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230名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします投稿日: 2006/04/17(月) 19:21:43.66 ID:JW/JAj2C0  >>1への援助になればいいなと思い、続き書いてみました・・・。 シュンスケは夕と手を繋ぎvipハンガーから2人の家に向かい歩を進めていた。 「ここから見る景色も5年前から大きく変わったな」 シュンスケは夕に呟きながら町並みを見つめた。 フュンストの罰で廃墟と化した世界には何も無かった。 そしてシュンスケも夕もそれぞれ自分の身内を失った。 あの日、全てのテレビ局から流れてきた放送はたった一つであった。 BGMに蛍の光が流れる中で、首相が国民に語りかけた。 「全ての国際社会が1つになり隕石墜落を避けようとあらゆる努力を致しましたが、回避不能という悲しい結果をご報告しなくてはなりません」 「国民の皆様にはお詫びのしようがございません。1人でも多くの方が生き残り再び復興することを願って止みません」 そして街は異様な静けさが漂っていた。 やがて全ての者の目に明るい光が飛び込み、熱風により吹き飛ばされた。 この瞬間世界の90%以上の者の命が失われた 236名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします投稿日: 2006/04/17(月) 19:42:53.93 ID:JW/JAj2C0 全ての文明が粉塵と化した街をシュンスケは彷徨い歩いていた。そして自らのように五体満足で生きている者にすれ違うことは無かった。 たどり着いたのは以前は学校と呼ばれていたであろう場所だった。 その時シュンスケの視界の端に飛び込んできた少女がいた。 「君は大丈夫か」 「・・・」 彼女は砂の上に指で文字を書き始めた。 『お・か・あ・さ・ん・も・お・と・う・さ・ん・も・し・ん・じ・ゃ・た』 「お父さんもお母さんも死んじゃったか・・・。俺と同じだな」 彼女がシュンスケの手を握ってきた。 「どうした」 彼女は再び文字を書いた。 『あ・な・た・の・な・ま・え・は』 「俺の名前か・・・。シュンスケだ。君は?」 『夕』 「夕か・・・。宜しく」 夕はシュンスケの手を力強く握った。シュンスケもそれに応えるように強く握り返した。 246名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします投稿日: 2006/04/17(月) 20:16:03.46 ID:JW/JAj2C0 じゃ勝手にアナザーストーリ進めますw 夕はシュンスケの手を引っ張ると自分の自宅跡地に連れてきた。 「ど、どうしたんだ」 「・・・」 夕は相変わらず何もしゃべらなかったが、無事に残っていた物置からノートパソコンを引っ張り出して打ち始めた。 『私、うまくしゃべれない・・・だからゴメン。私は多分1人じゃ生きてゆけない。君と一緒に暮らしたい』 「えっ・・・」 『好きとかじゃない。だけど多分君も私も1人じゃ生きていけない。だから一緒に生きてゆきたい』 夕の言葉の前にシュンスケもまた言葉を失った。 (「確かに俺も全てを失っている。彼女も全てを失っている。弱い者同士力を携えてか・・・」) 『シュンスケと一緒に生きたい!』 シュンスケは夕に向かって今出来る最大の笑顔を向けた。 「一緒に生きていこうか」 夕はシュンスケの手をこれまでに無いほど強く握った。 その夜、小さな物置小屋でシュンスケと夕は1つになった。 254名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします投稿日: 2006/04/17(月) 20:51:30.82 ID:JW/JAj2C0 この世界は残された資源を奪い合う醜い戦いの世界であった。 そのなかで日本ではvipが開発された。 シュンスケは夕と生きる為にこのvipハンガーに職を求めた。 実際、五体満足で生きていた多くのものが少年少女であった。 シュンスケはその中でも他のものより必死に働いた。 皆が生きる為に仕事をしているのに対してシュンスケには守り愛するべき存在があったからである。 それに影響されて夕も同じvipハンガーでシュンスケの手伝いをするようになった。 再び、シュンスケは町並みから視線を夕に戻した。 「夕、あれから5年か・・・。二人で何とか生きてこれたな」 微笑みながら夕は頷いた。 「夕、結婚しようか。こんな頼りない俺かもしれないけど」 「・・・」 夕は眼にいっぱい涙を溜めていた。 「・・・う、う・・・ん」 夕はシュンスケをあの日と同じ強さ、いやそれ以上の強さで手を握り返した。 「愛しているよ。夕」 「・・・だ、だ・い・す・き。・・・シュ、シュンスケ」 二人はフュンフトの罰で全てを失った。 そして1つを手にしたかけがえの無い人。 夕のノートパソコンから職場にあるシュンスケのパソコンに1通のメールが届いていた。 『いつまでも一緒に生きていこう。 世界で1番シュンスケを愛している夕より』 END 380名前: 230投稿日: 2006/04/18(火) 12:14:07.50 ID:SD658mS20  >>254の続きです。 シュンスケと夕が結婚するに何も障害はなかった。 そして夕も5年間シュンスケと付き合い、愛し合い心の傷を埋めていった。 「じゃあ、夕行ってくるから」 「う、うん・・・早く帰ってきてね」 夕は結婚してからvipハンガーに行く事は無かった。 常にシュンスケを見ていなくては心配という気持ちはなく。シュンスケが帰ってくる場所を育てたいと考えるようになった。 「おはようございまーす」 vipハンガーに着いたシュンスケにリタ社長が歩み寄ってきた。 「あっ、シュンスケ君ちょうどいいところに」 「はあ・・・」 リタ社長はおもむろに紙袋を差し出してきた。 「開けてみてくれ」 シュンスケは言われるままに紙袋を開けてみた。 「こ、これなんですか!?」 「シュンスケ君と夕の結婚祝いの品だ。まぁ大した物でなく悪いのだが」 その中に入っていたのは・・・。 467名前: 230投稿日: 2006/04/18(火) 19:53:27.28 ID:4oy/jimj0  >>380の続き リタ社長が渡したくれた紙袋を開くとバームクウヘンが入っていた。 「シュンスケ君や夕に結婚祝いとか渡してなかったからな」 「このバームクウヘンは?」 シュンスケが尋ねるとリタ社長は少し照れながら答えた。 「まぁ、手作りというやつだ。まぁ形は崩れているかもしれないが、味はイケルはずだぞ」 リタ社長の手作りなら、味は保障されているといっていい。vipハンガーで深夜まで仕事が入ってしまった場合、夜食を作っているのは社長自らである。 そのため、シュンスケも何度となくご相伴に預かっている。 「夕も甘いものが好きですから喜ぶと思います」 「喜んで貰って、作ったかいがあったというもんだ。どうせ今日は仕事も少ないし定時になったらとっとと帰ってやれ」 「あっ、はい!」 リタ社長は「さて仕事、仕事」といいつつ席に戻っていった。 その夜 「夕、ただいま」 「おかえりシュンスケ。何、その紙袋は?」 夕はシュンスケの持ち帰ってきた紙袋を受け取ると開いてみた。 「あっ~バームクウヘンだ!どこで買ってきたの」 「いや、買ってきたんでなくリタ社長が結婚祝いとして手作りだって」 「て、手作り!?とりあえず食べてみる。シュンスケは手洗いしてからリビングに来て」 夕はそのバームクウヘンを切分けながら、少し味見してみた。 「お、おいしい・・・。くやしいな、私お菓子なんか作れないよ・・・。それに料理も下手だし・・・、やっぱ男心を繋ぎとめるには食事ってお母さんが言ってたっけ」 「よし!わたしも作る!とりあえずは・・・」 安価:夕が作る料理を募集(食べられるものw) >>475 502名前: 230投稿日: 2006/04/18(火) 20:50:47.60 ID:4oy/jimj0 夕はリタ社長のバウムクーヘンをシュンスケと食べながら、話を切り出した。 「シュンスケはやっぱり、女は料理出来た方がいいなって思う?」 シュンスケは笑いながら答えた。 「う~ん。出来たことには越したことないけど…、いや夕が出来ないからとかそういう訳じゃないんだぞ!!」 「第一、今の世の中、『男子厨房に入らず』の時代じゃないからな『男子厨房に積極的に入れ』の時代だし、 それ以上に夕が居れば俺には何も要らないんだからな!!」 シュンスケが必死にテレながら話しているのを夕は見つめながら決断した。 『明日の朝食はまず、シュンスケが安心して食べられる物を作ろう!』 翌朝 キッチンに立った夕はご飯をセットして、『今日は目玉焼きを作ろう』と準備に取り掛かった。 用意するもの:卵2個・ウィンナー1袋・ごま油少々・水 夕は鼻歌を歌いながら、フライパンをセットしごま油を少々、火が少し回ってきたとこでウィンナーを投入。 そして割った卵をそのまま投下。最後に形が形成されてきたとこで卵の回りに少し水を流し込んで 蓋をして蒸し揚げた。 『これなら完璧!昨日ネットで卵メーカーのHPで何度も確認して、2ちゃんねるにも質問を出してみたもん』 そして夕はフライパンとお玉を手に持ち、まだシュンスケが寝ている寝室に向かった。 「シュンスケ!朝だよ!!!」 エプロン姿でフライパンをお玉で叩きながら寝室に入ってきた夕を見たシュンスケは 「か、かわいい!」 そのままギュッと夕を抱きしめた。 「お、おはようシュンスケ。ご、ごはんできてるよ!」 「おはよう、ごはんって夕?」 朝から夕を抱こうとしているシュンスケの頭に夕はフライパンを落とした。 シュンスケが真面目に起きたのはその5分後だった。 「うん。美味しいじゃん!