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私立桜蘭学園は一に家柄、二にお金

――ザなッ

財あるものは暇を持つ

――かザァッ

かくして桜蘭ホスト部とは暇を持て余す美少年達が

――glンなjい

同じく暇な女生徒達を持て成し、潤わす、

――ザ、でザ、ザ

スーパー金持ち学校独自の華麗なる遊戯なのである。


――ノイズが走る



「クソッ!!」

華やかに光る金髪の髪が激しく揺れ
木に叩きつけた拳は赤く腫上がる。
ホスト部のキングこと須王環は、後悔と自責の念にかられていた。

「何もできない……何もしない……こんなことが……」

脳内では全てを理解している。
今やれることは、榊が持っているであろう政府へと連絡できそうな機器を
銛之塚が受け取り戻ってくるのを待つだけ。実際、もう数時間も待っている。
それに下手に動いて、すれ違いなどは避けなくてはならない。

その先にある、賄賂で解決という脱出への手段の為には仕方がないことなのだが
銛之塚が交渉で榊から受け取るとは思っていない。
受け取るではなく、奪い取るが正しい表現だとも理解している。
そして、その結果、榊と言う名の一人の少女の結末も分かっている。
そんな自分が銛之塚に対して表した表現は、否定でもなく表に出した肯定でもなかった。

――自分は未熟であり、卑怯である。
そのことは一切否定できない。
しかし、それでも今は愛する娘であるハルヒを筆頭に、全員で生還したい想いの方が強かった。

「ハルヒ……みんな……」

木にもたれ掛かり、悩ましげにポーズを取る。
どんな状態であっても、自分自身のクセは抜けない。
周りに一般婦女でもいれば、瞬く間に頬を赤く染めるであろう、その姿。
だが、そんな自分に嫌気が差す。
銛之塚はいつものお前でいろと告げたが、そんな気にはなれなかった。

「動くなッ!!」

体勢を立て直そうとした、その時
白とピンクの混ざる一風変わった制服であり、先ほど出会った榊と同じ制服を着た少女が目の前に立ち尽くしていた。
毛先が尖った独特のショートヘアに日焼けした肌
そして、手には一目で分かる、黒い物体……拳銃が握られている。

「これは、これは、健康美溢れるお嬢さんだ。制服から見るに榊くんとお友達かな?」

冷静に……相手はいつ発砲してもおかしくない表情をしている。
榊のことを口に出し、少女にも冷静になるよう誘導していく。

「榊と会ったのかッ!」
「ええ、つい先ほど……と、言っても数時間は経過していますが」

口調は、いつも通りの余裕さを出してはいるが、内心は余裕の欠片もない。
何かを待つためでなく、現状を打破する為の思考時間を稼ごうとする
(こちらは、ほぼ丸腰。相手には既に銃口を向けられている……どうする……どうする)
だが、そんな思考も無意味に終わるものが目に映る。
拳銃を構える少女の後に、こちらに向かって走ってくる長身の影
数時間前に出会った、その人、榊の姿だった。

「榊はどこにいったッ!!」

後方のため、当然気づいていない少女は
興奮したままに質問を投げかけてくる。
環は少し悩んだが、ホストらしく、そっと優しく息を吐き出す。

「……フッ、貴方の後ろにいますよ、彼女は」
「え!?」

手に持つ拳銃も疎かに、振り向く少女。
(僕じゃなかったら、襲い掛かっているところですよ、お嬢さん)
そんな言葉が脳裏を過ぎる。
二人は友人、片方の榊には危険人物と思われている可能性が高い。
それでも、環には仲間との再会を邪魔する気は一切なかった。

「榊!」

普段ならば、感動に浸り華麗な一言でも添えるところ
だが、互いに持つ黒く光る物体が、自分の命を狙うものであることは明白。
嬉しくもあり、悲しくもある。それでも環は自分の目的の為に榊へと声を掛ける。

「先ほどは驚かせてすまない。榊くん」
「近寄るな」

やはりと言うべきか、榊は明らかに敵意を剥き出しに拒絶する。
神楽の銃口だけでなく、今度は榊の銃口まで環に向く。
二つの恐怖が環を襲う。
(やはり、無理か……)

