声は、夕暮れの喧噪にも関わらずはっきりと聞こえた。
「騎士君だね・・・」
無視しようかなと思ったが、流石に気味が悪かったので、俺は振返った。
「何ですか」
目の前にいたのは、妙に背の高い大柄な男だった。その眼はこちらを見つめ、口は閉じられていた。いくらか高圧的に話しかけ、主導を握ろうとする俺。かなり無駄だった。
「見れば見るほど力に溢れている・・・このままじゃ自分が喰われちゃうね・・・」
やはり狂気だったか、俺は逃げ出した。無駄だった。不思議なくらいに素早い動きだった。素早いって言うか早すぎる・・・これは瞬間移動だろうが!
「うわっ!」
首根っこをつかまれ、俺は文字通り拘束されてしまった。
「粗忽者だね・・・心配しなくても『能力』は僕たちが開花させてあげるよ・・・」
瀕死のこの時、何故かいつも夢に見る少女の事が思い出された。笑っていた。その笑顔は少し懐かしく、また新鮮だった。
少女の顔を想いながら、俺は「組織」に関わることになる一歩を踏み出すことになったのだった。

  • 第3章「don't stop!」
あの日から何日か経った。しかし、俺の身の周りには何の変化もなかった。拘束されてからのことは何も覚えていない。
気がついたらどこかの河川敷に放り出されていた。だが拘束されたからといって、右手に謎の文様が現れたり、
突然目が三つに増えたりはしなかった。だが一つ変わったことがあった。
キャベツの態度だ。
いつものように俺がHRギリギリに教室に入っても、キャベツが以前のようにギリギリ登校記録をカウントすることはない。
ただ席に座って顔に似合わないしかめっ面をしているだけだ。
まったく。
自然とそんな声が出そうになる。いったい俺が何をしたってんだ?
前は昼飯だってよく一緒に食べてたのに。
ふと窓の外を見る。小鳥が一羽、のんきそうに鳴いていた。はぁ。
「おまえはいいよなぁ」
心からそう思う。


その頃、郊外の雑居ビル。
「南雲さん、そろそろ時間です。」
「あぁ、わかった。」
南雲と呼ばれた男は座っていたダンボールから腰を上げた。表に止めてある車に向かう。
「で?なんか分かったのか?高杉。」
「はい、一応目撃者はいたんですが、なにせ80がらみの老人で。」
言いながら高杉は車を発進させた。
南雲と高杉は城東署の刑事である。今はこの近辺に出没する不審な集団を追っている。
しかし今回の事案は主に公安部が仕切っているので、南雲たちはどちらかというと下っ端のほうになる。
「しかし公安部の連中も人使いが荒いですね、これで今日の聞き込みは12件目ですよ。」
「まったくだ。」
南雲は今日16本目になる煙草に火をつけた。
「南雲さん車内では吸わないで下さいよ!」
「おぅ、悪いな。」
二人を乗せた車はレインボーブリッジを越え、お台場に入った。