さすが夕!」 637名前: 230投稿日: 2006/04/18(火) 23:52:45.67 ID:4oy/jimj0  >>502の続き 「いってらっしゃい!」 シュンスケを玄関から見送った夕はそそくさと、掃除の準備をはじめた。 「つぎはシュンスケの書斎だな」 夕が掃除機を手に持ってシュンスケの書斎に入るとそこには本の山・・・、ではなくDVDが積まれていた。 「そういやシュンスケどんなDVDを見てるんだろう?もしかして・・・いやぁ~恥ずかしい!」 夕はとりあえず一番手前にあったDVDを再生することにしてみた。 『うさだ!覚悟するにょ!!目からビーム!!』 「これってどんなアニメ?『デジキャラット』・・・。でも面白いな・・・」 「目からビーム!って出るわけないか・・・。頭からビーム・・・何やっているんだろ私」 その時、頭からビームではなく、ピーとけたたましい音が夕の耳に届いた。 夕が音の出所までいくと後でコーヒーを飲もうと火にかけておいたヤカンが大変なことになっていた。 「も~う、私のバカバカ!」 夕はとりあえず火を止めてから、掃除を終わらせた。 夕が掃除を終えて、コーヒーを飲みながらまったりしているとシュンスケからメールが届いた。 『夕、結婚してからデートしてなかったな。明日休みだしデートでもするか』 シュンスケとデートするのは、半年ぶりくらいである。夕は即OKの返事をした。 同時刻 vipハンガー 「よしとりあえず夕からデートOKのメール来たか」 夕からデートOKの返事を貰ったシュンスケであったが、浮かない表情であった。それには理由があった。 「明後日、vipにて哨戒を行う。参加要員は、ケンイチ・リュウヘイ・シュンスケ以上3名。明日は特別休暇を与える」 リタ社長から任務を受けたシュンスケはこれが死と直結する訳ではないが、絶対安全でもないことを理解していた。 673名前: 230投稿日: 2006/04/19(水) 01:19:54.19 ID:rdI+qDDh0  >>637の続き 『ピンポーン』 夕が家で待っているといつもより少しはやく玄関のベルがなった。 「ただいま」 「おかえり」 シュンスケがシャワーを浴びてリビングに来ると夕は話を切り出した。 「ねぇねぇ!明日のデートどうする?」 「う~ん。夕は何処行きたい?」 夕はあらかじめ答えを用意していたかのように答えた。 「私は映画いきたい!ダメぇ~?」 夕の甘えた声に苦笑しながら、シュンスケはOKと答えた。 その夜 二人で身体を抱きしめながらふと夕はシュンスケに尋ねた。 「そういえば、明日って平日だよね?なんで休みなの?」 シュンスケは少しビックリしたが、予想もしていた質問でもあった。 「ん、夕と久しぶりにゆっくりしたいと思って有給をとった」 そう呟くと、シュンスケは夕の唇を奪った。 「んっ・・・」 『夕を1人にしちゃいけないんだ。夕を守るのは俺しか居ないんだ』 シュンスケは心で呟きながら、夕の唇の中に舌を入れた。 「ん、だ、だめだよ~あ、あっ・・」 何分経ったであろうか、二人は大人のキスに酔いしれていた。 「シュンスケ、私・・・。あなたの赤ちゃん欲しい」 「あぁ・・・夕。俺も同じだよ」 二人の甘い夜は更けていった。 743名前: 230投稿日: 2006/04/19(水) 10:58:24.64 ID:zMRnD6Er0  >>673の続き 翌朝 シュンスケと夕は映画館に向かった。 「夕、今日はどんな映画やってるんだ?」 「知らない。私は何を観るかじゃなくて、シュンスケと一緒に映画を観るのが大事なの!」 「夕・・・」 シュンスケは明日の任務が不意に浮かんだが、今は言う時ではないと心の中に仕舞いこんだ。 迷った末、二人が選んだのは恋愛映画だった。 「(小声で)はい、あーん」 「ん、ありがと夕」 ポップコーンを食べながらゆっくり鑑賞していた。 906名前: 230投稿日: 2006/04/19(水) 23:46:33.76 ID:S/EWIWUw0  >>743の続き 映画を見終えた二人はウィンドウショッピングを楽しんでいた。 「シュンスケ、この服私に似合うかな?」 よく雑誌などで紹介されるカジュアルショップに向かい、夕は気に入ったひらひらレースのカーディガン・淡い青色のキャミソール そして白いスカートを試着し、シュンスケに披露した。 「似合うよ!着て帰るか?」 「うん!」 夕の笑顔を見て、シュンスケは店員を呼びそのまま着て帰ってかまわないか確認した。 「じゃ帰るか」 笑顔の夕とシュンスケはゆっくりと日が暮れ始めた街を後に家路についた。 その夜 横に安心している眠る夕にシュンスケは色々な気持ちをこめてキスをした。 翌朝 「おはよう!ってシュンスケがいない・・・仕事に行ったのかな?」 夕がベットから降りようした拍子、1枚の便箋が目に留まりました。そこには 『おはよう夕。今日はvipで哨戒に行く。でも必ずお前の元に戻ってくるから!今晩の夕食はコロッケ希望! じゃいってくる!』 「・・・シュンスケ、一言くらい声掛けて行きなさいよ。必ず帰ってきてよ・・・」 明るい日差しの窓際で、夕はすすり泣いていた。 その涙が枯れる事はしばらくなかった。 296名前: 230 ◆ptwGB2f2g6 投稿日: 2006/04/21(金) 00:08:32.60 ID:EVGbHkBb0 Vipハンガー 「おはよう」 いつもと違い、勢いがない挨拶をしながらシュンスケは職場に入った。そのシュンスケの頬には明らかに涙の跡があった。 「おい、今日哨戒あるのに大丈夫か?」 声をかけてきたのは、シュンスケと同じく出撃する予定の大場ケンイチであった。 「あぁ、なんとかな・・・」 「そうか、シュンスケは嫁さん居たんだよな。ちゃんと話してきたか」 ケンイチの言葉も今のシュンスケにとっては上の空だった。 「おいシュンスケ、安心しろケンイチと俺は何度も哨戒行って普通に帰ってきているんだ。大丈夫だって!」 そう声をかけてきたのはvipハンガーでは中堅にあたる柏崎リョウヘイだった。 「だって、操作なんて昔のPS2のコントローラーだ、造作もないことだ」 ここで簡単にvipについて説明する。 日本製vipこれはフュンフトの罰により資源が少なかった日本が他国からの資源の略奪行為から自衛するために造った兵器である。 自衛隊など軍組織も壊滅的状況の中で誰でも簡単に扱えることを念頭に置き、開発が進められ その結果、操作機能に関しては5年前最も普及していたゲーム機のコントローラーで操作するようになっていた。それにより、多くの若者がvip関連会社にて生計を立てている。 「今日の哨戒は九州北部か、ちょっとめんどくさい地域だな」 リョウヘイが呟いたのも無理はない、九州北部は日本・Neo朝鮮・中華自由連合国の国境海域で度々ニアミスが起こる地域である。 「さぁそろそろ出るか!帰ってきたら1週間の臨時休暇だ」 「だな。そしたら夕と旅行でも行くか」 「その幸せなんかムカつく!なんてな」 ようやくシュンスケも調子を取り戻し、男たちはvipへ向かった。 803名前: 230 ◆ptwGB2f2g6 投稿日: 2006/04/22(土) 00:07:16.48 ID:W5fXqxei0  >>296の続き シュンスケ宅 泣くだけ泣いた夕が佇んでいた。 「私、シュンスケの為に今出来る事ってなんだろう・・・、vipハンガーに行くこと?それは迷惑になる。私はvipハンガーから離れた人。いまさら技術もサポートも出来ない」 「じゃあ私に出来るのは何?祈るしかないの。でも何もしてないと落ち着かないし、うん神社でお百度参りしてこよう。あとはシュンスケが帰ってきた後のコロッケ作りか。よし!気合入れ直し完了」 そう呟くと家から少し足を伸ばした所にある神社に向かった。 809名前: 230 ◆ptwGB2f2g6 投稿日: 2006/04/22(土) 00:09:09.02 ID:W5fXqxei0 Vipハンガー 「1号機 大場ケンイチ、2号機 橘シュンスケ、3号機 柏崎リョウヘイ。各自準備は整った!?」 リタ社長の激がコックピットの中に響き渡る。 「1号機完了」 「2号機同じく完了」 「3号機同じく完了」 各機体からの返事がハンガー全体に返ってくる。 「今回はあくまでも日本領空侵犯などに対する監視業務であり、積極的に交戦を行う必要はない。 但し、国籍不明機が再三に渡り警告無視及び敵機からの先制攻撃を受けた場合は交戦止むなしとする。肝に銘じておけ」 「了解!」 3機から同時に返答があり、それと同時に最後の機体確認に整備士たちが機体に向かった。 「先輩!初出撃ですか。御武運をお祈りいたします」 シュンスケに声を掛けてきたのは大村勝也であった。彼はシュンスケがvipハンガーに入ったのとほぼ同じ時期であるが、年齢が4歳近く若い奴である。 「あぁ、ぶっちゃけ足が震えてやがるよ。でも夕の為に帰ってこなくちゃいけないからな」 「そうですよ、夕さんはvipハンガーのアイドルだったのに結婚しちゃうんですから(笑) まぁみんな2人が入社する前から付き合っていることは知ってましたがね」 「おいつ、おまえだって素敵な恋人いるだろ」 「いいえ、あいつは腐れ縁です。そんなこと言うと俺が殺されちゃいますがね」 シュンスケは勝也に笑いながら言った。 「よし帰ってきたらお前の彼女に今の話に色々と脚色して話してやろうと!」 「先輩、冗談にしてください。ここだけの話です!じゃ、必ず戻ってきてください」 「ありがとうな、おかげで落ち着いてきた。それじゃ今晩はお前を肴に一杯飲むか!」 無駄な緊張がとれたシュンスケは、出撃の瞬間を待っていた。 811名前: 230 ◆ptwGB2f2g6 投稿日: 2006/04/22(土) 00:10:05.23 ID:W5fXqxei0 「3機発進!」 リタ社長の掛け声が掛かった。 「1号機了解」 「2号機同じく了解」 「3号機同じく了解」 3機は陽の高い空へ飛び立っていった。 