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ザッザッザッ……

背の低い少女、清浦刹那が林の中を歩いていく。

ザッザッザッ……

その後ろを少し離れて少年、伊藤誠がついて行く。

「なあ清浦ぁ、今どこに向かってるわけ?」

黙々と歩く刹那に、誠は疑問を投げかけてみた。

「……どこでもいい」

「どこでもいいって……」

刹那は首だけ振り向いて短く答えると、すぐにまた歩き出した。

実際刹那は、行き先などどこでもいいと考えていた。
先ほど、刹那と誠が目覚めた場所は、周りに目印になるようなものが無く、
地図やコンパスを見ても自分たちがどこにいるのか特定出来なかった。
南側に山が見えることから、島の北側のどこかだろうと分かる程度だ。

だから刹那は、まず何か目印になるようなものを見つけ、現在位置を確かめたかったのだ。
これからどこに行くかなどは、その後で考えることだ。

刹那には、そういった思惑があったのだが、誠に詳しい説明はせず、

「少し離れてついてきて」

とだけ、最初に指示をして歩き出したのだ。

ザッザッザッ……

「あ……」

仕方なく誠も、刹那の後を、言われた通り少し離れてついて行った。

ザッザッザッ……

刹那のこの指示にも、もちろん理由があった。

刹那は何としても、桂言葉よりも先に西園寺世界を見つけ、誠に引き合わせたかった。
しかし世界も言葉も、この島のどこにいるのか分からない。
自分たちが進む先にいるのは、言葉である可能性もあるのだ。

もし世界よりも先に言葉を見つけてしまった場合、
刹那はその場でUターンして立ち去るつもりだった。
しかし、そのためには誠より先に言葉を見つけていなければならない。
そのために、刹那は誠よりも先を歩いている

そうしてしばらく無言で歩き、ちょっとした斜面を上り終えたところで、
刹那の視界に、探し求めていた目印になりそうな建物がひとつ写った。

「あれは……、学校?」

そう、その建物は、このプログラムの参加者達が最初に連れてこられた学校だった。
しかし、刹那は(他の参加者もだが)眠らされたまま学校に連れてこられ、
眠らされて学校の外に出されたので、校舎の外観は知らない。

もう少し近づいてその建物を確認しようと、刹那が足を踏み出したそのとき、
刹那の耳に電子音が届いた。

ピッ…ピッ…ピッ―――

(!!)

最初、刹那は何が起こっているのか分からなかったが、すぐにその電子音が首輪から発せられているのだと気付き、一気に血の気が引いていくのを感じた。

(嘘!?なんで!?)

刹那の頭に、あの教室での光景が蘇ってきた。
赤い花火、赤い霧、吹き出す赤い血……。

ピッ…ピッ…ピッ…ピッ、ピッ、ピッ、―――

そうしている間にも、電子音のペースはだんだんと早くなっていった。

「…………ッ!!」

刹那は、頭の中が真っ白になり、思わず息を飲むと、後ろが斜面であることも忘れて、
2、3歩後ずさった。

「キャッ!」

その結果、足を上手く地面に着くことができず、刹那は尻餅をついた。

「イタッ」

「おいおい、大丈夫か?」

「……伊藤?」

いつの間にか、刹那のそばには誠が立っており、あの電子音は止んできた。

「あ……、れ……?」

刹那は首に手を当ててみたが、首輪はそのまま刹那の首にある。首輪が外れた訳ではない。

それでも、ひとまずは助かったのだと理解すると、
今度はまるで、短距離走を全力で走った後のような疲労感が刹那を襲った。

「はぁ、はぁ、はぁ……」

呼吸は乱れ、手足はガクガクと震えて力が入らない。全身汗びっしょりだ。
さっきの出来事は、時間にしたらほんの10秒~20秒程度だったはずだが……。

「一体、どうしたんだ?……立てるか?」

そう言って誠は、刹那に手を差し出した。

「ん……」

少し落ち着きを取り戻した刹那は、誠の手を借りて何とか立ち上がると、
首輪に手を当てて考え込んだ。

(今のは……、一体……?)