「榊、コイツとは何があったんだ?」
「……襲われた」

本来ならば、襲われたの前に付けるべき言葉は無数にある。
しかし、榊本来の性格と、襲われたと認識した事実が神楽を誤解させる言葉となる。
環にとって、先に何かしらの通信機器のことを聞きたかったが、今はそれすらも問えない状況であった。
(やはり、マズイ)

「誤解だ、榊くん。俺はあの時」
「アンタは黙ってな、撃つよ」

神楽の体と銃口が一歩近づく。
普段からホスト部として女性の顔色を眺める環は
神楽の表情を見て、黙ることしかできないと判断するしかなかった。

「それで、襲われたって大丈夫なのか?」
「怪我はない」

語る言葉と共に肩が激しく揺れている。
かなりの距離を走っていたことが分かる。
……関係ない、関係ないことであるが
環はこの場においても、ホスト部としてのクセで彼女達を細かく凝視していた。

「とりあえず、縛っておこう」

肩は未だに揺れ、縛るものを探しながらに榊が提案を促す……だが

「なんで?」

黒く沈んだ瞳で榊へと聞き返す神楽
(クッ……あの瞳はマズイ)

「なんでって、危険だから……」
「だから、殺すんじゃん」

榊は信じられないという表情でもう一度、神楽へと聞き返す。

「殺す?」
「コイツは榊を襲ってきたんだろ? なら、今すぐ殺す」

重力に負けて下がりかけていた銃口がもう一度、水平へと傾く。

――パンッ!

躊躇という言葉もなく、リボルバーは回転した。
数時間前に聞いたものと似た一発の銃声が周囲に鳴り響く。

音と共に発射された銃弾は、環の足元、地面へと突き刺さっていた。
環は一瞬、自分が撃たれた錯覚を覚え、瞳を瞑っていたが、瞼を上げると
先ほどまで目の前にいた二人は互いが絡み合い、土と草が混ざる地面を転がっていた。

「邪魔をするな!榊」
「榊くん……」

一人、榊へ感謝する環であったが
二人は土まみれに地面を転がり続け、それどころではない。

「殺すな!」
「なんでだよ!」
「……」

思考からの行動ではない。神楽からの問いに返事ができない。
体勢が上下に入れ替わりつつも、榊の両手は神楽の右手首を押さえ込む。

「二人とも止めるんだ」

聞こえているのか、聞こえていないのか環の制止も無視し、神楽は無理やりに発砲していく。
一発、二発、三発
辛うじて、榊が押さえ検討違いの方向へと弾は飛んでいくが止める気配は一向にない。

「逃げて!」

神楽を完全に止めることは無理と判断したのか
榊が叫ぶ。

「しかし……」
「いいから」

榊の瞳が真っ直ぐと環を捉える。
少女と少女、その争いを生んだのも自分なら助けてもらうのも少女。
ホスト部のキングの名に恥じる行為。
二人を救うこともできない。
二人を殺すこともできない。
二人を止めることもできない。
何もできない。逆に逃げろと言われる始末。
それでも、今の環は目の前の現実から逃げることしかできなかった。

「すまない」

情けないという想いを胸に、顔を顰めた環の足は
銛之塚の向かった方向へと、走り出していく。
小さな島の片隅、本人からすると数分単位
しかし、実際は数時間単位の出来事。
その見慣れた景色から逃走という形で環の舞台は移っていくのであった。