同時刻 神社 「シュンスケが無事に帰ってこられますように」 心の中で祈りながら裸足になり夕はお百度参りをしていた。 その頭上を3機のvipが高速で西に向かい飛んでいった。 『あの3機の中のどれかにシュンスケが載っているんだ。お願いだから無事に帰ってきてよ』 812名前: 230 ◆ptwGB2f2g6 投稿日: 2006/04/22(土) 00:11:30.42 ID:W5fXqxei0 Vip機上交信 「3号機より伝達、1230現在、防府・春日・壱岐の各基地より緊急警報などは無し、予定通り九州北部エリアに向かう。 なお、哨戒・監視業務終了後、防府基地にて給油後に東京基地に1730帰還予定。以上」 「了解」 シュンスケはリョウヘイからの伝達を聞きひとまず安心した。 「おいシュンスケ!」 1号機のケンイチが急にシュンスケを呼び出した。 「1号機用件は?」 「ちょっと聞きたいんだがシュンスケは結婚しているんだよな」 「あぁ、そうだがどうした?」 哨戒業務に向かおうとする交信でする話ではないだろうと思いつつケンイチに返事をした。 「今度、シュンスケと夕ちゃんに来賓挨拶してほしいんだ」 「えっ?ケンイチ結婚するのか?」 驚きつつケンイチに尋ねた。 「あぁ、経理の亜希子ちゃんとな」 「えっ~!俺も始めて聞いたぞ」 今度反応したのは3号機のリョウヘイだった。 「なんかあいつの故郷の琵琶湖が眼下に見えたからな、頼むぞ」 「良かったなリョウヘイ。夕にも伝えて必ず出席するからな」 「おい俺は?」 「リョウヘイ先輩も勿論呼びますよ。そこで恋人探ししてくださいね」 彼女が居ないリョウヘイにケンイチは軽口を叩いていた。 「あぁ~ヤダヤダ奥さん持ちと彼女持ちと俺は一緒に組んでいかなくちゃいけないのか!」 ケンイチの呟きを聞いていたシュンスケの目に宍道湖が映った。 889名前: 230 ◆ptwGB2f2g6 投稿日: 2006/04/22(土) 02:02:02.44 ID:W5fXqxei0  >>812の続き その時各機に対して緊急アラームが鳴った。 3機のまったりしたムードはたちまち吹き飛んだ。 「1252米子基地より緊急要請。国籍不明機が米子基地より110km北北西、隠岐空港より北西40km地点に侵入を確認。 米子基地よりスクランブル発進致しました。米子・隠岐よりそれぞれ半径100km圏内にある機体に対し 国籍不明機に対してスクランブルを要請する」 100km圏内というと3機は間違いなく該当する。 「3号機より全機に通達。米子緊急要請に従い国籍不明機に対してスクランブルを行う」 打って変わった厳しい口調でケンイチからの通達が入った。 「了解。1号機進路を北西に取り、国籍不明機に対しスクランブルを行う」 「了解。2号機同じく進路を北西に取り、国籍不明機に対しスクランブルを行う」 3機は隠岐島の方角へ向かった。 13:00 神社 「これで94回っと。後6回、あれ手の甲に血が・・・。どこで怪我したんだろう?もしかしてシュンスケの身に!!」 夕は嫌な予感を必死に振り払おうとお百度参りを再会した。 84名前: 230 ◆ptwGB2f2g6 投稿日: 2006/04/22(土) 12:11:39.53 ID:EJpNa+BC0  >>前スレ891の訂正(こっちをまとめサイトに載せてください) 同時刻 vip機上 隠岐地区へ向かっているシュンスケ達に対して再び緊急アラームが鳴った。 「1259国籍不明機、隠岐空港より西30km地点にて米子基地所属機と接触、警告無しで当基地所属機に発砲。 当所属所属機墜落、1259を持って国籍不明機を敵機と認定。警告無しに交戦を命ず」 「尚、現時点で当基地所属隊員の生死は不明」 『そんなのありか・・・初めての出撃で』 シュンスケは心の中で呟きながら現場へ機体を進めた。 13:05 vipハンガー Yahoo!News速報 【隠岐島付近で日本国機と国籍不明機接触か?】 「・・・よりにもよって彼らを哨戒に出した日に戦闘か。あいつら生きて帰ってこいよ」 リタ社長が苦虫を潰しながら呟くのと同じ瞬間、このニュースを辛い思いで見ているものがいた。 「ケンイチ・・・。生きて帰ってきてよ」 早坂亜希子はケンイチと婚約をしていた。ただこの婚約に関しても伝えているのはリタ社長のみで 他の社員には、今日ケンイチが哨戒から戻ってきてから報告する予定であった。 「お願い・・・」 亜希子は遠い西の方角にいる彼に向かって呟いた 161名前: 東葛広報局長 ◆7/2vjVH3To 投稿日: 2006/04/23(日) 00:31:45.41 ID:TB1FJYvu0 13:08 vip機上 「10時の方角に敵機確認。ロックオンまであと10秒」 1号機ケンイチからの声が2人の耳にも届いた。 シュンスケは敵機を目視し、呟いた。 「アレは・・・、Neo朝鮮か。でも単機で支援も無しということは、個人的に日本に敵意を抱く者か。たちが悪いな」 「敵機ロックオン、ファイアー」 ケンイチが叫ぶのが先かほぼ同時に敵機からも3機に向かい砲撃が来た。 ケンイチもほぼ同じタイミングであったが、両機体とも回避は厳しいところであった。 シュンスケとリョウヘイの機体は砲弾の軌道上から避けつつ敵機に打ち込んだ。 そしてシュンスケが安全圏に抜けつつ眼下を望むと敵機とそして1号機が日本海に叩きつけられていた。 「1310東京基地所属vip3号機より敵機との交戦結果を報告す。 Neo朝鮮とおもわれる敵機と隠岐空港より西南西20km地点にて接触交戦。 敵機を撃墜するも当基地所属vipも墜落」 「なお当基地所属隊員の生死不明。以上」 リョウヘイが吐き出すような声で交戦結果を報告した。 シュンスケはケンイチの生死を思い気持ちが沈んでいた。 そんな時リョウヘイから交信が入ってきた。 「シュンスケ、とりあえず隠岐空港行くぞ。ケンイチを探さなくちゃいけない」 「・・・。そうだな了解」 シュンスケはリョウヘイからの通信を切り隠岐空港に着陸許可を得た。 162名前: 東葛広報局長 ◆7/2vjVH3To 投稿日: 2006/04/23(日) 00:34:20.80 ID:TB1FJYvu0 13:17 vipハンガー リタ社長への直通電話が鳴り響き、リタ社長は覚悟を決めて受話器を取った。 「もしもし、東京基地vipハンガーのリタだが」 「こちら隠岐空港リョウヘイです。ご報告がありお電話致しました」 リタは受話器を握っている手から汗が流れるのを感じつつ、リョウヘイの次の言葉を待っていた。 「まずは敵機は撃墜致しました。ただ、1号機 大場ケンイチが敵機と相打ちに近い状況で機体は日本海に墜落いたしました。 現在、シュンスケと隠岐救援部隊が現場に急行しています」 リタ社長は覚悟を決めていたが、実際の状況を知らされて今にも膝から崩れ落ちそうにもなっていたが気丈に振舞った。 窓越しに見える亜希子にまだ悟られてはいけないと・・・。 「了解。では本日中の東京への帰還は厳しそうだな。捜索状況に進展があり次第すぐに電話を頼む」 リタ社長は受話器を置くとさびしそうにタバコを手に取り離席した。 189名前: 東葛広報局長 ◆7/2vjVH3To 投稿日: 2006/04/23(日) 01:37:05.55 ID:TB1FJYvu0 13:20 vipハンガー休憩室 リタ社長は休憩室にむかいつつ亜希子を呼び寄せた。 亜希子は顔を強張らせながらリタ社長の後を付いて行った。 「亜希子ちゃん、なんか飲む?」 自動販売機にリタ社長は向かい亜希子に尋ねた。 「い、いえ・・・。それで・・・ケンイチは!?」 リタは缶コーヒーをテーブルに2つ置き、タバコの火を消して亜希子の瞳を捕らえて話し始めた。 「さっき、ネットニュースを見ただろう・・・。あのあとvip3機が敵機と交戦になった。 結果的に1号機のケンイチと敵機が合い見舞える形になった」 亜希子は膝に置いた拳を強く握りながら黙って聞いていた。 「敵機はケンイチが撃墜した」 亜希子は声を震わせながら尋ねた。 「ケ、ケンイチは?」 リタは缶コーヒーを少し口に含み、冷静をつとめるように亜希子に伝えた。 「1号機は相打ちに近い状況で墜落した。いま、シュンスケたちが必死に・・・」 「イヤー!!!!!!!!!!!」 亜希子は全ての感情を解き放つように大声で絶叫した。それはvipハンガー全体はおろか、ハンガーの外まで響くような声だった。 13:24 隠岐島西方海上 シュンスケは隠岐救援部隊と共に現場へ向かっていた。 『頼むぞ、ケンイチ生きていてくれよ。お前の結婚式でスピーチでも漫才でもなんでもしてやるからさ』 シュンスケは心の中で呟いていた。 「vip他計3機視認!」 救援部隊の中から声があがった。確かに敵機、米子所属機体。そしてケンイチが載っていたvipが目の前に見えてきた。 190名前: 東葛広報局長 ◆7/2vjVH3To 投稿日: 2006/04/23(日) 01:38:30.54 ID:TB1FJYvu0 13:27 日本政府官邸 中田首相の元にNeo朝鮮のパク・ヨンジュン首相からホットラインが入電した。 「はい。中田だが」 「パクです。この度は当国所属機が日本国領空侵犯し、無警告の上、墜落させたことをお詫び申し上げます」 パクは中田に対し敵意の無いことを示した。 「ではNeo朝鮮としては我が国に対する宣戦布告ではないという訳だな」 「はい。確かに朝日(ちょうにち)の間にはさまざまな問題はありますが、現時点で日本への攻撃構想などは一切ございません」 中田は一呼吸置き、パクに告げた。 「では貴国から国際社会に対し今回の事故の謝罪と報告をしていただければ、今回は不運な事故として国民に説明いたします」 「わかりました。Neo朝鮮政府として速やかに発表いたします」 この2時間後、Neo朝鮮政府として正式な謝罪と妄想に囚われた兵士の暴走として発表された。 