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決意の朝」(2008/05/09 (金) 03:26:29) の最新版変更点

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 目が覚めると、そこには様々なものがあった。  きっと、この部屋の主と自分は気が合うだろうと  少年、七原秋也は思った。  部屋の隅にはマンガ本がゆうに100冊以上はある。  また、壁にはギターが掛けられており、その横には数枚のCDが重ねてあった。  一番上には秋也自身の十八番でもある  LAST ALLIANCEが歌う『疾走』のCDが置かれてあり、ますますこの部屋の主と気が合うと思った。  通常時であれば、主が帰って来ると同時に 「やあ、ブラザー!」  とでも言いたいぐらいだったが  残念ながら、今は部屋の主が帰ってくることもない。  そして、そんな余裕もない―― 「くそ!!慶時・・・・・」  少しの間でも現実逃避した自分に怒りを感じ  秋也は壁を殴りつけた。  軽くウェーブの掛かる髪が揺れる。 「あの糞野郎!絶対ぶっ殺してやる!」  秋也の瞳が憎悪と失意に染まる。  秋也が激怒するのは当然であった。  慶時とは施設で幼い頃からの腐れ縁だったのだ。  坂持に怒りが向かうと同時に国にも怒りを感じる。  そもそも、この国自体が腐っている。  総統と呼ばれる最高権力者を頂点とした特殊な国家社会主義を敷いている大東亜共和国  いつか三村信史が顔を歪めて呟いていた。 (こいつはな、成功したファシズムってやつなのさ。こんなタチの悪いものが世界中のどこにある?)  その大東亜共和国の中でも特に際立って、目に付く政策が【プログラム】だった。  およそ大東亜共和国の中学生で【プログラム】を知らないものはいないだろう。  それは教科書においても小学四年生向けから登場する。  大東亜共和国政府監修の百科事典から引用しても―― プログラム(ぷろぐらむ) 名詞。 一、出し物の名前と順序などを書いたもの(中略) 二、わが国専守防衛陸軍が防衛上の必要から行っている戦闘シミュレーション。   正式名称は戦闘実験第六十八番プログラム。   毎年、全国の中学校、高等学校から任意に選んで実施、各種の統計を重ねている。   実験そのものは単純で、各学級内で生徒を互いに戦わせ、最後の一人になるまで続けて   その所要時間などを調べる。   最終生存者(優勝者)には生涯の生活保障と総統陛下直筆の色紙が与えられる。  とあり、秋也もニュースで何度も観ていた。  幼い頃には意味を理解していなかったが  年を取るに連れて恐怖が増していった。  最後にニュースを観たのは一年前  いつものごとく、アナウンサーが開催場所、対象学校と対象クラス  推定死亡要因、所要時間を読み上げていく。  画面には【優勝者】らしい、ボロボロの学生服を着た少年が映し出され  顔中に赤黒いものが付いており、目以外ははっきり見えないほどだった。  その目には憎悪が大量に籠っているのが用意に想像できた。  最後にカメラに向かって中指を突きたて、専守防衛軍に殴られていたのが印象的だ。  たった一つの、生き残りの椅子をかけて殺しあう  そう、史上最悪の、椅子取りゲーム。  しかし、それに抗う方法があるはずもなかった。  およそ、この大東亜共和国で政府のやることに逆らえるわけがない。  そこで秋也は開き直ることにしていた。  それは、恐らくこの国の多くの中学生、高校生達が取っている方法だろう。  大東亜共和国中、中学、高校がいくつあると思う?  少子化が進んでいるとはいえ、大方確率八百分の一以下。  はっきりいって交通事故で死ぬのと大して変わらない確率だ。  およそ、自分に廻ってくるとは思わない。  そう思い、日々を過ごしていた。  それでもたまにクラスの誰か、特に女の子なんかが 「いとこがプログラムで――」  とか何とか泣きながら話しているを聞いたりするたび  秋也の胸にも、その黒い恐怖が再来した。  同時に、怒りも覚えた。  しかし、――しばらくふさぎこんでいた、その女の子も  何日かすると、また笑顔を見せるようになる。  