84pの小説
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84pの小説
ja
2011-04-23T18:28:27+09:00
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遊義皇24話
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&html(<font size="10"color="#8b4513">第24話</font><font size="10"color="#008000">悪</font><font size="10"color="#0000ff">霊</font><font size="10"color="#dc143c">術</font><font size="10"color="#8b4513">師</font>)
満月が見守る中、エビエスの部下に紛れて神成は静かに歩道橋を降りていった。
自分が対抗できなかったデュエリストの相手が戦うのは、たった5歳の少年。
結果は火を見るよりも明らかだというのに、それでも不思議と何かがあると神成は感じていた…だが。
――なんだ、このゴミのようなデッキは――
それがエビエスの最初の、そして最大の感想だった。
エースと呼べるモンスターは存在せず、中心に据えられているカードが〔精霊術師 ドリアード〕では力不足なのは歴然。
その上で選抜されたと思われるコモンの弱小モンスターたち。
魔法や罠カードも〔風林火山〕や〔リチュアル・ウェポン〕といった〔精霊術師〕の存在を前提として安定性はなく、それでいて爆発力も不充分。
勝てる気なのか、勝つ気なのか、自己満足のためのファンデュエルなら他でやっていろ、と。
「…どうかしましたか?」
「いいえ、それではデッキを組みますので少々お時間を」
相手のデッキレシピを先んじて知るというエビエスの戦術は、『相手のデッキが強力である』という前提の基に成り立つ。
だが、福助のデッキは、適当に選んだブースターパック8個で組んだデッキでも勝てそうな。弱小デッキだ。
どんなデッキでも勝てそう、故にどのデッキも最良ではない。
――多少のアンチカード用意しつつ、バランスを取るか――
「それでは、行きます!」
『デュエルッ!』
「それでは、私のターン、ドロー(手札6)。
…モンスターをセット、魔・罠置き場にもセット、ターン終了です(手札4・伏せ1)」
「それでは、行きますよエビエスさん(手札6)。
僕の召喚するモンスターはコレです、〔マンジュ・ゴッド〕っ。
効果によって、僕はデッキから儀式カード、〔高等儀式術〕を手札に」
&html(<Table Border BorderColor="#cc7a28" Border="2"><Tr><Td>マンジュ・ゴッド</Td><Td>光属性</Td><Td>天使族</Td><Td>レベル4</Td><Td>ATK1400</Td><Td>DEF1000</Td></Tr><Td ColSpan="6">このカードが召喚・反転召喚された時、自分のデッキから儀式モンスターカード、<br>または儀式魔法カード1枚を選択して手札に加える事ができる。 </Td></Table>)
&html(<Table Border BorderColor="#0f9926" Border="2"><Tr><Td>高等儀式術</Td><Td>儀式魔法</Td></Tr><Td ColSpan="4">手札の儀式モンスター1体を選択し、そのカードとレベルの合計が同じになるように自分のデッキから通常モンスターを選択して墓地に送る。<BR>選択した儀式モンスター1体を特殊召喚する。 </Td></Table>)
「手札に加わった〔高等儀式術〕を発動…特殊召喚するのは…」
「では、それにチェーンして伏せカードを発動します。〔マインドクラッシュ〕、宣言するカード名は〔精霊術師 ドリアード〕」
福助手札
〔精霊術師 ドリアード〕
〔ハイドロプレッシャーキャノン〕
〔エレメンタル・デビル
〔我が身を盾に〕
〔風林火山〕
〔精霊術師 ドリアード〕:福助の手札→墓地へ。
「今、僕が〔ドリアード〕を出すって云う前にカード名を云わなかった…?」
「お気になさらず、ただの直感ですので」
「そうですか、わかりました。なら僕のバトルフェイズです」
本当に気にしなかった様子で、福助のモンスターが裏守備モンスターに襲い掛かる。
そのモンスターは〔魔装機関車 デコイチ〕だ。
&html(<Table Border BorderColor="#cc7a28" Border="2"><Tr><Td>魔装機関車 デコイチ</Td><Td>闇属性</Td><Td>機械族</Td><Td>レベル4</Td><Td>ATK1400</Td><Td>DEF1000</Td></Tr><Td ColSpan="6">リバース:カードを1枚ドローする。<BR>自分フィールド上に「魔貨物車両 ボコイチ」が表側表示で存在する場合、さらにその枚数分カードをドローする。 </Td></Table>)
〔マンジュ・ゴッド〕(攻撃力1400)VS(守備力1000)〔魔装機関車 デコイチ〕→〔魔装機関車 デコイチ〕、破壊・墓地へ。
エビエス:手札4→手札5
「んー、終了です(手札4)」
予想以上に凡庸な福助の攻めに攻撃に、エビエスは感情の動かしようもなかった。
「私の手番ですね(手札6)。それでは私は…手札から〔サイバー・ドラゴン〕を特殊召喚し、さらに〔カイクウ〕を通常召喚します」
&html(<Table Border BorderColor="#cc7a28" Border="2"><Tr><Td>霊滅術師 カイクウ</Td><Td>闇属性</Td><Td>魔法使い族</Td><Td>レベル4</Td><Td>ATK1800</Td><Td>DEF700</Td></Tr><Td ColSpan="6">このカードが相手ライフに戦闘ダメージを与えた時、<BR>相手の墓地に存在するモンスターを2体まで選択してゲームから除外する事ができる。<BR>このカードがフィールド上に表側表示で存在する限り、<BR>相手はお互いの墓地に存在するカードをゲームから除外する事はできない。</Td></Table>)
&html(<Table Border BorderColor="#cc7a28" Border="2"><Tr><Td>サイバー・ドラゴン</Td><Td>光属性</Td><Td>機械族</Td><Td>レベル5</Td><Td>ATK2100</Td><Td>DEF1600</Td></Tr><Td ColSpan="6">相手フィールド上にモンスターが存在し、自分フィールド上にモンスターが存在していない場合、<BR>このカードは手札から特殊召喚する事ができる。 </Td></Table>)
2体のモンスターは〔マンジュゴッド〕を物の数にもせず、砕き散らして福助に襲い掛かる。
〔霊滅術師 カイクウ〕(攻撃力1800)VS(攻撃力1400)〔マンジュ・ゴッド〕→〔マンジュ・ゴッド〕、破壊・墓地へ。
〔精霊術師 ドリアード〕墓地→ゲームから除外(〔カイクウ〕の効果)
福助:LP8000→LP7600→LP5500
「ぐ…ア…」
「儀式モンスターさえ墓地においておかなければ…〔オクジュ・ゴッド〕や〔ドリアードソウル〕は使えませんからね。
この〔霊滅術師 カイクウ〕さえいれば、あなたのデッキの大半のカードは無効化できます」
&html(<Table Border BorderColor="#cc7a28" Border="2"><Tr><Td>精霊術師の魂 -ドリアード・ソウル-</Td><Td>光属性</Td><Td>天使族</Td><Td>レベル5</Td><Td>ATK0</Td><Td>DEF0</Td></Tr><Td ColSpan="6">墓地に存在する「ドリアード」と名の付くカード1枚を除外する事でのみ手札から特殊召喚できる。 <BR>このカードの属性は「風」「水」「炎」「地」としても扱う。 <BR>また、このカードは攻撃の対象に選択されない。</Td></Table>)
&html(<Table Border BorderColor="#cc7a28" Border="2"><Tr><Td>オクジュ・ゴッド</Td><Td>光属性</Td><Td>天使族</Td><Td>レベル4</Td><Td>ATK1000</Td><Td>DEF1000</Td></Tr><Td ColSpan="6">墓地に存在する儀式モンスターと儀式魔法をゲームから除外して特殊召喚する。<BR>このカードの特殊召喚に成功した場合、デッキから儀式モンスターと儀式魔法を1枚づつ手札に加える。(オリカ)</Td></Table>)
エビエスは静かに、それでいて明確にカード名を提示した。
その両カードは、確かに福助のデッキの主軸と云っても差し支えのないカードだった。
「それも直感ですか?」
「ええ、その通りです」
「すっごいなぁ、エビエスさん! 僕のデッキもお見通しなんですね!」
――プレッシャーの意味を…理解していないなこの子どもは――
先ほど〔マインドクラッシュ〕で手札を確認した限り、その中に〔カイクウ〕や〔サイドラ〕を打破するカードはなかった。
そして1ドローでどうなる状況でもない。何が起こるかわからないのがデュエルモンスターズだが、
福助がエビエスの手元にある資料と同じデッキを使っている限り、不安材料らしきものはなかった。
「――私はカードを1枚セット、ターンエンドです(手札3・伏せ1)
…倉塔様、そろそろまぶたが重いのでは? サレンダーカードをお勧めしますが?」
「いいえ、デュエル中なら眠くなんてなりませんよ、僕のターン、ドロー!(手札5)
よし、これだ! 〔天使の施し〕!」
&html(<Table Border BorderColor="#0f9926" Border="2"><Tr><Td>天使の施し</Td><Td>通常魔法</Td></Tr><Td ColSpan="4">デッキからカードを3枚ドローし、その後手札からカードを2枚捨てる。 </Td></Table>)
「――中々のレアカードを持っていらっしゃいますね」
「はい、〔ドリアード〕と同じく父親からもらった物です」
現行のルールでは、【制限カード】は有っても【禁止カード】はない。
単純に強力なカードは入手困難なカードを禁止化してしまうと、そのカードを抱えるカードバイヤーが破産レベルでの被害を受ける。
さらに流通している枚数が単純に足りていないので、大規模な大会を荒らせるほどの人数が揃わないのだ。
「では、僕は3枚引いて…そうですね、〔エレメント・デビル〕と〔我が身を盾に〕を捨てます」
「…おや? 装備魔法は残すんですか?」
エビエスが確認した限り、手札には救いようのないクズカード、〔ハイドロプレッシャーキャノン〕が有ったというのにそれを残した。
ただのプレングミス、そうエビエスは解釈した。次の福助の発動宣言まで。
「僕は手札から〔エレメント・ドラゴン〕を召喚し、〔ロケットパイルダー〕を装備。
さらに〔儀式の準備〕を発動しますっ!」
&html(<Table Border BorderColor="#cc7a28" Border="2"><Tr><Td>エレメント・ドラゴン</Td><Td>光属性</Td><Td>ドラゴン族</Td><Td>レベル4</Td><Td>ATK1500</Td><Td>DEF1200</Td></Tr><Td ColSpan="6">このモンスターはフィールド上に特定の属性を持つモンスターが存在する場合、以下の効果を得る。<BR>●炎属性:このカードの攻撃力は500ポイントアップする。<BR>●風属性:このカードが戦闘によって相手モンスターを破壊した場合、もう一度だけ続けて攻撃する事ができる。 </Td></Table>)
&html(<Table Border BorderColor="#0f9926" Border="2"><Tr><Td>儀式の準備</Td><Td>通常魔法</Td></Tr><Td ColSpan="4">自分のデッキからレベル7以下の儀式モンスター1体を手札に加える。<BR>その後、自分の墓地から儀式魔法カード1枚を手札に加える事ができる。</Td></Table>)
〔精霊術師 ドリアード〕デッキ→福助の手札
〔高等儀式術〕:墓地→福助の手札
「…はっ!?」
3枚とも前のターンまで福助は間違いなく持っていなかったカード。
〔天使の施し〕で補充した3枚であることは疑う余地はなく、そしてその3枚が手札に加わったことで福助の戦力は激変し、今後起こる現象をエビエスは察知した。
「今度こそ〔高等儀式術〕で〔ドリア-ド〕を特殊召喚します、何かしますか?」
「…いいえ」
〔精霊術師 ドリアード〕:手札→福助のフィールド
〔ハイ・プリーステス〕:デッキ→福助の墓地
〔エレメント・ドラゴン〕:攻撃力1500→攻撃力2000(連続攻撃可、自身の効果)
「っぐ…!」
「さらに〔ハイドロプレッシャーキャノン〕を〔ドリアード〕に装備し、バトルフェイズッ!
行ってっ〔エレメント・ドラゴン〕、ロケットアタァアアックッ!」
風と炎を纏い、ロケット噴射の勢いを利用してドラゴンは法衣を纏う怪僧へと向かう。
〔エレメント・ドラゴン〕(攻撃力2000)VS(攻撃力1800)〔霊滅術師 カイクウ〕→〔霊滅術師 カイクウ〕、破壊・墓地へ。 エビエス:LP8000→7800
「ぐ…っ!」
「〔ドラゴン〕の効果発動ッ、〔エレメント・ドラゴン〕が戦闘でモンスターを破壊したときもう一度攻撃宣言ができます!
〔サイバー・ドラゴン〕へ攻撃します!」
「攻撃力では…〔サイバー・ドラゴン〕の方が上…ですが」
「判ってます!」
正面から2体のドラゴンが組み合う。
相撲でいうところのがっぷり四つという状態に近い。機械竜の方には腕がないからそれっぽいだけだが。
パワーが拮抗し、2体の動きが止まった瞬間、生身のドラゴン、翼の付け根に隠されたロケットが機械竜の胴体にその先端を向いた。
「ロケットパイルダァー、イグニッションッ! いっけぇっ!」
背中から切り離されたそれは、機械竜の胴体をブチ抜いた。
〔エレメント・ドラゴン〕(攻撃力2000)VS(攻撃力2100)〔サイバー・ドラゴン〕→引き分け。福助LP:5500→5400
〔サイバー・ドラゴン〕:攻撃力2100→攻撃力100
首だけになり、瀕死の機械竜のこめかみに、精霊術師は遠慮がちに銃口を押し当てた
「ハイドロォ、プレェエエスッ!」
〔精霊術師 ドリアード〕(攻撃力1200)VS(攻撃力100)〔サイバー・ドラゴン〕→〔サイバー・ドラゴン〕、破壊・墓地へ。エビエス:LP7800→6700
「〔ハイドロプレッシャーカノン〕の効果発動、エビエスさんの手札を1枚破壊します」
「…判っています」
〔スキヤナー〕:エビエスの手札→エビエスの墓地
&html(<Table Border BorderColor="#0f9926" Border="2"><Tr><Td>ロケット・パイルダー</Td><Td>装備魔法</Td></Tr><Td ColSpan="4">装備モンスターが攻撃する場合、装備モンスターは戦闘では破壊されない。<BR>装備モンスターが攻撃を行ったダメージステップ終了時、<BR>装備モンスターの攻撃を受けたモンスターの攻撃力は、<BR>エンドフェイズ時まで装備モンスターの攻撃力分ダウンする。</Td></Table>)
&html(<Table Border BorderColor="#0f9926" Border="2"><Tr><Td>ハイドロプレッシャーカノン</Td><Td>装備魔法</Td></Tr><Td ColSpan="4">レベル3以下の水属性モンスターにのみ装備可能。<BR>装備モンスターが戦闘によって相手モンスターを破壊した場合、<BR>相手の手札をランダムに1枚墓地へ送る。</Td></Table>)
「カードをセットして、ターン終了です(手札0・伏せ1・発動中2)…エビエスさん?」
「…今のは…どうやったんですか? 摩り替える瞬間は…見えませんでしたが…?」
「え?」
「どうやって…手札を入れ替たか、トリックのタネを訊いています」
「エビエスさんよ、どう見ても今のはマジ引きだよ」
当惑する福助に助け舟を出したのは、観覧に回っていた神成だった。
平の正念党員たちと同じくエビエスとは別アングルから注視しており、摩り替えのプロ、七人衆たるクロックのスキルを持ってしても容易ではない。
「では…それでは…あなたはあの状況から〔天使の施し〕を引き当て、その上で逆転しうる3枚を揃えたと仰る?」
「ハイ、もちろんです」
「そういうのもタマにはあるだろ、疑うこともねえ。ラッキーってのはあるもんだ」
「…。」
普通ならばそれで終わるところ、終わるべきところ。
しかし、エビエスの、根源的な部分が、今のドローにシャモンの神引きを重ね合わせていた。
「倉塔さま…よろしければ、あなたのお父様のお名前を…伺えないでしょうか?」
「? 凶助です。倉塔凶助」
突飛な質問にも福助は律儀な答えた。
そしてその答えはエビエスにとっては理性的予想を否定し、感覚的予想を肯定した。
「なるほど…失礼…なるほど。
倉塔さまは…ナンバー11の…息子さん、ですか…それならば…今のドローも…」
「…?…えっと…あの…なんの話で?」
「今はデュエル中…その話は…まあ、倉塔さまが私のライフをゼロにしたあとで、ということで…」
遠回しな言い回しには弱い福助だが、こういうことだけは理解できる。
知りたければ俺を倒せ、そういうのを理解するのは頭ではない、男気だと相場は決まっている。
「私はカードを2枚セットして終了です。(手札1・伏せ3)」
「僕のターンです!(手札1) 伏せカード2枚…これは、攻撃して来い、という意味ですねッ、バトルフェイズです!
