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今、春日歩の目の前には一人の男が存在した。
髪は金髪、着ている制服も歩が見慣れたものとは少し違う短ランという出で立ち。
いわゆる不良、またはヤンキ―だのツッパリだのという人種である。
普段ならお近づきになりたくない種類の人間なのではあるのだが……
この男、今は幸せな顔をしながら畳の上で横になっている。
――つまり眠っているのである。
これ自体はそうおかしな話ではない。
あの教室にいた学生は皆、眠らされてこの島の各所に配置されたのだ。
歩自身、こことは別の場所で目を覚ます事になったのだ。
なにもおかしくは無い。眠ってる事自体はおかしくないのだが……
「あかん、どうやってもおきへん」
そう嘆いて、溜息を一つ。
この男、なにをどうしても全く目覚める気配が無いのだ。
耳元で呼びかけても、頬を叩いても、身体の位置を変えてみても全くこちらに反応しない。
歩がここ、無学寺――名前は寺の前にあった立て札で確認した――にきたのは少し前の話である。
元々ここには休憩の為に立ち寄ったのだが、
今では必死にこの男を目覚めさせようと歩は頑張っていた。
「はぁ……なんか疲れたわ。ちょっと休もう」
そういってごろんと自分も横になり、
なにもする事が無いので自分が目覚めた時と、ここに辿り着くまでのの事を思い返した。

□ □ □



雲ひとつ無い青空の下、草むらの中で春日歩は目覚ることになった。
まず、寝惚け眼を擦りながら辺りを見回して見慣れない景色に呆然とする。
何故自分がこんな所にいるのかと、まだうまく働かない頭の中の記憶を探り、
何とかあの教室での出来事を思い出す。
そして今度は途方に暮れる事になった。
プログラム、この国の学生にとっては最悪のイベントに
歩は参加させられる事になってしまったのだ。
今一記憶力というものに欠けている歩でもプログラムの存在は知っていたし
昔はそれをふと思い出してはベッドの中で震えることもあった。
しかし、実際にそれに巻き込まれてみると恐怖というより戸惑いが心の中を占めた。
何故、自分がプログラムに参加させられる事になったのか。
自分のこれからの生き死によりもそちらのほうが気になってしまう。
坂持という男は今回はチーム戦だと言っていた。学校対抗だとも言っていた。
その理由はもっと戦争に近い状態でのシュミレーションがどうとか言っていた気がする。
その事ははなんとなくだが歩にも理解できたし、
知り合い達と殺しあいをするよりはずっとマシだとは思うのだが……
「なんで私らが選ばれたんやろ……」
ふと、近くに置かれてあるデイパックに目が向く。
それに手を伸ばして中身を確認すると名簿が見つかった。
それに記載されている名前を確認して溜息を一つ。
「はぁ……やっぱり」
あの教室で歩が確認できた知り合いは、美浜ちよ、滝野智、榊、神楽の四人である。
どうやら学校別に分けて記載されている名簿で確認しても同様だった。
更にいえば全ての学校は五人ずつ参加している事がわかる。
これはもしかしたら自分の勘違いなのかも知れないが、
名前だけを見れば自分達の学校以外には最低でも一人は男子がいることもだ。
何故、自分達の学校は女子だけで構成されているのだろうか。
榊や神楽は並みの男子には負けないぐらいの身体能力を持っているが
それでも男と女、争いになればどちらが有利か歩にもすぐわかる事である。

ましてやちよは本来なら中学一年生、
そしてそのちよと同程度の体力しかない運動音痴の自分や智が選ばれているのだ。
自分達は圧倒的に不利で不公平だと歩は思った
武器にもよるだろうがどう考えても自分達に勝機があるようには思えない。
せめて一人位、男子を入れたほうがバランスが取れるのではないか。
まさか――自分達は死ねと言われているのだろうか?
そもそもの話としてだ。
「こんなんやって何の意味があるんやろーか?」
これは前々から思っていた事なのだが
いったいこのプログラムにはどんな意味あるのだろうか。
辞書をひいてみた事もあるが、今一意味が掴めない。
両親や学校の先生等に質問してみた事もあるが、
みんな辞書や教科書からそのまま引用したような答えしか返してくれなかったし、
人によっては歩を説教してくる人もいた。
実際にこのプログラムに参加する事になっても、やはりその答えはでそうに無かった。
ここまで考えて、また溜息を一つ。
「こんなこと考えてもしゃああらへんなー」
こんな事を考えた所でなんの意味も無いのだと歩は自分に言い聞かせた。
何にしてもとにかく行動するべきだと歩は考えて、足に力を込めて立ち上がった。
正直いって何をしたらいいのかわからないし、どこに行けばいいのかもわからない。
まずは自分の支給品をもう一度よく確認してみる。
歩に支給された武器は二つ。一つは十徳ナイフだ。
これはデイパックの中に入れておいた。
そしてもう一つ。それは小さな銃だった。その名もFNポケットモデルM1906。
ポケットの中に入るほど小さく、重量も350グラムと非常に軽い。
歩のような力のない者でもなんとか取りまわせる代物である。
ちゃんとマニュアルも読んだが、歩にはせいぜい威嚇に使うのが精一杯という所だろうか。