そうしている刹那を見た誠は、怪訝な顔をして話しかけた。

「なあ、こっちに何かあるのか?……あれは、学校か?」

そうして、誠も学校の校舎を見つけると、さらにそちら側へ足を進めた。

ピッ…ピッ…ピッ―――

すると、先ほどの刹那の首輪と同じように、誠の首輪から電子音が鳴りだした。

「え、嘘だろ!?なんでだよ!?」

誠は、首輪に手を当てて、先ほどの刹那と同じように狼狽した。
どうやら、刹那の首輪が鳴っていたことには、気付いていなかったようだ。

(そういうこと……)

それを見て、状況が理解できた刹那は誠の腕を、まだ力が入らない自分の両腕で抱えると、そのまま後ろへ引っ張った。

「イテッ」
「イタッ」

今度は二人で尻餅をついた。
そこで、誠の首輪が発していた電子音は止まった。

「ふぅ、一体なんなんだ?」

電子音が止んだことに安堵しつつ、状況の飲み込めない誠は、
自分と腕を組んだような状態のままの刹那に尋ねた。

「とにかく、ここから離れましょう」

刹那はそう言うと、そのままの状態で今まで歩いてきた道(といっても獣道のような道だが)を反対に歩き出した。

ザザッ、ザザッ、ザザッ……

そして、歩きながら刹那は首輪が突然鳴りだした理由について、
考えられることを、誠に説明し始めた。

「多分あそこは、坂持の言ってた『このエリアは危ないぞー』ってエリアなんだと思う」

「でも、そんなこと言われてないぞ?」

誠の疑問も、もっともだった。
坂持は確かに、入ると首輪が爆発するエリア、進入禁止エリアの存在を告げていたが、それは放送で伝えるとも言っていた。

「確かにそう。でも少し考えたら分かること」

「?」

「私にも、伊藤にも、拳銃が支給されてた。きっと他にも拳銃を支給されてる人はいると思う」

「かもなぁ」

それは誠にも想像できる。
だがそれと、あのエリアに入ると首輪が爆発することと、どういう関係があるのか?

「あの学校には、やっぱり坂持達がいるんだと思う」

「ああ」

そういや、見守ってるとか言ってたっけ。

「でも、銃を支給された人がこのプログラムに反抗して、あの学校に乗り込んで行けば、
政府側にも怪我人くらい出るかも知れない」

確かに、考えられない話ではない。

「それを手っ取り早く防ぐには――――」

「近づくヤツの首輪を爆破すればいいってコトか」

「そういうこと」

そこまで説明されれば、さすがに誠でも理解することができた。
つまり、最初からあの場所は禁止エリアに設定されていたという訳だ。

そうして歩いているうちに、二人は最初に目覚めた場所へ戻ってきてしまった。

「ふぅ、戻って来ちまったな」

「そうね」

「で、いつまでこうしてるワケ?」

刹那と誠は、腕を組んだような状態のままだった。

「……!!」

刹那は誠の体を突き飛ばすようにして、誠から離れた。
そのとき刹那の手に、誠の制服のズボン中にある何か固いものが触れた。
いや、股間ではなくポケットの方だ。

「あ!!伊藤、携帯持ってる!?」

普段は無表情な刹那だが、このときばかりは表情を変え、誠に詰め寄った。

「あ、ああ」

刹那の剣幕に驚きながらも、誠は答えた。

誠にとって、携帯を持っているのは普通のことであり、ポケットの中の感触も、
今まで何とも思っていなかったのだ。

「ホラ」

誠はポケットの中から携帯電話を取り出すと、刹那に見せた。
確かに、誠は携帯電話を持っていたのだ

しかし、刹那が目覚めて最初に持ち物を確認した時、刹那は携帯を持っていなかった。
刹那はてっきり、携帯電話は政府に没収されたのだと思っていたが、
誠が携帯を持っていたということは、刹那がここに来るまでの間に携帯を落としていただけで、
実は没収されていた訳ではないのかも知れない。

