「お前、秋山に告ったってのは本当か?」
とかなんとか言われたのは、新鋭王座後の居酒屋にて。
同期がこれだけ集まるのは珍しいだろうと、広島市内に繰り出した。
参加者十名足らず。
赤岩と菊地が隣同士に座ったのは、ただの偶然。と思っていたのは、赤岩だけ。
菊地にしてみれば、このことを問いただすためだった。
「きっ、菊地! 何を突然……っ」
赤岩は盛大にむせてしまった。
「お前は誰も聞いてないと思ってるみたいだが、実際はデバガメが数人いてな……俺もその一人だ」
「菊地! お前は俺の同期だよな? 友達だよな?」
赤岩は慌てて、菊地に酌を始めた。
「一応箝口令敷いといた」
「菊地~! 心の友よ!」
赤岩の注いだビールに口を付けながら、菊地は彼の強引な包容に耐えた。
「お前……、酔ってるだろ?」
「酔わずにいられるか……」
「意外と、小心者だな」
菊地はクスクス笑う。
「仕方ないだろ……。一世一代の大勝負だったんだから!」
「そんなんじゃ、でもよくてもダメでも先が思い遣られるな……」
「えっ、ダメって! 不吉なこと言うなよ……」
「じゃあ、OKだったらどうするんだ?」
「えーっと……」
「ほらな」
トクトクと、ビールを注いでやって。
「ま、お前が駄目だったら、俺が貰うけど」
「何を?」
「秋山を」
「なにぃ~っ?」
その叫びは、店中に響いた。
もちろん、同期連中にも。
「赤岩、菊地? どうしたんだ……?」
「いや、酔った赤岩が、ビールをちょっと零してな……」
「そっかー?」
どうにか、その場を取り繕い。
改めて。
「実は次の斡旋で、秋山と一緒になってな。お前が脈なしだったら、俺がモーションかけようかな?」
「冗談じゃないっ!」
赤岩は、今にも暴れだしそうな勢いで立ち上がりかけた。
しかし菊地はすかさず、
「冗談だ」
と、酒を飲みながら呑気に呟いた。
「本気なんだな」
「伊達や粋狂で告白なんかできるか」
「まぁ、そうだな。そんなお前に、プレゼントをやろう」
ポケットをガサゴソと探り……
小さな紙切れを取り出した。
「ほら」
「何だよ、コレ」
「秋山の携帯番号」
「なんでお前が……」
「まぁ、いろいろと」
「俺がかけていいのかよ?」
「お前に教えるって言ったら、快く教えてくれた。電話してやれ。酔いが醒めたらな」
「菊地~! 心の友よ!」
「赤岩……お前、酒癖悪い。俺より年上のクセに……」
奥手な男の友人というのは、疲れるものだ。
菊地は溜め息を吐いた。
「そういや、お前。A1級に上がるまで戦えないって言ってたけど、お前は総理杯出るんじゃないのか? 秋山も新鋭王座で優勝した訳だし、一緒に走れるかもな」
「あ……!」