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ブルーと熱い二人」(2008/09/23 (火) 12:32:17) の最新版変更点

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 背に蒼い空を向け、道を走り抜ける。  小屋で見つけた竹の棒を持ち、手には汗が滲む。  周りに自分を襲う人物がいる可能性を考慮しつつも、人を探す為には止まっていられない。  少年、杉村弘樹はそういう男だった。  今現在は鷹野神社を目指して猛進しているが  道のど真ん中を走っているというのに、早朝トレーニングの時みたいに静かで誰の気配も感じない。  ただ、誰の気配も感じないが代わりに視線をどこからか感じていた。  気のせいかも知れない、だが、もし誰かに視られていても、自分の行動には正義があると信じている。 (誰が、何時、どこで視ていようと関係ない。自分の信じる行動を取るだけだ。)  その想いを胸に、杉村は鷹野神社へと駆ける。  整備された道を走っているため、周りに気を使いながらでも神社近くへと来るのにさほど時間は要しなかった。  もう、目ではっきりと見えるほど神社は近い。  更に神社に近づこうとした杉村であったが、後ろから物音が聞こえた気がした。  今まで、感じていなかった気配を感じる。  恐らく、誰かが近寄ってきたのだろうと辺りを見回すと遠目に学生服姿の人物を発見した。  遠すぎて顔ははっきりと見えないが、手に拳銃を持っていることだけはわかる。  体中に緊張が走る。  拳銃を所持している、ただ、それだけで簡単に話を聞けそうにない。  防衛の為なのか、人を殺める為なのか、実際に話してみないと全くわからないところも恐ろしい。  今、この瞬間にも拳銃の銃口が自分へと向けられてもおかしくないのだ。  おかしくないが、こっちも武装をしている。竹の棒というチンケな武装だが  距離もかなりある。向こうからすると、もの凄い凶器に見えているかもしれない。  それを考えると当然、杉村自身が所持している拳銃は出せそうもない。  出すつもりもないが、もし今デイバックから拳銃を取り出したら相手は確実に自分のことをプログラムに乗っているものと  判断するだろう。とにかく今は、安全に相手と話しあいをしたい。  少し考えてから、相手に向かって手を振ってみた。  これで少しでも相手の警戒が解けたらと思っての行動だった。  向こうも色々、思考しているのか立ち止まってこちらを見ているだけだったが  こちらが、手を振って見せると向こうも手を振ってきた。  どうやら、警戒自体は少し解けたらしい。まだ拳銃を所持したままだったが、こちらも竹の棒を持っている。  お互い、防衛の為には仕方ないと思いながらも合流することにした。  一歩一歩、確実に二人の距離が縮まる。  周りの新緑も二人の出会いを歓迎するかのように風に揺られている。  お互いの顔が認識できるまで近づく 「どうも、はじめまして」  場に似合わないあいさつではあったが、こっちは中学三年  向こうは風貌からして、明らかに高校生とわかる。  年上に礼儀を尽くすのは杉村としては当然の行為であった。 「こちらこそよろしく」 「早速ですみませんが、誰かに会ったりしませんでした?」 「いや、誰にも会ってない、君と会ったのが初めてだな」 「……そうですか」  開始から二時間ほど経過している。  誰かと遭遇しているかと期待したが、見事に裏切られ若干の失望を隠せない。 「それよりも、君の名前、聞いてもいいかな?」 「あっ! すみません 杉村弘樹と言います」  慌てながらも自己紹介をする。  あまりにも日常的な会話に、お互いの手にある武器のことも忘れてしまう。 