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 まずいことになった。そうゼットンは思った。
プログラムの存在は知っていたし、毎年誰かが当人以外の全員を屍にして帰ってくることも知っている。机で変な教師の説明を聞き終えるまでは見回した先に何故かいる先輩たちすら殺さなければいけなくなるのかと脅えていたくらいだ。
 そういう意味では同じ高校の生徒を殺さずにすむこのルールは良かったのかもしれない。だがこのチーム戦のルールもこれはこれで凶悪だ。

 生存を優先して逃げ隠れしていたら、徒党を組んだ他の高校に勝てなくなる。

 旧来のルールなら間違いなく自分は誰を殺すでもなくまず隠れていただろう。
 進んで殺しに行けるほどの度胸はない。喧嘩ならむしろ好きだし他校の連中に負けるつもりはないが、殺人は別物だ。もしできるとしても正当防衛になる場合くらいだけだろうという自己分析はできる。
 チーム戦でないなら最後の一人になるための手段としてそれも有効なはずなのに合流しないことが不利になるこんな状況では、進んで動かなければ手詰まりになってしまう。

「どうしたもんでしょうかね」

 ここで誰も殺したくないというのは簡単だが、それは死にたいとほぼ同じ意味だ。死者を出さずに生きて戻る方法などプログラムにはない。そして自分はまだ死にたくない。
 だから、優勝しなければならない。どんな手を使ってでも。
 期待できる戦力は身内全員、といいたいところだが――― 一番信頼している坊屋さんがこの場合は一番信用できなくなる。あの人は自身の生存に興味が薄い。すぐさま反逆して首輪を爆発させられていてもおかしくないとゼットンは思っている。

 逆に言えば、それ以外のチームメンバーは付き合いがないに等しい坂東も含めて全員が乗ることはほぼ間違いない。鈴蘭の生徒なら誰であろうと見ず知らずの学生より自分の命を優先する。当然の帰結として戦うことを選ぶはずだ。
 バカすぎてそこまで考えが至らなかったら、まあ……それはしょうがない。

 民家の陰でデイパックを確認したところ、支給された武器はショットガン。
近~中距離から撃ちさえすればまず命中しその殺傷力も抜群と思われるが、散弾銃を浴びた相手がどうなるかを考えると気が滅入る。
だが、もう一個入っていたものがどこにあるとも知れない単車のキーである以上これを使わざるを得ないだろう。

「はぁ……」
 ため息が漏れる。生きて戻れたら、一生忘れられない日になるだろう。

「あのー」
「!!」
 突然すぐ後ろから声がかかった。
 民家の陰だからといって油断していたわけではない。だが現に背後を取られている。焦った彼が重い銃を構えながら振り返ると―――
 甘い香りのする美少年が、そこにいた。
 結論から言うと彼は出会った少年、桜蘭高校の藤岡ハルヒを殺せなかった。
 なにせ本人に一切戦意が見うけられないどころか、その銃なら楽に死ねるかと聞いてきたのだ。

 ハルヒの言い分はこうだ。
「突然連れてこられて殺し合いをしろとか言われても、ひとさまに手をかけて生き延びようなんてしたら母さんに怒られちゃいますよ。
 それにうちの男子部員もお客様のれんげさんも人殺しなんてしようと思ってもできない優しい方ばかりですから、最後まで生き残るチームにはなれっこありません。だったら、苦しまないように殺される方法を模索したほうがよっぽどいいと思ったんです。
 自殺はしちゃうと100%地獄に落ちるって言われてますし、自分としても地獄に行くのはやっぱり嫌ですから―――」
「……もういい」

 所持品を渡せという指示にもハルヒは素直に従った。デイパックを開けてみたがそれまで未開封だった形跡がちゃんとある。

「アーミーナイフか……もう一つは武器じゃないな」
「うわ、いたそー。それはあげますから銃でさくっと殺して下さいよ」
「使ったことがないから威力はわかりませんが、散弾銃は狙った範囲全部に細かい銃弾がめり込みますから即死できなかった場合悲惨なことになります。やめたほうがいい」
「そうなんですか。言わなければバレないのに教えてくれるなんて、やっぱりいい人だ」
 不意にハルヒが見せた笑顔に、彼の心拍数は跳ね上がった
(いくらかわいくても男にドキドキしてどうする。しっかりしろ俺!)

「じゃあ自分はこれで。別の人をあたってみます」
「まあ待って下さい。いろいろもらった以上恩ができました」
「はい?」

 ゼットンは自分の行動に驚いた。
 引き止めてしまった。敵校の生徒を。
「あんたは諦めたがってるだけでまだ諦め切れてない。だから、ふらふらと死にに行くような真似はさせません」
 勝手に口が動く。
「ずいぶんと勝手な人だな……でも、そういうのも何故か慣れっこなんですよね。どうしたいんですか?」
「まだ楽に死にたいと思ってるならついてきて下さい。俺はあんたを殺す気になれないけど、うちの高校の奴らならきっと苦しまずに逝かせてくれますよ。関わっちまった以上よそで惨殺された姿なんて見たくないっスから」
「わかりました。そういうことならよろしくお願いします」

 ハルヒがお辞儀することで芳香がその髪から漂い、彼の脳髄を侵食する。
(いくら女っ気のない生活が続いてたからってそれはない! 落ち着け俺!)

 そして、朝の清々しい空気の中を一組の男女が歩いて行く。
 片方は男子制服を着た相手が“女”だということを、まだ知らない。
【F-2/住宅地/1日目-早朝】
【花澤三郎@クローズ】
[状態]: 健康
[装備]: ショットガン(SPAS12)
[道具]:デイパック、支給品一式、アーミーナイフ、単車のキー、ランダムアイテム1(武器ではない)
[思考]
基本:消極的ではあるが殺し合いには乗る
1.先輩たち及び加東と合流したい。まずは南を探索
2.ハルヒは殺したくないが、合流したらそうもいってられないよな……

※無害そうでも一応ハルヒは敵なので、武器は求められても返しません

【藤岡ハルヒ@桜蘭高校ホスト部】
[状態]: 健康
[装備]: なし
[道具]:デイパック、支給品一式
[思考]
1.どうせ桜蘭の人たちは生き残れないだろうから、できるだけ楽に死にたい
2.とりあえず花澤くんについていく


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