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カチッカチッと聴こえる……これはきっと時計の音だろう。

ボワッボワッと聴こえる……これはきっと暖房から出る炎の音だろう。

スゥスゥと聴こえる……これはきっと金髪の少女から漏れる吐息だろう。

ハアハアと聴こえる……これはきっと疲労回復を図っている少年による呼吸だろう。

何かが擦れる音……シュシュッと聴こえる……!?

もう一度耳を傾ける……確かに聴こえる……この音はなんだろうか?


「なあ、オマエ、この音が何だか分かるか?」

専用インカムに集中している中、二メートルほど離れた無機質な部屋の中央部から
小汚い灰色ソファーの上で足を組みつつ、下品な笑顔を向ける上官が自分に問いかけてきた。
部屋には他にも数人の兵士がいるというのに、自分を選んできたことを心の底から憎んだ。
……しかしながら、周りの面子はほとんど無愛想。
第一放送前にも兵士側に声を掛けてきたらしいが、その時自分は休憩中でいなかった。
だからこそ、今、周りよりも無愛想でない自分に声を掛けるのは仕方ないのかも知れないと思うことにした。

「ハッ……この音とはどこのグループのことでしょうか?」
「とぼけるなよ、オマエが今聞いているところ
 所在地F-1民家、七原と沢近のところだよ」

やはりそうかと感じつつ、苦手な上官だと改めて思う。
胸に坂持と書かれたプレートを付けているその苦手な上官は、上機嫌で話を続けていく。

「今回のプログラムなあ、思ったより全員『綺麗』なんだよ」
「……綺麗ですか?」
「そうそう、大体女を襲う生徒が現れるものでな
 死ぬ前に最後の思い出やら殺す前のついでにやら
 色々とそういう機会がプログラムでは出てくることが多くてなー
 ……まあ、一種のヒツゼンだ、これは」

男と女が殺し合いをする。
暴力が発生すれば、そこには性も発生する。
誰かがそんなことを言っていた気がする……きっとこの上官も同じようなことを言いたいのだろう。

「はあ、それでこの音と何の関連が??」
「オマエ、鈍いなあ」

今度は呆れた表情で自分の顔を見つめてくる。

「……いや、分からないでもないか
 まあ、さっきの話に戻るがプログラムでは女が襲われることが
 とにかく多いんだよー、困ったことにな
 だがなー……これは凄いぞ、この何かを擦る音」

――――シュッシュッシュシュ

音を拾うことのみに使われているインカムからは、最初に聴こえてきたものよりも大きくなっていた。
摩擦で何かと何かが擦れる音。よく聞くとそれなりに聴き慣れている日常に潜む音な気がしてきた。
更に上官のヒントを元に考察していくと
……何かを擦る音……女を襲う生徒……性…………寝ている少女……!!……まさか……!?

「そう!その顔は気づいたなー!」

顔の至る所、全て下品な男が更に満開の笑顔で自分をゆび指して大げさに叫ぶ。

「七原秋也!この生徒は中々いいねー目の前にご馳走がありながら頂かない
 しかし、涎は我慢できないといったところか?この中途半端な状態が子供らしくガキらしく実に面白い」

悪趣味だ……本当にそう思う。
あの年だ、未経験に決まっている。
まさか盗聴をされているとも知らずにその行動に走ることは仕方ないことだ。

「仕方ないと思ってるか?」

……やはり苦手だ。

「ハッ、むしろそこで保てる理性が残っていると褒めるべきかと」
「……ふふふ……そうかそうか……そういえばお前らは知らなかったな
 まあいい、折角の第二回濡れ場チャンスだったが
 これはこれで、ウケの良い層がある」

これ以上の嫌悪を抱く前に仕事に熱中する振りをし
ボソボソと独り言を呟く上官からモニターへと首を戻す。

専用インカムからは未だ幼い少年の吐息が零れていた。


 □ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □


何故か所々濡れている透き通るほど綺麗な金色に光るツインテール。
女性特有の決め細やかに、思わず舐めたくなるような白い肌。
毛布という物体に遮られながらもスラリと伸びる細く鋭い美脚。
そして、つい先ほど目の当たりにし目に焼き付けた乳房を思い出す。
全ての興奮は己の股間へと集中し、自分の生命全てが手に持つ物体へと流れ込んでいくような錯覚に陥る。