後にこの事件を「隠岐事件」として呼ばれることとなった。 417名前: 東葛広報局長 ◆7/2vjVH3To 投稿日: 2006/04/23(日) 23:33:23.85 ID:sHjjVKt+0  >>190続き 13:30 隠岐島沖 ジュンスケたちを乗せた隠岐救援部隊の船舶は、まず一番手前にあった米子の機体に近づいた。 「あっ、人影が2時の方向に」 救援隊から上がった声にざわめきながら、その人影に近づいた。 「こいつはNeo朝鮮の奴か、お陀仏だな・・・」 墜落時パラシュート脱出を試みたのだろうか、遺体のそばにはパラシュートの残骸もあった。 遺体から念のため武器を回収後、遺体を回収した。 同じ時、別の部隊の者が米子部隊隊員を発見した。 「そいつは、どうだ?」 シュンスケの問いかけに確認に向かった隊員は両手を頭上でクロスさせた。 そして・・・。 「・・・はぁ、こっちもか」 もう一つ別の隊員から両手のクロスが挙がった。 419名前: 東葛広報局長 ◆7/2vjVH3To 投稿日: 2006/04/23(日) 23:35:27.57 ID:sHjjVKt+0 13:50 シュンスケ宅 夕はお百度参りを終えて、自宅に帰ってTVを付けると隠岐での事件を速報で行っていた。 『現在、分かっている情報を整理いたします。隠岐島西方にて国籍不明機から無警告で発砲を受け、 米子基地所属機が墜落。これを受けて現場に急行した東京基地所属vipが国籍不明機と相打ちとなり共に墜落。安否は不明です。繰り返し・・・』 夕はその場にうずくまった。シュンスケがvipに搭乗する以上覚悟は決めていたつもりであった。しかし現実を受け止められないでいた。 そのとき、彼女の携帯電話が鳴った。その発信元はvipハンガーであった。 「も、もしもし・・・。橘 夕ですが・・・」 「あっ、vipハンガーのリタです」 リタ社長とはシュンスケと結婚前にはvipハンガーで毎日といっていいほど会っていた。 「シュ、シュンスケは?」 冷静に努めようとするが、声は裏返っていた。 「あぁシュンスケ君は無事よ。今隠岐で救援部隊と行動している。最も今日は帰ってこれないかもしれないけど・・・」 夕はリタ社長の言葉を聞いてホッとして力が抜けかけていた。 「で・・・、ここから先が言いにくい話なんだけどシュンスケや夕ちゃんと一緒に働いていた ケンイチ君って覚えているかな・・・」 「はい。えっ!?もしかして…」 夕は息を飲み込んだ。 422名前: 東葛広報局長 ◆7/2vjVH3To 投稿日: 2006/04/23(日) 23:58:00.58 ID:sHjjVKt+0 隠岐事件から3日後 vipハンガー いつもは活気と笑いの溢れている職場であったが、今日は物悲しい葬送曲がながれていた。ケンイチの葬儀であった。 喪主の席には亜希子がいた。確かに結婚はしていなかったが、両親に報告は済んでおり、 ケンイチの両親も『亜希子さんが望むのなら…』ということで喪主席に座ることになった。 友人代表挨拶として、シュンスケが行うことになった。 シュンスケは喪服姿であったが、何故か片手にラジカセを持っていた。そして夕も寄り添っていた。 「お~いケンイチ。Vipで交信中に教えてくれたよな亜希子さんと結婚するって、で俺と夕に来賓挨拶してくれって! なんで俺はここで挨拶しなくちゃならないんだよ!イヤだよ・・・。でもさ、お前を救援部隊の人たちと探しているときに1号機のボイスレコーダーが発見されたよ。 そのお前の最期の言葉聞いてさ、やっぱり俺が話さなきゃならないんだと思って、今こうして立ってる」 そう言うとおもむろにラジカセの再生ボタンを押した。 生々しい被弾を受けた衝撃音の後だった。 『あきこー!あきこー!ありがとう!元気な子を産んでくれ!あきこー!』 そしてもう1度衝撃音が聞こえケンイチの声は途絶え、そして全ての音が止まった。 場内には男女問わず、すすり泣く声があった。 「亜希子さん。今、俺達じゃ考えられないほどの辛さの中にいると思います。俺は頑張ってなんて軽々しい言葉は言いません。 でもケンイチと生まれてくる子の為に・・・」 そこまで言うとシュンスケも何も言えず言葉に詰まった。 するとシュンスケの横に寄り添っていた涙をながしつつ夕がマイクを受け取り続けた。 「亜希子さん、みんな味方です。だから私達を頼ってください」 場内には声にはならない声が溢れていた。 636名前: 東葛広報局長 ◆7/2vjVH3To 投稿日: 2006/04/24(月) 19:29:18.33 ID:PL3nW3lh0  >>422の続き 葬式から6ヶ月後  日本政府は自国の領空奥深くまで国籍不明機を侵入させてしまった「隠岐事件」を厳粛に受け止めて、 改めて正規の防衛軍を創設することを発表し、各基地やvipハンガーに対して求人を行った。 東京基地vipハンガーでは「隠岐事件」でケンイチを失っていた為、一人ひとり苦しみながら回答を出した。 応募締切日 vipハンガーに出社したリョウヘイはシュンスケに尋ねた。 「シュンスケ結局どうする?防衛軍への就職は?」 シュンスケは昨晩、夕との会話を思い出していた。 締切日前夜 「あなたどうするの?防衛軍の締め切りは明日よね」 「あぁ・・・、ここ2週間ずっと考えている。ケンイチが死んじまって自分の中で色々考えたさ。 確かにここ数ヶ月は大きな事件もスクランブル要請もなく平穏無事だけど、いつどうなるか分からないし…」 「俺はずっと夕を護って生きていきたい。それだけなんだ」 沈黙が二人を包んだ。 やがて夕がおもむろにしゃべりはじめた。 「もうイヤなの…、私もシュンスケが隠岐事件に巻き込まれたと知ったとき涙止まらなかったもん。 ゴメンね…、本当はシュンスケの帰りを待って気丈に振舞わなくちゃいけないんだけど。だって、シュンスケが護るのは私だけじゃないんだもん!」 夕の言葉にシュンスケの思考が止まった。 「出来たんだよ!シュンスケと私の子が!!だから・・・」 その時シュンスケの答えは決まった。 645名前: 東葛広報局長 ◆7/2vjVH3To 投稿日: 2006/04/24(月) 20:12:59.05 ID:PL3nW3lh0 再びvipハンガー 「リョウヘイ、俺はやっぱり…」 「いいんだよ言わなくて。俺は妻子も彼女も居ない独り身。だったら多少の危険は買ってでも給与の高いところを選ぶだけ。 シュンスケは守るものがあるだろ、だから結論は違っても何も言わない。頑張れよ!」 「あぁ、ありがとう」 シュンスケはリタ社長にvipハンガーの退職願を提出した。 「そうか…シュンスケは防衛軍には行かないのか」 「はい、申し訳ありません。実は夕に赤ちゃんが授かりました。この状況ではもう空を飛べません。チキンですから…」 溜め息をつきつつシュンスケは話していたが、リタ社長はニタニタしながら話した。 「良かったじゃない!へぇ~、夕ちゃんとシュンスケに赤ちゃんか。何か私も結婚したくなっちゃったじゃない。で、再就職先は決まった?」 「い、いえまだ…」 リタはそれを聞くか聞かないかのうちに自分の携帯を取り電話を始めた。 「あっ、タケちゃん!おひさしぶり!!うん・・・。元気にやってるよ!でさぁ~うちのvipハンガーが防衛軍に吸収されちゃうじゃない。 で、奥さんの為にvipから降りて仕事したいって奴がいるんだけど。・・・あっ大丈夫よ!元気とか根性とかはどこいっても一線級よ。じゃ宜しくね!」 「リタ社長、今のお電話は?」 「あっ、君の再就職先!えっ~と、こことも取引ある三友物産って知っているよね」 三友物産といえば『ラーメンからミサイルまで』と呼ばれる大手商社である。 「はい。勿論知っております」 「で、電話の相手先はそこの社長!って事で来月から頑張ってね!」 どうやらシュンスケの再就職先まで決まってしまったようだ。 676名前: 東葛広報局長 ◆7/2vjVH3To 投稿日: 2006/04/24(月) 22:12:40.64 ID:PL3nW3lh0 さらに2ヵ月後 「シュ、シュンスケ、亜希子ちゃんが赤ちゃん産んだってリョウヘイから電話があった」 俺が三友物産に入社してから1ヶ月が経った。そして夕のお腹の中の赤ちゃんは元気なようだ。 俺は夕を車に乗せて亜希子が入院している病院に向かった。 「先輩お久しぶりです!夕さんもお久しぶりです」 シュンスケ達が病院のロビーに着くとまず2人を迎えたのは大村勝也後輩であった。 「おまえ結婚は?そろそろじゃねーのか?」 「いや、もう少しお金ためてからです。でも同棲生活をはじめました」 そういうと勝也はニコニコ笑っていた。 勝也と話していると夕が誰かに挨拶しているのが横目に見えたリタさんであった。 「今回は夫の再就職先までご紹介頂きありがとうございます」 夕が恐縮して話していると、リタさんは笑いながら夕のお腹をさすっていた。 「今、何ヶ月?」 「えっ~と4ヶ月ですね」 シュンスケは勝也と一度別れて夕とリタの元に駆け寄った。 「おかげさまで三友物産で頑張らせて頂いてます」 「そうか~、2ちゃんねるとか見てんじゃないよな~」 シュンスケは全力で首を横に振って否定した。 「まぁ、頑張っているとタケちゃんからは聞いているけどね」 更に勝也も含めてトークしているとそこにリョウヘイがやって来た。 「みなさん御揃いで亜希子ちゃんは205号室で待っているよ」 リョウヘイの後について4人は205号室に向かった。
