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そこは、冬の肌寒い空気に包まれていた。
冬は特に、暖かい布団の中で起床を先延ばししたくなる。
だが、冬は早朝が良いと枕草子でも言われているように、外の景色を楽しむため早起きする者も居るだろう。

三村信史は一人橋の上を歩いていた。
だが冬の風情に心和ませていたわけではなく、爽やかな寒気の中ジョギングをしていたわけでもない。
彼は、いや彼らはそんな些細な日常を迎える事さえ許されない、絶望の世界に放り込まれていたのだ。
バトルロワイアル……その存在は知ってはいても、まるで自分たちには関係ない、どこか遠くの国の事件のような、そんな無関心さがあった……だが。
「くそっ、やれやれだ」
当事者になって初めてわかる、目を背ける事の出来ない現実。これは間違いなく自身の見に起こっている事。
ふいに三村の端正な顔が歪む。
先ほどの国信慶時の無惨な死を思い出し、胸の底から怒りが沸き上がっていた。
(なにがプログラムだよ。俺たちは大人の遊び道具じゃねーんだよ!)
そう、これは権力ある大人達が勝手に決め、始めた事。少年らには反抗する事も逃げる事も許されない。
「七原、こんなふざけたゲームぶっ壊してやろうぜ」
そう呟くと、早速デイパックから地図を取り出し、幅広い知識を総動員させ頭の中で戦略を立て始めた。
少し考えた所で、よし、と頷く。
(道具を集めるために、まずは近場の鎌石村に行って探すか。味方は七原と……杉村も大丈夫だろう、が……もう少し人数が必要だな)
そんな時、ふと、どこからか足音が聞こえ、ポケットに忍ばせたコンバットナイフに手をやり、素早く周囲を確認。三村の視界に一人の少女が映る。
だが、警戒の姿勢を見せた三村に対して、少女の方は無警戒に口を開く。
「あの、私、塚本天満って言います!」
突然の名乗りに、三村は少し拍子抜けしてしまった。
武器は持っていないようだが、どこかに隠し持っているのかもしれない……と考えるのが普通だが、目の前の少女からはそんな空気は微塵も感じられなかった。
見るからに能天気といった印象だった。
「えっと、私クラスのみんなを探してて、それで」
「ストーップ!」
喋りながら近づいてくる天満に対し、三村は手の平を突き出して、その歩みを止めようとする。
「おいおい、目の前の男が殺しあいに乗ってるかもー、とか考えないのかよ?」
あまりに不用心な行動に問いかける。
「ええっ! 乗ってるの?! そんな悪い人には見えなかったのにどうしよう!」
慌てふためく少女。すでに二人の距離は数歩分しかなかったのだ。
「いや、乗ってないけどよ」
「なーんだ……もう、脅かさないでよ」
大きく息を吐き安堵の笑顔を浮かべる天満に対し、三村の方はあきれ顔だった。
そして思う。あまりに能天気なこの少女は、本当にここがどういう場所なのかわかっているのだろうか、と。
「あんた、よく、ほっとけないタイプだって言われないか?」
そんな三村を下から覗き込むようにじーっと見つめる天満。腕を組み何かを思い出そうとしているようだ。
「なんだ? 見とれてるっ……てわけじゃ無いか」
「うーん。どこかで会った事があるよな気がするんだよね……えーと」
そこで天満はハッと教室での出来事を思い出し表情を曇らせる。
そして首輪に手をやる。これを爆破され死んでいった少年。
死んだのは彼女が知っている人間ではなかった。
だが、人が何の尊厳もなく、まるで道端の石ころを蹴飛ばすように、容易く殺されいい道理など許せるはずがなかった。
「なんでこんな事になっちゃったんだろう……。クラスメート……だったんだよね……」
「あぁ」
天満の悲しそうな声により、三村のさっきまでの飄々とした表情に真剣味が加わる。
「人がこんな簡単に殺されるなんて……絶対ダメだよね……こんなの絶対」
冷気を帯た風が吹き、天満が体を震わす。いや、もしかしたら恐怖から来る震えだったのかもしれない。
「そうさ。そんなこと許すわけには行かない。絶対にな」
男は頑強たる意志をもって断言する。まるで自分自身に刻み込むかのように。