「はぁはぁ」

こんなことをしている場合ではない。
そう思っても止められない。
これで目の前に存在する少女に危害が及ぶわけでもないが
汚しているという感覚だけは離れないことも確かだ。
しかし、少年は幼くそして激しくも己の欲望を制止することが出来ない。
己の興奮の上昇とともに手にする上下運動のスピードも加速していく。
……決め細やかな白い肌……ピンクの乳房……すらりと伸びる太腿……
彼の状況ならば、男である限りこれはもう仕方ないことだ。
ましてや、それが明日まで命があるかどうかも分からない幼さ残る中学生。
誰にも攻められるわけがない。

「……はぁはぁ……ハァハァ……」

何にでも終わりはある。
欲望に終わりはないとはよく言ったもので
こと今現在七原が行っている行為には、明確な終わりというものがある。
全身から集められた欲望と快楽は股間へと集合し
更に興奮が絶頂へと駆け上る。
その興奮は頂点に到達した今、形となって七原の股間部から勢いよく吐き出されていく。

「……うぅ」

軽く何かが発射される音が部屋に響くと、七原は己の手に広がる粘ついた乳白色の体液に目を落とす。
体液を眺めると普段よりも更に色濃くなっているように感じた。
その興奮の結果吐き出されたものをみると、途端に嫌悪感が体中を侵食してくる。

「俺って……」
「最低ね」

えっ?と口から出ると思った。
だがそれよりも早く目の前にそびえ立つ金髪の美女は七原の腹部に蹴りを繰り出していた。
モロにみぞおちに喰らい、腹を押さえ吐きそうになりながら悶絶する。

「最低だけど、聞きたいことが山ほどあるわ」

悶え苦しむ七原が所持していた果物ナイフを取り上げ
すぐに刃を首筋へと押さえ付ける。
ついでと言ってはアレだが、一連の動作の間に少女沢近の巻いていた毛布は上半身から滑り落ちていた。

「ま、待ってくれ……俺はアンタを殺す気はない……」
「そんなの分かってるわ!」

ナイフを持つ右手に力が加わるが、沢近は別にその意図でナイフを突きつけているわけではない。
殺す気があるなら、今、自分が生きているはずがない。
それぐらいは理解できる程度には冷静だ。

「女の子の目の前でそういうことをしていて只で済むと思ってるの?」
「……すみません」

ただただ七原には謝ることしか出来ないでいた。

「まあ良いわ、私も少しやりすぎたかも知れないしね
 それよりも……その粗末なものを締まって頂戴」
「……あ」

社会の窓からはみ出るソレを指さされると
七原は赤面しながらも体液の付いた手でソレを仕舞うのだった。




 □ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □

暖炉からは未だ火が二人を暖めている。
下半身から妙なものが飛び出していた七原と毛布一枚で肌を露わにしていた沢近の二人は
互いに服装を整えると、すかさず沢近の方から本題へと繰り出す。

「で、まず地図を見せてほしいんだけど」

そう言い、未だ赤面している七原から地図を受け取ると
地図、現在地、禁止エリア、死亡者を民家にあった紙へと書き写していく。
その間も七原はどこか居場所がなさそうに立ち尽くしいる。

「ふぅ……ありがとう
 次に貴方のこれまでの出来事、出会った人がいればその話を聞かせてほしいんだけど
 ……いや、でも先に地図を見せてもらったし、私が先に話すべきかしら」
「いや、そんなことないです」
「……貴方、まださっきのこと気にしてるの?
 アンタみたいな子供のことなんか気にしてないわよ、まあこのナイフだけは貰っておくけどね
 それで許してあげるから、お姉さんの言うことを聞きなさい」
「……はい」

錆びれた果物ナイフと自家製の地図をスカートに挟むと
沢近はここまでの出来事を語っていく。

最初に西園寺世界と出会ったこと。
その世界に騙されていたこと。
そして、直後にピンク女に襲撃されたこと。
自分は逃げ切れたが、世界は恐らくそのピンク女に殺されたこと。
逃げたときに持ち物全てを置いてきてしまったこと。
ピンク女に復讐をしたいと強く思っていること。

七原はその説明を聞くとこのプログラムに再び戦慄する
自分だけが辛い思いをしてきたと思っていた。
十人死亡したことは知っているが、それは放送で呼ばれただけ
自分が体験してきたことではない。
だからこそ、自分が一番大変だと思いこんでいた。
だが、目の前にいる女性も……。

「大変だったんですね……」
「ええ、そうよ……本当に」

――本当に
この言葉の重みはきっと自分と同じだ。
話を聞く限り、自分は失意の方向へ向かっているが、彼女は復讐の方向へと向かっている。
だが、その重さは同じに違いない。
そして、これは島中の全ての学生達に言えることなのかも知れない。

「今度は貴方のこれまでのことを教えてもらえるかしら?
 ……そういえば、自己紹介をしてなかったわね
 私は矢神学院高校二年、沢近愛理よ」
「俺は城岩中学三年、七原秋也です
 ……一体どこから話せばいいのか」
「最初からよ」

