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――走る
――走る
――走り抜ける

ただ、ひたすらに走る。
襟つめを上下に揺らし、足は一時も止まらず
季節は冬だというのに、太陽の光が男の汗を誘発する。
その男は、見た目こそ不良そのものであったが
走るその姿には、どこか彼に似つかない存在があった。

「いい加減、降ろしてくださいませ!」

学ランの脇の下から発せられた、その声の主は
フリルの付属したスカートに
同じ国とは思えない薄黄色でまとめられた制服を着飾る少女、宝積寺れんげ
彼女を抱え挙げている桐島ヒロミとは正反対の人種であったが
今、彼女は体中をバタつかせ、降ろせと必死に抵抗していた。

「わかった、降ろしてやるからお前も走れ」
「わかりましたわ」

一刻の時も惜しいが、ヒロミは短時間の間に彼女の性格を掴んだのか
それとも、衣装でそれとなくお嬢様だと気づいたのか、丁寧に彼女の身体を地面に下ろす。

「よし、いくぞ!」
「いくぞって、どこに向かっているのですの?って待ってくださいませー」

れんげの声を置いて、ヒロミは走り続ける。

「いいから、付いて来い! 置いていくぞ!」
「だから、どこに向かっているのですのー」
「どこかだッ!」

どこに向かっているという問いに対して返ってきた答えは、どこか
言っているヒロミ自身も、無理がある返答だと理解しているが
それどころではない。
とにかく、山を下る、それしかない。
先ほど、れんげが使用した拡声器
あんなもの、私達は此処にいるので、殺しに来てください。
と言っているようなものだ。

約束された明日なんてない、明日を生きるのも
一時間後を生きるのも、当たり前のことじゃない。
朝が迎えに来る幸せを噛み締めるためにも
山頂から、少しでも速く遠くへと向かう。
東西南北、選ぶ余裕もなければ思考する時間もない。
ヒロミはデイバックに仕舞い込んだ東亜くんも忘れて、勢いよく駆けていく。




「はぁはぁ……こんな、か弱い少女を置いて先にいくだなんて……」

ヒロミがれんげを降ろして、どれほどの時間が経過しただろうか
三分ほどなのか、三十分ほどなのか
最初は二人の距離も、対して開いていなかったが
今では、れんげの瞳にはヒロミが人差し指程度にしか映らない。
只でさえ、山道という走りにくい地形。
普段、走ることなど一切ない彼女とヒロミの距離は当然のように開いていく。


「はぁはぁ……レディーを置いていくだなんて……
 はぁはぁ……もう駄目、不良さんには付いていけませんわ……!」

ぱららららららら

ヒロミを追うことに諦めかけた、その時
れんげは、小粒になったヒロミの派手に転がる姿を目撃した。
アクション映画でも観ているかのような、その転倒を見て唖然とする。
彼の近くにある草木も、ちぎれて舞っている。

「来るなッ!! 逃げろッ!!!!」

転倒したことも気に留めずに
こちらを向いて、必死に叫んでいる。
でも……逃げろ?意味が分からない。
付いてこいだの、置いていくだの
そして、次は逃げろって。

「何故ですのー!」

足を止めて、小粒な彼に返事をする。

「いいから、逃げろッ!!」

派手に転んだせいで、遠くからみても全身が土まみれになっているのが分かる。
そんな彼が叫ぶ言葉。
れんげは、その言葉の意味が全く理解できないでいたが
目を凝らすと、もう一つの人影があることに気づいた。
その姿は真っ赤に染まった仮面、スーツ
れんげにとって、何処か見たことのある格好のソレは
ヒロミの近くに迫っていた。
その真っ赤な人影は、手に見たこともない黒い物体を抱えている。

「そ、そんな……ま、まさか……」

――流れ込む。
脳内一つ一つにあらゆる情報が伝達される
逃げろ、真っ赤、転倒、黒い物体
全ての単語が脳内を駆け巡り、今の状況に対する答えを導き出す。
………そう、彼は『襲われている』