そして、何となくその少女には暗い顔は似合わないと思ったのだろう、近寄りポンポンと肩を叩きく。
そしてビシッとサムズアップ。
「心配いらないさ。坂持って言ったっけ、あんな腐った奴らには、俺が強烈なダンクシュートを叩き込んでやる!」
「うん……そうだよね! 私もがんばる!」
天満もあわせて親指を立てる。
元々前向きな性格はこんな状況でもへこたれなかった。というか、まるですっかり忘れてしまったかのような笑顔だ。
その再び戻った笑顔に、三村の心も温かくなった気がした。
「そういやまだ名乗ってなかったな。俺は三村信史だ」
「私は塚本天満、よろしくっ!」
「さてと、いつまでもこんな橋の上に居る場合じゃねーな。俺としては女のあんたを一人残して行きたくはないんで、よかったら一緒に来ないか?」
天満の方も一人でいるのは心細いので、その申し出に異論はなく、二人で北の方の探索に向かう事となった。
お互いに知り合いを探したいと言う認識があったので、行きながら情報交換をすませようということになった。
「そうだ! 三村君にいいものあげちゃうよー。ほら!」
ごそごそとデイパックを漁っていた天満が取り出した物はなんと! ただのおにぎりだった……。
もらって困る物でもなく、とりあえず受け取る三村。
「友好の印ってとこか? ありがたくもらっておくが、のんびりはしてられないぜ。朝食は歩きながらだ」
「そうだね! いざ、しゅっぱ…………うぅ、ちょっとまって……」
「どうした?」
なぜか急にもじもじしだす天満の姿を見て、三村は再びあきれ顔を見せながら親指をクイッと横に向けた。
「すぐそこの公園にあったぜ?」
「ごめん! すぐ戻るから!」
顔を赤らめながら、来た道を急ぎ戻る少女。まるで緊張感に欠けていた。
「天真爛漫な少女……というより慌てん坊のお姫様といったところか」
一人になった三村の方は、橋の手すりの上に腰を乗せ遠くを見つめる。
(この先、殺しあいに乗った奴らと出会う事があるかもしれない。その時はなんとしても彼女を守ってやらないとな)
空腹のため、食べ物を催促するおなかの音に気付く。
さっきは歩きながら摂ろうと言ったが、時間があるならと、もらったおにぎりにかぶりつく。
(まぁ、お姫様を守り通すのも正義のヒーローのやく……め……っっ?!)
「げほっ!! うぐっ、ぐあぁあぁぁ!!」
突如、激痛が三村を襲う。首を掻きむしり悶える。そして口からこぼれ出てくる、血。
実は先ほど口にしたおにぎりには青酸カリが入っており、食べれば確実に死に直結してしまう、殺人おにぎりだったのだ。
これは通常の食料とは別の天満の支給品であり、その毒おにぎりの注意書きのメモも添えられていたのだが、これには全く気付いておらず、天満本人はこれで人が死ぬなどとは毛ほども思ってはいなかった。
「ぐ……ぁ……」
三村には、わずかな時間でそれが猛毒であると判断できたが、かといってどう対処する事も出来ず、そのまま絶命し、川の方へぐらりと転落していった。
ちょうどその直後、天満が急ぎ足で現れる。
「あれっ? 三村君がいない」
辺りをキョロキョロと見渡す天満。だがどこにも三村の姿を発見する事は出来ない。
もしや自分がもたついていたせいで、待ちくたびれて先に行ってしまったのではないかと、焦りだす。
「まってー! 置いて行かないでよー!」
慌てて駆け出すが、橋の端でぴたりと止まり、振り返る。
橋の上にはぽつんと置かれた、三村のデイパックが。
「忘れてるし!」
それを素早く引っ掴むと、北の方へと走り出した。


【三村信史@バトル・ロワイアル 死亡確認】
【残り36人】


【D-3/道/1日目-早朝】

【塚本天満 @School Rumble】
 [状態]: 健康
 [装備]: なし
 [道具]:デイパック&支給品一式×2、毒おにぎり×2、残りランダム支給品1~4(本人はおにぎりのみ確認済み)
 [思考]
  基本:殺し合いはしない。みんな仲良く。
  1:北へ向かい、三村信史に追いつく。
  2:矢神学院高校のみんなを探す 。


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