  • 第4章「その日々にサヨナラ」
また、夢を見た。
少女がまた泣いていた。
灰色の世界でまた泣いている。
またか・・・ そう思いながらも手をさし伸べた。
するとどうだろう。今まで掴めなかった小さな手が掴めた。
とっさに一言
「だ、だいじょうぶだよ」
悲しそうな顔を上げてこちらを見る。
「あなたはだぁれ?」
陶器のように白く、氷のように冷たい腕。
「!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
あらわし様の無い鳥肌。
な、なんだ!このプレッシャーは!この少女から感じられる・・・なんだ?
体中が銃弾に貫かれ、ナイフを投げられ、倒れこんでいる。それほどの恐怖感。いや、それ以上だ。
喋れない。動けない。直視する事さえままならない。なのに頭だけは働く。
なにか行動しようとすれば死ぬ。
「・・たも・・・・のかしら?」
なんか喋ってる。
「あなたもかくせいしたのかしら?」
はぁ?何言ってんだこの女?いやその言い方は適切ではない。化け物だ
「まぁいいわ。いずれわかる。」
くっ!またプレッシャー!違う!これは何だ?!プレッシャーじゃない。
なんだ?ち、力の塊ぶつけられてるみたいだ!
「がんばってね。わたしのなまえは・・・」
はっ!!!
なんだ?なんだ?なんだ?
カーカーカー
烏?
俺はいつの間にか起きていた。しかし、いつもと違う。
いつも見る夢が違う。鳴いてる鳥も違う。
朝なのに烏?なぜに?
シャッ カーテンを開くと烏が朝っぱらから大合唱中だった。なんで?意味不明。
学校に行くほうが優先だな。制服、制服。
「いつも通り。あと5分だな。」
学校に入った瞬間に鐘が鳴る。いつも通りだ。
がらっ
「おい暁!また遅刻か!いつもいつも遅いんだよ!もう高2だろうが!しっかりしろ!早く席つけ!」
そうだ、そうだ。俺はもう黒龍学園高等部2年だったな。しかも、またD組。キャベツと海老がまた同じクラスっていうと事に腐れ縁を感じる。
秋野ちゃんが居ないのが残念だ。男教師は何かとうるさいしな。秋野ちゃんがルーズなだけか?そんなことないか。そうしよう。
黙って席についた。じっくり今日の夢について考えよう。
「またまた騎士遅れて登場」
「二人同時に話しかけるな」
なにか考えようとした矢先にこれか。付いてねぇな。
「今日は浮かない顔していたから、励ましてあげたんだ。僕に感謝しろよ。」
「なんで、俺のすねを蹴りながらそんな事が言えるな」
「キャベツなりの愛情表現だろ」
「僕の下僕としての躾と言って欲しいものだな。甲殻類」
「二人ともちんじまえ」
しかし、その時は刻一刻と近づいていた。非日常の入り口に。
暇だなー。下校途中に思う。毎日こんな感じだ。あいつらは部活だな。よく続くよ。
毎日、日課のあんぱん食いながらオレンジ100%ジュースを飲んでいた。
深紅の夕日に囲まれている。河川敷が見える。
河川敷といっても、春になれば桜が河を敷き詰めるほどの花びらが流れてくる。
イメージするなら京都の河かな?でも周りが蔵や納戸だれけで人気が無いんだよな。
こんなとこが東京にあるなんて超以外だ。
あそこは俺が拘束されて捨てられた場所だな。今でも嫌な思い出だ。確か最後は、
「能力が覚醒しない奴は要らないんだ。」「検討違いだったみたいだな。」「期待して損した。」
とか言われたっけな。まぁ何言ってるかわからなかったし、帰れたならそれでいいや。
夕日が目に刺さる。こういう光景は悪くない。むしろ好きだ。今は秋だから、夕焼けが余計に映える。
ジュースを一気に飲み干す。
ズッ、ズズズッズーッズズズー
「ずいぶんと遅い下校だな。騎士先輩。」
!びびった。「だれだ?」前を見る。蔵に寄りかかって話しかけてくる。制服からしてうちの学校の1年だ。しかも男。
「すいませんね~呼び止めたりして。」
「ずいぶん挑発的だな。」暇だったし、どうせ因縁でもふっかけてんだろ。俺もそこそこマーシャルアーツできるからな。そこらの喧嘩じゃ負ける自身がねぇ。
背丈は・・・俺と同じか。180ちょいだな。あまり制服の乱れも無い。不良じゃなさそうだな。
「お前部活はしてねぇのか?」
「してたらこんな時間に先輩に挨拶しませんて。」
だろうな。なら安心だ。ボクシング部とかだったらどうしようかと思ったぜ。
俺が三歩歩み寄る。「お前名前は?」一様聞こう。
「今から死ぬ奴が名前聞いてどうする?死神とでも覚えておけ。」
「なら殺ってみろ」全力ダッシュ!こういう時はひるんだほうが負だ。残り二歩で蹴りが届く所まで行ったが、消えた?居ないぞ?なんぞ?
「おいおい、敵を見失ってどうする?」後方から声がする。まさか・・・!!!!!!
なぜお前がそこに居る?!何だあいつ。瞬間移動でも出来るのか?ん、まてよ。瞬間移動・・・・・・あ、!俺は四年前あれと同じ移動方法を見たことがある。
そう、あの妙に背の高い大柄な男が使っていた!「てめぇ、何もんだ?」