〔エレメント・ドラゴン〕と〔精霊術師ドリアード〕、攻撃です!」
迷わず、あっさりと攻撃宣言にライフがあっさりと削れた。
エビエス:LP6700→4700→3500
「それでは、僕はここでターンを終了です(手札1・伏せ1)」
「エンドフェイズで伏せカードを発動します。〔風林火山〕、2枚です」
&html(<Table Border BorderColor="#b21162" Border="2"><Tr><Td>風林火山</Td><Td>通常罠</Td></Tr><Td ColSpan="4">風・水・地・炎属性モンスターが全てフィールド上に表側表示で存在する時に発動する事ができる。<BR>次の効果から1つを選択して適用する。<BR>●相手フィールド上モンスターを全て破壊する。<BR>●相手フィールド上の魔法、罠カードを全て破壊する。<BR>●相手の手札を2枚ランダムに捨てる。<BR>●カードを2枚ドローする。 </Td></Table>)
それはいつも通りの発動宣言、〔ドリアード〕
発動宣言をしたのは…エビエスだ。
「〔風林火山〕には発動条件には、自分のフィールドという制限はありません。
あなたのフィールドの〔精霊術師 ドリアード〕で発動条件を満たせます」
「久しぶりですよ、僕以外でそのカードを使っている人は」
「効果によって…カードを4枚ドローします」
エビエス:手札1→手札3→手札5
「私のターンです(手札6)。では〔サイクロン・ブレイク〕を発動、伏せカードを破壊します」
「むう、それなら僕は破壊される前に風林火山…僕もカードを2枚ドローします」
&html(<Table Border BorderColor="#0f9926" Border="2"><Tr><Td>サイクロン・ブレイク</Td><Td>速攻魔法</Td></Tr><Td ColSpan="4">フィールド上のカード1枚を破壊する。(オリカ)</Td></Table>)
福助:手札1→手札3
「…さて…邪魔な伏せカードをが消えたところで…手札から〔人造獣 ロデ・ム〕
&html(<Table Border BorderColor="#cc7a28" Border="2"><Tr><Td>人造獣 ロデ・ム</Td><Td>地属性</Td><Td>機械族</Td><Td>レベル4</Td><Td>ATK1500</Td><Td>DEF1200</Td></Tr><Td ColSpan="6">相手フィールド上に表側表示で存在するモンスター1体を選択する事ができる。<BR>このカードが自分フィールド上に表側表示で存在する限り、<BR>このカードはエンドフェイズ時まで選択したモンスターと同名カードとして扱う。<BR>選択したモンスターと同じ効果を得る。<BR>この効果は1ターンに1度しか使用できない。</Td></Table>)
「〔ロデ・ム〕の効果によって、このカードのカード名を〔精霊術師 ドリアード〕に変更します]
宣言に従い、黒豹は溶け、そして少女へと姿を転じる。
福助のフィールドにいる少女と同じ容姿、同じ笑顔、同じ能力を有して。
〔人造獣 ロデ・ム〕→(変化)→〔精霊術師 ドリアード〕
「…全く関係ない話ですが…福助様、今は1997年ですね?」
「? う、うん、たしか」
「例えば、何十年か先、海馬コーポレーションがデュエリスト養成学校を作って、その中の生徒のひとりが宇宙のネオスペースと交信したとしましょう。
それでも、それは何十年か先ということになりますから、今はネオスペーシアンが登場してはいけないわけです」
「えーっと…なんの話…ですか?」
「全く関係ない話と前置きしました。それでは伏せカード発動、〔リビングデッドの呼び声〕で墓地から〔カイクウ〕を戻します」
&html(<Table Border BorderColor="#b21162" Border="2"><Tr><Td>リビングデッドの呼び声</Td><Td>永続罠</Td></Tr><Td ColSpan="4">自分の墓地からモンスター1体を選択し、攻撃表示で特殊召喚する。<BR>このカードがフィールド上に存在しなくなった時、そのモンスターを破壊する。<BR>そのモンスターが破壊された時このカードを破壊する。 </Td></Table>)
〔霊滅術師 カイクウ〕:墓地→エビエスのフィールド
「…〔ドリアード〕を攻撃するつもり、ですか」
「いいえ、そのつもりならばバトルフェイズに入ってから蘇生していますからね…〔ドリアード〕と〔カイクウ〕を特殊融合…」
「な…何です…て!?」
カイクウの体が闇になる。空中に浮かぶ形の無い黒い風船。
そのままドリアードの全身から染み込んでいき…現れたのは、黒いローブ、黒い髪のドリアード。
カラーリング以外は何も変わらない…いや、微笑みが浮かんでいるべき顔には、今にも泣き出しそうな苦痛が染み付いている。
&html(<Table Border BorderColor="#6b23b2" Border="2"><Tr><Td>悪霊術師 ドリアード</Td><Td>闇属性</Td><Td>魔法使い族</Td><Td>レベル5</Td><Td>ATK2400</Td><Td>DEF2800</Td></Tr><Td ColSpan="6">(融合)「精霊術師ドリアード」+「闇属性モンスター」自分フィールド上に存在する上記のカードをゲームから除外した場合のみ、融合デッキから特殊召喚が可能(「融合」魔法カードは必要としない)。このカードの属性は「風」「水」「炎」「地」としても扱う。また、このカードはこのカードと同じ属性を持つモンスターと戦闘との戦闘では破壊されず、効果も受けない。</Td></Table>)
「さらに〔無限の力〕を〔悪霊術師〕に装備し…お待たせしました、バトルフェイズです」
&html(<Table Border BorderColor="#0f9926" Border="2"><Tr><Td>無限の力</Td><Td>装備魔法</Td></Tr><Td ColSpan="4">このカードを装備したモンスターは魔法・罠・モンスターの効果を受けず、攻撃力・守備力を2000ポイントアップする。(オリカ)</Td></Table>)
身体の中の闇属性との属性反発作用か、精霊術師の全身は振るえ、それを吐き出すように、闇の触腕が放たれる。
その攻撃対象は、福助の精霊術師だ。
〔悪霊術師 ドリアード〕(攻撃力3200)VS(攻撃力1200)〔精霊術師 ドリアード〕→〔精霊術師 ドリアード〕、破壊・墓地へ。福助:LP5400→LP2200
〔ハイドロプレッシャーカノン〕:墓地へ。(装備対象喪失)
「さあ、どうするのです。倉塔さん! あの倉塔凶助の息子であるあなたならば、何度でも〔ドリアード〕を出せるでしょう!
しかし、何度出そうとも…私の〔ドリアード〕は、あなたの〔ドリアード〕よりも強い!」
その言葉も、福助には届かない。
福助の視線はただ、苦痛にゆがむ悪霊術師にだけ向いていた。
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&html(<table border="1" bgcolor="#D7F2F2" width="1200"><tr><td><font size="2"><center>)
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2011-04-23T18:28:27+09:00
1303550907
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遊義皇23話(後)
https://w.atwiki.jp/84gzatu/pages/170.html
&html(<table border="1" bgcolor="#D7F2F2" width="1200"><tr><td><font size="2"><center>)
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「これで、アンタの直属の上司の…七人衆だっけ? そいつの居所を教えてもらえるんだよな?」
副賞のアンティを受け取りつつ、神成はデュエル中と変わらないマイペース。
「…ええ、そうなります」
「面倒だから、幹部さんから来てくれるようにならねえ?」
ズボラ、ここに極まり。
戦い終わった相手への挨拶すら省き、デュエル中から一度も本気にならなかった男は、本気でこんなことを云っているのだ。
だが、ティマイレは気を悪くしたようすもなく、指を一本立てて見せた。
「…無駄な説明は省かせていただきますが…そういうことです」
「ああ、なる。 すげえ親切設計だわ」
ティマイレの人差し指の先、夜空を飛ぶ無音ヘリには、黒い機体に金色のインクで『第七部隊備品』の文字が読み取れる。
そのヘリコプターからパラシュートも付けずに飛び出した男は、少ない星と満月に照らされて時折、ピアスが金色の光を反射していた。
「もう、こっちに向かってたわけね…七人衆さんよ」
神成とティマイレの間に割って落ちてきたそれは、全身に金色のピアスを付けて年齢も性別もわからない変質者。
正念党の電波ジャック映像にもそのままの姿で出ていた、あの男…エビエスだ。
エビエスは例によって神成の従者のように頭を深々と下げてみせた。
「この度は深夜での開催というイベントへのご参加、まことにありがとうございます。
私は制々正念党七人衆、第七幹部…エビエスと申しま…」
「面倒な挨拶はいらないんだよなァ、さっさと寝たいからよ。
俺は神成鏡真で、あんたはエビエス。それだけでいいよ、さっさと始めようぜ」
挨拶を遮り、連戦となるためバッテリー残量だけ確認し、神成はデュエルディスクを構えている。
「いえ、それはできません。」
「ああ? 何が?」
「申し訳ありません。私は&html(<ruby><rb>デッキを持っていないのです<rt>・・・・・・・)。
用意しますので、2分ほど時間をいただきたい」
「…マジで?」
「はい、至って」
正気とは思えない発言に続き、上空のヘリコプターから何かがエビエスと同じ速度で落ちてきた。
人ではない、大きな正方形の物体…ジュースの自動販売機のような大きさの、近未来的な筐体。
数十メートルは落とされても傷一つなく、むしろ歩道橋の方が落下の衝撃に揺らいだ。
「これは私のカードケースです、一部のレアカードを除き、ほぼ全てのカードのコピーカードが入っています」
「能書きはいらねえ、さっさとデッキを組めよ、眠ィ」
「それは気付かずに大変失礼を…では」
箱の扉は次々と開かれ、そこには何冊ものカードファイル。
エビエス迷わずにファイルに手を伸ばし、素早く、それでいて静かに目当てのカードを探し出していく。
その挙動は、神成が何をしているのか理解するのと大して変わらない時間であり、第七幹部のデュエルディスクには40枚のデッキと15枚のエクストラデッキが装填されていた。
「お待たせしました、デッキ完成です」
「いいや、見てて楽しかった、じゃあ…行くか」
「アンティはあなたは〔キメラテック・バリスティック・オーガ〕、私は第一幹部の所在と副賞として今私が使っているデッキをお渡しします」
歩道橋の上、観客はティマイレと満月だけ。
ヘリコプターのローター音をBGMに、ふたりのコールが響き渡る。
『デュエル!』
「ドロー…(手札6)モンスターをセット、〔封印の黄金櫃〕で〔サイバー・バリスティック・オーガ〕を除外。
トドメに〔機甲部隊の最前線〕を発動し、ターン終了だ(手札3・伏せ0・発動中1)」
先攻のコールのされた神成は手馴れた様子でカードを展開した。
長年使い込んだデッキで、手札さえ見れば戦術の分からない相手に対してならば考えるまでもなく初手は決まるのだ。
&html(<Table Border BorderColor="#0f9926" Border="2"><Tr><Td>機甲部隊の最前線</Td><Td>永続魔法</Td></Tr><Td ColSpan="4">機械族モンスターが戦闘によって破壊され自分の墓地へ送られた時、<BR>そのモンスターより攻撃力の低い、同じ属性の機械族モンスター1体を自分のデッキから特殊召喚する事ができる。<BR>この効果は1ターンに1度しか使用できない。</Td></Table>)
&html(<Table Border BorderColor="#0f9926" Border="2"><Tr><Td>封印の黄金櫃</Td><Td>通常魔法</Td></Tr><Td ColSpan="4">自分のデッキからカードを1枚選択し、ゲームから除外する。<BR>発動後2回目の自分のスタンバイフェイズ時にそのカードを手札に加える。 </Td></Table>)
「私のターンですね(手札6)…そうですね、では〔スチームロイド〕を召喚します」
&html(<Table Border BorderColor="#cc7a28" Border="2"><Tr><Td>スチームロイド</Td><Td>地属性</Td><Td>機械族</Td><Td>レベル4</Td><Td>ATK1800</Td><Td>DEF1800</Td></Tr><Td ColSpan="6">このカードは相手モンスターに攻撃する場合、ダメージステップの間攻撃力が500ポイントアップする。<BR>このカードは相手モンスターに攻撃された場合、ダメージステップの間攻撃力が500ポイントダウンする。</Td></Table>)
「…〔スチームロイド〕…?」
「おや? 効果をご存じないので? 神成さまもお使いになっているカードだったと存知ますが?」
「…さっさと続きをプレイしろ」
〔スチームロイド〕の性能は高く、決して珍しいカードではない。
そのカードが登場したところで何かが変わるわけではない、それでも神成の心中には、『何か』としか呼べない何かが生じていた。
「それではバトルフェイズ、〔スチームロイド〕でセットされたモンスターを攻撃。ロコモーティブ・スマッシュッ!」
「俺の伏せモンスターは…〔コアキメイル・パワーハンド〕ッ」
&html(<Table Border BorderColor="#cc7a28" Border="2"><Tr><Td>コアキメイル・パワーハンド</Td><Td>地属性</Td><Td>機械族</Td><Td>レベル4</Td><Td>ATK2100</Td><Td>DEF1600</Td></Tr><Td ColSpan="6">このカードのコントローラーは自分のエンドフェイズ毎に手札から「コアキメイルの鋼核」1枚を墓地へ送るか、手札の通常罠カード1枚を相手に見せる。<BR>または、どちらも行わずにこのカードを破壊する。<BR>このカードが光属性または闇属性モンスターと戦闘を行う場合、バトルフェイズの間だけそのモンスターの効果は無効化される。</Td></Table>)
〔スチームロイド〕:攻撃力1800→攻撃力2300(自身の効果)
〔スチームロイド〕(攻撃力2300)VS(守備力1600)〔コアキメイル・パワーハンド〕→〔コアキメイル・パワーハンド〕、破壊・墓地へ。
「〔機甲部隊の最前線〕が有るってのに…うかつだぜ、七人衆さんよ?
地属性・機械族である〔パワーハンド〕が破壊されたことで、〔機甲部隊の最前線〕の効果発動…」
&html(<Table Border BorderColor="#0f9926" Border="2"><Tr><Td>機甲部隊の最前線</Td><Td>永続魔法</Td></Tr><Td ColSpan="4">機械族モンスターが戦闘によって破壊され自分の墓地へ送られた時、<BR>そのモンスターより攻撃力の低い、同じ属性の機械族モンスター1体を自分のデッキから特殊召喚する事ができる。<BR>この効果は1ターンに1度しか使用できない。</Td></Table>)
「来い、〔サイバーオーガ〕ッ!」
サイバー・オーガ:デッキ→神成のフィールド
&html(<Table Border BorderColor="#cc7a28" Border="2"><Tr><Td>サイバー・オーガ</Td><Td>地属性</Td><Td>機械族</Td><Td>レベル5</Td><Td>ATK1900</Td><Td>DEF1200</Td></Tr><Td ColSpan="6">このカードを手札から墓地に捨てる。<BR>自分フィールド上に存在する「サイバー・オーガ」1体が行う戦闘を1度だけ無効にし、<BR>さらに次の戦闘終了時まで攻撃力は2000ポイントアップする。<BR>この効果は相手ターンでも発動する事ができる。</Td></Table>)
黒ずんだ銀のボディに鋭利な角。
鋼鉄鬼、サイバー・オーガ。大してレア度も高くなくレベルの割にはステータスも低いカードだが、神成の手にかかれば紛れもなくエースモンスターだ。
「なるほど…それでは私は魔・罠置き場にカードを2枚セット、どうぞ(手札3・伏せ2)」
「俺のターン(手札4)…モンスターは増やさずに〔サイバー・オーガ〕で〔スチームロイド〕を攻撃する」
伏せカードが多い中で攻撃するというのは、もちろん伏せカードがないときに比べれば遥かにリスクが高い。
かといってここで攻撃しなければ、返しのターンで攻撃力の上がった〔スチームロイド〕の相手をしなければならない。
「では、ここで〔突進〕を発動します」
&html(<Table Border BorderColor="#0f9926" Border="2"><Tr><Td>突進</Td><Td>速攻魔法</Td></Tr><Td ColSpan="4">フィールド上に表側表示で存在するモンスター1体の攻撃力はエンドフェイズ時まで700ポイントアップする。</Td></Table>)
「…あ? ダメージステップじゃなく、バトルステップでか?」
「ええ、もちろん」
神成にしてみれば、〔サイバー・オーガ〕が返り討ちになったとしても〔機甲部隊の最前線〕で後続は呼べる、だが…。
妙な何かを感じ取った。
「手札から〔サイバー・オーガ〕の効果発動、この戦闘を無効にし、フィールドの〔サイバー・オーガ〕の攻撃力を200アップさせる」
〔サイバー・オーガ〕(B):神成の手札→墓地へ
〔サイバー・オーガ〕(A):攻撃力1900→攻撃力3900
〔スチームロイド〕:攻撃力1800→攻撃力2500
〔サイバー・オーガ〕(攻撃力3900)VS(攻撃力2500)〔スチームロイド〕、戦闘無効
「カードを2枚セット、エンド。(手札1・伏せ2・発動中1)」
何事もなく、互いにカードを消耗したがモンスターを失わない戦闘。
だが、なにか、そこはかとない気配を感じ取った神成は、直感的に防御を固めていた。
「では私のターンですね(手札4)、〔ハリケーン〕です。フィールド上の全ての魔法・罠カードを手札に戻します」
「…〔強制脱出装置〕で、〔スチームロイド〕を手札に戻す」
&html(<Table Border BorderColor="#0f9926" Border="2"><Tr><Td>ハリケーン</Td><Td>通常魔法</Td></Tr><Td ColSpan="4">フィールド上の魔法・罠カードを全て持ち主の手札に戻す。</Td></Table>)
&html(<Table Border BorderColor="#b21162" Border="2"><Tr><Td>強制脱出装置</Td><Td>通常罠</Td></Tr><Td ColSpan="4">フィールド上のモンスター1体を持ち主の手札に戻す。 </Td></Table>)
〔機甲部隊の最前線〕:神成の魔・罠置き場→神成の手札
伏せカード:神成の魔・罠置き場→神成の手札
伏せカード:エビエスの魔・罠置き場→エビエスの手札
〔ハリケーン〕のソリッドビジョンが収まったとき、既にエビエスの手元には次のカードが構えられていた。
エビエスはそのカードを手札から迷わず墓地に投入した。
「手札から〔エレクトリックワーム〕を発動し、〔サイバー・オーガ〕をいただきます」
「…なにッ?」
&html(<Table Border BorderColor="#cc7a28" Border="2"><Tr><Td>エレクトリック・ワーム</Td><Td>光属性</Td><Td>雷族</Td><Td>レベル3</Td><Td>ATK1000</Td><Td>DEF1000</Td></Tr><Td ColSpan="6">このカードを手札から墓地に捨てる。<BR>このターンのエンドフェイズ時まで、相手フィールド上に表側表示で存在する機械族またはドラゴン族モンスター1体のコントロールを得る</Td></Table>)
〔サイバー・オーガ〕:神成のフィールド→エビエスのフィールド
「そして…〔コアキメイル・パワーハンド〕を召喚します、攻撃。
ドリルクライシスッ、オーガ・バンカーレベル2ゥッ!」
神成:LP8000→LP5900→LP2000
奪われた〔サイバー・オーガ〕、自身も用いる強力アタッカー〔パワーハンド〕、2体の攻撃に対して神成は無言で受けきった。
攻撃時の技名も、神成が普段のデュエルで使う技名だった。
「…ッ…」
「カードを1枚セットし、〔魔法の筒〕を公開することで〔パワーハンド〕を維持します。ターン終了です(手札2・伏せ1)」
「エビエスさんよ、お前のデッキ…コピーデッキだよな? 俺の」
「ええ、そうですよ」
エビエスの言葉なんて聞かず、神成はカードをドローする素振りすら見せない。
悪びれもせず、エビエスはあっさりと首肯してみせたが、神成も怒るわけでもなかった。
「どっからデッキレシピを…って質問もアレだな。お前らは海馬コーポレーションをジャックしたんだったな…」
ナニワカップの運営メンバーである神成は、そのデッキレシピをKCに申請、登録している。
変則デュエルも多いので、そこで使うデッキレシピはある程度資料として必要になる
「そうでもありませんよ? 我々でも独力ではKCのセキュリティは破れません。
今日は別のグループがKCにサイバーテロを仕掛けたようでして、それに便乗させていただきました」
その頃、KCの主要メンバーは海馬コーポレーション本社ビルにて、ペガサス・J・クロフォードの遺物的な事件に遭遇していた。
その事件も語りだすと長くなるので、何をやっていたかは遊戯王Rを参照。
「…まあ、別にどうでもいいがな。サレンダーして良いぜ? エビエスさんよ?」
「ほう?」
「あんたが最初から勝つ気がなかった、そうだろ? ミラーマッチ…同じコンセプトの対決なら俺が負けようがないんだよ。
俺のターァン!(手札2) 〔封印の黄金櫃〕の効果で〔バリスティック〕が手札に加わるぜ」
〔キメラテック・バリスティック・オーガ〕:除外置き場→神成の手札
「それでしたら…」
「今加わった〔バリスティック〕を墓地に送り、もう1枚の〔バリスティック〕を特殊召喚する!」
&html(<font size="6">ぎっしゃあああああああッッ!</font>)
墓地に落ちた鬼が啼く。エビエスの言葉をさえぎって鋼鉄のロープを弾くような音で。
鬼に呼ばれ、鬼が降りる。
〔キメラテック・バリスティック・オーガ〕:手札→神成のフィールド
&html(<Table Border BorderColor="#cc7a28" Border="2"><Tr><Td>キメラテック・バリスティック・オーガ</Td><Td>地属性</Td><Td>機械族</Td><Td>レベル8</Td><Td>ATK2000</Td><Td>DEF2500</Td></Tr><Td ColSpan="6">このカードは通常召喚できず、「キメラテック・バリスティック・オーガ」の効果以外で特殊召喚できない。<BR>このカードを手札から捨てることで、手札または墓地に存在するこのカードの同名カードを特殊召喚する。<BR>また、フィールド上の任意の機械族モンスターをリリースする事で、次の戦闘終了時までリリースしたモンスターの数×1000ポイント攻撃力がアップする。<BR>この効果は相手ターンでも発動する事ができる。</Td></Table>)
「召喚時に優先権を行使ッ、〔パワーハンド〕を喰い尽せ!」
「それはできませんよ、機械族は居ませんから」
「…ああ?」
そこに来て、神成はエビエスのフィールド上で表側で存在するカードに気が付いた。
&html(<Table Border BorderColor="#b21162" Border="2"><Tr><Td>DNA改造手術</Td><Td>永続罠</Td></Tr><Td ColSpan="4">発動時に1種類の種族を宣言する。このカードがフィールド上に存在する限り、フィールド上の全ての表側表示モンスターは自分が宣言した種族になる。</Td></Table>)
「…な、〔改造手術〕だとっ!?」
「ええ、神成様…あなたが普段のデュエルで使っているサポートカード。
〔バリスティック〕や〔エレクトリック・ワーム〕も本来はこのカードとのコンボが前提でしたね」
「…っち」
本来は全ての敵のカードを機械族に変更する必要があるのが神成のデッキであるはずだった。
だが、コピーデッキを用いるエビエスに対してはそれが必要なかった。元から機械族なのだから。
「覚えておいた方が良いでしょう、神成様。
〔DNA改造手術〕は“我々”が使っているデッキの最大のサポートカードでありながら、最大の天敵であるということ、ね」
〔キメラテック・バリスティック・オーガ〕:機械族→爬虫類族
〔サイバー・オーガ〕:機械族→爬虫類族
〔コアキメイル・パワーハンド〕:機械族→爬虫類族
「…妙な気分だな、俺のデッキを…俺以上に研究してるヤツから諭されるってのもよ」
「忠告しておきますが、〔機甲部隊の…」
「判ってるよ、〔機甲部隊の最前線〕はフィールド・墓地の両方で機械族でないと使えねえ。
俺のモンスターはフィールドで機械族でなくなった以上、このカードは役経たずだが…。
もうちょっと悪足掻きに付き合ってくれ、〔エネコン〕発動して、〔パワーハンド〕には寝てもらう」
&html(<Table Border BorderColor="#0f9926" Border="2"><Tr><Td>エネミー・コントローラー</Td><Td>速攻魔法</Td></Tr><Td ColSpan="4">次の効果から1つを選択して発動する。<BR>●相手フィールド上の表側表示モンスター1体の表示形式を変更する。<BR>●自分フィールド上のモンスター1体を生け贄に捧げる。<BR> 相手フィールド上の表側表示モンスター1体を選択する。<BR>発動ターンのエンドフェイズまで、選択したカードのコントロールを得る。 </Td></Table>)
〔コアキメイル・パワーハンド〕:攻撃表示→守備表示
「バトルフェイズ、〔オーガ〕で〔パワーハンド〕を攻撃! オーガ・バンカーッ!」
〔サイバー・オーガ〕(攻撃力1900)VS(守備力1600)〔コアキメイル・パワーハンド〕、〔コアキメイル・パワーハンド〕、破壊、墓地へ。
「&html(<ruby><rb>超 級 ・ 鬼 面・怒・轟<rt>バリスティック・アンガアアアアアアア)ッッ!」
技名を叫ぶと同時に、もちろんバリスティックがエビエスに飛び掛る。
圧倒的な回転をしつつ、球体が突撃する。 壁となるモンスターはなく、エビエスへと向かっていくわけだが。
だがエビエスは特段リアクションも取らない。 ソリッドビジョンが当たったところで痛くもなんともない。
エビエス:LP8000→LP6000
「ァアアアああッッ!」
揺れた。歩道橋が揺れた。
吹っ飛んだ。エビエスが吹っ飛んだ。
演技ではない、投影されたバリスティックに隠れるように走り寄った神成が、物理的に殴り飛ばしたのだ。
手札をちょうど使いきり、開いた左腕による急加速の渾身の左ストレート。
「七人衆様よ。お前のピアスはどこで売ってるんだ?」
「企業秘密です」
殴り飛ばされ、エビエスの顔面の金色のピアスを曇らせる赤。
だが、その赤は違う、エビエスの血ではない。殴り掛かって皮と肉を持っていかれた神成の血だ。
「気が済みましたらデュエルの続行をお願いします。私もコピーデッキ使いですからこのようなことは慣れていますので」
「…俺はよォ…怒るって嫌いなんだよ、無駄だし。
だが…自分のデッキをこうまでバカにされて…頭にこねえヤツはデュエリストなんてやってねえ…ッ!」
「いえいえ。私はバカになどしていませんよ、神成さまのデッキが強いからこそ、コピーさせていただいているのですから」
「自分が何ヶ月、何年掛かって作ったものを横取りされて尊敬されてると思うか?