「こっちは高崎秀一、軟葉高校の三年生だけど君は何年?」 「城岩中学の三年です」  言うと高崎が杉村に目線を置き、話す。 「ありがとう、襲ってこないということは君は殺し合いをする気がないとみていいのかな?」 「もちろんです」 「そうかよかった、でも君は中学生には見えないな」 「自分のクラスのやつは、みんな中学生に見えないやつばかりですよ」 「はは、それは怖いな」  そう言い、笑う高崎は杉村自身にとって正に理想の高校生そのものに見えた。  清楚な立ち振る舞い。ただ、立っているだけで高崎の人格がみえるようだった。  杉村が今まで尊敬してきた人物とは一味違う色を感じる。  まだ出会って短時間しか経過していないが、高崎への信頼が重くなっていく。  和みながらも、お互いの知っている情報、支給品、場所、向かう予定だった神社を確認する。 「それにしても、このプログラムは厄介だな」 「ええ、しかもチーム戦っていうのが、その、なんとも……」  杉村の口に出せない思いがわかったのか、高崎が話を重ねる。 「言いたいことはわかるよ、俺も悩んでいる」 「えっ? 悩んでいるっていうのは?」 「今回はチーム戦だろ、俺には恩を返さないといけないヤツがいる  他にも必ず守りたい人もいる、だから同じ学校の奴らは死んでも守りきりたい」 「それは自分も同じ気持ちです」 「いや、違うんだ」  完全に断ち切る高崎に杉村も動揺を隠せない。 「正直な話、君を見つけた時に俺は迷っていたんだ」 「迷っていた?」  迷いという言葉を脳が認識しない。  いや、認識したくない。 「ああ、君を殺すかどうかね」  その言葉を聞くと同時に、手にしていた棒に力が入る。 「警戒しなくてもいい、今は君を殺す気なんか一切ない  でも迷っていたのは事実だ、俺には俺の信念がある  こんな糞みたいな政策に乗るなんて俺の信念そのものを曲げることになる  悔しいが、それでも……曲げてでも奴らを助けたいんだ」 「……そんな」 「だから迷いに迷って今、君と話をしている」  高崎の残酷な真実を聞かされ、再びこのプログラムに殺意が沸いてくる。  確かに杉村も、仲間の為ならと頭をよぎったこともある。  普段なら仲間の為という言葉は素晴らしいものだろう、だがこのプログラムでは残酷な言葉へと変貌する。  仲間の為の続きは『仲間の為なら人を殺す』なのだ。  人の心を弄ぶルールに怒りしか沸いてこない。 「でも優勝だけが仲間を救う方法じゃないでしょう!」 「わかってる、わかっているから今、君と冷静に話しができているんだ」 「……そうですか」 「俺だって全員が助かる方法を探したい、でも確実に奴らを救える手段があると言われると俺は……」  顔を見れば、どれだけ苦悩しているのかわかる。  それでも杉村は止めなければならない。 「……分かりました。 迷って下さい、考えて下さい  高崎さんが答えを出すまで自分はあなたの傍にいます」  杉村の持つものは竹の棒だけではない。  七原と共に持つ正義の心がある。その心が体中から、そして声として吐き出されていく。 「自分は必ず、この島の生徒を救ってみせます  そして、あなたにも同じ誓いを立ててもらえるよう努力します  高崎さんを狂気へと走らせません! だから自分の……俺の傍にいて下さい」  島の生徒全員を救う手段など、一つもない。  ただ自分の想いだけを全力でぶつける。 「……わかったよ、しばらく杉村君と行動を共にするよ  俺が君の信念を崩すようだったら、いつでも俺を殺してくれ  俺は、俺が選んだ道を後悔しないように進む、多分、君と戦うことになったら俺も俺の信念で戦っているだろう  そうならないように、お互い頑張ろう」 「はい!」 「……でもこれだけは言っておく」  少し呼吸を置き、再び口を開く。 「島からの脱出、救出が出来ないと判断したら俺は仲間の為に全てを懸ける」  それは、高崎が譲れない最後のライン  杉村もそれだけは理解していた。