「だから死ぬんだから、聞いたってしょうがないんだってヴぁ」なめてんのか?なんだ?最後の「ヴぁ」って?殺してやりたい。でも、無理だろう。
構えを取る。ただしぬのも嫌だからな。
「無駄無駄あぁぁ!!!」
!!!!!!いつの間に目の前に!ちぃっ!
構えていた右のストレート。入ったか?もろ止められていた。
「ふっははははははは!次を早く出せよ。」舐められてるな。
軽く右手を止められた上にこの態度。しかも、俺の右手を離すだと?ふざけんな!
軽くはなれ、呼吸を整え・・・いざ!いっけー!!!俺のハイ!!
ハイキックを出すが・・・あっ、当たってる。もろ顔面。
「痛くねぇ。覚醒前ってのは本当だったな。まぁいいだろ。いいキックだったぜ。貸し1だ。」
男は、大丈夫、すぐに借り返すから。といった表情でこっちを見ていた。
「はぁーーー!!!」掛け声と共に空を架ける虹のように放物線を描いて飛んでいた。
ボスッ!ドサッ!
蔵に直撃したか?イッテー。冗談きついぜ。7メートルちょい飛ばされたか?
でも、受身は取れた。なんとかな。しかし、何にもしてないのに、叫んだだけで飛ばされた。なぜ?でも今は前を見ろ!
「受身取ったか。運動能力は並大抵じゃなそうだな」
目の前に立つ学ラン男。「しゃーない。一撃で殺すか。」男がその言葉を発した瞬間、
!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
これは、夢で味わった力の塊!何でこいつからこんなもの感じ取れる!
一瞬思い出してしまった。あの旋律を恐怖を。
喋れない。動けない。直視する事さえままならない。なのに頭だけは働く。
なにか行動しようとすれば死ぬ。
あのときのまんまだ。
ドンッ!!!!
引力が当社費7割増しぐらいの圧迫感。大気が凍っている。比喩の表現じゃない。ほんとに、ほんとに、動けないほど寒い。
でも、なぜだろう?あの少女の50/1程度も怖くない。イメージで言うならば、チュパカブラに威嚇されている程度。ほとんど怖くない。
何とか立つ。ふらふらだ。男の顔も直視できた。!!!なんだ?この蒼いオーラは?
「見えるか?本来ならばお前も持っている筈だがな。見せてみろよ。」
なんのことだかさっぱりだ。
「お前も早く使え。それまで手は出さん。」
俺もあれが使えるって?バカだろ。どこぞのCG使わない限り無理。てか、あれなんだよ!
容姿が変わったわけではない。でも、威圧感がある。これは間違いない。ライオンが前にいるのってこんな感じだろう。
「来いっつてんだろ!あー、忘れてた。こいつ覚醒してねーんだ。ホンジャサイナラ」
軽く右手を上げる。残像が見える。それほど恐怖しているんだろうか。悔いはあるが仕方にな。怪物相手だし。
ファンファンファンファンファンファン ドンッ! ギョギョギョッ!
一台のパトロールカーが男に突っ込んだ。
ドアから出てきた2人の刑事。一人は若めの刑事が運転席から出てきた。もう一人は体がおおきい中年だった。
「高杉!おまえ、目撃者の保護をやれ!」
高杉と呼ばれた男が俺に近寄ってきた。「大丈夫・・・んなわけないか。歩ける?」頷く。
「じゃあ、悪い。パトカー乗ってて。一様外にいるよりは安全だから」言われるままにする。
2人は銃を構えながら蔵に入っていった。さっきの男は蔵に飛ばされたらしい。てか、待て。
何で警察がここにいるんだ?そんなことよりも、あいつらが装備している銃って・・・
普通の日本警察はニューナンブだよな。なんで若い方がM92Fなんだ?
おじさんのほうは、!パイソンかよ。どんだけ。しかもあの胸にあるのガバメントじゃね?やっべ。どういう事?
ドン!ドン! ズキューン! ズキューン! ドン!ドン!
早速、発砲音。発砲許可は?
ドン! ドス! ゴロゴロゴロ
転がってきた刑事2人。ヤバクね?
蔵から出てきた蒼い闘気が飛んできて、パトカーのボンネットに着地。ゴッドン!
逃げよう!これはまず過ぎる!ガチャ!・・・ボンネットからの瞬間移動ですかいな?
もちろん、といった顔でアイアンクロー。
「がっ、あ、・・・・なんで、・・おれ・・が。」もがいても無駄だ。今度阻死ぬのか?一回死に掛けたんだ。どうと言う事は無い・・・わけねぇじゃねーか!
最後の力を出し切って、顔面を蹴る。直撃・・・。直撃した・・・。直撃したが、ビクともせず。睨んでいる。鬼の形相とは正にこれだ。大正解だ。
「おまえ、死にてーのか?」超睨んでる。
素直な言葉が出てしまった。「死にだぐないです・・・」てか、こいつ俺を殺すのか、逃がすのか早くしろよ!
「まぁ、殺すがな」ちょwwwおまwwww「死、死にだぐ無いです!」
「却下」グニョ!腕が心臓を射抜いていた。グーパンチだった。嫌な感触が伝わる。しかし、一瞬で感じ無くなる。
地面に落とされる。「あーーーぁ」
世界が歪む。体が冷めていく。指先の末端から感覚が消えていく。
「こふっ」一度だけ口から血を吐いた。
血液はゆっくりと淀んでいて、壊れて地を撒き散らす筈の心臓は、ただの一刺しで綺麗に活動を停止していた。