230名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします投稿日: 2006/04/17(月) 19:21:43.66 ID:JW/JAj2C0  >>1への援助になればいいなと思い、続き書いてみました・・・。 シュンスケは夕と手を繋ぎvipハンガーから2人の家に向かい歩を進めていた。 「ここから見る景色も5年前から大きく変わったな」 シュンスケは夕に呟きながら町並みを見つめた。 フュンストの罰で廃墟と化した世界には何も無かった。 そしてシュンスケも夕もそれぞれ自分の身内を失った。 あの日、全てのテレビ局から流れてきた放送はたった一つであった。 BGMに蛍の光が流れる中で、首相が国民に語りかけた。 「全ての国際社会が1つになり隕石墜落を避けようとあらゆる努力を致しましたが、回避不能という悲しい結果をご報告しなくてはなりません」 「国民の皆様にはお詫びのしようがございません。1人でも多くの方が生き残り再び復興することを願って止みません」 そして街は異様な静けさが漂っていた。 やがて全ての者の目に明るい光が飛び込み、熱風により吹き飛ばされた。 この瞬間世界の90%以上の者の命が失われた 236名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします投稿日: 2006/04/17(月) 19:42:53.93 ID:JW/JAj2C0 全ての文明が粉塵と化した街をシュンスケは彷徨い歩いていた。そして自らのように五体満足で生きている者にすれ違うことは無かった。 たどり着いたのは以前は学校と呼ばれていたであろう場所だった。 その時シュンスケの視界の端に飛び込んできた少女がいた。 「君は大丈夫か」 「・・・」 彼女は砂の上に指で文字を書き始めた。 『お・か・あ・さ・ん・も・お・と・う・さ・ん・も・し・ん・じ・ゃ・た』 「お父さんもお母さんも死んじゃったか・・・。俺と同じだな」 彼女がシュンスケの手を握ってきた。 「どうした」 彼女は再び文字を書いた。 『あ・な・た・の・な・ま・え・は』 「俺の名前か・・・。シュンスケだ。君は?」 『夕』 「夕か・・・。宜しく」 夕はシュンスケの手を力強く握った。シュンスケもそれに応えるように強く握り返した。 246名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします投稿日: 2006/04/17(月) 20:16:03.46 ID:JW/JAj2C0 じゃ勝手にアナザーストーリ進めますw 夕はシュンスケの手を引っ張ると自分の自宅跡地に連れてきた。 「ど、どうしたんだ」 「・・・」 夕は相変わらず何もしゃべらなかったが、無事に残っていた物置からノートパソコンを引っ張り出して打ち始めた。 『私、うまくしゃべれない・・・だからゴメン。私は多分1人じゃ生きてゆけない。君と一緒に暮らしたい』 「えっ・・・」 『好きとかじゃない。だけど多分君も私も1人じゃ生きていけない。だから一緒に生きてゆきたい』 夕の言葉の前にシュンスケもまた言葉を失った。 (「確かに俺も全てを失っている。彼女も全てを失っている。弱い者同士力を携えてか・・・」) 『シュンスケと一緒に生きたい!』 シュンスケは夕に向かって今出来る最大の笑顔を向けた。 「一緒に生きていこうか」 夕はシュンスケの手をこれまでに無いほど強く握った。 その夜、小さな物置小屋でシュンスケと夕は1つになった。 254名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします投稿日: 2006/04/17(月) 20:51:30.82 ID:JW/JAj2C0 この世界は残された資源を奪い合う醜い戦いの世界であった。 そのなかで日本ではvipが開発された。 シュンスケは夕と生きる為にこのvipハンガーに職を求めた。 実際、五体満足で生きていた多くのものが少年少女であった。 シュンスケはその中でも他のものより必死に働いた。 皆が生きる為に仕事をしているのに対してシュンスケには守り愛するべき存在があったからである。 それに影響されて夕も同じvipハンガーでシュンスケの手伝いをするようになった。 再び、シュンスケは町並みから視線を夕に戻した。 「夕、あれから5年か・・・。二人で何とか生きてこれたな」 微笑みながら夕は頷いた。 「夕、結婚しようか。こんな頼りない俺かもしれないけど」 「・・・」 夕は眼にいっぱい涙を溜めていた。 「・・・う、う・・・ん」 夕はシュンスケをあの日と同じ強さ、いやそれ以上の強さで手を握り返した。 「愛しているよ。夕」 「・・・だ、だ・い・す・き。・・・シュ、シュンスケ」 二人はフュンフトの罰で全てを失った。 そして1つを手にしたかけがえの無い人。 夕のノートパソコンから職場にあるシュンスケのパソコンに1通のメールが届いていた。 『いつまでも一緒に生きていこう。 世界で1番シュンスケを愛している夕より』 END 380名前: 230投稿日: 2006/04/18(火) 12:14:07.50 ID:SD658mS20  >>254の続きです。 シュンスケと夕が結婚するに何も障害はなかった。 そして夕も5年間シュンスケと付き合い、愛し合い心の傷を埋めていった。 「じゃあ、夕行ってくるから」 「う、うん・・・早く帰ってきてね」 夕は結婚してからvipハンガーに行く事は無かった。 常にシュンスケを見ていなくては心配という気持ちはなく。シュンスケが帰ってくる場所を育てたいと考えるようになった。 「おはようございまーす」 vipハンガーに着いたシュンスケにリタ社長が歩み寄ってきた。 「あっ、シュンスケ君ちょうどいいところに」 「はあ・・・」 リタ社長はおもむろに紙袋を差し出してきた。 「開けてみてくれ」 シュンスケは言われるままに紙袋を開けてみた。 「こ、これなんですか!?」 「シュンスケ君と夕の結婚祝いの品だ。まぁ大した物でなく悪いのだが」 その中に入っていたのは・・・。 467名前: 230投稿日: 2006/04/18(火) 19:53:27.28 ID:4oy/jimj0  >>380の続き リタ社長が渡したくれた紙袋を開くとバームクウヘンが入っていた。 「シュンスケ君や夕に結婚祝いとか渡してなかったからな」 「このバームクウヘンは?」 シュンスケが尋ねるとリタ社長は少し照れながら答えた。 「まぁ、手作りというやつだ。まぁ形は崩れているかもしれないが、味はイケルはずだぞ」 リタ社長の手作りなら、味は保障されているといっていい。vipハンガーで深夜まで仕事が入ってしまった場合、夜食を作っているのは社長自らである。 そのため、シュンスケも何度となくご相伴に預かっている。 「夕も甘いものが好きですから喜ぶと思います」 「喜んで貰って、作ったかいがあったというもんだ。どうせ今日は仕事も少ないし定時になったらとっとと帰ってやれ」 「あっ、はい!」 リタ社長は「さて仕事、仕事」といいつつ席に戻っていった。 その夜 「夕、ただいま」 「おかえりシュンスケ。何、その紙袋は?」 夕はシュンスケの持ち帰ってきた紙袋を受け取ると開いてみた。 「あっ~バームクウヘンだ!どこで買ってきたの」 「いや、買ってきたんでなくリタ社長が結婚祝いとして手作りだって」 「て、手作り!?とりあえず食べてみる。シュンスケは手洗いしてからリビングに来て」 夕はそのバームクウヘンを切分けながら、少し味見してみた。 「お、おいしい・・・。くやしいな、私お菓子なんか作れないよ・・・。それに料理も下手だし・・・、やっぱ男心を繋ぎとめるには食事ってお母さんが言ってたっけ」 「よし!わたしも作る!とりあえずは・・・」 安価:夕が作る料理を募集(食べられるものw) >>475 502名前: 230投稿日: 2006/04/18(火) 20:50:47.60 ID:4oy/jimj0 夕はリタ社長のバウムクーヘンをシュンスケと食べながら、話を切り出した。 「シュンスケはやっぱり、女は料理出来た方がいいなって思う?」 シュンスケは笑いながら答えた。 「う~ん。出来たことには越したことないけど…、いや夕が出来ないからとかそういう訳じゃないんだぞ!!」 「第一、今の世の中、『男子厨房に入らず』の時代じゃないからな『男子厨房に積極的に入れ』の時代だし、 それ以上に夕が居れば俺には何も要らないんだからな!!」 シュンスケが必死にテレながら話しているのを夕は見つめながら決断した。 『明日の朝食はまず、シュンスケが安心して食べられる物を作ろう!』 翌朝 キッチンに立った夕はご飯をセットして、『今日は目玉焼きを作ろう』と準備に取り掛かった。 用意するもの:卵2個・ウィンナー1袋・ごま油少々・水 夕は鼻歌を歌いながら、フライパンをセットしごま油を少々、火が少し回ってきたとこでウィンナーを投入。 そして割った卵をそのまま投下。最後に形が形成されてきたとこで卵の回りに少し水を流し込んで 蓋をして蒸し揚げた。 『これなら完璧!昨日ネットで卵メーカーのHPで何度も確認して、2ちゃんねるにも質問を出してみたもん』 そして夕はフライパンとお玉を手に持ち、まだシュンスケが寝ている寝室に向かった。 「シュンスケ!朝だよ!!!」 エプロン姿でフライパンをお玉で叩きながら寝室に入ってきた夕を見たシュンスケは 「か、かわいい!」 そのままギュッと夕を抱きしめた。 「お、おはようシュンスケ。ご、ごはんできてるよ!」 「おはよう、ごはんって夕?」 朝から夕を抱こうとしているシュンスケの頭に夕はフライパンを落とした。 シュンスケが真面目に起きたのはその5分後だった。 「うん。美味しいじゃん!さすが夕!」 637名前: 230投稿日: 2006/04/18(火) 23:52:45.67 ID:4oy/jimj0  >>502の続き 「いってらっしゃい!」 シュンスケを玄関から見送った夕はそそくさと、掃除の準備をはじめた。 「つぎはシュンスケの書斎だな」 夕が掃除機を手に持ってシュンスケの書斎に入るとそこには本の山・・・、ではなくDVDが積まれていた。 「そういやシュンスケどんなDVDを見てるんだろう?もしかして・・・いやぁ~恥ずかしい!」 夕はとりあえず一番手前にあったDVDを再生することにしてみた。 『うさだ!