それでもなにもないよりは安心感が違う。これもとりあえずデイパックの中へ。
自分に支給された支給品は全て確認し終えた歩はとにかく歩き始めるのだった。

□ □ □

そしてふらふらと見知らぬ土地の中を歩は彷徨い歩いていた。
なにかを目指して歩いているわけではなく、ただ足を機械的に動かす。
まずはとにかくみんな、ちよや智たちと合流したいと歩は思うのだが
どこにいるのかわからないのでは探し様が無い。
そもそも今、自分がどこにいるのかわからないのだ。
デイパックの中に入っていた地図を覗いてみてもさっぱりだった。
だからとにかく歩は歩く、歩きながら今後の事を考える。
今、はっきりとしている事は自分と同じ首輪をしている他校の生徒達を皆殺しにして、
優勝しなければ、自分はこの島から生きて帰れないという事だ。
もちろんこれが冗談でもドッキリでもない事は歩は了解している。
実際にもう何人もの死体を見てしまっているのだ。
これでまだ冗談だと思うほど歩はボケていなかった。
そういえば自分の学校の体育教師、
黒沢みなもの死体もその中に含まれていた事を歩は思い出す。
自分達とは関わりの深い先生だったので、もちろん彼女の死は悲しいのだが……
「ゆかり先生はどうなったんやろ……」
黒沢先生の死よりも自分達の三年間通しての担任、谷崎ゆかり先生の安否が気になった。
当然、彼女にもこのプログラムの連絡はいっている筈で
多分、黒沢先生はその場に居合わせて殺されてしまったのだろう。
ゆかり先生だけならば何の問題もなかったのだろうが、
黒沢先生の性格を考えるとこの行事には反発しそうな人で、
だからあんな風になってしまったのだろうと歩は想像した。
そしてゆかり先生と黒沢先生は学生時代からの親友だ。

歩たちだけならば、はいそうですかという風にあの先生は流せるだろうが、
黒沢先生が殺されてしまったとなると……
そこまで考えて、あの教室で聞いたある言葉を思い出してしまった。

 プログラムに反対したんで、婦女暴行しちゃったけどなー

あの坂持金発という男は確かにそんな事を言っていた。
これはどこかの孤児院の先生がこのプログラムに
反対してそうなってしまったという事らしいが……
黒沢先生はプログラムに反対して殺されてしまった。
それはつまり、もしかして……
その先を想像してしまいそうになるが、頭を振ってその嫌な想像を無理やりに振り払った。
「……あ、あかんあかん。こんなん考えてもしゃあない。
 ……それになんか脱線しとる」
とにかく、この島にいる限りは歩はいつも死と隣り合わせだという事だ。
そして、島から生きて帰るには見知らぬ誰かを殺さなければならない。
しかし歩は誰かを傷つけるつもりは全く無かった。
例えば、ちよが死んでしまえば歩はとても悲しむだろう。
智も、榊も、神楽も、誰が死んでも悲しいだろう。
それはつまり他の人も同じ事で。
このプログラムに参加している誰が死んでも、その死を悲しむ人がいる筈なのだ。
それを考えるとどうしても殺意というものが歩には湧いてこなかった。
そもそも歩たちはそういった暴力とは無縁の世界で生きてきたのだ。
あの教室を見渡した限り、どこか危なそうな人たちが何人もいた。
正直言って、歩にはそういった人間と戦って勝てる自信は全く無い。
優勝を目指すというのは現実的に考えても利口なやり方には思えないのであった。
だとすればどうするか。
どこかに隠れてもいずれは首輪を爆破されてしまう。