本家サイバー流のリスペクトって考え方も堅苦しくて嫌いだが…てめえはそれ以上にイラつくぜ」
デュエリストは、デッキになにかを懸けている。
財産だったり、青春だったり、人生だったり、家族だったりする。
神成はそれらを全て注ぎ込んで来た。自分の哲学が正しいと、最強だと信じて。
神成の心中は実にバリスティック。
薄汚いコピー戦術の一環としてほんの2~3分で再現したデッキのひとつとして使わエビエスに。
そんな敵に嬲られ、押されている自分に。
「俺は真・サイバー流、“電影鏡鬼”の神成鏡真ッ!
本家サイバーや裏サイバーの連中を倒して頂点に立つ。
その俺が…真サイバーなら! 機械族じゃなくなろうと前に立つ敵は喰い潰す。
サレンダーもさせない。さあ、お前のターンだ!(手札0・伏せ1・発動中1)」
鏡真の言葉を協賛するように、フィールドの2体の鬼たちは電子音の雄叫びを上げる。
まだ、誰も負けた気になどなっていない。
「ご立派な理想、名乗りをありがとうございます。
私は“四界の王”のエビエス、コピーデッキでいかなるデュエリストをも凌駕する。
ライフレス、デッキデス、特殊勝利、特殊判定、四つの決着のいずれを目指そうとも、そのデュエリストを上回る、それが私です」
四界の王という名前だけは、神成は知っていた。
プロアマ問わず、デュエリストたちの間で謡われていた存在すら疑わしい人物。
武藤遊戯や海馬頼人とは別の意味、都市伝説的な意味での伝説のデュエリストだ。
だが、相手がバケモノだろうと神様だろうと、一度着いた戦いの火は揺るがない。それが鏡真たちの人種の特長。
「私のターン、ドロー(手札3)。
それでは、手札を全てセットしてしまいましょう、ターン終了です(手札0・伏せ2・発動中1)」
セットしたカードの内、2枚のカードは判っている。
〔強制脱出装置〕で戻った〔スチームロイド〕、〔パワーハンド〕で公開した〔魔法の筒〕だ。
&html(<Table Border BorderColor="#cc7a28" Border="2"><Tr><Td>スチームロイド</Td><Td>地属性</Td><Td>機械族</Td><Td>レベル4</Td><Td>ATK1800</Td><Td>DEF1800</Td></Tr><Td ColSpan="6">このカードは相手モンスターに攻撃する場合、ダメージステップの間攻撃力が500ポイントアップする。<BR>このカードは相手モンスターに攻撃された場合、ダメージステップの間攻撃力が500ポイントダウンする。</Td></Table>)
&html(<Table Border BorderColor="#b21162" Border="2"><Tr><Td>魔法の筒</Td><Td>通常罠</Td></Tr><Td ColSpan="4">相手モンスターの攻撃宣言時に発動する事ができる。<BR>相手モンスター1体の攻撃を無効にし、そのモンスターの攻撃力分のダメージを相手ライフに与える。 </Td></Table>)
〔スチームロイド〕の守備力は1800、今の神成のフィールドの2体のオーガなら破壊できる。
だが、神成のライフポイントは残り2000、〔魔法の筒〕を使われれば致死的なダメージを負う。
怒りに任せて攻撃力1900の〔サイバー・オーガ〕で攻撃する選択肢はあるが、まずはカードを引いてからだ。
「俺のターン、ドローッ(手札1)!」
ドローカード:〔リミッター解除〕
機械族の特権的サポートカードだが、種族が変更されている今は何の役にも立たない。
「カードを1枚セット、ターンエンドォッ!(手札0・伏せ2・発動中1)」
「私のターンですかドロー(手札1)…私はこのままターンを終了します(手札1・伏せ2・発動中1)」
コピーデッキに限ったことではなく、ミラーマッチ…デッキコンセプトが重複する場合にしばしば見られる状態だ。
引き勝負、腕の優劣なんてものは介在せず、ただ引き合う勝負。
「ドロォーッ(手札1)…ターンエンド(手札1・伏せ2・発動中1)」
「ドローして(手札2)…ターン終了です(手札2・伏せ2・発動中1)」
本来は1ターンの攻防とは、もっと分厚く、濃密であるはずのものだった。
だが、鏡写しのデュエルではカードタイプが狭くなり、受け攻めの方法が減り、互いにゲームメイクしにくくなる。
故に、たった1枚のドローがゲームを崩す。勝負を決する。 その1枚を神成は待っていた、そして。
「ドローッ!(手札2)」
ドローカード:〔ハリケーン〕
――来たッ!――
エビエスの守りを崩し、そして〔リミッター解除〕を生かす最良の1枚、それこそが〔ハリケーン〕だった。
「手札より魔法カード発動、〔ハリケェエエエン〕ッッ!」
&html(<Table Border BorderColor="#0f9926" Border="2"><Tr><Td>ハリケーン</Td><Td>通常魔法</Td></Tr><Td ColSpan="4">フィールド上の魔法・罠カードを全て持ち主の手札に戻す。</Td></Table>)
〔DNA改造手術〕:フィールド→エビエスの手札
伏せカード:フィールド→エビエスの手札
伏せカード:フィールド→エビエスの手札
〔機甲部隊の最前線〕:フィールド→神成の手札
伏せカード:フィールド→神成の手札
伏せカード:フィールド→神成の手札
〔キメラテック・バリスティック・オーガ〕:爬虫類族→機械族
〔サイバー・オーガ〕:爬虫類族→機械族
先ほどエビエスも使った竜巻のカード。
月夜に吹き荒れる暴風雨、それは百鬼の大行進にも匹敵して。
「…な、なるほど…。
私のデッキにあるということは…あなたのデッキにもある…ということでしたね」
「俺はさらに手札から〔スクラップ・リサイクラー〕を召喚し、デッキから〔ナノブレイカー〕を墓地に送る。
効果で〔パワーハンド〕と〔ナノブレイカー〕をデッキに戻し、1枚ドロー」
&html(<Table Border BorderColor="#cc7a28" Border="2"><Tr><Td>スクラップ・リサイクラー</Td><Td>地属性</Td><Td>機械族</Td><Td>レベル3</Td><Td>ATK900</Td><Td>DEF1200</Td></Tr><Td ColSpan="6">このカードが召喚・特殊召喚に成功した時、自分のデッキから機械族モンスター1体を選択して墓地へ送る事ができる。<BR>1ターンに1度、自分の墓地に存在する機械族・地属性・レベル4モンスター2体をデッキに戻す事で、自分のデッキからカードを1枚ドローする。</Td></Table>)
神成:手札0→手札1
〔ナノブレイカー〕:墓地→神成のデッキ
〔コアキメイル・パワーハンド〕:墓地→神成のデッキ
「行くぞッ、バトルフェイズ! 〔サイバー・オーガ〕ッ! 裏守備の〔スチームロイド〕にオーガ・バンカーだッ!」
うなる。鬼が、拳が。
裏守備のスチームロコモーティブな鉄屑へと。
〔サイバー・オーガ〕(攻撃力1900)VS(守備力1800)〔スチームロイド〕、〔スチームロイド〕、破壊、墓地へ。」
「〔バリスティック〕の効果発動ォッ! 喰い尽せ!」
〔サイバー・オーガ〕:フィールド→墓地へ。
〔スクラップ・リサイクラー〕:フィールド→墓地へ。
〔キメラテック・バリスティック・オーガ〕:攻撃力2000→攻撃力4000
「これで…どうなるのかな?」
エビエス
LP:6000
モンスター:0
魔・罠:0
「これはこれは…驚きましたよ、これでは私のライフは2000…神成さまと並んでしまいますね」
「並ばねえよッ!」
「…え?」
「これで終わりなんだよ、〔リミッター解除〕ッ!」
&html(<Table Border BorderColor="#0f9926" Border="2"><Tr><Td>リミッター解除</Td><Td>速攻魔法</Td></Tr><Td ColSpan="4">このカード発動時に、自分フィールド上に表側表示で存在する全ての機械族モンスターの攻撃力を倍にする。<BR>この効果を受けたモンスターはエンドフェイズ時に破壊される。 </Td></Table>)
同胞を喰い尽くし、肥大した〔バリスティック〕の肉体から蒸気が上がる。
怒りが胴体を焼結させ、熱が鉄の銀色を紅く染めていく。
〔キメラテック・バリスティック・オーガ〕:攻撃力4000→攻撃力8000
「…攻撃力8000ッ!?」
「攻撃だ! 〔キメラテック・バリスティック・オーガ〕ッ! 超級ッ! &html(<ruby><rb>鬼 面 ・ 怒 轟<rt>バリスティック・アンガアアアアア)ッッ!」
月下で燃えるそれは太陽。
怒りだけに轟き、存在するそれは敵を砕き、誇り以外には何も守らない傲慢な力。
神成の怒りに呼応し、極大化したソリッドビジョンが歩道橋を揺らし、
そして。
&html(<font size="6">エビエス:LP6000</font>)
「…え?」
「〔バトルフェーダー〕ですよ、ご存知でしょう?」
&html(<Table Border BorderColor="#cc7a28" Border="2"><Tr><Td>バトルフェーダー</Td><Td>闇属性</Td><Td>悪魔族</Td><Td>レベル1</Td><Td>ATK0</Td><Td>DEF0</Td></Tr><Td ColSpan="6">相手モンスターの直接攻撃宣言時に発動する事ができる。<BR>このカードを手札から特殊召喚し、バトルフェイズを終了する。<BR>この効果で特殊召喚したこのカードは、フィールド上から離れた場合ゲームから除外される。</Td></Table>)
バトルフェーダー:手札→エビエスのフィールド
神成:バトルフェイズ→メインフェイズ2
「常識レベルのカードですよね、神成様?」
「バカな…ッ! 俺のデッキには…そんなカードは入ってないのに…っ!?」
確信した勝利の瓦解に、神成は状況を把握できずにいた。
「お気づきでしょうが…私たち正念党は〔バリスティック〕を所有していません。
現存枚数4枚、その内の3枚は神成さま、あなたが所有し、残りの1枚は所在不明ですからね。
そのため、私のコピーデッキには〔バリスティック〕やその関連カードがなく、枚数合わせが必要になります…ご理解いただけましたか?」
神成は勘違いをしていた。
エビエスが持っていたコピーデッキの最大の利点、それは弱点を着いた構築ができること自体ではない。
無意識の間、敵に『自分と相手の戦力は同等』と思わせることであることなのだ。
そのことに気が付かず、ターン終了時には〔バリスティック〕は自壊する。そうすれば神成を守る壁はなくなる、だが。
神成の手札
〔天使の手鏡〕
〔次元幽閉〕
〔機甲部隊の最前線〕
絶望的な手札ではない、まだ戦える。
サレンダーするべき手札ではない、意地を畳むには速い。
「…〔機甲部隊の最前線〕を発動し、2枚のカードをセット、ターン終了だ(手札0・伏せカード2・発動中1)」
うめき声を上げ、オーバーヒート、自爆する機鬼は破裂する。
「私のターン(手札6)…そうですね、では〔ナノブレイカー〕を召喚します」
&html(<Table Border BorderColor="#cc7a28" Border="2"><Tr><Td>ナノブレイカー</Td><Td>地属性</Td><Td>機械族</Td><Td>レベル4</Td><Td>ATK1600</Td><Td>DEF1800</Td></Tr><Td ColSpan="6">このカードがレベル3以下の表側表示モンスターを攻撃した場合、ダメージ計算を行わずそのモンスターを破壊する。</Td></Table>)
これもやはり神成も使用しているカード、独特な形状をした剣を携えた、黒髪の人間型モンスター。
これならば〔次元幽閉〕でなんとかなる。次のドローに賭ける。
「そして…〔無限の力〕を発動します」
「…え、な…!? 〔無限の力〕だと!?」
&html(<Table Border BorderColor="#0f9926" Border="2"><Tr><Td>無限の力</Td><Td>装備魔法</Td></Tr><Td ColSpan="4">このカードを装備したモンスターは魔法・罠・モンスターの効果を受けず、攻撃力・守備力を2000ポイントアップする。</Td></Table>)
デュエルモンスターズには、かなりの数の伝説と呼ばれるレアカードが存在する。
これもその内の1枚で、製造枚数たったの1枚、もちろん現存枚数は最高で1枚。
正念党が保有しているという噂は有ったが、神成がここまで戦ったレアハンターは誰も使っていなかったカードだ。
「本物…ッ!?」
「いいえ、オリジナルは別の幹部が所有していまして…私のはコピーカードですよ。
デュエルする上では…関係ありませんがッ!」
〔ナノブレイカー〕:攻撃力1600→攻撃力3600 守備力1800→守備力3800
「攻撃宣言ですが…申し訳ありませんが、神成さま。
私の不勉強で〔ナノブレイカー〕の攻撃宣言の技名がわからないのです、教えていただけませんか?」
「…次は負けねえぞ、ピアス野郎」
「“ツギワマケネエゾピアスヤロウ”、ですね。
ではバトルフェイズ、〔ナノブレイカー〕の攻撃、ツギワマケネエゾピアスヤロウっ」
サレンダーもせず、叩き込まれた一撃を受け、神成はただ立ちすくんでいた。
神成:LP0
「同じ相手とデュエルするなんざ面倒なだけだが…必ず取り返しに行くぜ、〔バリスティック〕をな」
「…私はコピーカードを含めた3枚の〔バリスティック〕を使いますが…あなたは2枚だけで?」
「安心しろ、所在不明のラスイチってのは…ここにあるからよ」
そういって神成は懐から1枚のカードを取り出した。
紛れもなく、〔キメラテック・バリスティック・オーガ〕。
製造された4枚全て所有しているとは、神成という男も只者ではない。
「次はバリスティック対バリスティックだ、吠え面かかせてやるぜ」
「…お待ちおります」
いつの間にか、神成の言葉から震えるほどの怒りは消えうせていた。
デュエル中の怒りをデュエル後も持続させるほど、神成は無粋でも神経質でもなかった。
相手の戦術がどうであれ、一度戦えば敵だろうと怨敵ではなく好敵手なのだ。
「終わりましたか?」
いつ頃から居たのか、歩道橋の上にはひとりの幼児がいた。
エビエスの部下に連れられて来たらしく、その腕にはデュエルディスクが装着されている。
「…次の対戦相手は…あなたというわけですか。
私があなたのお相手を努めさせていただきます正念党七人衆、エビエスです。
あなた様のお名前を伺ってよろしいでしょうか?」
「僕の名前は倉塔福助…よろしくお願いしますっ」
エビエスはコピーデッキを作る際、リストなどは見ない。
名前を記憶の中から呼び起こし、そのまま再現、改良するだけだ。
どんなに強いデッキであろうともミラーマッチを前提としたエビエスに多少の利が生まれるというわけだ。
…が。
「…え?」
思い出した記憶を吟味し、エビエスは唖然とした。
――切り札は〔精霊術師 ドリアード〕と〔風林火山〕のコンボ…!?――
――主力アタッカーは〔錬金生物ホムンクルス〕や〔エレメンタル・ザウルス〕――
――デッキテーマ、コンボの爆発力、カードパワー…どれを見てもコピーする価値もない――
エビエスは今まで、強い相手の強いデッキしかコピーしたことがなかった。
それは当前だ。レアカードを奪い、負けが認められないからこその七人衆、弱小が相手ならば七人衆が出向くはずもない。
必勝が求められるからこそコピーする、だがコピーしなくとも必勝できる敵をエビエスは知らなかった。
この体験と出会いがエビエスを変えることになるのだが、全ては次回へ続く。
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遊義皇23話(前)
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以前はバイパス道路として幅広く使われていた行きと帰りの二車線しかない国道。
今はもっと便利な片道四車線の道ができ、日付が変わる頃には利用者は皆無と云っていい。
横断歩道を通る人間も少なく、まして歩道橋といえば出番はないのだが、今晩は違った。
「さて、それでは最後に…〔グローアップ・バルブ〕と〔ジェネティック・ウーマン〕をシンクロ。
〔A・O・J カタストル〕ですが、何かチェーンは?」
「…あ?」
「神成さま、優先権の確認です」
「ああ、いいよ、何もしねえ」
寂びれた歩道橋の上で繰り広げられているデュエルは、どこか覇気が感じられない。
対戦中のデュエリストのひとり、神成鏡真のどこを見ているのか判らない定まらない視点は、なにを考えているのかすらわからず、ただ気だるそうにデュエルディスクを操作する。
「…さて、神成鏡真様。
私、ティマイレ・ハーヴェスのサイキックシンクロ戦術は…あなた様の真・サイバー流に見劣るものでしょうか?」
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ティマイレ・ハーヴェス
・LP:7000
・手札3
・モンスター:〔スターダスト・ドラゴン〕〔ナチュル・ランドオルス〕〔トライデント・ドラギオン〕〔A・O・J カタストル〕
・魔法・罠:脳開発研究所(カウンター2)、幽体離脱、伏せ
神成鏡真
・LP:8000
・手札4
・モンスター:〔サイバー・オーガ〕〔綿毛トークン〕〔綿毛トークン〕
・魔法・罠:伏せ 伏せ
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&html(<Table Border BorderColor="#d3e589" Border="2"><Tr><Td>スターダスト・ドラゴン</Td><Td>風属性</Td><Td>ドラゴン族</Td><Td>レベル8</Td><Td>ATK2500</Td><Td>DEF2000</Td></Tr><Td ColSpan="6">チューナー+チューナー以外のモンスター1体以上:「フィールド上のカードを破壊する効果」を持つ魔法・罠・効果モンスターの効果が発動した時、このカードをリリースする事でその発動を無効にし破壊する。<BR>この効果を適用したターンのエンドフェイズ時、この効果を発動するためにリリースされ墓地に存在するこのカードを自分フィールド上に特殊召喚する事ができる。</Td></Table>)