覚悟するにょ!!目からビーム!!』 「これってどんなアニメ?『デジキャラット』・・・。でも面白いな・・・」 「目からビーム!って出るわけないか・・・。頭からビーム・・・何やっているんだろ私」 その時、頭からビームではなく、ピーとけたたましい音が夕の耳に届いた。 夕が音の出所までいくと後でコーヒーを飲もうと火にかけておいたヤカンが大変なことになっていた。 「も~う、私のバカバカ!」 夕はとりあえず火を止めてから、掃除を終わらせた。 夕が掃除を終えて、コーヒーを飲みながらまったりしているとシュンスケからメールが届いた。 『夕、結婚してからデートしてなかったな。明日休みだしデートでもするか』 シュンスケとデートするのは、半年ぶりくらいである。夕は即OKの返事をした。 同時刻 vipハンガー 「よしとりあえず夕からデートOKのメール来たか」 夕からデートOKの返事を貰ったシュンスケであったが、浮かない表情であった。それには理由があった。 「明後日、vipにて哨戒を行う。参加要員は、ケンイチ・リュウヘイ・シュンスケ以上3名。明日は特別休暇を与える」 リタ社長から任務を受けたシュンスケはこれが死と直結する訳ではないが、絶対安全でもないことを理解していた。 673名前: 230投稿日: 2006/04/19(水) 01:19:54.19 ID:rdI+qDDh0  >>637の続き 『ピンポーン』 夕が家で待っているといつもより少しはやく玄関のベルがなった。 「ただいま」 「おかえり」 シュンスケがシャワーを浴びてリビングに来ると夕は話を切り出した。 「ねぇねぇ!明日のデートどうする?」 「う~ん。夕は何処行きたい?」 夕はあらかじめ答えを用意していたかのように答えた。 「私は映画いきたい!ダメぇ~?」 夕の甘えた声に苦笑しながら、シュンスケはOKと答えた。 その夜 二人で身体を抱きしめながらふと夕はシュンスケに尋ねた。 「そういえば、明日って平日だよね?なんで休みなの?」 シュンスケは少しビックリしたが、予想もしていた質問でもあった。 「ん、夕と久しぶりにゆっくりしたいと思って有給をとった」 そう呟くと、シュンスケは夕の唇を奪った。 「んっ・・・」 『夕を1人にしちゃいけないんだ。夕を守るのは俺しか居ないんだ』 シュンスケは心で呟きながら、夕の唇の中に舌を入れた。 「ん、だ、だめだよ~あ、あっ・・」 何分経ったであろうか、二人は大人のキスに酔いしれていた。 「シュンスケ、私・・・。あなたの赤ちゃん欲しい」 「あぁ・・・夕。俺も同じだよ」 二人の甘い夜は更けていった。 743名前: 230投稿日: 2006/04/19(水) 10:58:24.64 ID:zMRnD6Er0  >>673の続き 翌朝 シュンスケと夕は映画館に向かった。 「夕、今日はどんな映画やってるんだ?」 「知らない。私は何を観るかじゃなくて、シュンスケと一緒に映画を観るのが大事なの!」 「夕・・・」 シュンスケは明日の任務が不意に浮かんだが、今は言う時ではないと心の中に仕舞いこんだ。 迷った末、二人が選んだのは恋愛映画だった。 「(小声で)はい、あーん」 「ん、ありがと夕」 ポップコーンを食べながらゆっくり鑑賞していた。 906名前: 230投稿日: 2006/04/19(水) 23:46:33.76 ID:S/EWIWUw0  >>743の続き 映画を見終えた二人はウィンドウショッピングを楽しんでいた。 「シュンスケ、この服私に似合うかな?」 よく雑誌などで紹介されるカジュアルショップに向かい、夕は気に入ったひらひらレースのカーディガン・淡い青色のキャミソール そして白いスカートを試着し、シュンスケに披露した。 「似合うよ!着て帰るか?」 「うん!」 夕の笑顔を見て、シュンスケは店員を呼びそのまま着て帰ってかまわないか確認した。 「じゃ帰るか」 笑顔の夕とシュンスケはゆっくりと日が暮れ始めた街を後に家路についた。 その夜 横に安心している眠る夕にシュンスケは色々な気持ちをこめてキスをした。 翌朝 「おはよう!ってシュンスケがいない・・・仕事に行ったのかな?」 夕がベットから降りようした拍子、1枚の便箋が目に留まりました。そこには 『おはよう夕。今日はvipで哨戒に行く。でも必ずお前の元に戻ってくるから!今晩の夕食はコロッケ希望! じゃいってくる!』 「・・・シュンスケ、一言くらい声掛けて行きなさいよ。必ず帰ってきてよ・・・」 明るい日差しの窓際で、夕はすすり泣いていた。 その涙が枯れる事はしばらくなかった。 296名前: 230 ◆ptwGB2f2g6 投稿日: 2006/04/21(金) 00:08:32.60 ID:EVGbHkBb0 Vipハンガー 「おはよう」 いつもと違い、勢いがない挨拶をしながらシュンスケは職場に入った。そのシュンスケの頬には明らかに涙の跡があった。 「おい、今日哨戒あるのに大丈夫か?」 声をかけてきたのは、シュンスケと同じく出撃する予定の大場ケンイチであった。 「あぁ、なんとかな・・・」 「そうか、シュンスケは嫁さん居たんだよな。ちゃんと話してきたか」 ケンイチの言葉も今のシュンスケにとっては上の空だった。 「おいシュンスケ、安心しろケンイチと俺は何度も哨戒行って普通に帰ってきているんだ。大丈夫だって!」 そう声をかけてきたのはvipハンガーでは中堅にあたる柏崎リョウヘイだった。 「だって、操作なんて昔のPS2のコントローラーだ、造作もないことだ」 ここで簡単にvipについて説明する。 日本製vipこれはフュンフトの罰により資源が少なかった日本が他国からの資源の略奪行為から自衛するために造った兵器である。 自衛隊など軍組織も壊滅的状況の中で誰でも簡単に扱えることを念頭に置き、開発が進められ その結果、操作機能に関しては5年前最も普及していたゲーム機のコントローラーで操作するようになっていた。それにより、多くの若者がvip関連会社にて生計を立てている。 「今日の哨戒は九州北部か、ちょっとめんどくさい地域だな」 リョウヘイが呟いたのも無理はない、九州北部は日本・Neo朝鮮・中華自由連合国の国境海域で度々ニアミスが起こる地域である。 「さぁそろそろ出るか!帰ってきたら1週間の臨時休暇だ」 「だな。そしたら夕と旅行でも行くか」 「その幸せなんかムカつく!なんてな」 ようやくシュンスケも調子を取り戻し、男たちはvipへ向かった。 803名前: 230 ◆ptwGB2f2g6 投稿日: 2006/04/22(土) 00:07:16.48 ID:W5fXqxei0  >>296の続き シュンスケ宅 泣くだけ泣いた夕が佇んでいた。 「私、シュンスケの為に今出来る事ってなんだろう・・・、vipハンガーに行くこと?それは迷惑になる。私はvipハンガーから離れた人。いまさら技術もサポートも出来ない」 「じゃあ私に出来るのは何?祈るしかないの。でも何もしてないと落ち着かないし、うん神社でお百度参りしてこよう。あとはシュンスケが帰ってきた後のコロッケ作りか。よし!気合入れ直し完了」 そう呟くと家から少し足を伸ばした所にある神社に向かった。 809名前: 230 ◆ptwGB2f2g6 投稿日: 2006/04/22(土) 00:09:09.02 ID:W5fXqxei0 Vipハンガー 「1号機 大場ケンイチ、2号機 橘シュンスケ、3号機 柏崎リョウヘイ。各自準備は整った!?」 リタ社長の激がコックピットの中に響き渡る。 「1号機完了」 「2号機同じく完了」 「3号機同じく完了」 各機体からの返事がハンガー全体に返ってくる。 「今回はあくまでも日本領空侵犯などに対する監視業務であり、積極的に交戦を行う必要はない。 但し、国籍不明機が再三に渡り警告無視及び敵機からの先制攻撃を受けた場合は交戦止むなしとする。肝に銘じておけ」 「了解!」 3機から同時に返答があり、それと同時に最後の機体確認に整備士たちが機体に向かった。 「先輩!初出撃ですか。御武運をお祈りいたします」 シュンスケに声を掛けてきたのは大村勝也であった。彼はシュンスケがvipハンガーに入ったのとほぼ同じ時期であるが、年齢が4歳近く若い奴である。 「あぁ、ぶっちゃけ足が震えてやがるよ。でも夕の為に帰ってこなくちゃいけないからな」 「そうですよ、夕さんはvipハンガーのアイドルだったのに結婚しちゃうんですから(笑) まぁみんな2人が入社する前から付き合っていることは知ってましたがね」 「おいつ、おまえだって素敵な恋人いるだろ」 「いいえ、あいつは腐れ縁です。そんなこと言うと俺が殺されちゃいますがね」 シュンスケは勝也に笑いながら言った。 「よし帰ってきたらお前の彼女に今の話に色々と脚色して話してやろうと!」 「先輩、冗談にしてください。ここだけの話です!じゃ、必ず戻ってきてください」 「ありがとうな、おかげで落ち着いてきた。それじゃ今晩はお前を肴に一杯飲むか!」 無駄な緊張がとれたシュンスケは、出撃の瞬間を待っていた。 811名前: 230 ◆ptwGB2f2g6 投稿日: 2006/04/22(土) 00:10:05.23 ID:W5fXqxei0 「3機発進!」 リタ社長の掛け声が掛かった。 「1号機了解」 「2号機同じく了解」 「3号機同じく了解」 3機は陽の高い空へ飛び立っていった。 同時刻 神社 「シュンスケが無事に帰ってこられますように」 心の中で祈りながら裸足になり夕はお百度参りをしていた。 その頭上を3機のvipが高速で西に向かい飛んでいった。 『あの3機の中のどれかにシュンスケが載っているんだ。お願いだから無事に帰ってきてよ』 812名前: 230 ◆ptwGB2f2g6 投稿日: 2006/04/22(土) 00:11:30.42 ID:W5fXqxei0 Vip機上交信 「3号機より伝達、1230現在、防府・春日・壱岐の各基地より緊急警報などは無し、予定通り九州北部エリアに向かう。 