生きるためには誰かを殺さなければいけない。
脱出、そんな言葉が頭の中に思い浮かぶ。
「……そんなんできるわけあらへんしなー」
自分の首につけられた首輪をさすりながら呟く。
脱出も駄目、優勝も駄目、そうなると残される選択肢は只一つ。
――死ぬ事だけだ。
教室で見た黒沢先生のようになってしまう事だけ。
ふと、歩は黒沢先生の死体の顔を自分の大切な友達達の顔に置き換えてみた。
それだけで吐き気が湧いてきた。
想像だけでこれなのだから実際にそれを見てしまえばどうなるか。
この島で目覚めてから嫌な想像しかしてこなかったせいか、
どんどん気持ちが暗く重く沈んでくる。
生まれて初めて、絶望という言葉の意味を歩は理解した気がした。
そして最後の選択肢が頭に思い浮かぶ。

つまり自分の命を自らの手で断つ行為、自殺。

思い浮かんだ瞬間に、その思いを頭から振り払った。
どんどん気持ちが暗く重く沈んでくる。
生まれて初めて、絶望という言葉の意味を歩は理解した気がした。
そして最後の選択肢が頭に思い浮かぶ。

つまり自分の命を自らの手で断つ行為、自殺。

思い浮かんだ瞬間に、その思いを頭から振り払った。

この島にいる誰が死んでも他の誰かが悲しむ。
その勘定には自分も、あの坂持という男ですら入っているだろう。
これは自惚れでは無く、事実であると歩は確信していた。
少なくとも自分が死ねばちよ達は悲しみ、泣いてくれるだろう。

そんな事にならないように歩は何が何でも生き残ろうと思った。
そして改めて考える、自分は何をすればいいのかを。
考えて、考えて、やはり答えが出ない、そんな時に歩はあの寺を見つけたのだ。

□ □ □

「はあ……みんな心配やなぁ……元気にしとるやろか」
元々は少し足を休めようと思ってこの寺に来たのだ。
その時に、寺の玄関からすぐの所でこの金髪の男を見つけて今に至るのである。
最初はこのままにしておくのは躊躇われたので、
この男を起こしてからまたみんなの事を探そうと思っていたのだ。
しかし何故か、この男は何をやっても目覚めない。
「もう諦めて、みんな探しにいったほうがええんやろーか」
そんな言葉が歩の口から零れる。
そもそも歩にはこの男を起こす義務などは存在しない。
だから別にこの男を放って、ここから出ていっても誰かに責められる事も無いのだ。
少しの間、歩は黙考し決断する。
「よし……」
後ろ髪をひかれる思いはあるが、歩にはいつまでもこの男にかまけている余裕は無いのだ。
だからまた、みんなを探しにいくために立ち上がった、その時だった。
背後でガラっという扉を開ける音が背後で聞こえてきたのは。
「っ……!」
これには肝を冷やし、身体が硬直する。
が、その直後に聞こえてきた「……大阪?」という
こちらへの呼びかけに硬くした身が急激に弛緩する。
この島で歩の事を大阪と呼ぶのは四人だけの筈で、そしてこの声は……
「……ともちゃん?」
「おーーー大阪! 無事だったか!!」
振り返ると歩の視界に、この島において数少ない歩が心から信頼できる人間の一人、
こちらに迷わず突進してくる滝野智の姿が映った。

「え、あのともちゃ、うわっ!」
「とー―――――――――う!」
その勢いのまま、歩に向かって智は思いっきりダイブしながら歩の身体に抱きついた。
あまりの勢いに歩は後ろに倒れ込んむ。
その為、「ぷぎゃ!」歩の背中越しに男の悲鳴が聞こえてきた。
女子二人に潰されることになった金髪の男が、
歩の背中越しにうめいていたが、それに智は気づかない。
「え、あの智ちゃん、いきなりどしたん」
「いきなりもなにもあるか! 心配したんだぜー
 これぐらいはしとかないとな!」
智はぐりぐりと顔を歩の胸に押し付け、痛いほど歩の身体を抱きしめていた。
確かに、歩も智と再会できた事は嬉しいのだが、
「ん~~~ん~~~~」
今も歩の背後でうめいている金髪の男にまだ智は気づかないでいる。
やたら苦しそうにうめいている男に歩はちらと目線を動かしてみると……
(あれ?)
男の目が薄く開かれていた。
そして明らかに迷惑そうな視線をこちらに向けてくる。
(いや、なんで――いやいや違うな)
ある疑問が歩の中で浮かび上がってくるが、
それよりも早くどかなければと歩は思い直した。
「あの、ともちゃん」
「ん? なんだ?」
「あのな……そろそろどいてくれんかなーっておもて」
「えー―別にいいじゃんよー。減るもんじゃないんだしさ」
ぶすっとした顔で智が文句を言う。
「いやな。私は別にええんよ。
 でもな、私の背中で人一人下敷きにしとるから
 はよどいてあげんとかわいそーって思うんよ」