よく見えない。感覚が無い。暗い夜の海に浮かんでいるクラゲのよう。
世界が灰色、自分だけが真っ黒だ。
自分が死んだというより、まわりの全てがなくなったような感じ。
この世界は、知っている。少女のいた世界だ。
「あなた、またここにきたの?」倒れている俺の視界には少女が一人。何にも出来ない。
「おともだちはほしいけど、あなたのようなはんにんまえはいらないの。だから、いちにんまえになって。」
何も感じない。ただ、なぜだろう?指先が温かい。!!!!視界が広がってゆく。体の末端から温かさが感じられる。
少女は!周りを見る。少女が手を握っている。夢では感じられなかった、暖かい温もり。夢と真逆だ。
「あなたにはめざめのちからだけあたえました。ぞうふくはできるかできないかはあなたじしんできまります。さぁいきなさい。はどうのちいさき子らよ」
そういい残してその子は去っていった。どちらかと言うと消えた。
はっ!あの男は!闘気を出しながらも帰ろうとしていた。 あいつ、人殺しておいて、テメェは帰る気かよ!
ぶっ殺してやる!ぶっ殺してやる!!!
「くぅっ・・・・」胸が騒ぎ始めた。まるで静寂の中で水溜りに水が一滴落ちるような、そんな感覚。
こんな感覚にびびってんじゃねぇ!奴ヲブッ殺ス!
地面を一蹴りしただけで10メートル並の跳躍が出来た。その勢いに任せて真後ろから一発ぶん殴る。
ズゴーーーーーーン!男が吹っ飛ぶ。追い討ちでさらにもう一発。地面に着地した瞬間にジャンプ&キック!
スーパーイナズマキックさながらの上空落下蹴り。
あらわし様のない音で決着はついた。と思った矢先。なにか、強大な力に押されて吹っ飛んだ。
なんだ?真っ青な闘気が瞬間移動してくる。そして、躊躇なくブロー反応できたが防げない。
「不意打ちなんて卑怯だなぁ。先輩よぉ!」次は顔面だった。ブウォンという空気を切り裂く音がした。
避けたぞ。しかし、奴の手のひらが俺の目の前に・・・ あとはさっきと同じように吹っ飛ばされた。
アイツニ使エンナラ、俺ニダッテ!全・速・全・進。パンチのラッシュのあとよろめいた敵に関節が決まる。
グギョリ!逝ッタナ。そう確信した俺は折った腕から抜け出し敵の顔面に自分の手のひらを押し付けた。そして、見よう見まねで力を篭めてみた。
「ハァーーー!」0距離ではなった力は相当強力だったせいか、蔵を2~3件突き破って止まった。
後を追ってみたが、奴の姿はなかった。そのとき俺は若干紅い闘気を纏っていたと刑事さんは言っていた。
気が付くとそこは窓の無い病院だった。そこで刑事さんから話を聞いた。
「おぉ、目が覚めたか。高杉、椅子持って来い。」
「あ、はい」高杉とよばれた人が走ってパイプ椅子を2つ持ってきた。
俺はベッドから起き上がり刑事の顔を見た。これでこの2人に合うのは3度目になる。
「大丈夫かね。起き上がっらなくてもいいんだぞ」
「大丈夫です。南雲さん?と高杉さん?でしたっけ。いろいろありがとうございます。」
「いえいえ。こちらこそ。で、早速本題なんだがね。」足を組み、話し始める南雲さん。
「キミは先日、男と戦ったね。それは覚えてるよね。」、探るように言い始めた。
「私たちはあのようなオーラを纏った奴らを未確認生物として探しているんだ。あれはNo.64」
「そんなにいるんですか?」「いいや、実際はもっとだ。あいつ等は恐ろしい。超人的な肉体にスーパーヒーローのような運動能力。それだけじゃない。この2つが全くダメでも恐ろしい能力を持った奴がいるらしい」
とんでもない話を聞いてしまった。たくさんいるのに加えて、能力までだと?ふざけるのも対外にしろ。
「こいつらの力の源は波動だ。我々はそう呼んでいる。高杉、詳しく説明してやれ」
「はい、奴らは波動と呼ばれる力を持ち、高速瞬間移動や衝撃波などを可能にしています。そして、それを使いこなせる肉体能力も兼ねています。」
「我々がわかる事はそれだけだ。」なんてことだ。それじゃまるで超能力者じゃないか。変態じゃないか。
「刑事さん、俺をここから出してください。独自で捜査したいと思います。」
「いいのか?それは行動を起こすと同時に日常が狂い始めるぞ。」
「覚悟は出来てます。だから、あいつらが何をしているのか知りたいです。自分も無関係じゃないんで。」
「そこまで言うなら止める理由は無い。」刑事さんはそう言うと2日で病院から出してくれた。
「ここでお別れだ。この紙もっていけ。連絡先が書いてある。情報交換をしよう。おたがいな。」
「はい、それでは。」
自分でも波動の使い方は分かっている。自分の見えないスイッチをONにすればいいのだ。
そのほかは、そのうち学んでいく。ひとまず学園に行こう。いままで通り学園には毎日通おう。
調査は学園に行きながらでも出来る。たまに授業居なくなったりするかも知れないけど。
俺はこう思い、学校に行った。襲われて一週間になる。日常の生活から非日常になってしまった。でも、学校に着いたにはいつもの5分前だ。