もしそうならば、世界も携帯を持っている可能性はある。

「貸して!!」

そこまで考えると、刹那はその携帯を誠から奪い取り、液晶画面を確認した。
電波状態を示すアンテナマークが2本立っていた。これなら通話は可能だ。

それを確認した刹那は、勝手に世界の番号を呼び出すと通話ボタンを押した。

それにしても……、

(伊藤、どうして言ってくれなかったの!?……呑気すぎる)

刹那は、誠に文句のひとつやふたつ言いたい気分だった。
だが、今は世界と連絡を取る方が先だ。

しばらく待ち時間があった後、プルルルル――という呼び出し音が鳴りだした。

(出て、世界……出て!)

何度か呼び出し音が鳴った後、ぷつっと音がして、小さな雑音が刹那の耳に入ってきた。
おそらく、通話先の周囲の音だろう。つまり、繋がったということだ。

「世界!!……世界!?」

つい、声が大きくなってしまった。
刹那は、一度深呼吸すると改めて通話相手を確認した。この間、相手は無言だった。

「世界じゃないの?」

『正解、坂持でーす。世界というのは西園寺世界のことかー?』

電話に出たのは、あの教室で担任だと名乗った男の声だった。

「……!!」

通話相手は世界ではなかった。
しかし刹那は、この事態も予想していなかった訳ではない。
ならば、この際出来る限り情報を聞き出してやろうと、頭を切り換えて、刹那は通話を続けた。

「やっぱり、世界の携帯はあなたが持っているのね?」

『ああ、参加者の携帯は全部ここにあるぞー。
でも、今私が持っているのはその世界って子の携帯じゃないけどなー』

「どういうこと?」

『この島で携帯を使うとなー、全部ここに繋がるにようになってるんだー』

「……」

これでハッキリした。プログラム参加者の携帯は、やはり政府に没収されている。
誠の携帯は、たまたま見落とされていたというところだろう。
そして、たとえ携帯を持っていたとしても、繋がるのは坂持の所……。

『ところで、キミは携帯……』

ぷつっ

そこで、刹那は携帯を切った。
これ以上通話を続けていても、今度はこっちが質問攻めにされると感じたからだ。

「やれやれ、切られちゃったか」

坂持金発は受話器を置くと、職員室のデスクに散らばった参加者の資料を漁り始めた。
今の電話について、確認しなければならない事があるからだ。

去年までのプログラムでは、参加者の私物は原則持ち込み自由だった。
中学生の私物などたかが知れていたし、携帯電話は付近の中継アンテナを押さえておけばいい。

しかし近年、携帯電話の多機能、高性能化により、付近の中継アンテナを押さえるだけでは不十分では?
という論議が持ち上がったことと、ルールの説明中に持っていたナイフで、
担当者に斬りかかる生徒が出る事例があったことなどから、
今回のプログラムから試験的に、参加者の身体検査を行い、
携帯電話と武器になりそうなものは没収することとなったのだ。

もちろん、島内に携帯電話が残されている可能性を考え、付近の中継アンテナは今回も押さえている。
しかし、さっきの電話は島内に残された携帯電話からではないと、坂持は感じていた。
これは確認しておかなければならない。

「結局、自分の名前は言わなかったな。慎重な子だ」

そう呟きながら坂持は、榊野学園出身参加者の資料を集めた。
おそらく先ほどの電話は榊野学園の西園寺世界に向けられたものだ。
ならば、かけたのは榊野学園の誰かだろう。

坂持は資料を眺めながら、先ほどの電話の主を予想する。まず、女の声だった。
しかし、加東乙女は電話の直前に死亡が確認されているし、
世界にかけた電話なら、世界本人ということはないだろう。