「えっ……うわぁ!!」
どうやらやっと気づいたらしく、慌てたように智は歩から飛びのく。
それと同時に歩も立ち上がった。
そして今まで下敷きにしていた金髪を見て智が一言。
「うわー……この人、外人さん?」
「……この場合、突っ込んだ方がええんやろか」
「いやー冗談だって。で、どうなの。
 それとなんでこの人寝てるの?
 あれで起きないって凄くね?
 もしかして馬鹿なの?」
なかなか酷い言い草だが智の言う事ももっともで、
この男は幾分か顔を顰めながらもまだ目覚めようとしなかった。
(さっきこの人おきとったよなー)
ついさっきこちらと目があったのだからそれは確実だと思うのだが……
歩がその事を考えようするが、それより先に智がこちらに質問してくる。
「あと、なんでこんな所に大阪いるんだ?」
とりあえず目の前の男は置いておいて、歩は質問に答える事にした。
「私、みんな探してあちこち歩き回ってたんやけど
 ちょっと疲れてなー。だから休もーとおもてここに入ったんよ」
「ふんふん」
「そしたらこの人がここで寝とってな。こんなもんみてもうたら、
 やっぱり起こしてあげたくなるのが人情ってもんやん。
 その……このままだと色々危ないやろうし」
「……うん」
どこか気落ちした様子でこちらに相槌を打つ。
なにかあったのだろうかと歩は思ったが、とにかく続きを話す。
「で、今までこの人起こそうとしてたんやけど
 この通り、なかなか起きへんねん」
「まあ、さっきのやつで起きないんじゃあなぁ」
呆れたような顔と眼差しで智は金髪の男を見る。

「だからもう諦めてここ出よーと思ってたんやけど……
 ここにおって正解やったみたいやね」
もしかしたら入れ違いになっていたかも知れないのだ。
本当に運がいい……こんな島にいる以上それはないかと歩は考え直した。
「それで、これからどないしよか?」
「んー――……」
どうやら智も今後の事を考えていなかったらしく腕組みをして頭を捻る。
だから歩は智に提案してみる事にした。
「あのな、ともちゃん。ともちゃんがよかったらなんやけど、
 この人が起きるまでしばらくここにいてみん?」
「どうして?」
「いやな、実はこの人さっき起きてたみたいなんよ」
「いや、それは無いだろ。常識的に考えて」
ないない、と顔の前で手を振る智。
常識で考えるならあれで起きない方がおかしいのだが。
「でも確かにさっき、この人と私、目があったんよ」
「だったらなんでこいつおきないんだよ。
 今の状況を考えたら普通……なぁ」
智がわかるよなといった感じに歩の顔を見る。
「そこやねん」
「え?」
「そこが気になるねん。
 なんでこんな状況で平然と人にこんな姿晒せるのか、
 この人に聞いてみたいねん。」
「いや、そりゃお前、こいつが単なる馬鹿ってことじゃねえの」
「……うーん、やっぱりそうなんかなー」
もちろんその可能性もあるにはあるのだが、やはり歩はその事が気になった。
すると智がこう返してきた。

「……まあ、別にいいけどさ。私もちょっと疲れたし
 みんながどこにいるかもわかんねーしな」
歩にとってはそれは少し意外な言葉であった。
(いつものともちゃんなら……いつもならなんだっけ?)
なにかこう、いつもの智に比べて言動がおとなしいようなと考えて、
そういえばいつもの智ってなんだっけと首を傾げる。
そんな歩の様子を見て智が声をかける。
「どしたの?」
「いや……なんでもあらへん」
別にいいかと歩は思い直す。
「それじゃ今の内にに朝ご飯でも食べる?
 もしかしてともちゃんはもう食べたん?」
「いや、まだだよ」
「じゃあ、今のうちに食べとこー。
 いつ何があるかもわからんし」
「そうするか。あ、それとな大阪」
「なにー」
「お前ってすげえな」
それだけ言って智は自分のデイパックの中を探り始めた。
(……本当、どないしたんやろ?)
凄い、その言葉の意味するところが歩には分からなかった。
やはりどこか智の様子がおかしい気がする。
(まあ、ええか)
なんにしても智は智であり怪我一つ無く自分の前に存在するのだ。
今はそれでいいと歩は思った。
そして金髪の男を一瞥し、思う。
(私もあんな風に落ち着けたらええんやけどなー)
歩はそんな事を考えて、自分もデイパックの中から
自分の分の食料を取り出そうと手を動かし始めた。



