一般学生バトルロワイアルまとめ @ ウィキ
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一般学生バトルロワイアルまとめ @ ウィキ
ja
2010-09-26T17:11:05+09:00
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惨劇の跡、死闘の後
https://w.atwiki.jp/akitobr/pages/136.html
「オイ」
「はい?」
阪東秀人は、一条かれんが村役場に隠した武器探しが一段落したところで、美浜ちよに声をかけた。
武器の方は、結局ボウガン以外には、ワルサー用の9mmパラベラム弾が何箇所かに分けて隠されていたくらいで、他に武器らしい武器を見つける事は出来なかったが、
ひとまずボウガンと銃さえあれば、たとえ銃器で武装した者に襲われても、応戦することが出来るだろう。
それだけの武器は確保した。
そこで阪東は、そろそろ行動を開始しようと考えた。
「俺は一度、向こうに戻る」
阪東は親指で、かれん達の居る(居たと表現すべきだろうか)家の方を指し、そう言った。
「おまえはここに……」
「あっ、あのっ!」
そして、ちよはこの場に残るよう言おうとした阪東の言葉を、全て言い終わる前にその内容を察したちよが遮った。
「わ、私も一緒に行っちゃ駄目でしょうか?」
そう言って、上目遣いに阪東を見上げるちよの、小動物のようなつぶらな瞳には、早くも涙が浮かんでいる。
阪東が「いや、すぐに戻る」と言っても。
「そ、それでも、い、一緒に!」
と、役場に残る事に必死で抵抗した。
ちよは、たとえ短い時間でも一人きりにはなりたく無かったのだ。
現在、絶賛稼働中の死体製造機といった様相を呈しているこの島の、
多少時が経っているとはいえ、すぐ傍と言ってもいい場所で死人が複数出ているこの場所で一人きりになってしまったらと思うと。
例えるなら、険しい崖に架かる、風にゆらゆらと揺れているつり橋の真ん中に置いて行かれそうになっているような、そんな、どうしようもない不安をこの時ちよは感じていた。
そうなってしまえば、きっと一人では前にも後ろにも、一歩も踏み出せないだろう。
今のちよには、自分の前で手を引いてくれる存在が必要だったのだ。
「フゥ…。好きにしな」
そんなちよの様子を見た阪東は、一言そう言うと、ちよに背を向けて村役場を出ようと、出入り口へ向かった。
「は、はい!」
そしてちよは、親鳥について行くカルガモの雛のように、阪東の後を追いかけた。
(ま、別にいーだろう)
阪東は、ちよの足音を背後に感じながら、まずは加東秀吉の死体がある草むら
2010-09-26T17:11:05+09:00
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The Gold Experience No.3:<黄金を頭に戴いて狂王は屍の玉座に嗤う>
https://w.atwiki.jp/akitobr/pages/135.html
早咲きの椿の花が、首を切られたようにぽとりと落ちた。苔むす岩の上で、
寒気のするほど紅く際立つそれに続くように、赤い液体が散っている。師走の
午後、覇気のない陽光はその温い赤を覚束なげに照らす。紅、赤、赤……辿り
ゆけば、鮮やかな道しるべの終わるそこで、二人の男が微動だにせず睨み合っ
ていた。
一人は血塗れた日本刀を構えて立つ、長身の男だ。鋭い眼光。研ぎすまされ
た刃のごとき印象を与える彼は、まるで武士のようだった。その静かな、だが
曰く言いがたい威圧感のある佇まいは何の乱れも見せていないが、彼の左肩か
らは血液が滲みだし、制服の肩口を赤黒く染めている。そこを掠めた鉛玉に肉
を抉られた痕だ。深いものでないとはいえ、痛みを感じていないはずもなかっ
たが、彼は顔色ひとつ変えていない。
もう一人は地面に片膝をついたまま、両手で小型の拳銃を構える金髪の男だ。
その銃口は間違いようもなく、自分の首筋に刀を突きつける男の左胸に向けら
れていた。鮮やかに染め上げられた前髪の隙間からのぞく眼光は、男の対峙す
る相手のそれとはまた違った強い光を放っている。この男もまた、言葉にうつ
せぬ苛烈な空気を纏ってそこに存在していた。刀を構える男からは背中側なの
で見えていないが、わざと短く誂えられた制服の右脇腹はスパリと裂けて口を
開けている。そこから見え隠れする皮膚には、浅いながらも刀に裂かれた幅十
センチほどの裂傷があり、血液がじとり、と染みだしていた。