「今の聞いてたな?」

ある程度考えがまとまったところで、坂持は、近くの機器を操作している兵士に訊いた。
兵士は無言で頷いた。無愛想なヤツだが、仕事はこなしてくれるので問題ない。

「榊野学園の、そうだな……、桂言葉の音声を出してくれ」

ここでは、参加者の首輪につけられた盗聴器の音声をモニターできる。
それで、先ほどの電話の相手を特定しようというのだ。

兵士はまた無言で頷くと、
機器を操作して言葉の盗聴器が拾っている音声をスピーカーに出した。

『さて、どこに向かいましょうか。川添さんにお任せしますよ』
『なんでですか?』
『紛いなりにも川添さんは私に勝ちました。勝者の権利です』

「おや?ハズレだったか」

盗聴器が拾っている声はふたつ。片方が“川添さん”で、もう片方が言葉だろう。
どちらも電話の声とは違っていた。

「それじゃあ……、こっちか?清浦刹那の音声を出してくれ」

兵士がまた無言で機器を操作した。

『駄目、メールもネットも使えないみたい』

『そうなのかぁ』

今度は正解だった。誰か男子生徒と一緒のようだ。

「おい、今、清浦刹那と一緒にいるのは誰だ?」

坂持は先ほどとは別の、モニターを監視している兵士に尋ねた。

「はい、お待ち下さい。……伊藤誠です」

こちらの兵士は、先ほどの兵士よりも愛想が良い。
まあ、そんなことはどうでも良いのだが。

「伊藤誠……っと、こいつか」

坂持は先ほど集めた資料をパラパラとめくり、誠に関する情報を確認した。

そうしている間にも、刹那と誠の会話は進んでいく。
その中で、坂持の耳に止まった部分があった。

『それじゃあ、この携帯は私が預かっておくから』

『えぇ』

『何?』

『いや、まぁいいけどさぁ』

どうやら、先ほどの電話は伊藤誠の携帯からだったようだ。

「なるほどなー」

伊藤誠の顔写真付きの資料を眺めながら、坂持は一人納得した。

今回のプログラムでは、かなり個性的な外見の参加者が多数いる中、
この伊藤誠は何ともさえない感じの、普通の高校生だ。

42人もいた参加者の身体検査をする中で、彼のチェックがおざなりになったのも、
ある意味仕方ないのかも知れない。

「まあ、問題ないか」

何か問題があるなら、二人を確保するなり、首輪を爆破するといった対応が必要になるが、
今のところ、誠の携帯電話を見落としたからといって、何か問題がある様子もない。
何のことはない、誠は例年のプログラム参加者と同じ条件で参加しているに過ぎないのだ。

実害無し。

坂持はそう判断した。つまり、放っておくことにした。

【D-5 林/一日目 朝】


【清浦刹那@School Days】
【装備】:ベレッタ M92(装弾数15/15)
【所持品】:支給品一式 レミントン デリンジャー (装弾数2/2) 毒入り小瓶 誠の携帯
【状態】:健康 精神的疲労
【思考・行動】
1:伊藤、世界が生きて帰れるよう必ず榊野学園が優勝する。
2:伊藤には言葉より先に世界を見つけてもらう。
3:同じ学校の伊藤には警戒していないが生き残らせるために多少強引でも言う事を聞いてもらう。
4:誠の呑気さにはあきれた。

[備考]
携帯が坂持に繋がること、メール及びネットは使えないことを確認しました。



【伊藤誠@School Days】
【装備】:
【所持品】:支給品一式 
【状態】:健康
【思考・行動】
1:生き残りたいができれば人を殺したくない
2:清浦の「何でも言う事を聞いてあげる」に期待
3:携帯……

[備考]
携帯が坂持に繋がること、メール及びネットは使えないことを見ていました。