&html(<Table Border BorderColor="#d3e589" Border="2"><Tr><Td>トライデント・ドラギオン</Td><Td>炎属性</Td><Td>ドラゴン族</Td><Td>レベル10</Td><Td>ATK3000</Td><Td>DEF2800</Td></Tr><Td ColSpan="6">ドラゴン族チューナー+チューナー以外のドラゴン族モンスター1体以上:このカードはシンクロ召喚でしか特殊召喚できない。<BR>このカードがシンクロ召喚に成功した時、自分フィールド上に存在するカードを2枚まで破壊する事ができる。<BR>このターンこのカードは通常の攻撃に加えて、このカードの効果で破壊した数だけ1度のバトルフェイズ中に攻撃する事ができる。</Td></Table>)
&html(<Table Border BorderColor="#d3e589" Border="2"><Tr><Td>A・O・J カタストル</Td><Td>闇属性</Td><Td>機械族</Td><Td>レベル5</Td><Td>ATK2200</Td><Td>DEF1200</Td></Tr><Td ColSpan="6">チューナー+チューナー以外のモンスター1体以上:このカードが闇属性以外のモンスターと戦闘を行う場合、<BR>ダメージ計算を行わずそのモンスターを破壊する。</Td></Table>)
&html(<Table Border BorderColor="#d3e589" Border="2"><Tr><Td>ナチュル・ランドオルス</Td><Td>地属性</Td><Td>岩石族</Td><Td>レベル7</Td><Td>ATK2350</Td><Td>DEF1600</Td></Tr><Td ColSpan="6">地属性チューナー+チューナー以外の地属性モンスター1体以上:このカードがフィールド上に表側表示で存在する限り、<BR>手札の魔法カード1枚を墓地へ送る事で、効果モンスターの効果の発動を無効にし破壊する。</Td></Table>)
&html(<Table Border BorderColor="#0f9926" Border="2"><Tr><Td>脳開発研究所</Td><Td>フィールド魔法</Td></Tr><Td ColSpan="4">このカードがフィールド上に存在する限り、通常召喚に加えて1度だけサイキック族モンスター1体を召喚する事ができる。<BR>この方法でサイキック族モンスターの召喚に成功した時、このカードにサイコカウンターを1つ置く。<BR>また、自分フィールド上に存在するサイキック族モンスターの効果を発動するためにライフポイントを払う場合、代わりにこのカードにサイコカウンターを1つ置く事ができる。<BR>このカードがフィールド上から離れた時、このカードのコントローラーはこのカードに乗っているサイコカウンターの数×1000ポイントダメージを受ける。 </Td></Table>)
&html(<Table Border BorderColor="#b21162" Border="2"><Tr><Td>幽体離脱(アストラル・トリップ)</Td><Td>永続罠</Td></Tr><Td ColSpan="4">500ライフポイントを払い、フィールド上のサイキック族を選択して以下の効果を適応する。<BR>●指定したモンスターがチューナーではない場合、そのモンスターがフィールド上に表側表示で存在する限り、チューナーとして扱う。<BR>●指定したモンスターがチューナーだった場合、そのモンスターがフィールド上に表側表示で存在する限り、チューナーとは扱われない。<BR>この効果は1ターンに3回までしか使用できない。 </Td></Table>)
&html(<Table Border BorderColor="#cc7a28" Border="2"><Tr><Td>サイバー・オーガ</Td><Td>地属性</Td><Td>機械族</Td><Td>レベル5</Td><Td>ATK1900</Td><Td>DEF1200</Td></Tr><Td ColSpan="6">このカードを手札から墓地に捨てる。<BR>自分フィールド上に存在する「サイバー・オーガ」1体が行う戦闘を1度だけ無効にし、<BR>さらに次の戦闘終了時まで攻撃力は2000ポイントアップする。<BR>この効果は相手ターンでも発動する事ができる。</Td></Table>)
「えーっと…あんたさあ、えーっと…」
「ティマイレです、ティマイレ・ハーヴェス」
「俺、メンドーなのとか嫌いなんだよね。
だから最後まで諦めないでデュエルとかか根性丸出しなのとかイヤでさァ。
サレンダーとかなにが悪いの? って系の人なんだよね」
ティマイレの脳内からは、ゲームが始まってからひとつのクエスチョンマークが消えなかった。
今回の正念党の始めた“テロ大会”では、ティマイレのような七人衆に次ぐ実力者と戦うには星4~5クラスのメンバーをデュエルで倒さねばならないルール。
つまり、目の前の神成という男は正念党の主力メンバーを倒し、自分に挑んでいることになる。
名門:サイバー流の分家である真・サイバーという流派の党首というが、こんな男に代表が勤まるというのが輪をかけて胡散臭い。
「それでは神成さま、サレンダーをどうぞ]
「…俺さあ、理解力が残念な人って嫌いなんだよね、二度も三度も説明させるからさ…」
「は?」
「俺が勝つからサレンダーしてもいいぞ、っつってんでしょうがよ。
伏せカード発動〔鬼ヶ道〕…発動だ、理解力の低いアンタのためにもう一回云ってやると、発動だよ」
&html(<Table Border BorderColor="#b21162" Border="2"><Tr><Td>鬼ヶ道(オーガ・バイロード)</Td><Td>通常罠</Td></Tr><Td ColSpan="4">。フィールド上の「サイバー」と名の付くモンスター1体をリリースして発動する。<BR>自分の手札からリリースしたモンスターのレベル+3以下のレベルの「オーガ」と名の付くモンスター1体を召喚条件を無視して通常召喚する。</Td></Table>)
瞬間的に〔サイバー・オーガ〕の体が分解、そして神成の手札へと繋がるジェラルミンの道として建設される。
その道を、鉄の花道を1体のモンスターが歩いてくる。
「長い名前だから一度しか云ってやらないぞ、〔キメラテック・バリスティック・オーガ〕…召喚だ」
&html(<Table Border BorderColor="#cc7a28" Border="2"><Tr><Td>キメラテック・バリスティック・オーガ</Td><Td>地属性</Td><Td>機械族</Td><Td>レベル8</Td><Td>ATK2000</Td><Td>DEF2500</Td></Tr><Td ColSpan="6">このカードは通常召喚できず、「キメラテック・バリスティック・オーガ」の効果以外で特殊召喚できない。<BR>このカードを手札から捨てることで、手札または墓地に存在するこのカードの同名カードを特殊召喚する。<BR>また、フィールド上の任意の機械族モンスターをリリースする事で、次の戦闘終了時までリリースしたモンスターの数×1000ポイント攻撃力がアップする。<BR>この効果は相手ターンでも発動する事ができる。</Td></Table>)
シルバーメタリックな球体ボディに、深夜でなければ空が移りこんだと思うような青を帯びて、真ん丸の胴体に一本角の頭を生やした巨体、それが神成の切り札だった。
「攻撃力2000…弱くはないが強くもない、そんな数字に感じますが?
攻撃力上昇の効果は有っても、あなたのフィールドには機械族なんて1体も居ませんし、ね」
「あんたさ、学校の先生とか親から、もうちょっと自分の考えを持てって云われなかったか?
伏せカードオープン、〔DNA改造手術〕ね、指定するのは機械族…」
&html(<Table Border BorderColor="#b21162" Border="2"><Tr><Td>DNA改造手術</Td><Td>永続罠</Td></Tr><Td ColSpan="4">発動時に1種類の種族を宣言する。このカードがフィールド上に存在する限り、フィールド上の全ての表側表示モンスターは自分が宣言した種族になる。</Td></Table>)
「ああ、なるほど、それで〔綿毛トークン〕を機械族にする作戦ですか…。
ただどれだけパワー上げても〔カタストル〕の前では無力。
それでも一応、〔ツイスター〕を手札から使わせていただきます」
&html(<Table Border BorderColor="#0f9926" Border="2"><Tr><Td>ツイスター</Td><Td>速攻魔法</Td></Tr><Td ColSpan="4">500ライフポイントを払って発動する。フィールド上に表側表示で存在する魔法または罠カード1枚を破壊する。 </Td></Table>)
ティマイレ:LP7000→LP6500
「…だからさあ、そういう無駄なことするの、やめてもらえねぇかなぁ…。
〔悪魔の手鏡〕で〔ツイスター〕を〔脳開発研究所〕にズラすわ」
&html(<Table Border BorderColor="#b21162" Border="2"><Tr><Td>悪魔の手鏡</Td><Td>通常罠</Td></Tr><Td ColSpan="4">フィールド上の魔法・罠カード1枚を対象に発動した相手の魔法を、別の正しい対象に移し替える。</Td></Table>)
脳開発研究所:破壊、墓地へ。
ティマイレ:LP6500→LP4500(〔脳開発研究所〕の効果)
神成は無駄な解説をしたがらないが、〔悪魔の手鏡〕はそれ自体が破壊能力をもつわけではないので、〔スターダスト・ドラゴン〕の系列のカードでは妨害できない。
よって、〔DNA〕には〔ツイスター〕はとどかない。
スターダスト・ドラゴン:ドラゴン族→機械族
ナチュル・ランドオルス:岩石族→機械族
トライデント・ドラギオン:ドラゴン族→機械族
綿毛トークン:植物族→機械族
綿毛トークン:植物族→機械族
「…一回だけ説明してやる。『バリスティック』ってマジギレとかそんな意味で、キメラテックって云ったらどういう意味か、判らないかなァ…?」
「? なにが…」
「…ああ、マジで教えられないと何も考えられない系かよ、いいよ、もう…。
食べ尽くせ、〔バリスティック・オーガ〕」
待ってました、とばかりに〔バリスティック〕は足元の〔綿毛トークン〕を丸呑みにし、それに順じて球体の胴体に左右一対の腕が生える。
攻撃力1000アップ=腕の増加、というわかりやすいデザインらしい。
「何度も云いますが…攻撃力を上げたところで〔カタストル〕相手では…」
「〔カタストル〕は最初から問題じゃねーんだよ、最初から機械族だからよぉ…」
跳ねた。〔バリスティック〕が跳ねた。
正面から〔カタストル〕に噛み砕き、嚥下し、次に〔トライデント〕に視線を向ける。
「…な、なん…?」
「ヘイ、ド低脳。自分で考えろ」
何度かテキストを読み返してもティマイレはこの状況が判らなかった。
焦燥の果てに、ふと〔キメラテック・バリスティック・オーガ〕という名前に意識を向けたとき、そこに答えがあった。
「キメラテック…って、相手モンスターもリリースできるのか…っ!?」
「最初からそう云ってンだろうがよォ~…」
最も一般的な“キメラテック”と名の付くモンスターは、おそらく〔キメラテック・フォートレス・ドラゴン〕だろう。
召喚条件や攻撃力は大して高くはないのだが、もっとも恐ろしいのは相手フィールド上のモンスターでも融合素材としてしまえること。
このカードがカードプールに存在だけで、機械族という種族の採用を考えるプレイヤーも決して少なくない。
同じように、〔バリスティック〕は相手フィールドのモンスターまで喰い荒らすのだ。
「防御、防御だ! 〔スターダスト〕…っ!」
「無駄で無知で無理、〔スターダスト〕は防げないエフェクトの方が多いんだよ。
ソリッドビジョンの都合でまだフィールドにモンスターが居るが、実際は発動宣言だけで全部リリースしてんだよ」
スターダスト・ドラゴン:フィールド→リリース
ナチュル・ランドオルス:フィールド→リリース
トライデント・ドラギオン:フィールド→リリース
A・O・J カタストル:フィールド→リリース
綿毛トークン:フィールド→消滅
綿毛トークン:フィールド→消滅
キメラテック・バリスティック・オーガ:攻撃力2000→攻撃力8000
「…で、まだあんたのメインフェイズなわけだけど…どうすんの、こうなったら」
「ぐぅぐっ…ァァア…」
ティマイレは残り少ない自身の手札を見てから、無言でデッキの上に手を置いた。
「だから最初から云ったじゃねーか。無駄なことはせず、サレンダーしろってよぉ~」
&html(<font size="10"color="#8b4513">第23話</font><font size="10"color="#b8860b"> 鏡・真</font>)
[[後編>http://www11.atwiki.jp/84gzatu/170.html]]に続く。
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2011-02-16T09:47:19+09:00
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遊義皇22話
https://w.atwiki.jp/84gzatu/pages/64.html
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とにかく広く、値段も相応のマンションの一室。
制々正念党がアジトとして使っている部屋でありながら、七人衆の総員である6人が揃うのはこれが初めてだった。
「…もう一回、云ってくれる?」
「二封気に会ったがデュエルで敗けて、連れて来れなかった」
聞き返すシャモンに、ウォンビックは濁さずに明瞭に発する。
大海原で釣り針を垂らすような感覚、次の瞬間には釣竿がどうなっているか判らない緊張感。
「…もお! ウォンビックくん、次郎くん!
キミたち弱いんだから俺に電話してよ! 電話越しででも俺がデュエルするよ!」
歳相応、シャモンのポップなまでの幼声だが、緊張は拭えない。
シャモンという男の感情ベクトルの方向を読みきることは、どんなデュエリストにもできはしない。
天性の笑顔のポーカーフェイス。
切り札を出すときも、守りを固めるときも、コイツの表情に緊張はない。
「…その場の俺たちがデュエルするのが筋だろう」
「図に乗るなよシャモン・B・ウノンテッ! キサマとのデュエルでは私が花をもたせてやったに過ぎん。
そして今度のデュエルは、ブラックマインのヤツのミスと私が貸してやったカードが強すぎたせいだ」
“弱い”という言葉は否定しないし、したとしても結果が無ければただの言い訳…だが、堂々と負けた言い訳をする彼は神次郎。
彼にはネガティブとか自信喪失、という言葉は似合わず、理解もしないのだ。
「…もぉ、気が利かないなぁッ!
デュエルで勝てなかったなら両手足切ってでもいいから連れてきてよ!」
二封気が予想した通りのセリフに、クロックは苦笑い。
だが、当のウォンビックと神次郎は苦笑いどころではない。
そのあとに続いた予想、『お前らの骨の一本や二本折るかもしれないからな』まで当たる可能性がある。
「あぁー、シャモン、二封気のヤツ、まだしばらく大阪に居るぜ?
っつーか、状況的に考えて、多分、ナニワカップにくるヤツに用があるみたいだな」
出された助け舟に、シャモンの意識がクロックへと向いた。
「…なんで?」
「あぁー、当然だろ?
二封気にしてみれば、正念党がナニワカップに手を出すのは想定してるはずだ。
つまり、俺らに鉢合わせするリスクが高ぇ、ってわけだな」
「なるほど。
そんなリスクを冒してまで大阪に来ているという事はナニワカップに用があるからだ、と。
一理有りますね」
「…うん、わかった」
云いつつ、シャモンはベランダの窓を蹴っ飛ばしている。
防弾ガラスはあっさりと割れ、いくつかの破片になっていた。
「分かっていてもさァ~~…イライラが止まらないんだよォ~ッッ!」
いくつかのガラス片を拾い、フリスビーでも投げるように軌道を描いてイライラの根源を切り裂くべく連投する。
当然、その先のイライラの根源とは、ウォンビックと神次郎のことだ。
えぐり込むように、ナイフのように、ガラスが深々と突き刺さる。
「フハハハハハ、ハハっ…死ぬかと、死ぬかと思ったが…」
「喋るなジロウ、何を言っても格好が付かん」
穴だらけのソファーだけはウォンビックを恨むかもしれないが、他の七人衆は賞賛していた。
一呼吸の間でそばに有ったソファーを起こし、自分は身体を丸めてその後ろに入る。
ただ、そこまでやってもソファーが小さく、ウォンビックが大きかったので腕に小さいのが刺さったが。
神次郎の方は反射的に天井に張り付き、やりすごした。
「あぁー、さて、シャモンのストレス発散が終わってジロウとウォンビックの曲芸も見た。
本題は? いつ、なにをするために七人衆を揃えたんだ?」
「喋ンのは俺じゃないよ、エビエス、ヨロシク」
「お任せを。 シャモン様。 皆様、よくお聞きください」
全身にピアスをジャラジャラとくっ付けている男、第七幹部のエビエスが資料を手渡していく。
彼にとってはシャモンだけが心中から敬意を払う相手であり、他の幹部は全て挨拶をするだけだ。
「我々の目的は一つ、明日開催するナニワカップの参加者の使うレアカードの奪取です」
「…あぁー、シンプルで良い説明だがエビエスよぉ、資料もシンプルすぎるぜ?