同時に、秋也の中の恐怖も、そして怒りも  除々に薄まり去っていった。  政府に対する、ごく曖昧とした不信感と無気力感だけを残して。  そして秋也は自分達だけは大丈夫と信じていた。  いや、信じられずにはいられなかった。  そう、あの忌まわしき教室に着くまでは――    まさか本当に、史上最悪の椅子取りゲーム――プログラムに参加するとは思ってもみなかった。  そして――親友が目の前で殺されるなんて夢にも思っていなかった。  共に暮らしてきた親友、慶時。  喧嘩したときもあった、一緒に布団を濡らしたときもあった  恋愛について語り合ったときもあった。  でも、もうその親友はいない。  ――再び怒りが沸いてくる。 (今回から学校対抗で殺しあうことになった?チーム戦?  そんなの関係ねぇ!) 「このプログラムをぶっ壊す!殺し合いなんか誰にもさせない。全員でこの腐ったゲームから抜け出してやる」  此処にあるのは己の正義  幼い頃から燻っていた感情だった。  決意を固めて、秋也は支給品を確認した。  デイバックにあった支給品と思われるものは  二つあったが、両方、役に立つものにはみえなく  壁に投げつけて部屋を出る。  部屋を出ると長い廊下があり  この家の住人がそれなりに裕福な生活を送ってきたことが  想像できる。  玄関に着き、ドアノブをゆっくり、そして丁寧に回す。  脱出手段も分からない、このゲームを止める案も思いつかない。  ――それでも七原秋也は進む。  民家から出発した少年の目は失意の瞳ではなく決意の瞳へと変貌していた。  親友を殺された秋也の  一人の女性を守る戦いではなく  大東亜共和国という一つの国との戦いが今、始まる―― 【G-2/民家周辺/1日目-早朝】 【七原秋也@バトル・ロワイアル】  [状態]: 健康  [装備]:  [道具]:デイバッグ、支給品一式   [思考]   基本:誰も殺さずにプログラムから脱出する   1:殺し合いを止める   2:脱出手段を探す   3:仲間を集める [その他] 七原が置いていった二つの支給品は、七原が見る限りでは役に立たないものです。 *投下順で読む Next:[[おおきく振りかぶって]]
 目が覚めると、そこには様々なものがあった。  きっと、この部屋の主と自分は気が合うだろうと  少年、七原秋也は思った。  部屋の隅にはマンガ本がゆうに100冊以上はある。  また、壁にはギターが掛けられており、その横には数枚のCDが重ねてあった。  一番上には秋也自身の十八番でもある  LAST ALLIANCEが歌う『疾走』のCDが置かれてあり、ますますこの部屋の主と気が合うと思った。  通常時であれば、主が帰って来ると同時に 「やあ、ブラザー!」  とでも言いたいぐらいだったが  残念ながら、今は部屋の主が帰ってくることもない。  そして、そんな余裕もない―― 「くそ!!慶時・・・・・」  少しの間でも現実逃避した自分に怒りを感じ  秋也は壁を殴りつけた。  軽くウェーブの掛かる髪が揺れる。 「あの糞野郎!絶対ぶっ殺してやる!」  秋也の瞳が憎悪と失意に染まる。  秋也が激怒するのは当然であった。  慶時とは施設で幼い頃からの腐れ縁だったのだ。  坂持に怒りが向かうと同時に国にも怒りを感じる。  そもそも、この国自体が腐っている。  総統と呼ばれる最高権力者を頂点とした特殊な国家社会主義を敷いている大東亜共和国  いつか三村信史が顔を歪めて呟いていた。 (こいつはな、成功したファシズムってやつなのさ。こんなタチの悪いものが世界中のどこにある?)  その大東亜共和国の中でも特に際立って、目に付く政策が【プログラム】だった。  およそ大東亜共和国の中学生で【プログラム】を知らないものはいないだろう。  それは教科書においても小学四年生向けから登場する。  大東亜共和国政府監修の百科事典から引用しても―― プログラム(ぷろぐらむ) 名詞。 一、出し物の名前と順序などを書いたもの(中略) 二、わが国専守防衛陸軍が防衛上の必要から行っている戦闘シミュレーション。   正式名称は戦闘実験第六十八番プログラム。   毎年、全国の中学校から任意に選んで実施、各種の統計を重ねている。   