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大東亜共和国プログラムによるバトルロワイヤル……!!

               他校生徒の鋭い眼光、室江高の運命やいかに……!?

それは、いったい誰の思惑だったのか?!

               室江高剣道部に最大にして最悪のの危機が迫る!!

そして、今、戦いの始まりを告げる鐘が鳴り響く―――――


そのとき、室江高剣道部のピンチに駆けつける小粒なヒーローが颯爽と現れた!!
機動戦士を彷彿とさせるヘルメット。
オレンジカラーの入ったサングラス。
目に鮮やかな真っ赤なスカーフ。
そして、右手にはビームサーベル。
足元には、どこか見覚えのある猫。

駆けつけたヒーロー、その名は――――スーパーダン!!


彼の英雄譚が、今始まる。




朝の白い陽射しが木造の校舎へと差し込む。
ここは平瀬村分校跡。
校舎の周りに茂っている大小の草木は、朝露に濡れ輝きを見せていた。
古びた体育倉庫に、せまい運動場。学校施設として整っているとは言いがたい。
分校ということもあって、平時でも穏やかな時間が流れていたであろうことが伺える。
しかし、現在のこの場所は穏やかどころではない静けさに覆われていた。
出勤してくる職員も、登校してくる児童や生徒は一人としていない。
日常というものから切り離された空間が、そこにはあった。

そして、こんな分校の中で覚醒を間近に控えた少年が一人。
短く刈られた髪に縦長ながら丸みを帯びた顔、その寝姿は人に呑気そうな印象を与える。
その少年の名は栄花段十朗。室江高校剣道部の所属である。

「待ってるぉ、みんなぁ……今、俺がたすけにぃ……」

キリリと眉を吊り上げ、調子外れな寝言を言いながら、残り少ない夢の時簡に浸る。
彼には、夢を名残惜しむ権利があるだろう。
やがて幸せな夢の終わりを告げ、過酷の悪夢が始まるのだから。

「よし……すーぱーだんがきたからには、もぅ大丈夫だ……ぞ。
 ………………んー、う、んー? ………………あ?」

ほどなくしてダンは目を覚ますこととなった。
まだ夢と現実の区別があいまいなのか、キョロキョロと辺りを見回す。
周囲にあるのは、古びた机と椅子、薄汚れた黒板などだった。
これだけの情報でも、そこは学校の教室であると判断できる。
しかし、そこはダンの慣れ親しんだ学校とは明らかに違う。
ここまで認識したところで、意識を失う前のことをおぼろげながらに思い出してきていた。

頭に浮かぶのはプログラムに選ばれたこと、開幕の場で殺された人たちのことなど様々だ。
学校に通い、部活をして、ミヤミヤと一緒に帰る。
そんな日常からは既に切り離されていることを思い出す。
現状を一通り知ったところで、ダンは、まず始めに純粋に怖いと思った。
彼はギャグ漫画に出てきそうな容姿とは裏腹に、高校生としては、かなりできる人間であった。
成績優秀でスポーツセンスもよくかわいい彼女がいる。
さらに、自覚的にかどうかはわからないが人の暗い部分も受け入れられる懐の深さを持っていた。
そんな彼だが、所詮は一般的な男子高校生であることに変わりはない。
国家権力により強制された殺し合い。恐ろしくないわけがなかった。

教室の床に座り、これからどうすればいいんだろう、と考える。
今回のプログラムは団体戦であり、剣道部の仲間と殺しあう必要はない。
その点は、彼の心にわずかな安心を与えた。
しかし、ダンは悩む。必要に迫られたからとはいえ、自分に人を殺すなんてことが出来るのかと。
悩みながらも、彼はのんびりしてはいられない。
ダンの恋人であるミヤミヤは、周りを殺してでも自分を生きて帰そうとするだろうから。
彼女の持つ闇を知っている。今の状況は彼女の闇を際立たせてしまうだろう。
だが、同時にそれ以上の彼女の優しさを知っている。
だから、そんな彼女守ってあげたいと思う。