奪うカードが書いてねェ、参加者の名簿と所持カードだけだ」
どこから入手したかは知らないが、エビエスが用意した分厚い資料は、参加選手の情報が詳細に明記されていた。
その資料には、数時間前に参加表明したばかりの福助や刃咲の名前と所持レアカードまで載っていた。
だが、その内のどのカードを奪うか、その情報は書いてない。
「書いてませんよ、必要ありませんから」
「あぁー…判るように頼むわ」
「では、逆に伺いますが…我々が奪わなくてもいいレアカード、とはどんなものでしょうか?」
「あぁー…そういうことか」
「奪わないカードがないならば、答えはひとつです」
&html(<font size="10"color="#8b4513">第22話</font><font size="10"color="#6b8e23">デュエリストの条件</font>)
&html(<font color="#ff0000">2</font)
「…というわけで、明日の大会の予選では、登録されたカードは使用不可でのデュエルを行う。
手持ちの〔カイバドル〕で、施設内の売店でカードを買って、即興でデッキを作ってもらうよ」
「じゃあ、僕の〔ドリアード〕は使えないんですか?」
驚いている福助に笑顔で応えるゼーアシュバルツ。
「そうなるね。本戦まで勝ち上がれば使えるようになるからさ、頑張ってよ。
プロデュエリストになると、構築の相談とかもあるし、強いだけじゃライセンスは渡せないんだよね」
「じゃあ、ゼーアさんたちも他の人のデッキ構築とかするんですか?」
「まあね…客じゃないけどうちの弟なんか酷いよ。
普通のデッキさえ回してれば俺より強いのに、『〔レオ・ウィザード〕は絶対に三枚積み!』って譲らなかったり…」
「ゼーア・シュバルツ、いいんスか?」
正念党のアジトより手狭なナニワカップ運営委員用のマンションは、大会資料の詰まったダンボールでさらに手狭になっていた。
その空間に運営委員全員がミーティングの為にそろい、しかも参加者の子供ふたりがそれを見学している。
空蝉の『いいんスか』も、もちろんその参加者のふたりのせいだ。
「空蝉くん、いいんすか、って何が?」
「大会の内容を参加者に教えて良いのか、ってことですよ。ヒイキじゃないです? それ」
「俺たちのことか、って聞くこともねえな、指差されてるし」
「黙って向こうで時間潰してろよ、参加者の坊ちゃんら。ネットデュエルでもゲームでもなんでもいいから」
「…口調はともかく、云っていることを吟味すると『ネットゲームも楽しいよ♪』ってことだね、空蝉くん」
余計な一言に、空蝉は余分にあるパイプ椅子をゼーアに投げつけた。
普通なら流血騒ぎだが、ゼーアは近距離から放った椅子を遠くから投げたフレスビーのように優しくキャッチしている。
「…パソコン使い方わかんねーんだけど。オセロ村にはパソコンなんて無かったし」
そんな曲芸に驚きもしない五歳児と八歳児…むしろ有ったら使えるのか。
「じゃあ神成くん、頼んで良い? ふたりに教えちゃってよ」
返事もせず、呼ばれた男、神成鏡真は気だるそうに立ち上がった。
デュエリストとして運営委員を引き受けたというのに、やらされる仕事が子供にパソコンのレクチャー。
腹を立ててもおかしくないのだが、彼に限ってはそれはない。人間ができているから、というわけではなく、彼にとっては大会どころか、全ての事実に関心がないのだ。
「で、話戻しますけど、盗聴器付けてきた参加者も居たよね、今回。
でも、俺はそういう人たちにペナルティを課すつもりもないし、注意もしない。
デュエルが強いだけじゃ勤まらないのがプロで、情報収集やコネも、力のひとつってのが俺のモットー。
…もちろん、こういうパイプ椅子ジャグリングなんかもね、神成くん」
「あんたのモットーで勝手に決めて良いんスか?」
「俺、運営委員長だけど、それがなにか」
その一言に空蝉は二の句を失った。
残る2名の運営委員の女たちに助言を期待するも妄想の域をでない。
そもそも、彼女たちは細かいルールに興味を持ってすら居ないし、ただ強いデュエリストと戦えれば文句のないという人種だ。
それについては空蝉も大差ないのだが、そこは男性脳と女性脳、理論に走りたがる。
「まあ…いいですよ、それなら。
俺は俺で大会は楽しませてもらいますよ…ただし」
「わかってるよ、正念党が出てきたら君たちカップル…。
空蝉くんとザインちゃんに伝えれば良いんだろう、鵜殿ちゃんもそれで構わないね?」
「よろしおす…よほどの御耳の方でなければ、お譲りします」
「いや、耳が良かろうと譲ってくださいよ、八兵衛さん」
「御無体なことをおっしゃいますなァ。
手前も人間…誓約よりも滾る下腹部から突き上げる熱情がございますゆえ。
耳垢に泣いている&html(<ruby><rb>美耳<rt>びじ)をお持ちのレアハンターならば、手前でお相手させていただきます」
応えたのは、運営委員の鵜殿八兵衛、二十七歳。
イヤーエステ…いわゆる他人の耳掃除をして生計を立てている人種だ。
八兵衛の膝枕での耳掻きは、月並みながら天に昇るほどの快感を伴い、予約は年単位で埋まっている。
これで男だったら犯罪的だが、名前に関わらず女性、しかも着物美人。
…なにもせず、いわなければ、ただの美人なのに…。
「そんなに良いモノですかね、耳掃除ってのは」
「それは勿論の事。
日本の誇る文化…ああ、でも、空蝉はんの耳は勘弁させてくださいまし」
「それはまたどうして?」
そう訊いたのはゼーア・シュバルツ。
空蝉自身は、話題が話題だけに、なんとなしに聞きにくかった。
「好いてる人が居てはるなら、その人にやってもらうのが一番。
耳掻きの一番の技術は、愛どす」
「それはもしかして私のことか」
最後の運営委員、彼女の名は天辺才印。
八兵衛ほどではないが女に付ける名前ではない。
肉付きが少なく、男女共用できそうな簡素な服装で男女の見分けが付かず、しかもパトカーか救急車かは判らないが、通報間違いなしのファッションをしている。
「空蝉はんが好いてらっしゃる女子さまが他にいらっしゃいますかな?」
「八兵衛さん、俺はともかく、ザインを冷やかすのはやめて貰えませんかね。
結構恥ずかしがりやで、すぐ顔に出すんで」
「お前は包帯越しに私の表情が判るのか」
通報間違いなしというファッションは、大昔のホラードラマの主人公のマネか、覆面のように顔は包帯巻き。
しかも、顔面の正中線を通るように『我全盲』と墨で一筆書いてある。
ということは、彼女は一回包帯を解くたびに新しく書いているんだろうか。
「それはまあ、愛してるからな、お前のことは何でも判るぜ?」
「それは凄い能力だな。
ただ、何でも分かる天敵デュエリストに私はデュエルで負けた覚えがないが」
「俺が勝ってこれ以上俺に惚れ直したら、好きすぎて死んじまうだろ?」
スキュタレー暗号みたいなコスチュームの恋人に、堂々と惚気る空蝉高差。
こういうセリフを吐かせる辺り、恋は盲目という言葉は使いやすい。
盲目な少女に恋して盲目な青年、といえばもう喜劇にしかならない気がするが。
「…お前のそういう発言が最も私の神経を逆撫でするのだが、その自覚はあるだろうな、高差」
「熱いなぁ、若いなぁ、羨ましいなぁ、ふたりは。
ずっと見てたいよ、君たちの夫婦漫才」
「…殴りますよ、ゼーア・シュバルツ」
実際に殴りかかりそうなザインの気配を察し、ゼーアはわざとらしく笑ってから『話を戻すけど』と前置きをした。
「正念党はやっぱり問題だね。他にもレアハンターは居るわけだけど、数が違うからね。
あちらさんがデュエルを仕掛けてきても、私怨があるザインちゃんと空蝉くん以外は買わない感じで。
もし実力行使を仕掛けてきたら簡単に相手してあげてね、殺さない程度に…かつ二度と歯向かおうなんて思わないくらいには痛めつける感じで」
「…あんたのギャグ、判りにくいんですけど」
「いやいや、俺、こう見えてもシャレって好きじゃないんだよね、センスないしね」
その発言こそがギャグだと祈りたいが、自認するようにゼーア・シュバルツにはその類のセンスはない。
どういうリアクションを取ればいいのか空蝉が迷っているとき、隣室で子供たちにパソコンを教えていたはずの神成が顔を出した。
「ゼーアシュバルツ…えーっと」
「どうしたの、神成くん?」
「…」
何から喋ろうか、そう考えを巡らせるような態度を見せた神成だが、すぐに自分でテレビを点けた。この方が面倒じゃなくていい。
【…ーイ、繰り返しまーす! テレビ、ラジオ、衛星通信は俺たち、制々正念党が借りたよー。
これから明日の朝5時まで、バッチリ付いてきてねーッ!】
テレビに映っていたのは六人の男たち。それぞれが縁日のお祭りで売っていそうなプラスチックのお面を被っている。
喋っているのはその中央、特撮ヒーローのお面をさかさまにして点けている緑色のフードの少年だ。
「…なんだ、コレ…?」
「電波ジャックだろう? さっきテレビの中のヤツがそう云っただろう?」
「そういうことじゃねえだろ、ザイン。
正念党って…なんでレアハンターが電波ジャックなんてするかってことを聞いてるんだよっ」
「これから説明するだろう、少し黙れ」
【ルールはカンタンッ! ナニワカップに集まったみんなと俺たちとの総力戦ッ!
大阪市内の全てのカードショップにレアハンターを配置してまーす。
んで、その中の誰かに勝つとそのレアハンターの直属上司のレアハンターの居場所を教えてくれま~す。
それを繰り返していくと、俺以外の…後ろのみんなの所在地に到達しまーす】
先頭の少年レアハンター――どう考えてもシャモンだが――が指を差して後ろの五人を呼ぶ。
【第二幹部…ロックデッキを使う…何人で掛かってきても構わない】
【第三幹部です。多くの方に来ていただけたら嬉しく思います】
【あぁー…第四幹部だ、俺ンとこには来るなよ、面倒だから】
【ハーッハァぁッ! 私の名前は神じ…名前NGだとッ!? それでは私だと判らないではないか!
…っち、第五幹部だ。倒す価値のないザコは他の連中のところへ行け、私のところには来るな】
【第七幹部です…私だけこのようにお面ではなくピアスですが、常日頃からこのような顔をしています。
今日以外にも、機会があれば是非にお相手ください】
【以上、七人衆のみんなでした~。
というわけで、各カードショップには第二、第三、第四、第五、第七の直轄の人たちがいまーす。
その人たちを倒すと、次はちょっと強い人…星認定で云うと星5~星6くらいかなー…って人たちの所在地を教えてくれまーす。
その人を倒すと、次は今喋ってくれた幹部のみんなとのデュエルができまーす。
それでも勝つと、今度は俺、第一幹部とデュエルできるよ。
で、俺にまで勝つと、こちらの商品をプレゼントしまーす】
そう云って第一幹部はカメラの外側に置いてあったらしいカバンを持ち出し、中身を見せた。
【九大レアの〔無限の力〕〔サイクロン・ブレイク〕を含む、レアカード詰め合わせ1万枚セット!
これでデッキを作ってもよし、売ってもよしッ…あ、アンティのレアカード持参と移動のタクシーとかは自腹でお願い、あと路上デュエルは危ないからご法度…そんな感じで、待ってまーす】
その発言が終ると、『ハーイ、繰り返しまーす! テレビ、ラジオ、衛星通信は俺たち、制々正念党が』…などと完全にループしているらしいセリフに戻った。
「大阪府内の全ての通信をジャックって…スゴイねえ、発想とか技術とか、その他諸々」
ゼーア・シュバルツの云うとおり、これは並の出来事ではない。
現代日本において通信とは様々な防護がされており、どれかひとつを掌握するだけで何人のエキスパートが必要になるのやら。
その気になれば日本国一つを敵に回せるだけの技術力、その誇示である。
「何をノンキな。わたしたちはどうしおす?、ゼーアはん。
連絡ができないいうことは海馬コーポレーションとも音信不通…あんたはんに決めていだかんと」
「んー、鵜殿さんや神成さんは命令を聞いてくれるかもしれないけど…。
仮に待てって云っても、空蝉くんとザインちゃんは行くでしょ?」
返事こそなかったがそのカップルの滾る闘志を鑑みれば、そもそも返事を待つ必要すらない。
恨みというのは下らないと誰かが云った、許すことが大事だとその人物は云う。
だが、無理なものは無理、空蝉とザインには止まれない理由がある。
「…で、まあ、雇い主の海馬コーポレーションさんも多分動き出すとは思うんだよね。
あそこの社長さんだったら地球の裏側からだって駆けつけてくれるだろうし…それまでは…」
「それまでは?」
「それまでは…俺たち運営委員は全員で“この事態の収束のため”に正念党に戦いを挑む。
その結果としてカードを得たりしても、それはそれ、役得ってことで」
「それは…ヤル気でるわ」
依然として覇気のない神成だが、いつの間にか腕にデュエルディスクを嵌めているあたりが彼のいうヤル気の現れなのだろう。
一枚のレアカードが数十万円する昨今、それが一万枚のレアカードとなれば、何代か遊んで暮せるだけの報酬なのは間違いない。
「で、どうする? 蕎祐くんに福助くん、ちょっと荒っぽい事態になりそうだから勧められないけど?」
うつむいて沈黙していた幼児ふたり。だが、彼らの沈黙理由は全く異なっているわけだが。
「やりますよ、僕はッ! 強い人がたくさんいるってことですから!」
ナチュラルボーン・デュエリスト、その震えと沈黙は敵への興奮、倉塔福助。
「あのダメ大人…なにやってんだ、とうとう犯罪者かよ…ッ!?」
動画に写っていた『第四幹部』を自称する“あぁー”が口癖の男が誰かに気付いていた刃咲は動揺していた。
ゼーアも午前中に幼児ふたりの保護者として現れた男…クロックと物腰から連想はできているらしく、刃咲の現在の状況をただひとり把握していた。
「安心しろッ…ていうのは何か違うけど、これは犯罪には問われないだろうね。
普通のカードハント組織がこんなことができるわけがないし、その常識によって『名を語られただけ』という主張が大勢だと思う」
「そういう問題じゃないッ、通信って…夜とは云っても緊急の用事だってあるだろ!
救急車とかパトカーとか…たくさんの人に迷惑を掛けて…なんなんだよ!」
「テンパらないで蕎祐くん。
デュエリストっていうのは…なんていうか…ある程度、そういう人種なんだよ」
「ハアッ!? 意味判んねえよ! なんなんだよ!」
なぜこんなに興奮しているのか、刃咲自身にもわかっていなかった。
「これがデュエリストっていう職人の世界、っていう他に言い方が思いつかないな。
だから、みんなはもう決めた」
刃咲が意識を外に向ければ、既にゼーア・シュバルツと福助以外に室内にデュエリストがいない。
開け放たれた玄関からは『デュエル!』という掛声が聞こえている。
「…多分だけど、価値の高いレアカードを持っているデュエリストの家にはそれぞれに刺客が来てるんだろうね。
今、外で神成くんが相手してくれてるみたいだ。これから朝五時までって云った大して時間がないからね、俺も行くけど」
言い残し、ゼーアは当たり前のようにベランダへ向っていく。
既に窓が開けられていることを考えると他のメンバーもそうやったのかもしれないが…とにかく、ゼーアは四階のベランダから当たり前のように飛び降りた。
窓の外から聞こえてきたのは、余裕すら伝わってくる『スタっ』という擬音だけ。
「チクショウ…なんなんだよ、なんなんだよ、何が…何がデュエリストなんだよ…!?」
「刃咲くん…? どうしたの? 行こうよ」
悩まない福助、年齢ゆえに状況がわかっていないのか、それとも天性のデュエリストだからか、福助は愚直であった。
愚直だから悩まない、愚直だから道を知らない、道を知らないから躊躇わない…その結論を賢者たる刃咲は実感してしまっていた。
どちらにせよ、自分には理解できない領域だった。
「なんでだよ、なんで…意味が判んねえよ…」
テレビでバトルシティで優勝者が決まった瞬間を見た者は、“真のデュエリスト”とは武藤遊戯を差すと実感するだろうし、刃咲も例外ではなかった。
根拠もなく、説明はできないが、それでも何か、絶対的な確信があった。
少なからず憧れていた。誰だって憧れた。自分もあの領域に行きたいと、刃咲蕎祐もやはり例外ではなく思った。
「最初から“道”が判ってるヤツじゃないと…いけないのかよ…!
凡人は…ビビってるヤツは…デュエルしちゃあ…いけないのかよ…」
刃咲の苦悩を福助は理解できないという経験則。
それが3才という年齢差なのか、才能というべきものなのか、答えのない問いだけが刃咲の中に積もっていった。
何度もループ再生されている正念党のルール説明だけが響く部屋の中。
刃咲は早すぎる人生のターニングポイントに立っている感覚を味わっていた。
「…勝手に行けよ、タクシー代くらい持ってるだろ」
「よくわかんないけど…刃咲くん」
「なんだよ…」
「悩んだら、まずはデュエルすれば良いと思うよ」
「…!?」
いつの間にか、福助は両脇に大人用のデュエルディスクを2台抱えていた。
1台はもちろん自分のもの、そしてもう1台は…。
「ほら、僕ってお父さんとお母さんの顔も知らないじゃない?
それで泣いてたんだけど…刃咲くんがそんなとき、デッキを貸してくれたんだよね。
『スカッとするからやってみろ』って。だけど刃咲くんは手加減とかしてくれなくて…」
「そんなこと…あったか…?」
「それで何度も負けたけど、その内、僕も〔ドリアード〕とデッキを作ったら、悩んでる時間も全部デュエルと〔ドリアード〕のこと考えてて…
悩んだらデュエルだよ、考え込んでたってお父さんやお母さんの顔がわかる訳じゃないもん」
福助はデュエルディスクをリュックサックに詰め込んで、愛用の小さなスニーカーで出て行った。
目の前に置かれた昆虫族デッキが挿入されたデュエリストの称号を睨みつつ、刃咲は立ち上がれなかった。
だが、立ち上がれなかった。
それでも、立ち上がれなかった。
「…あのダメ大人には…借りが…あったな」
やはり立ち上がれない。
一向に立ち上がれない。
全く立ち上がれない。
“まだ”立ち上がれない。
「負けっぱなしは、趣味じゃァねーな…っ!」
膝が伸びた。涙は拭った。“もう”立ち上がった。
「まだ答えはわからねぇ、だが、それは“まだ”だっ!」
そして、部屋の中には誰もいなくなった。
開け放たれた玄関とベランダの中を風が通り抜け、カーテンが揺れ動かす部屋の中。
ループ再生されている正念党のルール説明だけが残響し続けていた。
映し出されたのは、正念党一の目立ちたがり屋、第五幹部の神次郎。
そして相対するようにバイクを唸らせているのは、十数時間前にクロック&刃咲とライデングデュエルを演じたロールウィッツ。
【緊急放送ッ! これから正念党第五幹部VS俺様の世紀の一戦が開催するぜ!