いつか戦う、争う、殺しあうかも知れない  それでも傍にいて考えを改めてもらえたら、一緒に島から脱出できたらと思い、返事をする。 「……わかりました、高崎さんが決断するまで傍にいます  その決断によっては全力で止めさせてもらいます」 「それでいい」  杉村も高崎の気持ちは分かる。それでも場合によっては全力で静止しなければならない。  高崎からも、どこか矛盾した想いが伝わってくる。  ――――二人の間の空気は真っ赤に燃えているようで、真っ白に凍っているようで  分かるのは本人達のみ。 「さあ、行こうか、神社に向かうんだろ」 「はい」  あくまで冷静な高崎についていく杉村  彼の戦いは幾重にも張り巡らされていく。 『オーホッホッホッホッホ!!!この島にいる皆さん、わたくしは桜蘭高校一年 宝積寺れんげですわ!』 「なッ!!」  突然の声に二人は仰天する。 『ホスト部の皆さん、また他校の皆さん! わたくしはこの島から脱出したいのですわ  ここにおられる不良系のコスプレをなさってる方と、わたくしと共に脱出したい御方を此処でお待ち致しております。オーホッホッホッホッホッホ!!』  それだけ聞こえると声はしなくなった。 「高崎さん、これは」 「拡声器みたいなものかも知れないな、聞こえた方角は北  山の頂上付近が怪しい」 「じゃあ、すぐに行きましょう」 「ああ、俺達と目的が似ている。それに二人いるみたいだし  何か情報が聞けるかも知れない、急いで向かおう」 「はい!」  それぞれの思いを胸に秘め、二人は声のした方向へと駆ける。 【G-5 山道/一日目 午前】 【杉村弘樹@バトル・ロワイアル】 【状態】:健康 【装備】:棒(竹) 【所持品】:支給品一式、AK47(30/30)、 AK47の予備マガジン×2、ランダム支給品0~2  【思考・行動】 1:声のした方向へ向かう 2:七原達と合流したい 3:高崎がプログラムに乗るようであれば全力で止める 4:銃はできるかぎり使わない 【高崎秀一@今日から俺は!!】 【状態】:健康 【装備】:トカレフTT-33 マガジン(8/8) 【所持品】:支給品一式 花火セット 冷却スプレー 【思考・行動】 基本:どんな形であれ仲間を守る 1:声のした方向へと向かう 2:杉村と共にプログラムからの脱出を考える、無理と判断した場合には   仲間の命を最優先 3:三橋と伊藤に恩を返したい 4:できれば花火は三橋に渡したい  そして、その様子を見ていた人物が一人、鷹野神社付近の高台に座りこんでいた。  66式鉄帽を被りながらも、長い髪をなびかせ望遠鏡を覗く少女、桑原鞘子  杉村を見つけてから常に望遠鏡を離さずに覗いていた彼女だったが  杉村とまた違う男が合流したときには冷や汗をかいた。  もし殺し合いが始まったらと思うと目を背けたい気分だったが、自分の命が掛かっている為  目を背けることはできなかった。結果としては上手く合流したみたいなので安心したが  鞘子自身、次の行動をどうするか考えていなかった。  更にそこへ、先ほどの大音量の声  声のした方向を覗くが木々が邪魔になり、レンズに映らない。  高台から下を覗く分には問題がなかったが、更に上を覗くには問題のある地形だった。  どうやら、二人はその声の方向へと向かうらしく、走っていく姿が映る。 (ああ、どうしよ! 今、あの二人に声をかけないと二度と追いつけないかもしれないし……  こんな時に、キリノがいてくれたら……)  同じ学校、室江高校の親友、千葉紀梨乃……彼女がいてくれたらいつも、此処で一押ししてくれる。 (当たって砕けろだー、やるっきゃないよ!サヤ)  具体的なことはほとんど言わない、抽象的な一言  それでも、いつも傍に居てくれる親友の声は鞘子にとって大きな支えとなっていた。  