  • 第5章「改変」
いつも通りだ。いつも通り五分前に登校し、いつも通り席に着く。
捜査したいとは言ったものだが、いざとなると俺には一体どのような力があり、いつ、どのような形で発揮されるのかよく分からない。家に帰ってから、試しに力を篭めてみたが、結果は皆無に等しく、撃ちたいと願っても効果はなかった。
わかる事は、俺はとんでもないことに首をつっこんじまったこと、俺には尋常ならざる能力があること(ただし制約付き)。
あの刑事達は言った。「日常が狂い始める」と。
実際・・・俺は通常と変わらぬ日常を過ごしてしまった。今日もいつも通り五分前に以下略・・・。

非日常から日常に移って一週間が経った。
狂うと言われた日常は変化を見せず、俺には分からないことだらけだった。
奴等、例の超人的能力者だが、あの程度の能力を以て、何故に世界を崩壊させうるような大事件を引き起こさないのか。
No.64と聞いたが、すれば番号を振り分けられる位の大多数の敵がいるのだろう。それ程の力を持ちながら、何故行動を起こさないのか。
そんな取り留めもない(本来ならば、何か閃いて行動を起こすべきなのだろうが、俺には何の意見も浮かんでこなかった)事を考えながら毎日を本当に無駄に過ごしていった。
ある日の事だ。まあ、ある日と言っても一週間後なのだが。
「一緒に帰ろー」
キャベツだった。今日は吹奏楽部だけ部活が無く、帰宅時は常に暇を持て余してる俺に、一緒に帰ろうと申し入れてきた訳である。
「おう」
当然、暇な俺は快諾する。いい加減に一人で帰るのは飽き飽きしていたし、いつもと違う事をすれば何か浮かんでくるのではないかと思ったからでもある。
家路に着く俺とキャベツ。思えば一緒に帰るのは小等部以来かも知れない。
「こうやって帰るのも久しぶりだね」
「部活に入ってからは全然噛み合わなかったもんな」
隣を歩く女子の、小等部から変わらない胸のぺったらこさと背に低さは、ランドセルを背負えばそのまま小学生に戻れるのではないかと錯覚させるほどだった。ある意味魅力的かも知れない。
「ん? あれ、なんだろ?」
立ち止まって南南東を指さすキャベツの指の先にあったのは、何かの屋台だった。
しかし、妙な屋台だった。今日はお祭りでもないし、屋台全体が黒っぽいシートで覆われていて、大凡怪しかったが、キャベツのその純真すぎる心は、その屋台をクレープの屋台だと彼女に思わせてしまったらしい。
「クレープ屋さんかなぁ?」
「違うと思うぞ・・・」