ああ? 俺が誰かって? アクロバットデュエル集団、&html(<ruby><rb>飛べない風船<rt>アイアン・バルーン)のロールウィッツ・ウェンディエゴ様だよ!】
「さあっ、踊ろうぜ!」
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&html(<table border="1" bgcolor="#D7F2F2" width="1200"><tr><td><font size="2"><center>)
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遊義皇プロローグ
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&html(<table border="1" bgcolor="#D7F2F2" width="1200"><tr><td><font size="2"><center>)
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&html(<Table Border Bordercolor="#1e332c" Cellspacing="10" cellpadding="5"><Td BgColor="#b2a5cc">御世路村(おせろむら)関東地方に有る人口283人の村。 <BR>名物は計18人の主夫・主婦のアイデア商品の製造・販売、観光名所は六角翡翠。 <BR>海・山に面している部分も多く新鮮な食事がいただけるが、宿泊施設が一つも無いので観光には向かない。 <BR>流行はデュエルモンスターズで、そのユーザー人数は全283人中252人、 <BR>村民が挙げる理由としては、「2人集れば面白いし、人数が増えても面白いから」と言う理由が多い。 <BR>以上、小英社「日本の村民事情」127ページより抜粋。 </Td></Table>)
秋のオセロ山に、カゴを背負った小さな人影が三つ。
大きさでいえば丘と見違える程度のものだが、獣たちが憂いつつも生きられるほどの豊かさを持っている。
起伏の大きな斜面、塊根が張り出した悪路。
観光者には勧めないような山だったが、近隣住民に取っては庭のようなもの。
「刃咲くん、前に植えたサクランボの種って、もう生えてるかなァ?」
丸みを帯びた顔に人懐っこい笑みを浮かべて、目元には2つの泣きボクロ。
どことなくデュエルモンスターズのカード、サイレントソードマンに似ているか。
野性の五歳児、&html(<ruby><rb>倉塔<rt>くらとう)&html(<ruby><rb>福助<rt>ふくすけ)は疲れた様子もなく、先頭を歩くもうひとりの少年に問いかけた。
「3ヶ月前に種を植えたぐらいで木が生えるわけはないだろ。
生えるのは俺たちにニキビが出来たり性に目覚めるころじゃないか。」
早熟というにも早すぎる意見を飛ばす八歳の童子。
彼の名は&html(<ruby><rb>刃咲<rt>はさき)&html(<ruby><rb>蕎祐<rt>きょうすけ)、どことなく日本人離れしたエラの張った顔であり、肌が青くないギゴバイト、といったところだろうか。
「えー? 今食べたいんだけど、サクランボ。」
「仮に十年前に植えてたとしても、今は旬じゃねーよ。
確か柿の木だったら少し歩けばあったはずだから、キノコ狩りが終ったら行ってみるか?」
「うー……じゃ、柿で我慢するよ、僕。」
「っつか、ゴネてもサクランボはでねぇけどな。
……ん? 壱華はどこ行った?」
もうひとりの連れの姿が無い事に気が付き、周囲を見渡す中、その少女の疾呼が山中に広がった。
悲鳴の類ではないが、緊急であることはすぐにわかった。
「走るぞ。」
カゴを揺らし、慣れた様子で狭い山路を走ること数十秒、少年たちは壱華を発見した。
フルネームを&html(<ruby><rb>倉塔<rt>くらとう)&html(<ruby><rb>壱華<rt>いっか)、福助の従姉妹で六歳。
少々短いボブカットに健康なくせに青白い肌……他の二人のようにカードで例えるなら、ヴァンパイア・ロードを小さくしたような容姿だ。
「って、えーっと……。」
「呼んだ理由はこれか? 壱華?」
壱華の視線の先にはダンボール箱が塔のように詰まれ、塔の下には台座のように人間がひとり埋まっていた。
最初は死体にも見えたが、血色がよすぎるし、何よりも少年たちを凝視している。
「あはははは……足を滑らせてバランスを崩してこんな状態だ。 起してくれないか?」
周囲は前日に振った雨でヌカルみ、どうやらそれに足を取られたらしい。
「これはひとつ貸しだぜ、オッサン。」
「オッサンって……俺、まだ21なんだけどなァ?」
ひとりでは困難な状況でも、他に三人も人間が居れば解決できない状況というのはそうそうありはしないもので。
さほど時間も掛けず、男は土中から這い出ることができた。
「ぷはぁ…助かったぜ、ありがとな、子供達たちよ。」
少年たちが発掘したのは、土にまみれていながらも判然できるほどに馴染んだ赤い髪が印象的な若い男。
泥を払い落としつつ、男は少年たちに軽く会釈してみせた。
「ハジメマシテ。 俺の名前は&html(<ruby><rb>列効<rt>れっこう) &html(<ruby><rb>二封気<rt>にふうき)。
オセロ村ってところに行く途中に電車が止まっちまったんで歩いてきたらたら……いやー、死ぬかと思ったぜ。」
自力で起き上がれなかったところを見ると、壱華や刃咲が発見していなければ本当に死んでいたかもしれない。
小さな山とはいえ、予備知識も装備も無く、大量のダンボール箱を持ったまま秋の山を歩いた。
その行動は、刃咲の目には“ある人種”の基準を満たしているように写った。
「あんた、完璧にダメな大人だな。」
「初対面の相手にそういう事を言うか? 普通?
…ところで子供たちよ、助けてもらったついでと言ったらなんだが、荷物を運ぶのも手伝ってくれないか?
1つ1つは対した重さじゃないんだが、流石に20個も持ってると腰が痛くてな。」
「その年で腰痛持ちか? アンタ。
命を助けた貸しにそれを運ぶ貸し……アンタには借し2つ、利子付きで3つは返せよ。」
年の差は干支一周以上あるというのに、刃咲には敬う気持ちは一片もないらしい。
そんな様子を福助はニコニコと見守り、壱華は面白くもなさそうに眺めている。
「んじゃあ、持って帰ったらこれを貸してやるよ。
えーっと、ホラ、なんつったっけ? ゲ…ゲ…」
「ゲド戦記の作者はアーシュラ・K・ル=グウィンですよ。」
やたらにマニアックな切り返しをする福助。 なぜにゲド戦記。
「いや、そうじゃなくて……ゲド?…ゴ?…あ、デだ……そうだ、デュエルディスクだよ。」
「20代で言葉が出てこないようなら、老後は間違い無く痴呆にな……って、デュエルディスク!?」
刃咲の毒舌も、デュエルディスクという言葉に止められた。
デュエルディスクといえば、2ヶ月ほど前にバトルシティというイベントにおいて発表された立体映像を生み出す機械。
デュエルモンスターズがブームになっているオセロ村でも欲しがっている人間は多いが、配達してくれる店もなく最も感心のある玩具である。
「明日からオセロ村で雑貨屋兼カード屋を開くことになってるんだ、&html(<ruby><rb>贔屓<rt>ひいき)に頼むぜ、子供たち。
っつーわけで、貸してやるから運んでくれねーかな。 貸し借りナシってことで。」
「じゃあ! 僕! 今デュエルしたいです!」
そこで元気よく手を上げたのは、やたらに目をキラキラさせた最年少、福助だった。
「や、俺としては早く山を降りたいんだが……まあ良いか。
お前ら、デッキは持ってるのか?」
「もちろんです! 刃咲くん! 壱華ちゃん!」
福助は至極当然といった様子で云っているが、当初の目的は山菜やキノコ狩りであって、デッキまで持ってくる必要は無い。
「俺は持ってきてねぇよ。」
「持って来てないわ。」
むしろ山菜を取りに来て、デッキまで持ってきてるお前はどうなんだ?
「相手がいねぇか……。
それならボウズ、今すぐやりたいって言うなら俺とやるか。」
ギ、っと目を釣り上がらせて笑みを浮かべる二封気。
こいつもデュエルモンスターズのユーザー、ということだろう。
「望むところです! お願いします!」
二封気は泥まみれのダンボール箱からテレビで見た半月状の機械を福助の手に巻きつけた。
そして当の二封気自身はリュックサックから少年たちがテレビで見たものとは違う形のデュエルディスクを取り出した。
いや、異なると言うよりも、デッキホルダーのすぐ後ろに別のホルダーのようなモノがすえつけられているのだ。
「……オジさんのディスクに付いてる、そのツノみたいなのは何ですか?」
デッキケース部分から伸びた数十センチに及ぶ奇妙な突起物、
そんな物はテレビで見たデュエルディスクにも、福助の手元にあるディスクにも無い初見の物だ。
「ただの自主改造だ、気にすんな。
……それよりも、俺はオッサンじゃなくてお兄さん、または二封気さんって呼んでくれよ、老けたみたいじゃないか。」
「それなら僕も子供扱いではなく、福助と名前でお願いします。」
見よう見まねで自分の腕にディスクを装着し、デッキホルダーにデッキを差込みつつも福助はハッキリと言い放つ。
「なるほど、それでは福助さん……例の挨拶でもしますか。」
「ええ、そうですね、二封気さん?」
両者ともにソリッドビジョンのために数メートルずつ後退し、そこであの言葉をハッキリと言い放つ。
『&html(<font size="5">デュエル!</font>)』
後々、このデュエルが福助だけでなく、刃咲や壱華、それにこれから出会う多くの人間も巻き込むことになる。
だが、そんなこと、この時点で知る由もなく、彼らはただただ始めて体感するソリッドビジョンにただただ興奮していた。
「それでは僕のターン(手札6)、僕は〔マンジュ・ゴッド〕を召喚します!」
カードセンサーは、配置されたカードのイラストを読み込み、光の速さでモンスターを形成した。
マンジュ・ゴッド:手札→福助のフィールド
「こいつぁ……すげぇな。」
「うん、凄いね、これは……。」
少年たちの感嘆は予想通りだったらしく、嬉しそうに、誇らしげに二封気はほほえんでいた。
間が抜けているところはあるが、悪人というわけではないらしい。
「うわぁ……っと。
僕は〔マンジュ・ゴッド〕の効果で〔精霊術師 ドリアード〕を手札に加え、ターン終了(手札6・伏せ0)です。」
&html(<Table Border BorderColor="#cc7a28" Border="2"><Tr><Td>マンジュ・ゴッド</Td><Td>光属性</Td><Td>天使族</Td><Td>レベル4</Td><Td>ATK1400</Td><Td>DEF1000</Td></Tr><Td ColSpan="6">このカードが召喚・反転召喚された時、自分のデッキから儀式モンスターカード、<br>または儀式魔法カード1枚を選択して手札に加える事ができる。 </Td></Table>)
このデュエルモンスターズは対戦型のカードゲームである。
野球のように攻守を“ターン”という単位で区分し、相手プレイヤーのライフポイントを0にすれば勝利だ。
つまり、今の福助のターンは『モンスターを召喚してとりあえず終った』といったところ。 序盤ならこんなもんである。
「俺のターン、 ドロー!(手札6)、
……〔キラー・トマト〕を召喚して〔マンジュ・ゴッド〕へ攻撃するぜ。」
キラー・トマト:手札→二封気のフィールド
&html(<Table Border BorderColor="#cc7a28" Border="2"><Tr><Td>キラー・トマト</Td><Td>闇属性</Td><Td>植物族</Td><Td>レベル4</Td><Td>ATK1400</Td><Td>DEF1100</Td></Tr><Td ColSpan="6">このカードが戦闘によって墓地へ送られた時、デッキから攻撃力1500以下の<br>闇属性モンスター1体を自分のフィールド上に表側攻撃表示で特殊召喚する事ができる。 </Td></Table>)
〔キラー・トマト〕(攻撃力1400)VS(攻撃力1400)〔マンジュ・ゴッド〕→共に破壊、墓地へ。
モンスターの戦闘は、互いの数値を比べ、高い方が勝つ。
負けたモンスターは墓地に送られるのだが、今の戦闘は両者の攻撃力値が同じなので相殺となる。
「〔キラー・トマト〕の効果で〔ロード・オブ・ドラゴン-ドラゴンの支配者-〕を特殊召喚するぜ!
&html(<Table Border BorderColor="#cc7a28" Border="2"><Tr><Td>ロード・オブ・ドラゴン-ドラゴンの支配者-</Td><Td>闇属性</Td><Td>魔法使い族</Td><Td>レベル4</Td><Td>ATK1200</Td><Td>DEF1000</Td></Tr><Td ColSpan="6">このカードが場に表側表示で存在する限り、<br>お互いの場の表側表示ドラゴン族モンスターは魔法・罠・効果の対象にはならない。 </Td></Table>)
ロード・オブ・ドラゴン-ドラゴンの支配者-:デッキ→二封気のフィールド
ただし、モンスターの優劣は攻撃力・守備力戦闘の数値だけで決まるわけではない。
キラー・トマトのように『敗北によって』能力を発動する物も多く、ただ攻撃力の高いモンスターを使えば良いわけではない。
「いくぜ! 今召喚した〔ロードオブドラゴン〕で福助を直接攻撃!」
特殊召喚された魔法使い型モンスターの立体映像は召喚された勢いをそのままに、福助にパンチを叩き込む。
「ッ!」
福助:LP8000→LP6800
「いたたたた……。」
モンスターが存在しない場合、モンスターはプレイヤーに直接攻撃をすることができる。
直接攻撃はモンスターの攻撃力分だけライフポイントにダメージを与えることができ、最も効率的なダメージ源といえる。
「ターンエンド(手札5・伏せ0)だ。」
「……ダメ大人よぉ、福助をなめてるのか? 伏せカードもださねぇなんてよぉ?」
刃咲少年は、二封気のプレイングに少々呆れたように口を尖らせている。
〔ロードオブドラゴン〕の1200という数値は低くはないが、決して安心できる数値ではない。
だが、二封気は気にも止めず、ケロっとしている。
「作戦だよ、作戦。……さあ、福助、お前のターンだ。」
「ドローします(手札7枚)、
僕は〔ドリアードの祈り〕を発動して、手札の〔黄金のホムンクルス〕をリリース。
手札から〔精霊術師 ドリアード〕を守備表示で降臨させます!」
4種類の光を帯びる金髪の少女は、福助を守るように跪いた。
&html(<Table Border BorderColor="#0f9926" Border="2"><Tr><Td>ドリアードの祈り</Td><Td>儀式魔法</Td></Tr><Td ColSpan="4">「精霊術師 ドリアード」の降臨に必要。<BR>フィールドか手札から、レベルが3以上になるように生け贄に捧げなければならない。</Td></Table>)
&html(<Table Border BorderColor="#1162b2" Border="2"><Tr><Td>精霊術師 ドリアード</Td><Td>光属性</Td><Td>魔法使い族</Td><Td>レベル3</Td><Td>ATK1200</Td><Td>DEF1400</Td></Tr><Td ColSpan="6">「ドリアードの祈り」により降臨、このカードの属性は「風」「水」「炎」「地」としても扱う。</Td></Table>)
精霊術師ドリアード:手札→福助のフィールド
魔法カードはモンスターをサポートするカードだが、時には戦術の基軸ともなる重要なカードだ。
今福助の使ったカードは、手札から特定のモンスターを呼び出すカードである。
「僕は伏せカードを1枚出して、ターンエンドです。(手札3・伏せ1)」
福助の出したモンスターの攻撃力は1200、〔ロードオブドラゴン〕とは相打ち。
そのため、比較的高い守備表示を選択して壁として使うらしい。
「俺のターンな、ドロー(手札6枚)。
とりあえず〔融合〕を発動、フィールドの〔ロード・オブ・ドラゴン〕と手札の〔沼地の魔神王〕を代用にする。
来い! 〔竜魔人 キングドラグーン〕を融合召喚だ。」
&html(<Table Border BorderColor="#0f9926" Border="2"><Tr><Td>融合</Td><Td>通常魔法</Td></Tr><Td ColSpan="4">決められたモンスターとモンスターを融合させる。</Td></Table>)
&html(<Table Border BorderColor="#6b23b2" Border="2"><Tr><Td>竜魔人 キングドラグーン</Td><Td>闇属性</Td><Td>ドラゴン族</Td><Td>レベル7</Td><Td>ATK2400</Td><Td>DEF1100</Td></Tr><Td ColSpan="6">「ロード・オブ・ドラゴン-ドラゴンの支配者-」+「神竜 ラグナロク」<BR>このカードがフィールド上に表側表示で存在する限り、<BR>相手はドラゴン族モンスターを魔法・罠・モンスターの効果の対象にする事はできない。<BR>1ターンに1度だけ、手札からドラゴン族モンスター1体を自分フィールド上に特殊召喚する事ができる。 </Td></Table>)
デュエルモンスターズの代名詞、融合。
定められたモンスター同士を墓地に送ることで、強力なモンスターを出す事が出来る。
二封気の使った〔沼地の魔神王〕は他の融合素材の代用として使える特殊能力を持っている。
「こいつはほとんどの魔法や罠は効かない! 〔ドラグーン〕で〔ドリアード〕を攻撃だッ!」
しかし、福助はそのモンスターに動揺する様子はなく、緩やかにセットされたカードを発動させる。
これは罠カードに多く見られる行為で、相手の行動に合わせて発動し、相手の出鼻を挫いたりすることができる。
「させませんっ! 僕はここで〔風林火山〕を発動して、除去効果を使います!」
&html(<Table Border BorderColor="#b21162" Border="2"><Tr><Td>風林火山</Td><Td>通常罠</Td></Tr><Td ColSpan="4">風・水・地・炎属性モンスターが全てフィールド上に表側表示で存在する時に発動する事ができる。<BR>次の効果から1つを選択して適用する。<BR>●相手フィールド上モンスターを全て破壊する。<BR>●相手フィールド上の魔法、罠カードを全て破壊する。<BR>●相手の手札を2枚ランダムに捨てる。<BR>●カードを2枚ドローする。 </Td></Table>)
「オイオイ。
そのカードはフィールドに四種類の属性のモンスターが居ないと使えない。
お前のフィールドには、〔精霊術師 ドリアード〕しかないないだろ?」
チッチと指を振りつつ諭すように言う二封気。
「そうです! 二封気さん! 僕のフィールドには〔精霊術師 ドリアード〕が居ます!」
「……あ。」
思い出したらしく、指を振ったまま凍りついた。
&html(<Table Border BorderColor="#1162b2" Border="2"><Tr><Td>精霊術師 ドリアード</Td><Td>光属性</Td><Td>魔法使い族</Td><Td>レベル3</Td><Td>ATK1200</Td><Td>DEF1400</Td></Tr><Td ColSpan="6">「ドリアードの祈り」により降臨、このカードの属性は「風」「水」「炎」「地」としても扱う。</Td></Table>)
〔風林火山〕はフィールドに異なる地・水・火・風のカードを揃えなければならない発動難易度の高いカード。
だがしかし、〔精霊術師ドリアード〕は例外で、このカードが居るだけで5種類の属性のモンスターがいることになる。
このように、お互いの効果の欠点を埋めるように戦術を考え、デッキを組む。 それがデュエルモンスターズだ。
「そして、〔風林火山〕の除去効果は発動時に対象を指定しません。
だから〔キングドラグーン〕の『対象をとる効果を無効にする』効果では、無効にできません!」
カードから噴出した大津波は、いともたやすく黄金の竜を飲み込んだ。
竜魔人 キング・ドラグーン:二封気のフィールド→墓地
「かぁー……ドリアードといえば〔風林火山〕か、ミスったミスった…。
しゃあねぇ、〔戦士ダイ・グレファー〕を攻撃表示で通常召喚して1枚セット、エンドだ。(手札2・伏せ1)」
&html(<Table Border BorderColor="#ccb028" Border="2"><Tr><Td>戦士ダイ・グレファー</Td><Td>地属性</Td><Td>戦士族</Td><Td>レベル4</Td><Td>ATK1700</Td><Td>DEF1600</Td></Tr><Td ColSpan="6">ドラゴン族を操る才能を秘めた戦士。過去は謎に包まれている。</Td></Table>)
原則的に手札からモンスターを普通に出すことを通常召喚といい、通常召喚は1ターンに1度しかできない。
しかし融合のようにカードの効果でモンスターを出す場合、通常召喚とは別に何度でも行うことができる。
「僕のターンです(手札4)。
〔ドリアード〕を攻撃表示に変更し、〔エレメント・ドラゴン〕を召喚っ!」
&html(<Table Border BorderColor="#cc7a28" Border="2"><Tr><Td>エレメント・ドラゴン</Td><Td>光属性</Td><Td>ドラゴン族</Td><Td>レベル4</Td><Td>ATK1500</Td><Td>DEF1200</Td></Tr><Td ColSpan="6">このモンスターはフィールド上に特定の属性を持つモンスターが存在する場合、以下の効果を得る。<BR>●炎属性:このカードの攻撃力は500ポイントアップする。<BR>●風属性:このカードが戦闘によって相手モンスターを破壊した場合、もう一度だけ続けて攻撃する事ができる。 </Td></Table>)
「攻撃力1500…だが、確かあのモンスターには…っ!」
「僕のバトルフェイズ! 〔エレメント・ドラゴン〕で〔戦士ダイ・グレファー〕を攻撃します!」
本来のエレメント・ドラゴンでは、攻撃力1700のダイ・グレファーには勝ち目が無い。
しかし、現在のエレメント・ドラゴンはドリアードの放つ炎の精霊力を爪に巻き込み、攻撃力を上げている。
〔エレメント・ドラゴン〕(攻撃力2000)VS(攻撃力1700)〔ダイ・グレファー〕→戦士 ダイ・グレファー破壊、二封気LP8000→7700
「そして、〔ドリアード〕は風属性も兼ねます。
〔エレメント・ドラゴン〕は風属性が存在する時に限って2回攻撃が許されます!