だが、その親友も今はいない。 (……キリノ、私どうしたら)  66式鉄帽を両手で押さえ、うずくまる。  どれだけブルーになろうが、その間にも時が止まることはない。  杉村と高崎の二人との距離がひらいていく。  うずくまること、およそ10分、ようやく彼女が答えを出す。 (決めたよ、キリノ!)  その目には迷いはない (私は室江高校のみんな、そしてキリノ、あんたを探すよ!  あの二人と声のした女の子には悪いけど、私はみんなと会いたい!)  鞘子の出した結論、それは仲間を探すこと  同じ室江高校の面々と出会い、何をするかまで彼女の思考は繋がっていない。  しかし、それほどまでに彼女は仲間との出会いを求めていた。  普段の日常生活においても、彼女は独特な性格で  何か細かいことが起こるたびに部活、授業を欠席していた。  そんな彼女をいつも笑いながら迎え入れてくれる、室江高校剣道部  顧問も、部長も、エースも、後輩も  全員が彼女にとって居なくてはならない存在  その存在を過度に求めることは当然のことであった。  その思いをもとに、再び双眼鏡を構える。  例の声がどこまで聞こえたかは分からないが  もし聞こえて、声のもとまで駆けつけるとすると  今の、この高台の位置がいい  南から山へ入ろうとしたら、ほぼ分かる  更に言うと、デイパックが重過ぎる。  この位置で待機して、仲間を見つけたら荷物を置いて駆けつける  その、鞘子なりの行動方針を掲げ、仲間を探す。  ブルーの出した結論が、どうなるかはまだわからない 【G-6 神社付近/一日目 午前】 【桑原鞘子@BAMBOO BLADE】 【状態】:健康 【装備】:双眼鏡、66式鉄帽 【所持品】:支給品一式、レミントンM700(5/5) 予備弾丸20 【思考・行動】 1:仲間を見つけるまで、この場で待機 2:なにか棒状のものが欲しい。できれば竹刀 [備考]  とりあえず、杉村と高崎は安全と認識
 背に蒼い空を向け、道を走り抜ける。  小屋で見つけた竹の棒を持ち、手には汗が滲む。  周りに自分を襲う人物がいる可能性を考慮しつつも、人を探す為には止まっていられない。  少年、杉村弘樹はそういう男だった。  今現在は鷹野神社を目指して猛進しているが  道のど真ん中を走っているというのに、早朝トレーニングの時みたいに静かで誰の気配も感じない。  ただ、誰の気配も感じないが代わりに視線をどこからか感じていた。  気のせいかも知れない、だが、もし誰かに視られていても、自分の行動には正義があると信じている。 (誰が、何時、どこで視ていようと関係ない。自分の信じる行動を取るだけだ。)  その想いを胸に、杉村は鷹野神社へと駆ける。  整備された道を走っているため、周りに気を使いながらでも神社近くへと来るのにさほど時間は要しなかった。  もう、目ではっきりと見えるほど神社は近い。  更に神社に近づこうとした杉村であったが、後ろから物音が聞こえた気がした。  今まで、感じていなかった気配を感じる。  恐らく、誰かが近寄ってきたのだろうと辺りを見回すと遠目に学生服姿の人物を発見した。  遠すぎて顔ははっきりと見えないが、手に拳銃を持っていることだけはわかる。  体中に緊張が走る。  拳銃を所持している、ただ、それだけで簡単に話を聞けそうにない。  防衛の為なのか、人を殺める為なのか、実際に話してみないと全くわからないところも恐ろしい。  今、この瞬間にも拳銃の銃口が自分へと向けられてもおかしくないのだ。  おかしくないが、こっちも武装をしている。竹の棒というチンケな武装だが  距離もかなりある。向こうからすると、もの凄い凶器に見えているかもしれない。  それを考えると当然、杉村自身が所持している拳銃は出せそうもない。  