転んだのは偶然じゃない、彼は襲われたから転んだ、いや倒された。
その結論が出ると、真っ赤な人物の手に存在する物体も自ずと何か分かってくる。

「わ、私は……」
「逃げろッ!!!!」

殺し合いなんて、ないと思ってた。

「そ、そんな……」
「早く、逃げろッ!!!!」

拡声器でみんなを呼んで、お父様が来るまで無人島生活でも楽しむつもりでいた。

「そ、そんなつもりは……」
「逃げろっつってんだろ、クソヤロー!!!!」

最初の教室での出来事も、夢や幻
ドッキリか何かかと思っていた。

「に、逃げるの?……逃げればいいんですの?」

遠くから叫ぶヒロミの言われるままに、反対方向へと走り出す。
怖くて後ろは振り返ることができない。

……私は勘違いをしていた。今になって分かる。
あの人は、ただ私を置いて先を走っていたわけじゃない。
それに、本気を出せばもっと遠くへと引き離すことができたはず。
私から遠く離れつつも、お互いの位置が見える距離。
その位置関係を常に保っていた。
そして、その距離とは、危険があれば直ぐに知らせることができる距離。
危険人物が迫っているならば、先に襲われるのは前を走るものであることは必須。
それを理解して、名も知らない彼は私を置いて、先に走っていた。
私は、ただ置いて行かれていると思っていたのに……

そして、その彼を見捨てて逃げる私……

「わ、わたくしは……わたしはぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」

少女の心が弱いわけではない
己の勘違い、己の罪
それを許容して、なおも少女を逃がした男への
様々な想いが、体の奥から喉を通り抜ける。

叫びは木霊となり、山に消えていく。
彼女の叫びと脚は、再び山頂へと向かっていた。



【F-6/山中/1日目-昼】

【宝積寺れんげ@桜蘭高校ホスト部】
 [状態]: 精神の混乱
 [装備]: 拡声器
 [道具]:デイバッグ、支給品一式 本人確認済み残り一つ
 [思考]
  基本:山頂へ逃げる
  1: わたしはああああああああああ



「……行ったか」

先ほどまで、黒く光っていた学ランは無残にも土だらけになり
不快なまでに土と草の匂いが鼻に付く。

「お前よぉ、誰だか知らないがタバコあるか?」

右足、イングラムの餌食になった箇所からは皮膚が大きく裂け
太い血管をジャストミートしたらしく、多量の血が吹き出ている。
左足は、派手に転んだときに折れたのか、見たこともない方向へと曲がりくねっている。

「タバコはないが、質問がある」

赤い仮面の奥から、低く曇った声でヒロミへと問いかける。

「言ってみろよ」
「お前の学校と生徒全員の情報を教えろ」
「チッ……そんな下らないことで、トドメを刺さないのか?」

足からの大量の出血、意識が朦朧としている中
自分の死期が近いことをヒロミは悟っている。
それでも、変わることのない口調。

「いいから、答えろ」
「学校は鈴蘭だ、そして全員馬鹿野郎どもだ」

何の躊躇もない。
教えろと言うから、教えてやった

「ふぅ、これだから庶民は……いや、不良か……」
「なんだ、これじゃあ不満なのか?」
「不満だ、もっと知性のある回答を要求する」

やれやれ、さっきのお嬢さんといい、コイツといい
俺は、鈴蘭の中ではプレーンと言ってもいいほどだぜ?

「知性の足りないお前には、簡単な質問にしておこうか
 それぞれの生徒の身体能力と弱点を教えろ」

ぷっ、笑わせてくれるぜコイツ
わかってねえなあ、わかってねえよ
身体能力なんか気にして喧嘩をすると思ってんのか?
――――大体なあ

「弱点だらけのヤツラばかりなんだよ」
「一人一人個別に言え」
「仕方ねえなぁ……スケベで……頻繁に腹を壊す馬鹿な金髪頭が一人いるよ」
「ほう、名前は?」
「……坊屋春道……よく覚えておけよ……」
「何故だ?」
「あっ?アイツに出会ったら、お前は尻尾巻いて逃げるしかねえんだよッ!!!」