□ □ □

智がここに留まろうと言い出したのは理由がある。
ここに来る前に智は死体を一つ発見してしまっていたのだ。
だから外に出るのが嫌だった、怖かったのである。
初め、それを見た時には智はそれが死体とは判別できなかった。
人影を見つけて、声をかけてみて、反応が無いから近づいてみた。
そしたら首の裏から血が――
それを確認したとき、智は走り出していた。
あの教室で、死体を見たときはどこか心が麻痺していたのかもしれない。
だから錯乱するような事も無かった。
しかし、実際に間近に死体を見てしまった。自身の危険を間近に感じてしまった。
だから智は必死になって走った。
まさかこの殺しあいにのる人間がいるなど、智は思ってもみなかったのである。
この無学寺に来たのは偶然で、走り疲れて、歩いていた時に見つけて、
後は歩と同じ理由で寺に近づき、そして歩を見つけたのである。
歩に死体の事を言わなかったのは怖かったから。
歩のいつもどおりの姿を見て自分は安心できたのである。
歩のいつもと変わらない姿を見て素直に凄いと思ったのである。
それを壊したくなかった。只、それだけの理由だった。
そして智は初め、このプログラムに乗る気はなかった。
しかしあの死体を見てからは少し考えが変わりはじめていた。
目の前の大阪があんな風になって前に、
自分はなにかしらの行動を起こすべきなのではないか。
そんな事を智は考え始めていた。


そして、今もなお惰眠を貪り続ける金髪の男――三橋貴志。
金髪の悪魔と呼ばれ千葉全域にその名を響かせ、多くの不良から恐れられている存在だ。
彼の伝説は数多く、それに尾ひれがついたデマもまた数多い。
そんな男が何故、呑気に居眠りを続けているかというのにも理由がある。

この男は自分が殺人プログラムに参加しているという事に気づいてないのだ。

彼は一度眠りに落ちるとなかなか目覚めない性質で有名なのである。
それこそ近くで喧嘩があろうが、耳元で怒鳴られようが絶対に目覚める事は無い。
だからあの坂持金発が説明したルールを彼は全て聞き逃していた。
赤坂理子の声が聞こえてきた時に少しだけ反応を見せるも目覚めには至らなかったのだ。
その後、またなんらかの方法で学生達が眠らされたせいで
ちっとやそっとじゃ起きないほどの深い眠りに三橋はつく事になった。
もし、三橋がきちんと説明を聞いていたならば歩に潰されたときに完全に覚醒し、
急いで伊藤真司や赤坂理子を探しにいこうとしただろう。
しかしそうはならずにいつものように彼は眠りつづけて、夢を見る。
三橋が今の最悪な状況を知る事になるのはもう少し先の話である。



【F-8 無学寺/一日目 朝】

【春日歩@あずまんが大王】
【状態】:健康
【装備】:なし
【所持品】:支給品一式 十徳ナイフ FN M1906
【思考・行動】
1:目の前の男の人が目覚めるのを待つ
 待つ間に朝食を摂りながら今後の事を話し合う
2:殺しあいはしたくない
3:ともちゃん……なんか様子がおかしい気がするなぁ
4:この人やっぱりアホの子なんやろかな~

【滝野智@あずまんが大王】
【状態】:健康 精神的動揺
【装備】:なし
【所持品】:支給品一式 ランダムアイテム1~3(本人確認済み)
【思考・行動】
1:金髪が目覚めるのを待つ
 待つ間に朝食を摂りながら今後の事を話し合う
2:大阪と一緒に居る。他のみんなとも早く合流したい
3:自分は……どうすればいいんだろう?
4:大阪やみんなが死んでしまったら……

【三橋貴志@今日から俺は!!】
【状態】:健康 熟睡中
【装備】:なし
【所持品】:支給品一式 ランダムアイテム1~3
【思考・行動】
1:…zz今井と…zzz…谷川…めzzzzz………
2:……z幸せzzそうな…z…zzz…
3:ツラ…zzzしや…がってz……
4:…z…コロ……zz…ス!……zzz……
※自分がプログラムに参加している事をわかっていません
 プログラムについての説明を全て聞き逃しています




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