出すつもりもないが、もし今デイバックから拳銃を取り出したら相手は確実に自分のことをプログラムに乗っているものと  判断するだろう。とにかく今は、安全に相手と話しあいをしたい。  少し考えてから、相手に向かって手を振ってみた。  これで少しでも相手の警戒が解けたらと思っての行動だった。  向こうも色々、思考しているのか立ち止まってこちらを見ているだけだったが  こちらが、手を振って見せると向こうも手を振ってきた。  どうやら、警戒自体は少し解けたらしい。まだ拳銃を所持したままだったが、こちらも竹の棒を持っている。  お互い、防衛の為には仕方ないと思いながらも合流することにした。  一歩一歩、確実に二人の距離が縮まる。  周りの新緑も二人の出会いを歓迎するかのように風に揺られている。  お互いの顔が認識できるまで近づく 「どうも、はじめまして」  場に似合わないあいさつではあったが、こっちは中学三年  向こうは風貌からして、明らかに高校生とわかる。  年上に礼儀を尽くすのは杉村としては当然の行為であった。 「こちらこそよろしく」 「早速ですみませんが、誰かに会ったりしませんでした?」 「いや、誰にも会ってない、君と会ったのが初めてだな」 「……そうですか」  開始から二時間ほど経過している。  誰かと遭遇しているかと期待したが、見事に裏切られ若干の失望を隠せない。 「それよりも、君の名前、聞いてもいいかな?」 「あっ! すみません 杉村弘樹と言います」  慌てながらも自己紹介をする。  あまりにも日常的な会話に、お互いの手にある武器のことも忘れてしまう。 「こっちは高崎秀一、軟葉高校の三年生だけど君は何年?」 「城岩中学の三年です」  言うと高崎が杉村に目線を置き、話す。 「ありがとう、襲ってこないということは君は殺し合いをする気がないとみていいのかな?」 「もちろんです」 「そうかよかった、でも君は中学生には見えないな」 「自分のクラスのやつは、みんな中学生に見えないやつばかりですよ」 「はは、それは怖いな」  そう言い、笑う高崎は杉村自身にとって正に理想の高校生そのものに見えた。  清楚な立ち振る舞い。ただ、立っているだけで高崎の人格がみえるようだった。  杉村が今まで尊敬してきた人物とは一味違う色を感じる。  まだ出会って短時間しか経過していないが、高崎への信頼が重くなっていく。  和みながらも、お互いの知っている情報、支給品、場所、向かう予定だった神社を確認する。 「それにしても、このプログラムは厄介だな」 「ええ、しかもチーム戦っていうのが、その、なんとも……」  杉村の口に出せない思いがわかったのか、高崎が話を重ねる。 「言いたいことはわかるよ、俺も悩んでいる」 「えっ? 悩んでいるっていうのは?」 「今回はチーム戦だろ、俺には恩を返さないといけないヤツがいる  他にも必ず守りたい人もいる、だから同じ学校の奴らは死んでも守りきりたい」 「それは自分も同じ気持ちです」 「いや、違うんだ」  完全に断ち切る高崎に杉村も動揺を隠せない。 「正直な話、君を見つけた時に俺は迷っていたんだ」 「迷っていた?」  迷いという言葉を脳が認識しない。  いや、認識したくない。 「ああ、君を殺すかどうかね」  その言葉を聞くと同時に、手にしていた棒に力が入る。 「警戒しなくてもいい、今は君を殺す気なんか一切ない  でも迷っていたのは事実だ、俺には俺の信念がある  こんな糞みたいな政策に乗るなんて俺の信念そのものを曲げることになる  悔しいが、それでも……曲げてでも奴らを助けたいんだ」 「……そんな」 「だから迷いに迷って今、君と話をしている」  高崎の残酷な真実を聞かされ、再びこのプログラムに殺意が沸いてくる。  確かに杉村も、仲間の為ならと頭をよぎったこともある。  