風に揺れる椿の葉の音と、鳶の鳴く細い声だけが、張りつめた静寂の中で奇
妙に響く。言葉のない二人の対峙は、ほんの数瞬前に始まった。そして彼らは
今、互いの隙を見出せぬままに動きを止めているのだ。
この二人の男たちに何があったのか。そして今、何が起こっているのか。そ
れを知るには、時計を少しばかり巻き戻す必要がある。
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寒空にかかった太陽が、一番高い場所から滑り落ちた午後二時頃、銛之塚崇
は道を急いでいた。すでにその手で葬った二人の女たちを追いかける際、邪魔
をさせないために気絶させた須王環を、少し離れた場所に放置したままだった
からだ。須王のもとを離れてから、まださほどの時間は
2010-10-14T15:38:18+09:00
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The Gold Experience No.2:<黄金の背に追い縋り少年は冬の路傍に立ちぬ>
https://w.atwiki.jp/akitobr/pages/134.html
金色の髪が風にたなびく。長いそれは柔らかく揺れて、寒空に低くなった陽
光を反射する。きらきらと輝くそれは、何か神々しいもののように七原の目に
は映った。何も信じられるものも、拠り所にするものもない今の彼にとって、
沢近の存在は唯一のしるべのようなものであったから、余計にそんなふうに思
えたのかもしれない。自分の前を歩いている、年上の美女の背中を見つめなが
ら、七原はとぼとぼと歩く。彼女はどこへ向かうのだろう。自分はそれすら知
らない。民家のあった平瀬村の中を通り抜けていることと、何となくの方向は
わかるのだが、行き先は不明だった。
あの民家で、眠っている沢近を見つけて……何というか、まあ、生理的にど
うしようもなかったとはいえ、何とも言いがたい罪悪感と羞恥の残る行為をし
てしまった彼の中には、未だ自己嫌悪という澱が沈殿している。その濁った色
の澱は、ずいぶん前から、彼の中に降り積もって層を成してはいたから、あの
行為をやらかしたときに初めて生まれたものではなかった。が、あれで余計に
その沈殿物のかさが増したことは間違いない。
……いったい、自分は何をやっているのだろう。必要なことは何もしていな
いくせに、余計なことはしてしまう。結局何もできない、弱くてどうしようも
ない自分。どうしようもなさすぎて、何をやるべきなのかすら、もうわからな
い、生きていていいのか、いっそ死んだほうがマシか、でも自分が死んだら同
じ学校の奴らは……ああ、どうしたら。七原は、そんな心の迷宮に入り込んで、
未だに出られずに彷徨っている。たまたま出会えた沢近の、長い髪のはなつ黄
金の光は、迷宮の出口からさしこむ救いの光かもしれない、そんな勝手な幻想
を抱きながら。
(……ホント、すげー、綺麗な色)
あれは、陽の色だ。こんな冬ではなく、夏のそれ。真っ青に晴れた、夏の空
の太陽のような色を追って、七原は溜息を吐く。もはや身の内に「自分」のい
ない彼は、このまま自分の探す答えのある場所へと、沢近が連れていってくれ
ることを期待した。それは全くもって厚顔無恥な望みだ。七原は勝手に、沢近
を、自分の何かを変えてくれそうな相手だと思い込んでいる。
あの家を出るとき、七
2010-10-14T15:14:01+09:00
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The Gold Experience No.1:<黄金と路は交わらず少女は背を血色に染める>
https://w.atwiki.jp/akitobr/pages/133.html
喉の痛みに耐えながら、桂言葉は道を急いだ。今の彼女は丸腰だ。この状態
で男性の参加者に襲われでもすれば、武器も持たぬただの女性である彼女にと
って、かなり不利な状況が生まれることは間違いない。それを自覚している桂
は、周囲にできる限り気を配りながら動く。遠目からでもすぐわかるような開
けたところは避けたかったので、わざと森の中を歩いた。相馬の死体のある場
所はあまり細かく覚えていなかったが、少なくとも道端ではなかったはずだ。
地図も何もなかったが、太陽の位置でおおよその方角はわかるので、もともと
いた場所に戻るのにはさほど支障がなかった。
(暗くなる前にたどり着かないといけませんね……明かりもないから、夜にな
ったら下手に動けなくなる……)
冬の陽が落ちるのは早い。もう随分と位置を低くした太陽は、しばらくすれ