怒号、ヒロミの目が見開いたと同時に全ては終わった。
イングラムから銃弾が飛び出し、例の音を奏でる。

 ぱらららら

無機質な音と共に、横たわる顔の至る所
眼球、唇、鼻を鉄塊が貫通し、ヒロミの頭が上下に揺れる。

「……もういい」

――虫唾が走る。
真っ赤な仮面の男、鳳鏡夜は仮面が有るからこそ外見では分からないが、静かに顔を歪めていた。
只でさえ、道のない山中を歩き、神経を尖らせてきた。
そして、いつでも奇襲が可能な状態で歩を進めていた所に
例のれんげの声を耳にしたわけだが、もう一人いると分かると
即座に奇襲を行えるよう、隠れながら山頂へ向かっていた。
そして、予定は現実のものとなり、奇襲は成功した。
だが、品性の欠片もない人物を相手をするのは、予想以上に疲れた。
だからこそ、もういいと判断し、トドメを刺した。
そのつもりだったが、男の残した言葉達が神経を刺激する。
(……坊屋春道……よく覚えておけよ)
自分達の下には庶民がおり、更にその下に不良という低知能の生物がいる。
鏡夜が今まで培ってきた経験や知識では、その結論が出ている。
だが、目の前の男は……

(まあいい、それよりも)

この男が逃がした相手……あれは宝積寺れんげで間違いない。
鳳グループの重要な取引先のお嬢様だが、殺す必要もなく
更に、保護優先順位がそこまで高くなかったため
先にこの男を相手にしたのだが、今は追わなくてはならない。
有用な情報が聞ける可能性と、自分を鳳鏡夜と判断していないため
危険人物と言い廻る可能性が高い。
それに、保護優先順位が低いと言っても他のホスト部員と比べた場合の話
保護できるなら保護しておきたい。

順調に殺害数を重ねる鏡夜は、うちに秘めた行動方針を固めると
死に体であるヒロミのデイバックを拾い挙げる。
中身を確認すると見たこともない電気機器があり、それだけ持ち去ると
まずはれんげを追うことを第一優先として走り出す。

「そう言えば、名前を聞いていなかったな
 ―――それなりに興味深い男だったぞ、不良」






俺の名前は桐島ヒロミだ、仮面野郎

……チッ、駄目だ、もう声が出ねえ

どうやら、俺のステージは此処までのようだ

阪東すまんな、ボーカルは他を探してくれ

ポン、マコ、すまねえ お前達はカッコいい大人になると信じているぜ

秀吉 お前は俺と阪東によく似てる、俺みたいに下手打つなよ

ゼットン 一年戦争の覇者として、期待してるぜ

そして、春道 お前のことだから、トイレに篭ったり女のケツでも追っかけてそうだな

……フッ、俺も人のこと言えないか
悔しいけど俺がやれたことは、女を一人逃がしただけだ

だがよぉ、何も、自分のケツを人に拭いてもらおうなんて思っちゃいない
だから、優勝しろだの、脱出しろだのは言わない
……ただ……せいぜい元気にやるんだな、ヤローども

「知らねえよ」
小さなツインテールの少女と歩く男

「番犬をしてやってもいい」
強気な少女と共にいる男

「うぉおおおおお」
ドングリ頭と対決する男

「携帯番号教えてくれない?」
いつも通りの男

……そうだよな
俺が口を出すまでもない
出て行く奴もいれば、これからの奴もいる

今は、俺の幕が下りるのと同時に次の幕が開く
その開演五分前っていったところなんだよな

――――――魅せてくれよ



【桐島ヒロミ@クローズ 死亡確認】
【残り32人】



【F-6/山中/1日目-昼】




【鳳鏡夜@桜蘭高校ホスト部】
 [状態]: 健康
 [装備]: 超剣戦隊ブレードブレイバー レッドブレイバーセット衣装(仮面、鎧、竹刀の三点)@BAMBOO BLADE
     イングラムM10サブマシンガン(残弾不明) 、東亜くん(ヒロミの転倒で壊れた可能性あり)
 [道具]:デイバッグ、支給品一式(水と食料だけニ人分あります) 
 [思考]
  基本:自分と仲間は生き残る。手段、過程は問わない。
  1:れんげを追う、仲間を探す
  2:仲間以外との接触は状況により判断する、しかし利用できる庶民は利用する。
  3:他校の生徒を殺せる時には殺しておく
  4:それなりに興味深い経験だ



 [備考]
東亜くんについて

  • 現実世界と同等程度の技術です。
  • 人工知能ではないため、問いかけ等には答えません。
  • 追加されていくのは基本的に情報です。
  • 東亜くんは進化と言っていますが、進化するかしないかは書き手さんにおまかせします。
  • その他、初期情報などは次の書き手さんにおまかせします。




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