普段なら仲間の為という言葉は素晴らしいものだろう、だがこのプログラムでは残酷な言葉へと変貌する。  仲間の為の続きは『仲間の為なら人を殺す』なのだ。  人の心を弄ぶルールに怒りしか沸いてこない。 「でも優勝だけが仲間を救う方法じゃないでしょう!」 「わかってる、わかっているから今、君と冷静に話しができているんだ」 「……そうですか」 「俺だって全員が助かる方法を探したい、でも確実に奴らを救える手段があると言われると俺は……」  顔を見れば、どれだけ苦悩しているのかわかる。  それでも杉村は止めなければならない。 「……分かりました。 迷って下さい、考えて下さい  高崎さんが答えを出すまで自分はあなたの傍にいます」  杉村の持つものは竹の棒だけではない。  七原と共に持つ正義の心がある。その心が体中から、そして声として吐き出されていく。 「自分は必ず、この島の生徒を救ってみせます  そして、あなたにも同じ誓いを立ててもらえるよう努力します  高崎さんを狂気へと走らせません! だから自分の……俺の傍にいて下さい」  島の生徒全員を救う手段など、一つもない。  ただ自分の想いだけを全力でぶつける。 「……わかったよ、しばらく杉村君と行動を共にするよ  俺が君の信念を崩すようだったら、いつでも俺を殺してくれ  俺は、俺が選んだ道を後悔しないように進む、多分、君と戦うことになったら俺も俺の信念で戦っているだろう  そうならないように、お互い頑張ろう」 「はい!」 「……でもこれだけは言っておく」  少し呼吸を置き、再び口を開く。 「島からの脱出、救出が出来ないと判断したら俺は仲間の為に全てを懸ける」  それは、高崎が譲れない最後のライン  杉村もそれだけは理解していた。いつか戦う、争う、殺しあうかも知れない  それでも傍にいて考えを改めてもらえたら、一緒に島から脱出できたらと思い、返事をする。 「……わかりました、高崎さんが決断するまで傍にいます  その決断によっては全力で止めさせてもらいます」 「それでいい」  杉村も高崎の気持ちは分かる。それでも場合によっては全力で静止しなければならない。  高崎からも、どこか矛盾した想いが伝わってくる。  ――――二人の間の空気は真っ赤に燃えているようで、真っ白に凍っているようで  分かるのは本人達のみ。 「さあ、行こうか、神社に向かうんだろ」 「はい」  あくまで冷静な高崎についていく杉村  彼の戦いは幾重にも張り巡らされていく。 『オーホッホッホッホッホ!!!この島にいる皆さん、わたくしは桜蘭高校一年 宝積寺れんげですわ!』 「なッ!!」  突然の声に二人は仰天する。 『ホスト部の皆さん、また他校の皆さん! わたくしはこの島から脱出したいのですわ  ここにおられる不良系のコスプレをなさってる方と、わたくしと共に脱出したい御方を此処でお待ち致しております。オーホッホッホッホッホッホ!!』  それだけ聞こえると声はしなくなった。 「高崎さん、これは」 「拡声器みたいなものかも知れないな、聞こえた方角は北  山の頂上付近が怪しい」 「じゃあ、すぐに行きましょう」 「ああ、俺達と目的が似ている。それに二人いるみたいだし  何か情報が聞けるかも知れない、急いで向かおう」 「はい!」  それぞれの思いを胸に秘め、二人は声のした方向へと駆ける。 【G-5 山道/一日目 午前】 【杉村弘樹@バトル・ロワイアル】 【状態】:健康 【装備】:棒(竹) 【所持品】:支給品一式、AK47(30/30)、 AK47の予備マガジン×2、ランダム支給品0~2  【思考・行動】 1:声のした方向へ向かう 2:七原達と合流したい 3:高崎がプログラムに乗るようであれば全力で止める 4:銃はできるかぎり使わない 【高崎秀一@今日から俺は!!】 