ば滴るような赤に空を染めることだろう。そうなってしまえば、森の中を動く
のは容易なことではなくなる。この田舎なら星や月の明かりは期待できそうだ
が、それでも昼間と同じ条件とは言えない。デイパックを持たない桂は、当然
支給品のランタンも持っていなかった。自分の足許、手許を照らすほどの明か
りもない状態で迎える夜は、どうにも歓迎できはしない。彼女は幾分、焦りを
感じる。
(……誠くんは、どこにいるんでしょう)
昼の放送では、伊藤誠の名前は呼ばれなかった。とはいえ、その身の安全が
完全に保証されているわけでもない。彼女は早く伊藤と合流したいと考えてい
た。学校対抗などというが、要するに、他が全て死んでしまえば終わりだ。桂
にとっては、それで済む話だった。他の同級生になど特に興味もなかったし、
その生死など知ったことではない。伊藤誠の希望がわからない以上、彼に会う
までは大人しくしていようと思っている彼女だが、正直なところ、彼以外の同
級生に気を払う必要は微塵も感じていなかった。桂にとって、同じ学校の人間
は守るべき仲間ではない。わざわざ消すほど邪魔な人間ではないが、どこで何
をしていようとどうでもいい程度の人間だ。それは、他の参加者たち――宮崎
都を除いて――とは明らかに大きくかけ離れた感覚だった。
実際には、桂の知らぬところ
2010-10-14T15:04:04+09:00
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金髪男子のコロシカタ編
https://w.atwiki.jp/akitobr/pages/132.html
金髪、短ランという出で立ちの高校三年生、三橋貴志は銃声を聞き付けると、
今まで寝ていた分を取り戻すべく、一気に無学寺から東崎トンネル付近まで走った。
ここからが三橋の頭脳(悪知恵)と身体能力の見せどころだ。
そろそろトンネル前へ到着というところで、三橋は一度足を止め、
銃を構えながら慎重に、トンネル付近へ近づいた。
しかし、そうしてトンネル周辺を窺う三橋の視界には、誰の姿も映らなかった。
「ハァ、ハァ、クソッ、誰もいねーな」
呼吸を整えながらゆっくりとトンネルの出入り口まで近づき、付近を調べてみたが、
先ほど聞きつけた銃撃戦を行っていた奴はもちろん、
銃撃戦の痕跡、例えば死体や血痕などを発見することはできなかった。
先ほど三橋が聞いた銃声は、ここから発せられてのではないのだろうか?
この島に来る前にも、やくざやマフィアなどとトラブルがあった三橋は、
銃声を聞くのも今回が初めてという訳ではなかったが、しかし聞き慣れている訳でもない。
音を聞いただけでは、正確な位置など分かるはずもなかった。
「トンネルの逆側か?」
実際、先ほど三橋が聞きつけた銃声は確かに今、三橋のいるこの場所から発せられたものだったのだが。
もっとよく探せば、弾痕の一つも発見できたのかも知れないが。
そんな事など知る由もない三橋は、場所が違ったのだと判断し、辺りを警戒しながらもトンネルへと入って行った。
(中には、誰もいねーみてーだな)
トンネルの中は電灯もついておらず薄暗かったが、それでも目を凝らせば、
前後からの明かりだけでも、中に人がいるかどうかくらいは分かる。
中に誰もいないことを確認した三橋は、素早くトンネル内を駆け抜けると、
トンネルの逆側の出口で足を止め、中から周囲を警戒した。
しかし、そちら側でも近くに人影は無く、三橋は少し拍子抜けしたような、ホッとしたような表情でトンネルを出る。
そして気を引き締め直すと、改めて銃撃戦の痕跡が無いかどうか、辺りを調べ始めた。
「あん?」
そして、三橋は草むらの中でそれを見つけた。
三橋は最初、それが何なのか、すぐには分からなかったが、
近寄ってみて、それが人だと分かった。
すぐに人だと分からなかったのは、三橋が鏡の中以外で金髪を見慣れていないからだろう。
2010-03-15T03:03:27+09:00
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盗聴!発射!回復!
https://w.atwiki.jp/akitobr/pages/131.html
カチッカチッと聴こえる……これはきっと時計の音だろう。
ボワッボワッと聴こえる……これはきっと暖房から出る炎の音だろう。
スゥスゥと聴こえる……これはきっと金髪の少女から漏れる吐息だろう。
ハアハアと聴こえる……これはきっと疲労回復を図っている少年による呼吸だろう。
何かが擦れる音……シュシュッと聴こえる……!?