□□□□ □□□□ □□□□ □□□□ □□□□

環が逃走をし、どれだけの時間が経過しただろうか
一つの怒号が周囲に響く。

「なんで止めたんだよッ!!!!」

それは、環の姿が見えなくなり
榊を振りほどいた神楽が発した最初の一言だった。
問われた榊にとって、理由などない。止めたいから止めた。

「榊、分かってるのか!? この島で私達は一番不利なんだよ!」

分かっている。自分達が唯一の全女子。
一番か弱いグループだなんて

「それとも教室にいなかったのか? 黒沢先生だって死んでただろ!」

見てないわけがない。
そして、あれを幻想や夢だなんて言う気もない。

「プログラムは毎年成功してるって子供でも知ってるだろ!!」

知ってる、中学三年が近くなると一人いつも怯えていた。

「今回は、みんなで帰れるかも知れないんだぞ!」

見た目からして気持ち悪い人が、チーム戦って言ってたのも覚えてる。

「ちよちゃんや大阪、ともが死んでもいいって言うのかよッ!」
「駄目だ」
「なら、何で止めるんだよ……私とお前しか、男に勝てるような奴いないだろ……」

それも分かってる、神楽が狂ってしまったわけでもない。
みんなを守りたいから、殺そうとしたのだって分かってる。
でも……でも……

「殺したくないんだ」

言うと同時に、神楽の拳が榊の頬を捉え、再び榊は倒れ込む。
制服も顔も、茶色が占める面積が広がる。

「榊、アンタはいつも私と違って平和的だったな
 勝負事には一切興味がなくて、最初の頃はヤキモチしたよ
 だけど、それが榊の良い所だと分かってから文句はなかった。
 でもな……今回は私の方が圧倒的に正しいよ」

訴える瞳には、薄く涙が浮いている。
彼女とて、殺したいから殺そうとしているのではない。
むしろ、人殺しなんてしたくない。
ただ、それでも自分と友人達が生き残る為には
したくもない勝負に挑まなければならない。
負けはイコールで全員の死亡
結果は全員が生き残る完全勝利しか見たくない。
その想いが伝わってくる。
だが、それでも榊の瞳は否定を続ける。

「……もういい、榊、アンタには頼らない。元から榊が協力してくれるとは思ってなかったよ
 私一人でみんなを救う。だから、アンタは私の邪魔をするな」

目に溜まった水滴を落とし、自分のデイバックを拾い上げる。
そして、哀しみの背中を後にゆっくりと環が逃げた方向へと歩き出す。

(殺したら駄目だ)

神楽の想いは心に染みるように分かる。
みんなを守りたいから、自分の手を汚す。
榊だって、そうしたい気持ちもある。
だけど、殺した人達はどうなる?
殺された人の友達はどうなる?
自分達も苦しいけど、この島にいる人は皆、苦しい。
人を一人殺せば、その一人から憎しみが始まる。
そして、その負の連鎖は、出会えていないみんなに向かう、そんな気がする。
人を殺さずに生き残る道もないかも知れない。
それでも榊は、島にいる顔も知らぬ人々の命だけは奪いたくなかった。

信念と信念が激突する。
言葉にはできない想いが彼女を動かす。



【D-8 海沿い/一日目 昼】


【榊@あずまんが大王】
【状態】:長時間の走りにより疲労
【装備】:グロック17(17/17)
【所持品】:
【思考・行動】
基本方針:
1:神楽に人を殺させない


【神楽@あずまんが大王】
【状態】:健康
【装備】:S&W M10(2/6)
【所持品】:支給品一式 ランダム支給品0~2
 予備弾30
【思考・行動】
基本方針:みんなと一緒に生き残り、優勝する
1:環を追う
2:みんなを救う



□□□□ □□□□ □□□□ □□□□ □□□□


「クソッ……俺は何もできないのか……」

トンネルを抜け、二人から逃げ出した金髪の王子は
哀愁漂う姿でコンクリートを踏みしめていた。

「環」

草むらから聞き慣れている低い声がし、振り向くと銛之塚の姿があった。

「何故、ここに?」
「銃声が聞こえた」

お前を置いて来た場所から銃声が聞こえた。だから、戻ってきた。
相変わらず、言葉が足りないなと思いつつも環は自然と笑みがこぼれる。

「……銛先輩、俺は」
「いつものお前でいろと言ったはずだ、何があった?」

その場で、つい先程起こった事柄を詳しく話していく。
神楽という少女に襲われたこと
榊が戻ってきたこと
そして、榊が逃がしてくれたこと

「わかった、お前は此処にいろ」

そう言うと、またどこかに向かおうとする。

「どこに行くんですか?」
「……二人の場所だ」
「何故です?」

卑怯だ。分かっている。
答えが見えているのに、俺は聞いている。

「殺す為だ」

―――俺は弱い
―――助けてもらった少女なのに、止めることもできない。

「止めてください、銛先輩!」
「……」

―――返事が戻ってこないことも分かってた。
―――先輩が俺の考えを理解していることも分かってる。
―――そして、それに甘えている俺

鏡夜と共に、設立した桜蘭高校ホスト部
銛先輩、ハニー先輩、光、馨
自分が選んだとは言え、周りに自慢できるような素敵な連中が集まった
そして……ハルヒ
その、みんなを守る為に俺ができること。
脱出と優勝、この二つ。
脱出は確定事項ではないが、優勝は生き残りが確定する。
先輩はその確定の為に人を殺めようとしている。

だが……ハルヒはそれを喜ぶだろうか?
無愛想だったり、可愛く微笑んだり
それでいて、芯の強い友人以上の存在。
その娘であるハルヒはなんと言うだろうか?