なお、哨戒・監視業務終了後、防府基地にて給油後に東京基地に1730帰還予定。以上」 「了解」 シュンスケはリョウヘイからの伝達を聞きひとまず安心した。 「おいシュンスケ!」 1号機のケンイチが急にシュンスケを呼び出した。 「1号機用件は?」 「ちょっと聞きたいんだがシュンスケは結婚しているんだよな」 「あぁ、そうだがどうした?」 哨戒業務に向かおうとする交信でする話ではないだろうと思いつつケンイチに返事をした。 「今度、シュンスケと夕ちゃんに来賓挨拶してほしいんだ」 「えっ?ケンイチ結婚するのか?」 驚きつつケンイチに尋ねた。 「あぁ、経理の亜希子ちゃんとな」 「えっ~!俺も始めて聞いたぞ」 今度反応したのは3号機のリョウヘイだった。 「なんかあいつの故郷の琵琶湖が眼下に見えたからな、頼むぞ」 「良かったなリョウヘイ。夕にも伝えて必ず出席するからな」 「おい俺は?」 「リョウヘイ先輩も勿論呼びますよ。そこで恋人探ししてくださいね」 彼女が居ないリョウヘイにケンイチは軽口を叩いていた。 「あぁ~ヤダヤダ奥さん持ちと彼女持ちと俺は一緒に組んでいかなくちゃいけないのか!」 ケンイチの呟きを聞いていたシュンスケの目に宍道湖が映った。 889名前: 230 ◆ptwGB2f2g6 投稿日: 2006/04/22(土) 02:02:02.44 ID:W5fXqxei0  >>812の続き その時各機に対して緊急アラームが鳴った。 3機のまったりしたムードはたちまち吹き飛んだ。 「1252米子基地より緊急要請。国籍不明機が米子基地より110km北北西、隠岐空港より北西40km地点に侵入を確認。 米子基地よりスクランブル発進致しました。米子・隠岐よりそれぞれ半径100km圏内にある機体に対し 国籍不明機に対してスクランブルを要請する」 100km圏内というと3機は間違いなく該当する。 「3号機より全機に通達。米子緊急要請に従い国籍不明機に対してスクランブルを行う」 打って変わった厳しい口調でケンイチからの通達が入った。 「了解。1号機進路を北西に取り、国籍不明機に対しスクランブルを行う」 「了解。2号機同じく進路を北西に取り、国籍不明機に対しスクランブルを行う」 3機は隠岐島の方角へ向かった。 13:00 神社 「これで94回っと。後6回、あれ手の甲に血が・・・。どこで怪我したんだろう?もしかしてシュンスケの身に!!」 夕は嫌な予感を必死に振り払おうとお百度参りを再会した。 84名前: 230 ◆ptwGB2f2g6 投稿日: 2006/04/22(土) 12:11:39.53 ID:EJpNa+BC0  >>前スレ891の訂正(こっちをまとめサイトに載せてください) 同時刻 vip機上 隠岐地区へ向かっているシュンスケ達に対して再び緊急アラームが鳴った。 「1259国籍不明機、隠岐空港より西30km地点にて米子基地所属機と接触、警告無しで当基地所属機に発砲。 当所属所属機墜落、1259を持って国籍不明機を敵機と認定。警告無しに交戦を命ず」 「尚、現時点で当基地所属隊員の生死は不明」 『そんなのありか・・・初めての出撃で』 シュンスケは心の中で呟きながら現場へ機体を進めた。 13:05 vipハンガー Yahoo!News速報 【隠岐島付近で日本国機と国籍不明機接触か?】 「・・・よりにもよって彼らを哨戒に出した日に戦闘か。あいつら生きて帰ってこいよ」 リタ社長が苦虫を潰しながら呟くのと同じ瞬間、このニュースを辛い思いで見ているものがいた。 「ケンイチ・・・。生きて帰ってきてよ」 早坂亜希子はケンイチと婚約をしていた。ただこの婚約に関しても伝えているのはリタ社長のみで 他の社員には、今日ケンイチが哨戒から戻ってきてから報告する予定であった。 「お願い・・・」 亜希子は遠い西の方角にいる彼に向かって呟いた 161名前: 東葛広報局長 ◆7/2vjVH3To 投稿日: 2006/04/23(日) 00:31:45.41 ID:TB1FJYvu0 13:08 vip機上 「10時の方角に敵機確認。ロックオンまであと10秒」 1号機ケンイチからの声が2人の耳にも届いた。 シュンスケは敵機を目視し、呟いた。 「アレは・・・、Neo朝鮮か。でも単機で支援も無しということは、個人的に日本に敵意を抱く者か。たちが悪いな」 「敵機ロックオン、ファイアー」 ケンイチが叫ぶのが先かほぼ同時に敵機からも3機に向かい砲撃が来た。 ケンイチもほぼ同じタイミングであったが、両機体とも回避は厳しいところであった。 シュンスケとリョウヘイの機体は砲弾の軌道上から避けつつ敵機に打ち込んだ。 そしてシュンスケが安全圏に抜けつつ眼下を望むと敵機とそして1号機が日本海に叩きつけられていた。 「1310東京基地所属vip3号機より敵機との交戦結果を報告す。 Neo朝鮮とおもわれる敵機と隠岐空港より西南西20km地点にて接触交戦。 敵機を撃墜するも当基地所属vipも墜落」 「なお当基地所属隊員の生死不明。以上」 リョウヘイが吐き出すような声で交戦結果を報告した。 シュンスケはケンイチの生死を思い気持ちが沈んでいた。 そんな時リョウヘイから交信が入ってきた。 「シュンスケ、とりあえず隠岐空港行くぞ。ケンイチを探さなくちゃいけない」 「・・・。そうだな了解」 シュンスケはリョウヘイからの通信を切り隠岐空港に着陸許可を得た。 162名前: 東葛広報局長 ◆7/2vjVH3To 投稿日: 2006/04/23(日) 00:34:20.80 ID:TB1FJYvu0 13:17 vipハンガー リタ社長への直通電話が鳴り響き、リタ社長は覚悟を決めて受話器を取った。 「もしもし、東京基地vipハンガーのリタだが」 「こちら隠岐空港リョウヘイです。ご報告がありお電話致しました」 リタは受話器を握っている手から汗が流れるのを感じつつ、リョウヘイの次の言葉を待っていた。 「まずは敵機は撃墜致しました。ただ、1号機 大場ケンイチが敵機と相打ちに近い状況で機体は日本海に墜落いたしました。 現在、シュンスケと隠岐救援部隊が現場に急行しています」 リタ社長は覚悟を決めていたが、実際の状況を知らされて今にも膝から崩れ落ちそうにもなっていたが気丈に振舞った。 窓越しに見える亜希子にまだ悟られてはいけないと・・・。 「了解。では本日中の東京への帰還は厳しそうだな。捜索状況に進展があり次第すぐに電話を頼む」 リタ社長は受話器を置くとさびしそうにタバコを手に取り離席した。 189名前: 東葛広報局長 ◆7/2vjVH3To 投稿日: 2006/04/23(日) 01:37:05.55 ID:TB1FJYvu0 13:20 vipハンガー休憩室 リタ社長は休憩室にむかいつつ亜希子を呼び寄せた。 亜希子は顔を強張らせながらリタ社長の後を付いて行った。 「亜希子ちゃん、なんか飲む?」 自動販売機にリタ社長は向かい亜希子に尋ねた。 「い、いえ・・・。それで・・・ケンイチは!?」 リタは缶コーヒーをテーブルに2つ置き、タバコの火を消して亜希子の瞳を捕らえて話し始めた。 「さっき、ネットニュースを見ただろう・・・。あのあとvip3機が敵機と交戦になった。 結果的に1号機のケンイチと敵機が合い見舞える形になった」 亜希子は膝に置いた拳を強く握りながら黙って聞いていた。 「敵機はケンイチが撃墜した」 亜希子は声を震わせながら尋ねた。 「ケ、ケンイチは?」 リタは缶コーヒーを少し口に含み、冷静をつとめるように亜希子に伝えた。 「1号機は相打ちに近い状況で墜落した。いま、シュンスケたちが必死に・・・」 「イヤー!!!!!!!!!!!」 亜希子は全ての感情を解き放つように大声で絶叫した。それはvipハンガー全体はおろか、ハンガーの外まで響くような声だった。 13:24 隠岐島西方海上 シュンスケは隠岐救援部隊と共に現場へ向かっていた。 『頼むぞ、ケンイチ生きていてくれよ。お前の結婚式でスピーチでも漫才でもなんでもしてやるからさ』 シュンスケは心の中で呟いていた。 「vip他計3機視認!」 救援部隊の中から声があがった。確かに敵機、米子所属機体。そしてケンイチが載っていたvipが目の前に見えてきた。 190名前: 東葛広報局長 ◆7/2vjVH3To 投稿日: 2006/04/23(日) 01:38:30.54 ID:TB1FJYvu0 13:27 日本政府官邸 中田首相の元にNeo朝鮮のパク・ヨンジュン首相からホットラインが入電した。 「はい。中田だが」 「パクです。この度は当国所属機が日本国領空侵犯し、無警告の上、墜落させたことをお詫び申し上げます」 パクは中田に対し敵意の無いことを示した。 「ではNeo朝鮮としては我が国に対する宣戦布告ではないという訳だな」 「はい。確かに朝日(ちょうにち)の間にはさまざまな問題はありますが、現時点で日本への攻撃構想などは一切ございません」 中田は一呼吸置き、パクに告げた。 「では貴国から国際社会に対し今回の事故の謝罪と報告をしていただければ、今回は不運な事故として国民に説明いたします」 「わかりました。Neo朝鮮政府として速やかに発表いたします」 この2時間後、Neo朝鮮政府として正式な謝罪と妄想に囚われた兵士の暴走として発表された。 後にこの事件を「隠岐事件」として呼ばれることとなった。 417名前: 東葛広報局長 ◆7/2vjVH3To 投稿日: 2006/04/23(日) 23:33:23.85 ID:sHjjVKt+0  >>190続き 13:30 隠岐島沖 ジュンスケたちを乗せた隠岐救援部隊の船舶は、まず一番手前にあった米子の機体に近づいた。 「あっ、人影が2時の方向に」 救援隊から上がった声にざわめきながら、その人影に近づいた。 「こいつはNeo朝鮮の奴か、お陀仏だな・・・」 墜落時パラシュート脱出を試みたのだろうか、遺体のそばにはパラシュートの残骸もあった。 