第二章「目覚め」

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第二章「目覚め」」(2008/05/09 (金) 20:28:07) の最新版変更点

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-第2章「目覚め」 「んあー、今日も疲れたな。」 独り言だ。今は放課後、俺は家路に着き、夕暮れ時の学園前には、暇を持て余した部活無所属生徒と、部活に精を出す熱血かつ爽快な生徒とがいた。俺は前者だ。 キャベツは吹奏楽、海老は陸上部。皆、中等部らしく部活に励んでいるが、俺は特に優れた、または得意な種目がないので、無所属だ。何かやってもいいのだが、毎日練習する気にならない。 「・・・」 俺は一人で帰る。近くには例の幼なじみ達が住んでいるのだが、部活終了まで結構あるし、そこまで待っていたらとうに日が暮れてしまうから(というか早く家に帰りたいから)待たずに帰る。 毎日同じ道を通る。小等部の頃は寄り道もしたものだが、大して面白いことが無いと学習すると、寄り道することが無くなった。 今日は何故だろう。どうしてか寄り道したくなってしまったのだ。おそらく何か眼を惹くものがあったに違いない。 俺は、出会ってしまったのだ。出来れば出会いたくなかった奴に。奴等に。 眼を惹かれるもの。俺にとってそれは、日常には有り得ないものが中たる。今日の場合は人だった。夏時だって言うのに分厚いコートを羽織っている。 ストーキングの趣味はないが、つい追いかけてしまった。これも「奴」の能力だったのだろうか? 追いかけると、コートを羽織った奴(男か女かもわからない)が、郊外に建っていた雑居ビルに入っていくのが見えた。 「しまったな・・・」 流石にビルの中まで入っていくのは憚られ、諦めて帰ろうとした時だった。 「暁 騎士君だね・・・」 後方から声が聞こえた。低い声だった。 「はい?」 俺は、振返らず答えた。ばれたかと思ったが、せめてもシラを切る事にした。振返らなかったのは、顔を見られると色々と面倒だからだ。まあ、ばれたらばれたでいいんだが。 「騎士君だね・・・」 なおも繰り返す声。妙に低いその声は、夕暮れの喧噪にも関わらずはっきりと聞こえた。 「騎士君だね・・・」 無視しようかなと思ったが、流石に気味が悪かったので、俺は振返った。 「何ですか」 目の前にいたのは、妙に背の高い大柄な男だった。その眼はこちらを見つめ、口は閉じられていた。いくらか高圧的に話しかけ、主導を握ろうとする俺。かなり無駄だった。 「見れば見るほど力に溢れている・・・このままじゃ自分が喰われちゃうね・・・」 やはり狂気だったか、俺は逃げ出した。無駄だった。不思議なくらいに素早い動きだった。素早いって言うか早すぎる・・・これは瞬間移動だろうが! 「うわっ!」 首根っこをつかまれ、俺は文字通り拘束されてしまった。 「粗忽者だね・・・心配しなくても『能力』は僕たちが開花させてあげるよ・・・」 瀕死のこの時、何故かいつも夢に見る少女の事が思い出された。笑っていた。その笑顔は少し懐かしく、また新鮮だった。 少女の顔を想いながら、俺は「組織」に関わることになる一歩を踏み出すことになったのだった。 ---- -[[次のページ>第三章「don't stop!」]]
-第2章「目覚め」 「んあー、今日も疲れたな。」 独り言だ。今は放課後、俺は家路に着き、夕暮れ時の学園前には、暇を持て余した部活無所属生徒と、部活に精を出す熱血かつ爽快な生徒とがいた。俺は前者だ。 キャベツは吹奏楽、海老は陸上部。皆、中等部らしく部活に励んでいるが、俺は特に優れた、または得意な種目がないので、無所属だ。何かやってもいいのだが、毎日練習する気にならない。 「・・・」 俺は一人で帰る。近くには例の幼なじみ達が住んでいるのだが、部活終了まで結構あるし、そこまで待っていたらとうに日が暮れてしまうから(というか早く家に帰りたいから)待たずに帰る。 毎日同じ道を通る。小等部の頃は寄り道もしたものだが、大して面白いことが無いと学習すると、寄り道することが無くなった。 今日は何故だろう。どうしてか寄り道したくなってしまったのだ。おそらく何か眼を惹くものがあったに違いない。 俺は、出会ってしまったのだ。出来れば出会いたくなかった奴に。奴等に。 眼を惹かれるもの。俺にとってそれは、日常には有り得ないものが中たる。今日の場合は人だった。夏時だって言うのに分厚いコートを羽織っている。 ストーキングの趣味はないが、つい追いかけてしまった。これも「奴」の能力だったのだろうか? 追いかけると、コートを羽織った奴(男か女かもわからない)が、郊外に建っていた雑居ビルに入っていくのが見えた。 「しまったな・・・」 流石にビルの中まで入っていくのは憚られ、諦めて帰ろうとした時だった。 「暁 騎士君だね・・・」 後方から声が聞こえた。低い声だった。 「はい?」 俺は、振返らず答えた。ばれたかと思ったが、せめてもシラを切る事にした。振返らなかったのは、顔を見られると色々と面倒だからだ。まあ、ばれたらばれたでいいんだが。 「騎士君だね・・・」 なおも繰り返す声。妙に低いその声は、夕暮れの喧噪にも関わらずはっきりと聞こえた。 「騎士君だね・・・」 無視しようかなと思ったが、流石に気味が悪かったので、俺は振返った。 「何ですか」 目の前にいたのは、妙に背の高い大柄な男だった。その眼はこちらを見つめ、口は閉じられていた。いくらか高圧的に話しかけ、主導を握ろうとする俺。かなり無駄だった。 「見れば見るほど力に溢れている・・・このままじゃ自分が喰われちゃうね・・・」 やはり狂気だったか、俺は逃げ出した。無駄だった。不思議なくらいに素早い動きだった。素早いって言うか早すぎる・・・これは瞬間移動だろうが! 「うわっ!」 首根っこをつかまれ、俺は文字通り拘束されてしまった。 「粗忽者だね・・・心配しなくても『能力』は僕たちが開花させてあげるよ・・・」 瀕死のこの時、何故かいつも夢に見る少女の事が思い出された。笑っていた。その笑顔は少し懐かしく、また新鮮だった。 少女の顔を想いながら、俺は「組織」に関わることになる一歩を踏み出すことになったのだった。 ---- -[[前のページ>第一章「日常」]] -[[次のページ>第三章「don't stop!」]]

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