仕方ないですよ先輩……違う
銛先輩に殺しまわってもらいましょうよ先輩……違う!
政府に連絡を取って早く私達だけで脱出しましょうよ先輩……違うッッ!
――絶対に違うッ!!!!!

「……銛先輩」
「……いいから、此処にいろ」

そうだな、基本的なことを忘れていた。
――ハルヒの答えが分からないわけがないんだッ!!
人を殺すなんて、あのハルヒが認めるはずがない
自分達だけが助かるなんて、ハルヒが喜ぶわけがない

俺は逃げていた、全てから
結論は既に出ていたのに、逃げていた。

「……俺はもう逃げることを止めます」
「……」

ハニー先輩、鏡夜、光、馨、ハルヒ
みんなスマン、キングの命令は絶対だ。

走り出し、銛之塚の進行方向を遮るように立ちはだかる。

「俺は本気ですよ、銛先輩」

女生徒もハルヒもいない。
カッコつけたわけじゃない。
自分が信じるものを信じただけ。
……ハルヒは……みんなは……殺戮を望んでいない!

「……」

対する銛之塚は、眉間のしわ一つ動かない。
それでも、環は此処に宣告する。

「桜蘭高校ホスト部はたった今から、この島にいる全校生徒男女庶民問わずお客様とする!
 政府に渡す賄賂は全員分出す、お客様だ、当然殺しなんてさせない。これは……キングとしての命令だ!」

慣れたポーズ。
悩ましげなポーズではなく、全てを見通すかのような透明な瞳で
ホスト部員全員に指示を出す時と同じように、人差し指を銛之塚の顔へと突きつける。
バックには例の如く、花びらの数々が舞っている。

先輩であろうと関係ない。
先輩は先輩で、みんなを守る為の行為であると分かっている。
だが、それはみんなが望んでいることではない。
今、止められる存在はキングである自分だけ。
ホスト部はホスト部として、この厄介な課外活動を終了させる。
その為には今、行かせるわけにはいかない。

「……わかった」

一瞬だった。
環の真横へとすり抜けると
手に持つピースメーカーの柄で首の後ろ、背骨と頭蓋骨の付け根目掛けて振り落とす。
ゴスッと鈍い音が骨を伝って全身へと響き渡る。

「……も……銛先輩」

一言を残して、決意と共に崩れ落ちる環。

「悪いな環……俺はジョーカーだ。キングの命令は聞けない」

いつもの声で、そっと呟く。

環の決意は本物だった。
だが、銛之塚は見通していた。
環の本質、導き出す答えを。
例え、プログラムに巻き込まれても、その精神の根底は変わらない。
むしろ、今、環が出した答えこそ、銛之塚崇が満足する答え。
環がキングたる所以であった。

元から、罪は全て被る予定
銛之塚崇以外の桜蘭高校ホスト部は変わらない。
その代わりに、銛之塚崇は全てを変える。
もうホスト部員ではないのだ。
ジョーカーをキングで抑えることはできない。

そっと、意識を失った環を草木に隠す。
そして、二人の少女を狩りに行こうと踏み出したとき
第一放送が島中に鳴り響いた。


【E-7 トンネル傍の道/一日目 昼】


【須王環@桜蘭高校ホスト部】
【状態】:気絶
【装備】:なし
【所持品】:支給品一式、ランダム支給品0~3
【思考・行動】
基本:島中の生徒は全員お客様扱い
1:・・・・・・・・・・
2:政府関係者を買収しプログラムから抜け出したい



【銛之塚崇@桜蘭高校ホスト部】
【状態】:健康
【装備】:ピースメーカー(弾数5/6)
【所持品】支給品一式、ランダム支給品0~2
【思考・行動】
基本:桜蘭高校ホスト部はこれから先も変わらない
1:環の地図と名簿に記入してから、神楽と榊を襲いにいく
2:優勝して帰還する。仲間の手は汚させない、そして必ず守る
3:環の欲しがっている携帯の入手。





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