【状態】:健康 【装備】:トカレフTT-33 マガジン(8/8) 【所持品】:支給品一式 花火セット 冷却スプレー 【思考・行動】 基本:どんな形であれ仲間を守る 1:声のした方向へと向かう 2:杉村と共にプログラムからの脱出を考える、無理と判断した場合には   仲間の命を最優先 3:三橋と伊藤に恩を返したい 4:できれば花火は三橋に渡したい  そして、その様子を見ていた人物が一人、鷹野神社付近の高台に座りこんでいた。  66式鉄帽を被りながらも、長い髪をなびかせ望遠鏡を覗く少女、桑原鞘子  杉村を見つけてから常に望遠鏡を離さずに覗いていた彼女だったが  杉村とまた違う男が合流したときには冷や汗をかいた。  もし殺し合いが始まったらと思うと目を背けたい気分だったが、自分の命が掛かっている為  目を背けることはできなかった。結果としては上手く合流したみたいなので安心したが  鞘子自身、次の行動をどうするか考えていなかった。  更にそこへ、先ほどの大音量の声  声のした方向を覗くが木々が邪魔になり、レンズに映らない。  高台から下を覗く分には問題がなかったが、更に上を覗くには問題のある地形だった。  どうやら、二人はその声の方向へと向かうらしく、走っていく姿が映る。 (ああ、どうしよ! 今、あの二人に声をかけないと二度と追いつけないかもしれないし……  こんな時に、キリノがいてくれたら……)  同じ学校、室江高校の親友、千葉紀梨乃……彼女がいてくれたらいつも、此処で一押ししてくれる。 (当たって砕けろだー、やるっきゃないよ!サヤ)  具体的なことはほとんど言わない、抽象的な一言  それでも、いつも傍に居てくれる親友の声は鞘子にとって大きな支えとなっていた。  だが、その親友も今はいない。 (……キリノ、私どうしたら)  66式鉄帽を両手で押さえ、うずくまる。  どれだけブルーになろうが、その間にも時が止まることはない。  杉村と高崎の二人との距離がひらいていく。  うずくまること、およそ10分、ようやく彼女が答えを出す。 (決めたよ、キリノ!)  その目には迷いはない (私は室江高校のみんな、そしてキリノ、あんたを探すよ!  あの二人と声のした女の子には悪いけど、私はみんなと会いたい!)  鞘子の出した結論、それは仲間を探すこと  同じ室江高校の面々と出会い、何をするかまで彼女の思考は繋がっていない。  しかし、それほどまでに彼女は仲間との出会いを求めていた。  普段の日常生活においても、彼女は独特な性格で  何か細かいことが起こるたびに部活、授業を欠席していた。  そんな彼女をいつも笑いながら迎え入れてくれる、室江高校剣道部  顧問も、部長も、エースも、後輩も  全員が彼女にとって居なくてはならない存在  その存在を過度に求めることは当然のことであった。  その思いをもとに、再び双眼鏡を構える。  例の声がどこまで聞こえたかは分からないが  もし聞こえて、声のもとまで駆けつけるとすると  今の、この高台の位置がいい  南から山へ入ろうとしたら、ほぼ分かる  更に言うと、デイパックが重過ぎる。  この位置で待機して、仲間を見つけたら荷物を置いて駆けつける  その、鞘子なりの行動方針を掲げ、仲間を探す。  ブルーの出した結論が、どうなるかはまだわからない 【G-6 神社付近/一日目 午前】 【桑原鞘子@BAMBOO BLADE】 【状態】:健康 【装備】:双眼鏡、66式鉄帽 【所持品】:支給品一式、レミントンM700(5/5) 予備弾丸20 【思考・行動】 1:仲間を見つけるまで、この場で待機 2:なにか棒状のものが欲しい。できれば竹刀 [備考]  とりあえず、杉村と高崎は安全と認識 *投下順で読む Next:[[止まらない足]]

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