もう一度耳を傾ける……確かに聴こえる……この音はなんだろうか?
「なあ、オマエ、この音が何だか分かるか?」
専用インカムに集中している中、二メートルほど離れた無機質な部屋の中央部から
小汚い灰色ソファーの上で足を組みつつ、下品な笑顔を向ける上官が自分に問いかけてきた。
部屋には他にも数人の兵士がいるというのに、自分を選んできたことを心の底から憎んだ。
……しかしながら、周りの面子はほとんど無愛想。
第一放送前にも兵士側に声を掛けてきたらしいが、その時自分は休憩中でいなかった。
だからこそ、今、周りよりも無愛想でない自分に声を掛けるのは仕方ないのかも知れないと思うことにした。
「ハッ……この音とはどこのグループのことでしょうか?」
「とぼけるなよ、オマエが今聞いているところ
所在地F-1民家、七原と沢近のところだよ」
やはりそうかと感じつつ、苦手な上官だと改めて思う。
胸に坂持と書かれたプレートを付けているその苦手な上官は、上機嫌で話を続けていく。
「今回のプログラムなあ、思ったより全員『綺麗』なんだよ」
「……綺麗ですか?」
「そうそう、大体女を襲う生徒が現れるものでな
死ぬ前に最後の思い出やら殺す前のついでにやら
色々とそういう機会がプログラムでは出てくることが多くてなー
……まあ、一種のヒツゼンだ、これは」
男と女が殺し合いをする。
暴力が発生すれば、そこには性も発生する。
誰かがそんなことを言っていた気がする……きっとこの上官も同じようなことを言いたいのだろう。
「はあ、それでこの音と何の関連が??」
「オマエ、鈍いなあ」
今度は呆れた表情で自分の顔を見つめてくる。
「……いや、分からないでもないか
まあ、さっきの話に戻るがプログラムでは女が襲われることが
とにかく多いんだよー、困ったことにな
だがなー……これは
2010-02-27T18:48:22+09:00
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第1回結果発表
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<とある宴会場にて>
阪東「……ちよ」
ちよ「なんですか?」
阪東「……なんで俺がこんなところにいるのか知りてえんだが」
ちよ「『こんなところ』とか言っちゃダメです! 晴れ舞台なんですよ!」
ヒロミ「晴れ舞台、ねえ……ステージならよかったけどな」
阪東「てめえ、勝手に死にやがって……ボーカル探さなきゃならねえじゃねーか」
ヒロミ「悪いな、もうちょっと生きてたかったんだけどよ」
れんげ「申し訳ないですわ、わたくしのせいで……」
ヒロミ「……アンタのせいじゃねーよ、俺の運が悪かっただけだ」
ハルヒ「れんげさん、ご無事だったんですね」
れんげ「ええ、何とか……他の皆様はご無事なのかしら……」
ハルヒ「……無事だといいんですけどねえ(ひとりレッドブレイバーになっちゃってます、
っていうのは黙っといた方がいいのかな、来てないみたいだし)」
七原「……藤岡さん、あなたはご無事じゃなかったみたいですね」
ハルヒ「七原さん、その節はどうもご迷惑をおかけしまして……」
智「コラー! そこー、しんみりすんな!」
大阪「うん、しんみりしたらあかんよ~」
智「よーし、そろそろ始めるぞ! 大阪、声あわせろよ!」
大阪「ん~」
智・大阪「過疎になんか負けない! 総投票数5票もなんのその! 一般学生ロワのSS人気投票、結果発表!」
智「というわけで、ここにいるメンバーは上位3つのSSに登場してる奴らばっかり! つまり人気者ってことだ! なあ大阪!」
大阪「そやね~」
三橋「……コメントでオメーにふれてるヤツいねーけどな」
智「ぐっ……!」
大阪「ええやん、ともちゃん生きとるし。これから活躍するかもしれへんよ?」
智「そ、そうだよな! ありがとな大阪! よし、じゃあまず1ポイント獲得した、5位の3作品からいくぞー!」
大阪「お~」
智「5位の作品……まずは! ◆FBECTmyb.Uさんの作品、第17話『漢の眼』!」
