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「―――伊藤、伊藤起きて」

 どこからか呼ぶ声に嫌々ながらも反応して目が覚める。

「――ん、なんだよ」

 少年、伊藤誠が起きると目の前には赤いリボンで髪を束ねる同じクラスメイトの清浦刹那がいた。

「清浦?」
「――寝ぼけずにこれを見て」

 寝ぼけた眼を擦り、刹那をよく見ると見たこともない黒い物体をこちらに向けていることに気づく。
 『これ』とは突きつけている黒い物体、拳銃のことなのだろうか?

「清浦! これは何の真似だよ!」
「いいから聞いて伊藤、私の言う事を聞いてくれないと今すぐこの銃を……撃つわよ」

 刹那の意図も決意も誠には分からない。ただ分かる事は自分自身に拳銃の矛先が向けられていることだけだった。
 あの小さな人差し指が軽く動くだけで自分の人生の終わりがくること……それだけが確かなもの。
 体中から冷たい汗が流れ出てくる。

「分かったよ、清浦。 分かったからその銃を下ろしてくれよぉ」
「―――銃は下ろさない」

 きっぱりと却下される。銃口が自分へ向いているため、それ以上は迂闊に意見できない……。

「まずは伊藤のデイバックをみせて」

 そう言うと、誠の返事も聞かずに刹那はデイバックを漁る。
 その手から取り出されたものは一丁の拳銃と丁寧にもドクロマークの描かれた小瓶だった。
 いつもの無表情で刹那は自分のデイバックへ拳銃と小瓶を入れる。
 誠へ向いている銃口は一度も動くことがない。

「……伊藤、知っての通り、今回のプログラムはチーム戦らしいわ」
「そうだよ! だからその銃を下ろしてくれよ」
「――――まだよ」
 再び、無表情な目を誠へと向ける。

「貴方には私の言う事を聞いてもらう」
「言う事ってなんだよぉ」
「一つ、必ず私達の学校が優勝するように動いてもらう」
「それは他の学校の生徒を殺していくってことか?」
「………そうよ」

 政府が開催するプログラム……子供の頃から知っていた政策だ。
 優勝を目指さない理由がない。
 そう―――優勝を目指すのが普通の思考だ。
 それでも伊藤は戸惑う
 優勝はしたい……でも自分は人を殺したくない。
 誠の思考をよそに、刹那は続ける。
「一つ、世界を探して! ――――桂さんよりも先に」
「言葉より先に? 何で?」
「いいから! 打つわよ」
「わかった、わかったってば」

 冷静な刹那の目が冗談ではないことを語っている。

「最後に、拳銃は私が預かっておくわ。」
「……」
 幾度も脅され、反論もできない。

「この島から無事に私達と世界が生きて帰るまで伊藤には私の言う事を聞いてもらう
 勿論、ただで聞いてもらおうとは思っていない、聞いてもらえるなら私のできる範囲で伊藤の言う事を何でも聞くわ」
「………何でも?」
「そう、何でも……」

 誠の視線が舐めるように足元から走る。

「ただ、私達は『弱い』……説明を受けた場所には明らかに体つきのいい生徒、不良以外の何者でもない生徒が沢山いた」
「…………」
「だから私と伊藤、二人で確実に一人づつ殺していく……」
「殺すってどうやってだよ! それに本当に人を殺していくつもりなのか!」
「殺さないと殺されるのよ? 今回はツイているほう、本来は私と貴方、それに桂さんとも戦わないといけなかった
 でも今回は私達が努力するだけ桂さん、そして世界が『死』から遠ざかることになる」

 『死』という言葉が、誠に重く圧し掛かる。
 誠の言葉と刹那の言葉、覚悟の差が誠の言葉を消していく。

「そりゃそうだけど……」
「それに貴方に拒否権はない」

 銃口が光る。
 刹那にはわかっていた。伊藤は簡単には人を殺せないと……。
 わかっていたからこそ銃口を伊藤に向けている。

「話を続けるわ……二人で殺していくといっても正面から撃ち合いをするつもりはない、相手を騙していく」
「……騙す?」

 迷う誠に刹那は説明を続ける。

「相手が一人なら最初から攻撃しても殺せるかも知れないけど複数だったり、強敵だと思わぬ苦戦を強いられて手傷を負うかも知れない」
「そうかもしれないけど……」
「だから、最初は殺し合いをする気はないとアピールするのよ。 その後、相手が油断をしているところにこの拳銃を突きつければ勝ち」
「でも、殺し合いをする気ないって言って信じてもらえるか? 国が決めたことなんだぞ? 普通のやつだったら襲ってくるんじゃないか?」

 この国では普通……選挙、税金、プログラム。
 そう、一種の政策に過ぎないが選挙に参加できるのは国民の権利、税金は国民の義務、そしてプログラムも国民の『義務』
 日々、消費税を払っている感覚と同じだ。殺し合いをしないほうがおかしい……。
 島にいる生徒、全員がやる気になっていてもおかしくはないのだ。

「……私には分かる、この島には殺し合いをする気がない人間が沢山いる」
「なんでだよ?」

 自分も刹那がいなかった場合、殺し合いに乗っていない可能性があることも考えず聞く。
「――――――勘よ」

 そう言うと誠に向けた銃口をそっと下ろす。

「行くわよ」
「行くってどこに?」
「世界を探しに、そして………人を殺しに……」

 誠を尻目に刹那は動く。

 伊藤は付いてくる……私を一人にできないから……
 伊藤は人を殺せない……それでも私が、世界が危険になったら守る……
 世界が信じる男、私もそれなりに認めている。
 それだけで十分、人を殺すのは私でいい。

「まってくれよ、清浦ぁ―――」


 ――――刹那の秘めた思いと裏腹に誠の声だけが草木を揺らしていた。



【D-5 林/一日目 早朝】



【清浦刹那@School Days】
【装備】:ベレッタ M92(装弾数15/15)
【所持品】:支給品一式 レミントン デリンジャー (装弾数2/2) 毒入り小瓶
【状態】:健康
【思考・行動】
1:伊藤、世界が生きて帰れるよう必ず榊野学園が優勝する。
2:伊藤には言葉より先に世界を見つけてもらう。
3:同じ学校の伊藤には警戒していないが生き残らせるために多少強引でも言う事を聞いてもらう。





【伊藤誠@School Days】
【装備】:
【所持品】:支給品一式 
【状態】:健康
【思考・行動】
1:生き残りたいができれば人を殺したくない
2:清浦の「何でも言う事を聞いてあげる」に期待



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