実験そのものは単純で、各学級内で生徒を互いに戦わせ、最後の一人になるまで続けて   その所要時間などを調べる。   最終生存者(優勝者)には生涯の生活保障と総統陛下直筆の色紙が与えられる。  とあり、秋也もニュースで何度も観ていた。  幼い頃には意味を理解していなかったが  年を取るに連れて恐怖が増していった。  最後にニュースを観たのは一年前  いつものごとく、アナウンサーが開催場所、対象学校と対象クラス  推定死亡要因、所要時間を読み上げていく。  画面には【優勝者】らしい、ボロボロの学生服を着た少年が映し出され  顔中に赤黒いものが付いており、目以外ははっきり見えないほどだった。  その目には憎悪が大量に籠っているのが用意に想像できた。  最後にカメラに向かって中指を突きたて、専守防衛軍に殴られていたのが印象的だ。  たった一つの、生き残りの椅子をかけて殺しあう  そう、史上最悪の、椅子取りゲーム。  しかし、それに抗う方法があるはずもなかった。  およそ、この大東亜共和国で政府のやることに逆らえるわけがない。  そこで秋也は開き直ることにしていた。  それは、恐らくこの国の多くの中学生達が取っている方法だろう。  大東亜共和国中、中学がいくつあると思う?  少子化が進んでいるとはいえ、大方確率八百分の一以下。  はっきりいって交通事故で死ぬのと大して変わらない確率だ。  およそ、自分に廻ってくるとは思わない。  そう思い、日々を過ごしていた。  それでもたまにクラスの誰か、特に女の子なんかが 「いとこがプログラムで――」  とか何とか泣きながら話しているを聞いたりするたび  秋也の胸にも、その黒い恐怖が再来した。  同時に、怒りも覚えた。  しかし、――しばらくふさぎこんでいた、その女の子も  何日かすると、また笑顔を見せるようになる。  同時に、秋也の中の恐怖も、そして怒りも  除々に薄まり去っていった。  政府に対する、ごく曖昧とした不信感と無気力感だけを残して。  そして秋也は自分達だけは大丈夫と信じていた。  いや、信じられずにはいられなかった。  そう、あの忌まわしき教室に着くまでは――    まさか本当に、史上最悪の椅子取りゲーム――プログラムに参加するとは思ってもみなかった。  そして――親友が目の前で殺されるなんて夢にも思っていなかった。  共に暮らしてきた親友、慶時。  喧嘩したときもあった、一緒に布団を濡らしたときもあった  恋愛について語り合ったときもあった。  でも、もうその親友はいない。  ――再び怒りが沸いてくる。 (今回から学校対抗で殺しあうことになった?チーム戦?  そんなの関係ねぇ!) 「このプログラムをぶっ壊す!殺し合いなんか誰にもさせない。全員でこの腐ったゲームから抜け出してやる」  此処にあるのは己の正義  幼い頃から燻っていた感情だった。  決意を固めて、秋也は支給品を確認した。  デイバックにあった支給品と思われるものは  二つあったが、両方、役に立つものにはみえなく  壁に投げつけて部屋を出る。  部屋を出ると長い廊下があり  この家の住人がそれなりに裕福な生活を送ってきたことが  想像できる。  玄関に着き、ドアノブをゆっくり、そして丁寧に回す。  脱出手段も分からない、このゲームを止める案も思いつかない。  ――それでも七原秋也は進む。  民家から出発した少年の目は失意の瞳ではなく決意の瞳へと変貌していた。  親友を殺された秋也の  一人の女性を守る戦いではなく  大東亜共和国という一つの国との戦いが今、始まる―― 【G-2/民家周辺/1日目-早朝】 【七原秋也@バトル・ロワイアル】  [状態]: 健康  [装備]:  [道具]:デイバッグ、支給品一式   [思考]   基本:誰も殺さずにプログラムから脱出する   1:殺し合いを止める   2:脱出手段を探す   3:仲間を集める [その他] 七原が置いていった二つの支給品は、七原が見る限りでは役に立たないものです。 *投下順で読む Next:[[おおきく振りかぶって]]

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