さっきの〔ロード・オブ・ドラゴン〕の仕返しです! エレメントブレス!」
エレメント・ドラゴンの放った衝撃波に弾き飛ばされるダメ大人、ナイスリアクション。
「ぐお……。」
二封気:LP7700→5700
「行って! 〔ドリアード〕! スピリッツライダアァァァァアッ キィック!」
ドリアードは、福助の声に答え、精霊とは思えない脚力で空中へと飛び、ドロップキックを二封気の腹を踏み込んだ。
「うぐ………ァあっ!」
二封気:LP5700→LP4500
「僕のターンはカードを1枚セットして終了です!(手札2・伏せ1)」
今のターンは、ドリアードの効果を熟知した上で、相性のいいエレメント・ドラゴンを組み込んでいた福助のコンボ勝ち、といったところか。
「ぐ……このドローに全てをかける! ドロー! (手札3・伏せ1)」
「5歳のガキ相手に本気でゲームたぁ……本当にダメ大人だな。」
「うるせーなっ! 負けても面白ければいいけど、やっぱやるからには勝ちたいだろっ!
俺は〔ダークソード〕を召喚して、バトルフェイズで〔精霊術師 ドリアード〕へ攻撃だ!」
&html(<Table Border BorderColor="#ccb028" Border="2"><Tr><Td>闇魔界の戦士 ダーク・ソード</Td><Td>闇属性</Td><Td>戦士族</Td><Td>レベル4</Td><Td>ATK1800</Td><Td>DEF1500</Td></Tr><Td ColSpan="6">ドラゴンを操ると言われている闇魔界の戦士。邪悪なパワーで斬りかかる攻撃はすさまじい。</Td></Table>)
2本の刀を振るい、黒い甲冑を纏った剣士は素早く精霊術師へと飛び掛る。
だがしかし、ドリアードは福助の伏せたカードを信じているように、恐れる気配はない。
「させません! 〔エレメント・ドラゴン〕を生贄に捧げて、伏せカード〔光霊術-「暁」〕を発動します!」
&html(<Table Border BorderColor="#b21162" Border="2"><Tr><Td>光霊術-「暁」</Td><Td>通常罠</Td></Tr><Td ColSpan="4">自分フィールド上に存在する光属性モンスター1体を生け贄に捧げる。<BR>相手フィールド上に存在する表側表示のカード1枚を選択し、ゲームから除外する。(オリカ)</Td></Table>)
エレメント・ドラゴンの体は光の粒へと転じ、闇の肉体を持つダークソードへと殺到する。
直撃すれば、黒い鎧がさらに黒コゲになる威力を持っているが、黒い騎士はひるむ事は無い。
「そんなに何発も罠カードで除去されたとあっちゃ情けねぇ。
伏せカードを発動ッ! 〔合身〕だ。」
&html(<Table Border BorderColor="#b21162" Border="2"><Tr><Td>合身</Td><Td>通常罠</Td></Tr><Td ColSpan="4">融合カードに定められたモンスターを融合する。(オリカ)</Td></Table>)
「こいつは罠カード版の〔融合〕でな、
〔光霊術-「暁」〕は対象を取る除去効果だから、効果の対象が消えれば無効になる。
攻撃した〔ダーク・ソード〕と手札の〔沼地に住まうドラゴン〕を融合して、〔闇魔界の竜剣士 ダークソード〕を召喚!」
&html(<Table Border BorderColor="#cc7a28" Border="2"><Tr><Td>沼地に住まうドラゴン</Td><Td>水属性</Td><Td>ドラゴン族</Td><Td>レベル3</Td><Td>ATK1500</Td><Td>DEF200</Td></Tr><Td ColSpan="6">このカードを融合素材モンスター1体の代わりにする事ができる。(その際、他の融合素材モンスターは正規のものでなければならない。)<BR>このカードが相手プレイヤーに戦闘ダメージを与えた時、お互いのプレイヤーはカードを1枚ずつドローする。(オリカ)</Td></Table>)
&html(<Table Border BorderColor="#6b23b2" Border="2"><Tr><Td>闇魔界の竜剣士 ダークソード</Td><Td>闇属性</Td><Td>戦士族</Td><Td>レベル7</Td><Td>ATK2700</Td><Td>DEF1500</Td></Tr><Td ColSpan="6">「闇魔界の戦士 ダークソード」+「騎竜」<BR>このカードは融合召喚でしか特殊召喚できず、このカードは1ターンに2回まで攻撃宣言を行う事ができる。(オリカ)</Td></Table>)
剣士は素早く赤竜の背に乗って光の粒を回避し、精霊術師の少女を一刀の元に切り伏せる!
〔闇魔界の竜剣士 ダークソード〕(攻撃力2700)VS(攻撃力1200)〔聖霊術師 ドリアード〕、精霊術師 ドリアード破壊、福助LP8000→LP6500
「うあぁっ! ドリアードがっ!」
「〔ダークソード〕は自身の特殊効果によって、続けて一度だけ攻撃を行なうことができる! 福助を直接攻撃!」
福助:LP6500→LP3800
ダークソードの剣が素早く福助の胸をえぐるが、福助はリアクションも取らない。
ただただ、ボソボソと『ドリアードが…僕のドリアードが…』と呟いている。
「1枚伏せてターン・エンド。(手札0・伏せ1)
…大丈夫か? 福助?」
「ああ、いつもの事だ、気にしなくていーぜ。
ドリアードが破壊されるとああなんだ。 あと20秒ぐらいしたら…。」
「破壊されたドリアードのためにも、このデュエル! 絶対に負けません!」
刃咲の予想を裏切り、パパっと復活して涙を拭う福助。
「…な? 心配なんかいらねぇだろ?」
「面白いヤツだな、お前ら。」
ら、と複数形で呼ばれたことに刃咲が抗議しようとするが、福助がプレイを再開していることに気が付き、自粛した。
「僕のターン、ドロ……う、うえええっっ!?(手札3)」
「どうした? 手詰まりか?」
「……いいえ、勝つ為の布石は揃いました。」
福助は引いたカードを覗き込み、意を決したようにカードをデュエルディスクに配置する。
「いきますッ! 墓地の〔精霊術師ドリアード〕と〔ドリアードの祈り〕を除外して〔オクジュ・ゴッド〕を召喚します。」
&html(<Table Border BorderColor="#cc7a28" Border="2"><Tr><Td>オクジュ・ゴッド</Td><Td>光属性</Td><Td>天使族</Td><Td>レベル4</Td><Td>ATK1000</Td><Td>DEF1000</Td></Tr><Td ColSpan="6">墓地に存在する儀式モンスターと儀式魔法をゲームから除外して特殊召喚する。<BR>このカードの特殊召喚に成功した場合、デッキから儀式モンスターと儀式魔法を1枚づつ手札に加える。(オリカ)</Td></Table>)
「効果でデッキから〔精霊術師 ドリアード〕と〔ドリアードの祈り〕を手札に加えます。」
場に出現したのはパッと見はウニ状のモンスター。
実際は黒い腕に更に腕が生え更にまた、と何本もの腕に腕が連なり胴体が見えない異形の天使。
そのモンスターが僕のデッキに何束かの腕を差し込み、2枚のカードを福助の手札に加えた。
精霊術師 ドリアード:デッキ→福助の手札
ドリアードの祈り:デッキ→福助の手札
「そして、このターンのドローカード、〔天使の施し〕を発動! 3枚引き―――うぅ、うっ……」
「? どうした? 2枚捨てろ?」
「〔オクジュ〕で手札に加えた……〔精霊術師 ドリアード〕と〔ドリアードの祈り〕を……」
どうやらドリアードを墓地に置くのが苦痛らしく、手が止まる。
戦わせたくないならデッキに入れなければいいのだろうが、そうしないのが彼なりの美学なのだろう。
「っくう……〔ドリアードの祈り〕と〔精霊術師 ドリアード〕を捨てます。
そして僕は今墓地に送った2枚を除外して、2枚目の〔オクジュ・ゴッド〕を出します。」
さっきと全く同じ手順、同じビジョンで福助の手札に2枚のカードを渡すオクジュ。
精霊術師 ドリアード:デッキ→手札
ドリアードの祈り:デッキ→福助の手札
「そして僕は手札の〔エレメント・ザウルス〕を生贄に、最後の〔精霊術師 ドリアード〕を降臨させます。
僕は〔リチュアル・ウェポン〕を〔ドリアード〕に装備させて………攻撃。」
&html(<Table Border BorderColor="#0f9926" Border="2"><Tr><Td>リチュアル・ウェポン</Td><Td>装備魔法</Td></Tr><Td ColSpan="4">レベル6以下の儀式モンスターのみ装備可能。装備モンスターの攻撃力と守備力は1500ポイントアップする。</Td></Table>)
ドリアードは4つの精霊力を一発の矢に折り合わせ、ダークソードと騎竜を纏めて射抜く。
だがしかし、当たる寸前にダークソードは左手に握った刀を投げ付け、正確にドリアードの胸を貫いている。
〔闇魔界の竜剣士 ダークソード〕(攻撃力2700)VS(攻撃力2700)〔精霊術師 ドリアード〕。
→共に破壊、墓地へ。
「ううう……2体の〔オクジュ・ゴッド〕で……二封気さんに攻撃します!」
疾走する二体のオクジュ・ゴッド。
しかし、二封気はセットされたカードに手を伸ばした。
「伏せられた〔リビングデッドの呼び声〕を発動し墓地から〔竜魔人 キングドラグーン〕を復活させる、攻撃するか?」
&html(<Table Border BorderColor="#b21162" Border="2"><Tr><Td>リビングデッドの呼び声</Td><Td>永続罠</Td></Tr><Td ColSpan="4">自分の墓地からモンスター1体を選択し、攻撃表示で特殊召喚する。<BR>このカードがフィールド上に存在しなくなった時、そのモンスターを破壊する。<BR>そのモンスターが破壊された時このカードを破壊する。 </Td></Table>)
墓地から出現したのは、先ほど倒したはずのドラゴンの翼を持った魔術師。
攻撃力差は歴然、中断せざるを得ない。
「…っう………攻撃はキャンセルしてバトルフェイズは終了、1枚セットして…ターンエンドです。(手札2・伏せ1)」
攻撃は失敗したものの、まだ手札の枚数では福助の方が優位。
落ち着き、怯まずに二封気を見据える。
「ドロー(手札1枚)……オ、こいつか。
俺は〔アームズ・ホール〕で〔再融合〕を手札に加える。」
&html(<Table Border BorderColor="#0f9926" Border="2"><Tr><Td>アームズ・ホール</Td><Td>通常魔法</Td></Tr><Td ColSpan="4">自分のデッキの一番上のカード1枚を墓地へ送り発動する。<BR>自分のデッキまたは墓地から装備魔法カード1枚を手札に加える。<BR>このカードを発動する場合、このターン自分はモンスターを通常召喚する事はできない。</Td></Table>)
超融合:二封気のデッキ→墓地へ。(アームズ・ホールのコスト)
「〔再融合〕……って…!?」
「いくぜ? 〔再融合〕発動、〔闇魔界の竜剣士 ダークソード〕を復活させる。」
二封気:LP4500→LP3700
闇魔界の竜剣士 ダークソード:墓地→二封気のフィールド
&html(<Table Border BorderColor="#0f9926" Border="2"><Tr><Td>再融合</Td><Td>装備魔法</Td></Tr><Td ColSpan="4">800ライフポイントを払う。<BR>自分の墓地から融合モンスター1体を選択して自分フィールド上に特殊召喚し、このカードを装備する。<BR>このカードが破壊された時、装備モンスターをゲームから除外する。</Td></Table>)
「で、〔ダークソード〕には、〔エレメント・ドラゴン〕と同じようにの2回攻撃能力が有る。
2体の〔オクジュ〕を攻撃だ。」
&html(<Table Border BorderColor="#6b23b2" Border="2"><Tr><Td>闇魔界の竜剣士 ダークソード</Td><Td>闇属性</Td><Td>戦士族</Td><Td>レベル7</Td><Td>ATK2700</Td><Td>DEF1500</Td></Tr><Td ColSpan="6">「闇魔界の戦士 ダークソード」+「騎竜」<BR>このカードは融合召喚でしか特殊召喚できず、このカードは1ターンに2回まで攻撃宣言を行う事ができる。(オリカ)</Td></Table>)
ドラゴンの騎士が腕まみれの天使に襲い掛かっる瞬間、天使は銀色の装甲に身を包んだ。
これこそ、攻撃を仕掛けた者を爆破・消滅させるスタンダードな除去罠カードである。
「させません! 伏せカード発動、〔炸裂装甲〕っ!」
&html(<Table Border BorderColor="#b21162" Border="2"><Tr><Td>炸裂装甲</Td><Td>通常罠</Td></Tr><Td ColSpan="4">相手モンスターの攻撃宣言時に発動する事ができる。その攻撃モンスター1体を破壊する。 </Td></Table>)
広がる爆撃、爆風。
しかしながら、黒騎士どころか馬代わりのドラゴンにすら傷ひとつ付けられていない。
「…あれ?」
「残念。 〔キング・ドラグーン〕の能力だ。 そういう類の罠は効かない。」
&html(<Table Border BorderColor="#6b23b2" Border="2"><Tr><Td>竜魔人 キングドラグーン</Td><Td>闇属性</Td><Td>ドラゴン族</Td><Td>レベル7</Td><Td>ATK2400</Td><Td>DEF1100</Td></Tr><Td ColSpan="6">「ロード・オブ・ドラゴン-ドラゴンの支配者-」+「神竜 ラグナロク」<BR>このカードがフィールド上に表側表示で存在する限り、<BR>相手はドラゴン族モンスターを魔法・罠・モンスターの効果の対象にする事はできない。<BR>1ターンに1度だけ、手札からドラゴン族モンスター1体を自分フィールド上に特殊召喚する事ができる。 </Td></Table>)
「え、ええええっっ!?」
「俺の出してたのが別の種族の融合モンスターだったらなんとかなっただろうが……惜しかったな。」
当初の宣言どおり、ダークソードは二体の天使をあっさりと粉砕した。
〔闇魔界の竜剣士 ダークソード〕(攻2700)VS(攻1000)〔オクジュ・ゴッド〕、オクジュ・ゴッド破壊、福助LP3800→LP2100
〔闇魔界の竜剣士 ダークソード〕(攻2700)VS(攻1000)〔オクジュ・ゴッド〕、オクジュ・ゴッド破壊、福助LP2100→LP900
「トドメだ。 〔キングドラグーン〕の攻撃。」
福助:LP900→LP0
「………ありがとうございました。」
会釈したまま頭を上げず、福助は項垂れたままだ。
「俺が出してたのがE・HEROや機械系だったら防がれてたな。
最後はハナ差、ってところか。 一馬身も付いてなかった……だから、泣くなって。」
福助本人も気付かないうちから、福助は泣いていた。
ドリアードを犠牲にしながらの対戦は初めてではないが、犠牲にしつつ敗北したのは初めてだった。
無念で、申し訳なくて、ただどうしようもなかった。
「泣きたい時は泣かせとけよ、それが一番だ。
……それより二封気、お前のデッキ、ドラゴン系の融合じゃないよな? 口振りからすると。」
「ん? ああ、俺のデッキは『全ての融合モンスターを使いこなす』ってテーマだからな。
相手のカードも奪ったりすれば、出せない融合モンスターはそうは居ないぜ。
融合モンスターも、この“角”に全部入ってるしな。」
なるほど、と刃咲と壱華は納得したように頷いた。
どうやら、二封気のデュエルディスクに備え付けられた突起物は、通常では入りきらない融合デッキの補助スペースという事らしい。
「そういえば、近々ルール改正で融合デッキは15枚って枚数制限が掛かるって聞いた事あるんだけど。
確か、シンクロっていう新システムの都合上、融合デッキの枚数制限があると使えないとかで。」
「抜かりなし。 こういうカードも少数出回ったんだよ。」
&html(<Table Border BorderColor="#6b23b2" Border="2"><Tr><Td>破法博士 コザッキー</Td><Td>闇属性</Td><Td>悪魔族</Td><Td>レベル1</Td><Td>ATK?</Td><Td>DEF?</Td></Tr><Td ColSpan="6">融合モンスター+融合モンスター1体以上<BR>このカードは融合召喚でしか特殊召喚できない。<BR>このカードがエクストラデッキに存在する場合、自分のエクストラデッキにシンクロモンスターは入れることはできない。<BR>このカードがエクストラデッキに入っている場合、融合デッキの枚数制限はなくなる。<BR>このカードの元々の攻撃力・守備力は融合素材にしたモンスターの数×1500ポイントの数値になる。(オリカ)</Td></Table>)
「大会イベントの先着カードだったんだけどな。
ダチと一緒に並んで、3枚ゲットした自慢のカードだ。」
下品なまでにビカビカ光る3枚のカード、効果からして1枚でもデッキにあれば十分という気もするが。
「……うぅっ、どんなカードですか? 僕にも見せてくださ~い。」
涙を拭い、鼻水をすすり、福助も歩み寄る。
「なんだ、立ち直り早いな。」
「ずっと泣いてて、ドリアードに嫌われたら嫌だもん。
……次は絶対勝つためにも、二封気さんのカードは見たいです。」
身の丈も、二封気の膝頭ほどしかない小さなデュエリストは敢然と言い切った。
その発言に、二封気は嬉しそうに使い終わったデッキをシャッフルしていた。
[[次へ進む。>http://www11.atwiki.jp/84gzatu/43.html]] [[遊義皇トップへ>http://www12.atwiki.jp/wahamuda84g/12.html]] [[小説置き場に戻る>http://www12.atwiki.jp/wahamuda84g/5.html]]
&html(<table border="1" bgcolor="#D7F2F2" width="1200"><tr><td><font size="2"><center>)
&counter()
2010-12-21T21:55:53+09:00
1292936153
-
DD1 列効我道希
https://w.atwiki.jp/84gzatu/pages/168.html
&html(<table border="1" bgcolor="#D7F2F2" width="1200"><tr><td><font size="2"><center>)
[[光って唸る精霊術師トップへ>http://www12.atwiki.jp/wahamuda84g/708.html]] [[小説置き場に戻る>http://www12.atwiki.jp/wahamuda84g/5.html]]
&html(<i>2020年 11月1日</i>)
コロッセオの十六の方角にそれぞれ設置された門の一つが開いた。
「まずは一人目、北門から!
十六番目に本戦出場決定した男!