「やあ、いらっしゃい。お兄さん」
中からやけに元気な声が聞こえてくる。金髪の女性だった。見た感じでは完璧に大人というわけではなさそうだ。高校生のアルバイトでもあろうか。つか、本当にクレープ屋だったのか・・・
「ひとつください」
何処からどう見ても申し分ないくらいおかしなクレープ屋だ。クレープ屋だとわかったのは、屋台の中からは特有の甘ったるい匂いがしていたし、中を覗いてみると見慣れた鉄板やら冷蔵庫やらが置いてあったからである。まあ、怪しいことに代わりはないが。
注文を聞いて、手際好くクレープを作る店員。ただのどろどろだった生地は宛らライスペーパーのように薄く広がり、忽ち美味しそうなスイーツが完成した。ある種の道芸の様にも見えた。
「はい、出来上がりだよ。」
バケツリレー方式で俺はキャベツにクレープを渡す。
「ありがと~」
キャベツは本当に嬉しそうだ。俺も甘党であるから、その気持ちはよく分かる。
俺は貴方も如何ですかという店員の誘いを断り、代金を支払うと、さっさと下校路に戻った。


  • 第6章「芝公園攻防戦」※


          No64との戦闘についての報告書        



                      報告者 南雲しのぶ
                            高杉章吾



   先日の戦闘で交戦した「No64」は、これまで確認されたNo63までの
   能力者とは明らかに異なり、瞬間移動や自動治癒など、より高度な
   能力を使用していた。これは、「組織」がこの4年の間に研究をよ
   り進めたためと思われる。
   今回の事例より判断するに、「組織」の技術力は4年前とは比べ物
   にならない程向上している。
   警察庁上層部の早急な判断を願う。

   なお、今回の戦闘の際にある民間人の少年からも「No64」とは違う
   種類の能力が観測された。    





「ふぅ・・・」
南雲は報告書を作り終えると、スーツからタバコを取り出した。
「あれ?」
内ポケットをまさぐるが、ライターがない。先日の戦闘の際に落としてしまったようだ。
「おい高杉、ライター持ってないか?」
「料理しない人に包丁持ってるか?って聞くぐらい野暮です。」
にべもなく返され、しょうがなく南雲はタバコをしまった。そうかあいつは禁煙中だった。
どこかで100円ライターを調達する必要がある。
「ちょっとコンビニ行ってくる。」
「はい。」

南雲は警察庁のビルを出ると、桜田通りを南に歩いた。
警察庁から最寄のコンビニは外務省や経済産業省を超えた先にある。

「いらっしゃいませー」
虎ノ門のセブンイレブンに入る。早速ライターを確保した。
ついでに高杉にも何か買っていってやろう。
そう思い、ふと窓の外に目をやると、
ファンファンファン!!
パトカーが数台、物凄いスピードで走って行った。
さらにそのあとには機動隊の車両も。
何か起こったのだろうか。急いで代金を払い、とりあえず高杉に電話をしてみる。
『高杉、今目の前をパトカーと機動隊が通って行ったんだが。』
『そのことを連絡しようと思っていたところです。』
『いったい何があった。』
『「組織」が動き始めました。』
それだけ聞くと南雲は携帯をバチン!と閉じ、走って警察庁へ戻り始めた。

同じころ、東京タワー周辺。
そこはまさに地獄絵図となっていた。
蜘蛛のような甲殻類のような奇怪な生物が人々を襲っている。
通報を受けて急行した若い警察官は、その光景に息を呑んだ。
「直ちに避難してください!」
言われんでも皆そうしている。
『発砲許可を!』
携帯無線機に怒鳴ってみる。が、帰ってきたのは、
『民間人の避難誘導を最優先せよ。』
という、とうてい無理な注文だった。
畜生。
こんなことになってるのに、奴らに拳銃すら撃ってはいけないのか。

「現在、桜田通りは飯倉交差点、赤羽橋南より封鎖、国道301号線も東京タワー前交差点、芝学園下で封鎖中です。」
「現在の負傷者数は?」
「およそ200人を超えていると思われます。」
「死者は?」
その質問に、警視庁大会議室の空気が一瞬だけ凍った。
「およそ・・・50人・・・です。」
「そうか・・・」
警視総監が沈痛な顔で応じる。
「警備部長。」
「は。」
「SAT、ならびに銃器対策部隊の出動を命ずる。」
「了解しました。」
「それと現場に対策官として警察庁から2名が出向する。」
「は・・・?」
長年のキャリアである警備部長もさすがに困惑した。
なぜこの事案に警察庁が関わるのか?
しかし警視総監の命令なら仕方がない。
「了解しました。」

現場では急行した各機動隊、また近隣の署員により、ほぼ避難、封鎖が完了していた。
そこへ、応援の第6機動隊、第7機動隊からの銃器対策レンジャー部隊、第8機動隊からの銃器対策部隊、そしてSAT
が到着した。
SAT隊長、衣笠武彦警視が降車する。
「総員下車!」
黒いバスから、短機関銃MP5を携帯した隊員達が次々と降りてくる。
同じように第6機動隊のバスからも、MP5を持った部隊が降りてきた、こちらは銃器対策部隊だ。
SAT並びに各銃器対策部隊は、各封鎖ポイントの交差点より機を見て突入、機動隊の援護のもと、
生物を掃討することとなった。
しかし、衣笠は思う。「あれ」にサブマシンガンなんぞが効くんだろうか。