大阪「え~と、これは序盤にようさん書いてくれた書き手さんによる、周防美琴さんと伊藤真司くんの話やね。伊藤くん、めっちゃ漢やったね~」
伊藤「ハハハ、“漢”って何か照れるナー」
周防「選んでもらって嬉しいよ。正直殴りすぎで手が痛いけど
2010-01-18T02:16:58+09:00
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第一放送までの人気SS発表
https://w.atwiki.jp/akitobr/pages/129.html
【一般学生バトルロワイアル 第1回SS人気投票】
投票期間:10月5日(月)00:00~10月12日(月)00:00
投票対象SS:開始から第1放送直前までの00話~44話
投票場所:一般学生バトルロワイアル本スレ
[投票方法]
1人につき、好きなSS3本を挙げる(お好みで感想もどうぞ)
その際、1位、2位、3位と順位をつけて投票すること
(集計時に 1位=3pt、2位=2pt、3位=1pt としてポイント計算します)
-[[第1回結果発表]]
2010-01-18T02:10:25+09:00
1263748225
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その他
https://w.atwiki.jp/akitobr/pages/128.html
-[[第一放送までの人気SS発表]]
2010-01-18T02:05:51+09:00
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入れ違いとすれ違い
https://w.atwiki.jp/akitobr/pages/127.html
千葉紀梨乃と坊屋春道の二人は、氷川村を目指して歩いていた。
「トイレって言ってたんで、またお腹痛くなったのかと思っちゃいましたよ~」
「ああ、腹はもう大丈夫だ。キリノちゃんのくれた薬のおかげだな」
口の端を「んっ」と持ち上げ、猫の口のような形にさせながらそう言う紀梨乃に対し、
春道は腹をポンポンと叩いて答え、「はっはっはっ」と笑う。
正午に行われた放送の内容は二人に大きな動揺を与えたが、
春道がトイレだと言って紀梨乃と離れていた間に二人とも持ち直したようで、
今では、そんな風に他愛の無いやり取りが出来るようになっていた。
「…………」
それでも、ふと会話が途切れると紀梨乃の頭には剣道部の仲間達のことが浮かんできて、
言いようの無い不安が心を支配する。
(サヤ、タマちゃん、ミヤミヤ、ダンくん)
今回のプログラム、室江高校からは明らかに剣道部のメンバーが選ばれている。
そして、今回室江高から選ばれた全員の入部届けを書いた、又は書かせたのは紀梨乃だった。
(……サヤ、あたし、どうすればいいのかな?)
中でも、サヤこと桑原鞘子と紀梨乃は小学校以来の親友だ。
紀梨乃は心の中で親友に語りかけ、彼女ならどう返すか想像してみた。
(当たって砕けろだって、やるっきゃないよ!キリノ)
そんな抽象的な、勢い任せの一言が返ってくる気がした。
「お、村が見えてきたぜ」
春道が、いつの間にかうつむいて黙り込んでしまった紀梨乃の気を紛らわせようと、
努めて明るい口調で、村が近い事を告げた。
「あそこにキリノちゃんの友達がいるといーな」
「ん~、そうですねぇ。早くみんなに会いたいっす」
笑顔を作って春道に答える紀梨乃だったが、心の中では先ほどの続き。
鞘子に言われた(気がする)言葉への返答を考えていた。
(そうだよね、やるっきゃないよね!)
一つ決心をして、紀梨乃は顔を上げた。その目に迷いは無い。
紀梨乃は「すぅぅ」と大きく息を吸い込み、剣道のかけ声の要領で大声を出した。
「サヤー! タマちゃーん!」
「おお!?」
突然の大声に驚く春道をよそに、紀梨乃は声を出し続ける。
「ミヤミヤー! ダンく
2010-02-03T01:07:26+09:00
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