「俺は……弱い男だ」

字面とはイメージの違う間の抜けた声で漏らす。
一般人のダンが周囲の人間を殺す覚悟など簡単に出来るわけがない。
かといって、このプログラムを壊すと言えるほど常識がないわけでもない。
そもそも、プログラムの概念が浸透しているこの国では、反逆の意志を持つのは容易ではないのだ。
そんな中でも迷う彼は充分な倫理観を備えた人間だといえるだろう。

「よし! こんなもん俺がぶっ潰してやるぜ。みんな安心しろ!」

右手でガッツポーズを作りつつ、宣言してみる。
日頃の彼を知っている人間は、実にダンらしい発言だと思うだろう。
だが、すぐにダンは右手を下ろし、しょんぼりとした顔に戻ってしまう。
空気を読まない発言も目立つ彼だが、その心根は優しいものだった。
しかし、普段のように振舞えるようになるには、何かしらのきっかけでもないと無理そうだった。

しばしの沈黙の後、やっぱりみんなと合流しようという結論にいたる。
剣道部のみんなが心配だ。
今後の身の振り方は置いておくとしても、これだけは、今のダンにとって100%純粋な感情だった。

ズボンをはたきながら立ち上がる。と、ここで彼は身を震わせた。
プロの殺し屋でもあるまいし、別に敵の殺意を感じ取ったわけではない。

「ト、トイレー」
少し落ち着いたからか、催しただけである。
ダンは荷物を掴み、男子トイレへと駆けて行った。




「ふぅー」

ハンカチで手を拭きながら、すっきりした表情で廊下へとダンが姿を現す。
そして廊下に置いておいたやけに重たく感じた荷物へと目をやる。
ここでようやく支給品の確認をすることとなった。

出てきたのはモシン・ナガンM1891/30。
帝政ロシア時代から第二次大戦にかけてソ連で使用されたボルトアクションのスナイパーライフルだ。
フィンランドの天才スナイパーであったシモ・ヘイヘが愛銃とした銃の後継にあたる。
重量は実に4kgであり、一般人が持ち歩くには苦労があるだろう。

説明書を読み、ダンはモシン・ナガンを恐る恐る手に取ってみる。
そのずっしりとした重みに、再び恐ろしさを感じた。

「へ、この程度の重さなんて、剣道やってる俺には何ともないぜ」

強がりを言い、銃をぐっと持ち上げて銃口を上へと向ける。
その姿はふらふらしてかなり危なっかしい。
だが、調子に乗ってダンは右手だけにモシン・ナガンを持ち替えた。
それが彼の失敗だった。
「うぉ、っとと、うわ」

頭が大きいダンは、ただでさえ重心が安定しない。
持ち上げた銃の重みで後ろへと重心がずれ、ととっと後ずさる羽目になる。
慌てて両手に持ち帰るも、既に手遅れだった。
ダンの右手と背中の間から後ろに突き出た銃底が何かを砕く。

瞬間――――


ジリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリ
リリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリ
リリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリ
リリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリ
リリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリ


けたたましい音が校舎全体から響き始める。
不運なことにダンが砕いたのは火災報知機だった。

「うわ! なんだなんだ!?」

突然の事態に混乱し、右往左往するダン。
冷や汗をかき、報知器をいじくりまわす。
だが、ダンが混乱して操作を誤っているのか報知器は一向に止まる気配がない。
ここは分校『跡』だ。もしかしたら報知器自体が壊れているという可能性もある。
焦るダンを置き去りにして、朝焼けの中、火災報知機の音は周辺へと存在を主張するように響き続ける。


ダンの手により、今、戦いの始まりを告げる鐘は鳴らされた。
血で血を洗う凄惨なバトルロワイヤルが始まる。
ダンは、果たしてヒーローとなり、英雄譚を紡ぐことが出来るだろうか。




【G-3 平瀬村分校跡/一日目 早朝】

【栄花段十朗@BAMBOO BLADE】
【状態】:健康
【装備】:モシン・ナガンM1891/30(5/5)
【所持品】:支給品一式、予備弾30、狙撃用スコープ
【思考・行動】
0:うお、なんだ、どうしたんだ?
1:室江高のメンバーと合流する。

※火災報知機がなっています。周辺エリアにおいて、報知器の音が響きわたりました。



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