警視庁の職員から睨まれつつもなんとか覆面パトカーを一台確保した南雲と高杉は、
桜田通りを南下し、現場に向かっていた。しかし、東京タワーに近づくにつれて
渋滞に巻き込まれてしまった。避難しているらしい。
「どうします南雲さん?」
「今どのへんだ?」
「えーと・・・虎ノ門三丁目です。」
「よし歩くぞ。」
「車は?」
「警察の車盗む馬鹿はいないと思いたいね。」
言いながら車を降りる。
しかし歩道も避難しようとする人でごった返している。
どうもデマで半ばパニック状態らしい。
「盗む馬鹿もいそうですよ。」
警察手帳を振りかざして見るも、パニックに陥っているこの状況では役に立ちそうもない。
仕方なく南雲と高杉は人並みをかき分けることにした。いわゆる強行突破である。
しかし避難も進んだらしくニッセイ虎ノ門ビル辺りまで来ると人波もなくなった。
神谷町交差点には常駐警備車や小型警備車、遊撃放水車が並んでおり、通りを完全に封鎖していた。
「警察庁の南雲だが。」
とりあえず立ち番をしている機動隊員に手帳を見せてみる。
「サッチョウの奴が何の用だ。」
「とりあえずお前じゃ話にならん、機動隊長を呼んで来い。」
それからひと悶着起こしてやっと第5機動隊長に話を通し、ようやく2人は現地警備本部に入ることができた。

「まず『組織』とは何だ?」
「は。『組織』はおよそ5年前から存在が確認されている謎の集団です。」
「何も分からないぞそれじゃ!」
「まぁよかろう、今回の事件には関係ない。」
警備部長がうまくフォローしてくれた。
「それで南雲君。君は「あれ」に我々の武器が効くと思うかね?」
脳裏に浮かんだのは先日の戦闘だった。No64。
しかし今回の生物には報告を見る限りではNo64のような瞬間移動や自動治癒などの能力はないらしい。
「おそらく。」
「分かった。」
「15時30分より、SAT並びに銃器対策部隊は機動隊の援護の元各封鎖点より一斉に突入。
 『奴ら』に占拠されている芝公園内を奪還せよ!」
南雲は時計を見た。14時47分。あと40分ほどで、芝公園内は戦場となる。

現地警備本部のテントから外に出ると、南雲と高杉は封鎖線をぐるり回ってみることにした。
すると目の前に置かれていた封鎖用フェンスが突然ガシャン!と吹き飛ばされた。
南雲と高杉は目を見張った。
ちょっとした牛ほどの大きさのバケモノが目の前にいる。
口と思われる部分には牙のついたアゴがあり、そこには血が滴っている。
足は6本。そして目は1つ。
こいつは地獄のモンスターだ。と南雲は思った。
バケモノは2人を見つけると巨体に似合わぬスピードでこちらへ向かってきた。
動くたびにガシャガシャと音がする。
「高杉!走れ!」
しかし高杉は腰が砕けて走れないようだ。
「走れっつってんだろうが!!」
「は、はい!」
ようやく我に帰った高杉も走り始める。しかしバケモノのほうが早い。
「くそ!」
仕方なく腰のSIGP226を引き抜く。
ズガァン!ズガァン!ズガァン!ズガァン!
致命傷にはならなかったようだが、牽制にはなった。バケモノがこっちへ向かってくる。
「っ!」
さっき高杉を追っていた時より速いスピードでバケモノがこっちへ向かってきた。
ズコォン!ズコォン!ズコォン!ズコォン!ズコォン!ズコォン!
見ると高杉がいつの間にかベレッタを構えている。
バケモノもさすがに9mmパラベラム弾を10発も食らっては無事ではなく、体中から緑色の体液をぶちまけている。
銃声に気づいた機動隊員がこちらへ向かってくる。
「大丈夫か!」
「担架こっちに回せ!」
「フェンス直せ!」
「化学防護班呼んで来い!」
次々と指示が飛ぶ。
しかしとんでもないバケモンだ。南雲は改めてそう思った。


15時30分。予定通りに警察部隊の突入が開始された。
封鎖用フェンスが開いたとたん、バケモノどもはそちらに突進し始めた。しかしそこへ、あらかじめ周辺ビルに布陣していた
狙撃班による狙撃が行われた。
M700やPSG-1の7.62mm弾により、フェンス周辺のバケモノは一掃され、SATや銃器対策部隊の突入が開始された。

ガス筒発射器を構えた機動隊員達が一列に並ぶ。
「ガス銃水平発射よーい!」
「撃てっ!」
ガス弾が芝公園のあちこちに落下する。ガス銃の水平撃ちは本来禁止されているが、相手が相手だけにしょうがない。
ガス弾が直撃したバケモノが怒り狂って機動隊員のほうへ向かってくる。
「退避!」
機動隊が退避したところへMP5を持ったSAT隊員が現れ、一斉にMP5を発射した。
南雲たちの自動拳銃で倒されたようなバケモノが短機関銃の連射に耐えられるはずもなく、バケモノたちは次々と息絶え
ていった。