間髪置かずに最初からと言われた。
しかし……七原にとっての始まりは一人になってからではない。
それを見越しての沢近からの質問かな?と何となく思った。

「最初の教室で殺されたアイツは俺の親友だったんだ……いや、親友なんだ」

過去形にしている自分に気づき、即座に訂正を入れる。
それに合わせるように沢近の右目が反応し口を開く。

「あの時、私も居たわ。だから次の話よ」
「次は……花澤ってヤツに出会った」
「どんな人なの?」
「アイツはやる気になっていた」
「でもアンタは生きてるわよね
 私と同じで逃げられたの?」
「……いや、見逃された」

何から何まで話すのが辛い。
七原にとって此処までのプログラムでやれたことなんて一つもない。
少なくても、彼自身はそう思っている。
無残に花澤に敗れたこと。藤岡を救えなかったではなく救わなかった事実。
今はそのことが身に染みすぎて、まるで自分が自分じゃなくなるように染められていくようなのだ。

「見逃された?……まあ、いいわ
 アンタのそのボロボロな格好みればなんとなく分かるしね
 次に誰かに会ったりしなかった?」
「次は……藤岡ってヤツに出会ったんだ」
「……藤岡?確か、もう死亡してるわね」
「……」

自分の罪の意識と沢近の何かを探るような目で見つめられ
余計に言葉が喉から出てこない。
それでも、歯を食いしばりながら声を搾り出す。

「……藤岡は、俺が殺したようなもんだ」
「……アンタが殺した?ようなもの?」
「藤岡は自殺した」

――瞬間、七原の右頬からビシッと強烈な音が響く。

沢近の左手がビンタを繰り出したのだ。
痛みも無視し、無表情な七原を置いて沢近はボソリと呟く。

「次よ」

右頬は未だ腫上がっているが、七原は口を開く。

「次はもうない」

沢近はそこまで聞くと、それ以上は問わなかった。
自分と同じ学校の生徒の情報もなく、ピンク女の情報もない。
だが、花澤という名のやる気になっている人物の情報と地図だけでも十分にありがたい。
目の前で行われた下劣な行為も情報料と考えればまだ安いものだと今の沢近には思えるほどだ。

「わかったわ、ありがとう
 お互い情報交換も終わったし、私は行くわ」
「お、俺も……」

立ち上がる沢近に合わせて七原も立ち上がる。
だが、沢近はそれを見向きもせずに入り口へと向かう。

「アンタに情報以上の価値はない、付いて来なくていいわ」

七原からみて真反対、一切こちらを向くことなく冷静に沢近は告げる。
プログラム開始以来での経験が沢近にそう言わせたのかも知れない。
七原の行為に嫌気が差して、そう言わせたのかも知れない。
真相はきっと彼女の中にしかない。
だが、それでも七原は一人になろうとは思えなかった。
沢近を襲うわけでもなく、救うわけでもなく、協力するわけでもない。
ただ、彼女に付いていけば何かが見えそうな気がしたから。

「待ってくれ!」
「待たないわ……勝手に付いてくるなら止めはしないけど」

味気なく告げられた言葉に返事は返さない。
気づくと、沢近はもうドアを開け外に出ている。
七原は急いで周辺の荷物をデイバックに仕舞い込むと、後を追いかけていく。


高飛車な女子高校生に縋る男子中学生
矢神学院高校と城岩中学校
形は違えど彼女達には少年達を大人にする魅力がある
無意識のうちに周防と似た境遇を辿る沢近、そして川田と同じよう引っ張られる七原。
適度な休息を取り、互いの情報を得ることにも成功した二人は
再びプログラムという名の舞台へと舞い戻っていくのだった。



【F-1 民家/一日目 午後】



【沢近愛理@School Rumble】
【装備】: 古い果物ナイフ(刃こぼれ・錆)
【所持品】: 自家製地図(禁止エリア、参加者を補完できるもの)
【状態】:身体的衰弱 腕と肩に銃のかすり傷(包帯ぐるぐる巻き)
【思考・行動】
1:ピンク女を殺す
2:美琴、かれんと合流





【七原秋也@バトル・ロワイアル】
【状態】:疲労小 全身を負傷 激しい失意 男としての爽快感
【装備】:手鏡
【所持品】:デイバック 支給品一式
【思考・行動】
基本:とりあえず、沢近に付いていく
1:俺は一体、これからどうすればいいんだ……
2:沢近に付いていけば何かが……
3:本当は、みんなでプログラムから脱出したい、でも……