遺体から念のため武器を回収後、遺体を回収した。 同じ時、別の部隊の者が米子部隊隊員を発見した。 「そいつは、どうだ?」 シュンスケの問いかけに確認に向かった隊員は両手を頭上でクロスさせた。 そして・・・。 「・・・はぁ、こっちもか」 もう一つ別の隊員から両手のクロスが挙がった。 419名前: 東葛広報局長 ◆7/2vjVH3To 投稿日: 2006/04/23(日) 23:35:27.57 ID:sHjjVKt+0 13:50 シュンスケ宅 夕はお百度参りを終えて、自宅に帰ってTVを付けると隠岐での事件を速報で行っていた。 『現在、分かっている情報を整理いたします。隠岐島西方にて国籍不明機から無警告で発砲を受け、 米子基地所属機が墜落。これを受けて現場に急行した東京基地所属vipが国籍不明機と相打ちとなり共に墜落。安否は不明です。繰り返し・・・』 夕はその場にうずくまった。シュンスケがvipに搭乗する以上覚悟は決めていたつもりであった。しかし現実を受け止められないでいた。 そのとき、彼女の携帯電話が鳴った。その発信元はvipハンガーであった。 「も、もしもし・・・。橘 夕ですが・・・」 「あっ、vipハンガーのリタです」 リタ社長とはシュンスケと結婚前にはvipハンガーで毎日といっていいほど会っていた。 「シュ、シュンスケは?」 冷静に努めようとするが、声は裏返っていた。 「あぁシュンスケ君は無事よ。今隠岐で救援部隊と行動している。最も今日は帰ってこれないかもしれないけど・・・」 夕はリタ社長の言葉を聞いてホッとして力が抜けかけていた。 「で・・・、ここから先が言いにくい話なんだけどシュンスケや夕ちゃんと一緒に働いていた ケンイチ君って覚えているかな・・・」 「はい。えっ!?もしかして…」 夕は息を飲み込んだ。 422名前: 東葛広報局長 ◆7/2vjVH3To 投稿日: 2006/04/23(日) 23:58:00.58 ID:sHjjVKt+0 隠岐事件から3日後 vipハンガー いつもは活気と笑いの溢れている職場であったが、今日は物悲しい葬送曲がながれていた。ケンイチの葬儀であった。 喪主の席には亜希子がいた。確かに結婚はしていなかったが、両親に報告は済んでおり、 ケンイチの両親も『亜希子さんが望むのなら…』ということで喪主席に座ることになった。 友人代表挨拶として、シュンスケが行うことになった。 シュンスケは喪服姿であったが、何故か片手にラジカセを持っていた。そして夕も寄り添っていた。 「お~いケンイチ。Vipで交信中に教えてくれたよな亜希子さんと結婚するって、で俺と夕に来賓挨拶してくれって! なんで俺はここで挨拶しなくちゃならないんだよ!イヤだよ・・・。でもさ、お前を救援部隊の人たちと探しているときに1号機のボイスレコーダーが発見されたよ。 そのお前の最期の言葉聞いてさ、やっぱり俺が話さなきゃならないんだと思って、今こうして立ってる」 そう言うとおもむろにラジカセの再生ボタンを押した。 生々しい被弾を受けた衝撃音の後だった。 『あきこー!あきこー!ありがとう!元気な子を産んでくれ!あきこー!』 そしてもう1度衝撃音が聞こえケンイチの声は途絶え、そして全ての音が止まった。 場内には男女問わず、すすり泣く声があった。 「亜希子さん。今、俺達じゃ考えられないほどの辛さの中にいると思います。俺は頑張ってなんて軽々しい言葉は言いません。 でもケンイチと生まれてくる子の為に・・・」 そこまで言うとシュンスケも何も言えず言葉に詰まった。 するとシュンスケの横に寄り添っていた涙をながしつつ夕がマイクを受け取り続けた。 「亜希子さん、みんな味方です。だから私達を頼ってください」 場内には声にはならない声が溢れていた。 636名前: 東葛広報局長 ◆7/2vjVH3To 投稿日: 2006/04/24(月) 19:29:18.33 ID:PL3nW3lh0  >>422の続き 葬式から6ヶ月後  日本政府は自国の領空奥深くまで国籍不明機を侵入させてしまった「隠岐事件」を厳粛に受け止めて、 改めて正規の防衛軍を創設することを発表し、各基地やvipハンガーに対して求人を行った。 東京基地vipハンガーでは「隠岐事件」でケンイチを失っていた為、一人ひとり苦しみながら回答を出した。 応募締切日 vipハンガーに出社したリョウヘイはシュンスケに尋ねた。 「シュンスケ結局どうする?防衛軍への就職は?」 シュンスケは昨晩、夕との会話を思い出していた。 締切日前夜 「あなたどうするの?防衛軍の締め切りは明日よね」 「あぁ・・・、ここ2週間ずっと考えている。ケンイチが死んじまって自分の中で色々考えたさ。 確かにここ数ヶ月は大きな事件もスクランブル要請もなく平穏無事だけど、いつどうなるか分からないし…」 「俺はずっと夕を護って生きていきたい。それだけなんだ」 沈黙が二人を包んだ。 やがて夕がおもむろにしゃべりはじめた。 「もうイヤなの…、私もシュンスケが隠岐事件に巻き込まれたと知ったとき涙止まらなかったもん。 ゴメンね…、本当はシュンスケの帰りを待って気丈に振舞わなくちゃいけないんだけど。だって、シュンスケが護るのは私だけじゃないんだもん!」 夕の言葉にシュンスケの思考が止まった。 「出来たんだよ!シュンスケと私の子が!!だから・・・」 その時シュンスケの答えは決まった。 645名前: 東葛広報局長 ◆7/2vjVH3To 投稿日: 2006/04/24(月) 20:12:59.05 ID:PL3nW3lh0 再びvipハンガー 「リョウヘイ、俺はやっぱり…」 「いいんだよ言わなくて。俺は妻子も彼女も居ない独り身。だったら多少の危険は買ってでも給与の高いところを選ぶだけ。 シュンスケは守るものがあるだろ、だから結論は違っても何も言わない。頑張れよ!」 「あぁ、ありがとう」 シュンスケはリタ社長にvipハンガーの退職願を提出した。 「そうか…シュンスケは防衛軍には行かないのか」 「はい、申し訳ありません。実は夕に赤ちゃんが授かりました。この状況ではもう空を飛べません。チキンですから…」 溜め息をつきつつシュンスケは話していたが、リタ社長はニタニタしながら話した。 「良かったじゃない!へぇ~、夕ちゃんとシュンスケに赤ちゃんか。何か私も結婚したくなっちゃったじゃない。で、再就職先は決まった?」 「い、いえまだ…」 リタはそれを聞くか聞かないかのうちに自分の携帯を取り電話を始めた。 「あっ、タケちゃん!おひさしぶり!!うん・・・。元気にやってるよ!でさぁ~うちのvipハンガーが防衛軍に吸収されちゃうじゃない。 で、奥さんの為にvipから降りて仕事したいって奴がいるんだけど。・・・あっ大丈夫よ!元気とか根性とかはどこいっても一線級よ。じゃ宜しくね!」 「リタ社長、今のお電話は?」 「あっ、君の再就職先!えっ~と、こことも取引ある三友物産って知っているよね」 三友物産といえば『ラーメンからミサイルまで』と呼ばれる大手商社である。 「はい。勿論知っております」 「で、電話の相手先はそこの社長!って事で来月から頑張ってね!」 どうやらシュンスケの再就職先まで決まってしまったようだ。 676名前: 東葛広報局長 ◆7/2vjVH3To 投稿日: 2006/04/24(月) 22:12:40.64 ID:PL3nW3lh0 さらに2ヵ月後 「シュ、シュンスケ、亜希子ちゃんが赤ちゃん産んだってリョウヘイから電話があった」 俺が三友物産に入社してから1ヶ月が経った。そして夕のお腹の中の赤ちゃんは元気なようだ。 俺は夕を車に乗せて亜希子が入院している病院に向かった。 「先輩お久しぶりです!夕さんもお久しぶりです」 シュンスケ達が病院のロビーに着くとまず2人を迎えたのは大村勝也後輩であった。 「おまえ結婚は?そろそろじゃねーのか?」 「いや、もう少しお金ためてからです。でも同棲生活をはじめました」 そういうと勝也はニコニコ笑っていた。 勝也と話していると夕が誰かに挨拶しているのが横目に見えたリタさんであった。 「今回は夫の再就職先までご紹介頂きありがとうございます」 夕が恐縮して話していると、リタさんは笑いながら夕のお腹をさすっていた。 「今、何ヶ月?」 「えっ~と4ヶ月ですね」 シュンスケは勝也と一度別れて夕とリタの元に駆け寄った。 「おかげさまで三友物産で頑張らせて頂いてます」 「そうか~、2ちゃんねるとか見てんじゃないよな~」 シュンスケは全力で首を横に振って否定した。 「まぁ、頑張っているとタケちゃんからは聞いているけどね」 更に勝也も含めてトークしているとそこにリョウヘイがやって来た。 「みなさん御揃いで亜希子ちゃんは205号室で待っているよ」 リョウヘイの後について4人は205号室に向かった。 682名前: 東葛広報局長 ◆7/2vjVH3To 投稿日: 2006/04/24(月) 22:24:16.89 ID:PL3nW3lh0 205号室 「あっ、みなさんわざわざありがとうございます」 亜希子の腕の中には新しい生命がすやすや眠っていた。 「ねっ、ケンイチに似ている」 亜希子は赤ちゃんの手を触りながら母親の顔になっていた。 不意に病室の窓からトンボが入ってきて、 新しい生命を見つめるかのように病室のテレビの上に止まったのを夕が見つけた。 「ケンイチ・・・」 「ケンイチか」 「ケンイチ君」 「ケンイチ」 「ケンイチ先輩」 皆が感じた思いは一緒だったようだ。 「あいつも見に来たのか。そうだろうな…」 シュンスケは思わず呟いた。 「亜希ちゃんを俺が守っていってもケンイチは許してくれるかな…」 リョウヘイが赤ちゃんを撫でながら話すとトンボは羽を小さく上下に振った。 季節は秋を迎え、木漏れ日が暖かかった。 FIN

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