『本部より各隊員へ、突入開始。』
SAT突入第2班、古森郁巡査部長も仲間たちとともに突入した。
東京タワー前交差点から芝公園32森ビルへ。
タワー周辺の駐車場確保が目標である。
早速目の前にバケモノ1体。MP5は既にセーフティを解除している。
ドタタタタタタタタ!!
本来はセミオートで撃つべきところだが、事が事なのでフルオート射撃だ。
仲間たちも各々射撃を開始している。
ドタタタタ!ドタタタ!ドタタ!ドタタタタタ!
至る所から射撃音がする。そして次々に斃れるバケモノ達。
古森たちは東京タワーの東側を確保した。あとはタワー下交差点からの突入部隊を待つだけだ。
しかしひどい光景だ。古森はそう思った。
観光バスはひっくり返されている。アスファルトもあちこちが掘り返されている。
そしてそこら中に広がる赤い血だまり。中心にあるはずの遺体は見えない。
改めてバケモノが憎くなってきた。
と、背後に怪しい気配。
振り返りざまMP5を撃つ。
気づけば茂みの中からバケモノたちがこっちに向かってきている。
100・・・200?
どっちにしろ自分たちだけで対処できる数ではない。
「班長!指示を!」
「後退!」
射撃しつつ突入口へ後退する。
その時、班内で最年少の和泉が転倒した。
「和泉!」
「戻れ古森!」
無視して和泉の援護に向かう。
「あの馬鹿が!」
言いながらも班長もこっちへ向かってくる。
しかし目の前にはバケモノたち。和泉も私もMP5を撃つが、さすがに無理がある。
突然班長はバケモノたちと全く違う方向を撃ち始めた。
「班長!なにやって・・・」
ドオォォォン!!!
言い終わらないうちに大爆発が起きた。
どうやら班長はひっくり返ったバスを撃っていたらしい。
バケモノたちも驚いているようで、前進してこない。
「行くぞ!」
私は和泉を半分引きずりながら指示に従った。

「現在の状況は?」
警備部長が聞く。
「再突入により東京タワー周辺を確保。メソニックビル、オランダヒルズ森タワーも確保。現在
 芝学園と機械振興会館内で戦闘中。」
「警備部長、ヘリからの映像が入りました。」
「繋いでくれ。」
モニターに空撮映像が映し出される。
「おおとり2号からです。」
空から見る東京タワー周辺はまるで戦場だった。
そこら中から煙と炎が立ち上っている。
そして各所に残る赤い血。緑の体液に比べれば量は少ないものの、ビジュアル的な強烈さは段違いだった。
「・・・これが『組織』か?」
警備部長はそう呟いた。

機械振興会館の制圧もあらかた完了し、古森の班の任務は生存者の救出と残るバケモノの掃討となっている。
「次はここの部屋だ。」
なかなか広い部屋だ、制圧も簡単だろう。ドアの両脇に立つ。
「1・2・3!」
突入。誰もいなかった。
いや、1人いた。少年・・・?とにかく誰かが部屋の奥に立っている。
「君、大丈・・・」
言い終わる前に少年は消えてしまった。
消えた?瞬間移動?超能力?訳がわからない。
目撃した他の隊員達も呆然としている。
「・・・制圧完了!」
班長がようやく口を開いた。


17時51分。機械振興会館の制圧も完了し、芝公園からバケモノは一掃された。


その頃、東京タワーからそれほど遠くないビルの屋上。
2人の男が喋っている。
「ふぅん・・・やはり実験体ってのは駄目だな、短機関銃ごときにやられてしまうとは。」
「ま、いい実験になったんじゃないですか?」
「そうだな。」


バケモノは掃討されたものの、死骸の片づけやら消毒やらで東京タワー周辺は2週間封鎖されることになった。
古森は道端に腰掛け、缶コーヒーをあおってていた。
「はー、わたしの癒しポイントがまた一つ・・・」
「なーにゴチャゴチャ言ってんだ古森?」
「げ、班長。」
「お前東京タワーが癒しポイントだったのか?」
「悪いんですか?」
「いや別に。」
「だったら話しかけないでください。」
「いやぁ・・・その・・・」
なんだいったい。班長らしくもない。
「今度食事にでも行かないか?東京タワーの代わりになるかはわからんが。」

「だが断る。」


南雲はガードレールにもたれ掛かっていた。
「今日はご苦労様でした。」
高杉がこっちへ向かってくる。
「しかし『組織』も何がしたかったんでしょうね?」
知るか。と答えかけるが、
「さぁ、何だろうかね。」
何にせよ今回の事件で組織は本格的に動き始めた。つまり、これからはもっと忙しくなる。
まだゆっくりできるうちにゆっくりしておきたい。
懐からタバコを取り出す。
「南雲さんタバコは駄目ですってば!」
「へいへい。」

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