実家は日本屈指の大企業、列効カンパニーだが、その令息がなんでこんなところに!?
身に付けた技、その名を屠術! 列効我道希!」
一人のドリアードファイターが入場する。
彼の出場に沸いているのはコロッセオの観客だけではない。
テレビカメラ越しに観戦する地球規模の視聴者たちも一緒だ。
「それでは、コメントをお願いします!」
「そんなことはどうだっていい!」
彼はこの一言だけで勝ちあがってきた。
最強無比、自分の強さに磨きを掛け、鍛え続けた肉体と精神。
〔序〕
&html(<i>2019年 12月11日</i>)
北海道最北端、&html(<ruby><rb>稚内<rt>わっかない)。
その市内、数ある道場の中でも最北にある武術の道場、北風館。
なんと読むのか、その男には判らない。
だがホクフウカンだろうとキタカゼカンだろうと、その男にとってはどうだっていい。
――なぜならば。
「ん、なんだ、入門希望者か? だったらこっちじゃねーぜ。
あっちにプール見えるだろ、その横の更衣室が受付だ」
来訪した“男”を出迎えた門下生は別にふざけているわけじゃない。
この道場は、戦争で本校舎が倒壊し、使い道が無くなった体育館に畳を敷いて再利用している。
そのため、プールの女子更衣室を応接室として再利用しているのだ。
だが、それすらもその男にはどうだっていい。
――なぜならばっ
次の瞬間、その門下生は宙を舞っていた。
「頼もぉーッ! 看板を叩き折りに来てやった!」
その男の声に、修練に汗を流してた門下生たちの視線が一転に集まり、驚きが広がった。
『死』『殺』という漢字で飾られた貫頭着に、大きなリュックサック。
深い傷が刻まれたスキンヘッドには凶暴な眼球ふたつ、顎は五連のピアスでアクセント。
野生児というか、野獣そのものの男が居た。
「な、なん…」
「キサマらの疑問なんぞどうだっていい、立ち合え!」
道場破りの口癖、『どうだっていい』、彼はこの一言だけで生きてきた。
この道場の名前がキタカゼでもホクフウでもどうだっていい。
奪ったら叩き割って終りにするのだから。
この道場の元が小学校でもどうだっていい。
どうせすぐ無くなる道場なのだから。
――その男、道場破りにつき。
〔壱〕
「お師さん…シャウタス・ドライアドスキィが消えました」
道場横の応接室。
道場主の男は、知人の弟子の発言に目を丸くしていた。
「…シャウトが消えたって、どういう意味で?」
「そのままの意味です、行方不明です。私たちの弟子にも行き先を告げず、忽然と」
現在というには古く、過去というには忘れられない二十年前。
悪の秘密結社やら異星人やら地底人やら地球を中心とした宇宙大戦があった。
その戦いで繰り出された太陽すら蒸発させるビーム。
そのビームを弾き返すような巨大ロボット。
そのロボットを独力で破壊する超人。
その超人の中でも最強に果てしなく近かった男、シャウタス・ドライアドスキィ。
常識離れと人間離れはできても、弟子離れが出来ない武闘家だ。
「別にシャウトにだってお前らに秘密にしたいこととかあるだろ。
例えば…」
思いつかない道場主に、少女が詰め寄った。
よくみれば、少女の大きな瞳には溢れ出しそうな涙を蓄えられている。
「福助さんは思いつきますか!?
未だにあたしたち弟子と一緒にお風呂に入りたがって!
あたしたちが武術大会で外泊するだけで心配で一分ごとにテレパシーを送る!
しかもベジタリアンの偏食だから野菜しか食べれないし、果物を食べればすぐ種とか喉に詰まらせる!
…あたしたち弟子と一緒じゃなかったなんて…一日も…なかったんですぅ…」
シャウタスの三人の弟子、紅一点のマイカン・ブラックマインの涙腺は限界だった。
長く伸びた金髪、切れ上がった目、服を下から押し上げる大きな乳房。
それだけなら美少女という形容だけで終れるのだが、師匠譲りのハイセンスなコーディネートがそれを許さない。
頭は赤い毛糸のニット帽、足は赤い毛糸の厚底ブーツで、他の部分も全部同色の毛糸編み。
これはもう宗教か何かじゃないと説明が付かないが、彼女はそれを好んで着ているだけだ。
「外に女ができたとか?
あいつは顔もいいし、若作りだしな」
この道場主も三十目前なのに未成年と間違えられるほどには若いが、
シャウタスはまた別格で、この道場主が五才の頃に出会ってから老け込まない。
小学校というには無理があるが、下手すれば中学校ぐらいは通えるかもしれない、その若さだ。
「…それも考えたんですけど、それなら逆にあたしたちに相談すると思うんです。
お師さんのことだから、好きになったら嫌われないために必死になると思いますし」
「…オッケ、事情は判った。
弟子たち挨拶したら俺も動くことにする。
修行中の連中には悪いが、シャウトに何か有ったとすると世界の危機ってヤツだしな」
そう云ってから道場主の男は、80年代を思わせる真紅のボンバージャンパーを羽織った。
下半身もビンテージでもない安っぽいボロのジーンズに、すすけたスニーカー。
この道場主、その名を&html(<ruby><rb>倉塔<rt>くらとう)&html(<ruby><rb>福助<rt>ふくすけ)、シャウタス四天王と呼ばれた男の一角
だ。
「ありがとうございます、福助さん! 一緒に探してくれるんですね!?」
一瞬、福助が言葉を捜そうとしたが、面倒だったらしく諦めた。
「あ、いや、一緒ってのはダメ。
俺の移動手段は徒歩だけど、マイちゃんってまだ高速道路を走るとかできないだろ?
いくら俺でも、マイちゃんを連れて高速道路に入るのはキツイわ」
「…えっと、それってつまり…生身で高速道路を走る、ってこと…ですよね」
質問するだけ無駄、マイカンは確認するに留まった。
師であるシャウタスは新幹線と併走したことがあり、次ぐ身体能力を持つこの男ならば間違いなくできる。
というか、このひとたちの感覚では高速道路に生身で入ることを“徒歩”と呼称するらしい。
「この倉塔家の家訓でね、車よりも自転車、自転車よりも徒歩。
エコだよエコ、マイちゃんも始めればどうだ? 楽しい…アレ?」
福助は自分の超人的体力をちょっとした健康法程度にしか認識していなかった。
そして、その超人的な聴覚は、離れているはずの体育館改造道場の音を耳にすることもできていた。
「聞こえたかマイちゃん、弟子たちの悲鳴が?」
「え、いえ、聞こえませんでしたけど?」
「ハッキリ聞こえたんだ、緊急らしい」
福助は消毒プール用のくぼみを飛び越え、体育館へと走るが、その姿は足のないオバケのようだった。
股関節から下、足全体は超音速で走り続けており、常人の動体視力では残像すら捉えられない。
全くの余談だが、筆者が思うに幽霊に足がないというのは、幽霊が高速で足を振り続けているゆえに見えないだけでないだろうか。
空気抵抗で引き裂かれたスニーカーの破片が舞い散る中をマイカンが走る。
決して遅くはなかったが、マイカンが道場に着いたとき、既に福助は道場破りと対峙していた。
〔弐〕
説明するならば、読者諸君の出身小学校の床一面に畳を敷き詰めた感じだ。
今は、その畳の上に十数人が死屍累々と倒れ伏している。
その全員が背中に『北風』と書かれた空手着を着、黒帯を巻いている。
どうにも、北風館は空手の段位を参考にしているらしい。
「キサマがここの道場主か?」
「そうだけど、そちらさんはどちらさん?」
目付きの悪い道場破りが、さらに顔を険しくして問い、
元から緊張感のない福助はやはりテキトーな感じで問い返した。
「倉塔館長、こいつは屠術使いの道場破りです! 有段者のみんなを殴り倒したんス!」
累々と倒れていた黒帯門下生のひとりが、しっかりと喋ってみせる。
よく見れば彼の両足も変な方向に曲がっていたりするが、なぜだかまだ痛みを感じていないらしい。
「…屠術って…対大型獣用の殺傷技術だろ?
ああいう風に、動物に痛みを与えずに活け造りにしたりする無痛技術だろ?」
「そんなことはどうだっていい、オレが強いかどうかを試すだけだ」
屠術も戦う技術には違いないが、武術ではない。
武術にはルールがある、禁じ手がある、相手を殺さないための安全弁がある。
いわば“過程”をも問う、それが武術。
だが、屠術は対象となる生物を殺せば良しとする“結果”だけを磨く技術。
「…の割には、うちの門下生、全員生きてるぜ?」
「殺す価値もない連中の命はどうだっていい、勝負だ、倉塔」
「サツバツとしてんなー、お前も。 別にいいけどよ?」
「って福助さん!? なに云ってるんですか!?
あの人は格闘家じゃないなら、ただの暴漢です、警察です!」
マイカンがキャンキャンと喚くが、気にもしない男連中。
「お前ら、負けた仇、取って欲しいよな?」
福助は倒された十数人の黒帯連中に呼びかけるが、そのうちのひとりが痛みを引きずりつつ口を開く。
「必要ありません…ッ、館長! 自分の敵は…自分で倒します…ッ!」
他の黒帯…意識を失ったメンバーすらも寝顔で同感と告げている。
「な? マイカンちゃんよ、俺たちはそういう人種なんだよ。
師匠にも譲れない敵をどうして警察に譲れるんだよ」
大多数の格闘家とは…というか、男という生命体はある矛盾を抱えている。
平和という言葉の魅力を理解しつつ、常に敵を求め、そのために拳を磨く。
強いと云われたい、強いと認められたい、弱いままでは終われない。
「だがな、お前ら、この道場破りは俺が倒す…文句は無いよな?」
「…仕方ありませんね、俺たちが…弱かったんスから」
「うーし、じゃあ茶帯連中ー? ちょっと黒帯を運び出してくれや、あと救急車。
巻き添えにしない自信もねーし、離れてろ?」
渋々ながらも門下生たちはしたがい、一分も経たない内に道場の中は、
道場破りと倉塔福助のふたり、観客として毛糸服女のマイカンひとり。
マイカンは福助の弟子でもないので命令を聞く筋合いもなく、それは全員が理解している。
「さて、掛かってきていいぜ道場破り。殺す気で、な」
「禁じ手を決めろ、倉塔福助、それが先だ」
寝耳に水というか、福助が我道希に対して抱いていたイメージとしては最も遠い言葉だったかもしれない。
「…なんで?」
「終わってから屁理屈を云われるのが嫌いなだけだ。禁じ手を決めろ、従う」
意訳すれば、『ルールを作らせてやるんだから負けても文句を云うな』ということらしい。
相撲で云う物言い、クレーマーというヤツは格闘家にも居るので、それが嫌なのだろう。
「そうだな、それだったら…。
今現在、この部屋にあるものだったらなんでも武器にしていい。
勝敗のルールはどっちかのギブアップか意識喪失…死亡含みな。
TKOとかカウントはなし…こんなんでどうよ?」
「福助さん!?」
マイカンの悲鳴寄りの抗議が飛ぶが、福助はとりあえず無視する。
「なんでも…?」
「武器の定義って面倒だろ。
相手の襟とか取って畳に投げつけたりするが、それもまあ武器にしてるっていえばしてるしな。
だから今、お前が持ってるもの、俺が身に着けてるもの、なんでもOKだ」
福助は、道場破りは背負っているリュックサックに視線を向けた。
ナイフなり缶切りなりあるだろうに、それも容認すると云っているのだ。
「武器を持参されるのは興奮するが、オレが使うのは興醒めだ」
リュックサックやらポケットの中の小銭やらを投げ捨て、道場破りは構えた。
ボクサーのようにあごと胸の前に二本の腕を置きつつも、その手首は握られることはない。
さながら魔術を掛けようとしているように異質な構えだった。
「OK…じゃあ、負けても文句云うなよ?」
「こっちの台詞だ、倉塔福助」
「――ところでお前の名前、なんだっけ。聞いてないよな?」
「そんなことはどうだって―」
そのとき、道場破りの視界から福助が消えた。
福助が移動したわけではない、ふたりを分かつように何か“塊”が飛んでいた。
道場破りは反射的に身をひねり、その“塊”は通り過ぎて壁に突き刺さった。
「ゴングは鳴ってるんだぜ? ルールを決めた時点でな」
第二・第三の“塊”が道場破りに向けて飛来する。
受身も取れない――そんな判断が下った瞬間には既に道場破りは畳を返して壁代わりにしていた。
そして、そこに来て道場破りは、“塊”の正体を知った。
――畳だ、見間違うことなく畳だ。
今、眼前には、福助が放った畳の突き刺さった畳が立ち尽くしていた。
「道場破り、お前も畳を返せるんだったら遠慮せずにこっちも武器として使えるぜ」
道場破りの畳返しは幼少期に大掃除の際に道具を使って畳を外した経験があり、その応用で返したに過ぎない。
その経験がなく、畳の構造のイメージがなければ、今のでノックアウトされていただろう。
福助は喋りながらも足の指先で畳をひっくり返し、手元に二枚の畳を揃えている。
「…武器を使うことに&html(<ruby><rb>躊躇<rt>ちゅうちょ)せんのか、お前は」
「これでも戦争経験者だからね、ヤルからには全力だよ」
「ほぉ…面白い、そうこなくてはな!」
道場破りも習って畳を返し、盾代わりに構える。
それを見て、むしろ福助は安心していたようだ。
あれができるなら、てかげんしなくても死なないだろう、と。
「じゃあ、行くぜ?」
福助は足で剥がした畳をサッカーのコーナーキックばりに蹴飛ばした。
畳はヒザの高さで飛び、先ほど道場破りが作った畳障壁を爆砕した。
「く、どういう威力だ!?」
「こーいう威力に決まってんだろうゥがァッ!」
そこからは 相互に投げあう畳合戦。
枕投げのように、フレスビーのように、バラエティー番組の専用パイのように、楽しそうなまでに畳が飛び交う。
傍観者たるマイカンにも何枚か流れ畳が飛んできたが、避けつつ観戦続行。
六十畳のほとんどが剥がされ、道場の木造構築が晒される。
畳が畳に、壁に、天井に、突き刺さり、その姿は畳の密林、タタミ・ジャングル。
タタミはそれぞれが支えあい、ジャングルタタミ状態。
「なんかオブジェみたいになったな」
「そんなことはどうだっていい、行くぞ」
道場破りの両手には、ギラリと光るアルミ製ナイフがふたつ。
タタミを投げながら、門下生の誰かが飲んでいたジュース缶を拾い、使い捨てナイフを作っている。
作り方は簡単。
缶を潰して真ん中を握力で切ってふたつにし、飲み口と底の部分を取っ手にする。
このジュースもルールを決めた時点で間違いなく道場の中にあったので、違反はしていない。
「刃物か、そう来るなら俺は…こうだな」
福助は上着を脱ぎ捨て、横にあったタタミジャングルの中に逃げこんだ。
タタミジャングルは相当数の畳を使っているせいか、ジャングルジムを二個ぐらい重ねた大きさになっている。
逃げ込まれたら道場破りは追って中に入ってくる―そう思いきや。
「ンぞォォぉォをォッ!」
耳を塞ぐマイカン、道場破りの大音声は道場内に響き渡る。
道場破りはタタミジャングルに手を掛ける。十の指が畳に沈み込む。
畳を返したことのなる人間ならばなんとなくイメージできると思うが、畳というのは意外に軽い。
素人でも二枚は難しいが、一枚ぐらいなら運べる。十二分に人間に持てる重さだ。
「あの畳の塊…四十枚ぐらいは絡み合ってるのに!?」
ポロポロと畳の破片が落ちるが、本体はびくともせず、完全に浮かせた。
道場破りはタタミジャングルを自身の頭くらいの高さまで持ち上げていた。
床板が抜け、道場破りの足が沈むが、道場破りの言葉を借りれば、そんなことはどうだっていい。
「どおおおぁああッッ!」
紙飛行機しかり、竹とんぼしかり、プロレスしかり。
万有引力、上げたものは落とすしかない。 それが地球のお約束。
放り投げられたジャングルは、道場の天井をぶち抜き、地球に吸い寄せられて床板を貫き、大地を揺らす。
「マグニチュード5…といったところか、さあ、出てこい! 倉塔福助!」
タタミジャングルへと呼びかけるが、無反応。
マイカンの心中は、先ほどの人工地震のように揺れていた。
福助は人間離れはしていたが、人間ではあった。
大地を揺らすほどの落下衝撃に、人間は耐えられるのか?
反応の無さに、道場破りは無言でタタミジャングルへと歩み寄る。
落下の衝撃でかなり損傷を受けているが、それでも原形を留め、もう何度かは投げられるだろう。
「ま、待ってください!」
マイカンの呼びかけに、道場破りは一歩だけ足を止めたが、目もやらずに歩み続ける。
「やめてださい! 福助さんでもあんなのをまた食らったら死んでしまいますッ!」
「…オレは倉塔福助の降参宣言を聞いていない、キサマは?」
「それは…っ!」
聞いてなんていないし、緊急事態に突発的にウソを吐けるほどマイカンは場慣れしていなかった。
「オレには倉塔福助が死ぬまで攻撃を続ける義務がある。
既に福助が死んでいるという確証があるなら、聞いてやらんでもないが」
「あなたは…! あなたというヒトは…!」
「っていうか、死んでねえんだけどな」
その声が床下から聞こえていると気付いたときには、福助の反撃が始まっていた。
床板を突き破って生えた雑草的右手首は、道場破りの足首をしっかりと捉え、そのまま浮き上がるように手首に続く部分が生えた。
腕、肘、二の腕、頭、肩、胴体、足、その姿は紛れもなく倉塔福助。
しかも無傷ではないが、五体満足の姿だ。
「が、うおおおッッ?」
片足を持たれて宙吊りになったまま、道場破りは混乱していた。
ありえない。
生きていることは可能でも五体満足なんて物理的に不可能だ。
畳が特別な材質だった? いやありえない、投げて裂けた畳に異常は見えない。
投げる前に脱出していた? いやありえない、持ち上げた瞬間、重心の位置でその存在を確認した。
なら投げてから脱出? 幻覚?
確かに福助は落下したはずだ、そのはずだ。
「これでも宇宙人と殴り合って勝ってるんでね、年の甲だな」
足を持たれ逆さ吊りされつつも、道場破りは拳で金的を狙う。
しかし体勢が体勢だけに、そのパンチは肩から先の筋力しか使えない。
福助はバランスも崩さず、左足の裏で踏みつけるように受け止める。
「無理だって。 そこから打てるパンチだったら目を閉じたって受けられる」
それでも道場破りはあきらめず、両の拳でジャブラッシュ、福助も変わらず左足の裏で捌き切る。
「じゃあ良いよ、そのままで話聞け。
ドライア同盟の上位メンバーは衝撃の操作ができる。
宇宙中の全ての存在は熱量に変換でき、愛もまた熱量…つまり、大体の攻撃は愛として吸収できる」
「福助さん!? それは門外不出ですよ!」
観戦に回っていたはずのマイカンは、完全に血相を変えている。
奥義の理論の暴露に、階級を忘れて異議を申し立てをしているのだ。
しかし、福助は気にも留めずに続ける。
もちろん、この間も道場破りはラッシュ、福助は靴底ブロック続行中だ。
「もちろん、愛も多くなりすぎれば心身を病むし、吸収限界はある。
だが…お前の半端な拳じゃ、満タンには遠い」
「半端…だとぉっ?」
「半端だよ、中途半端だ。
ドライア同盟系武術の基本は、無心最速の連打か、全ての感情を乗せて重くした一撃だ。
それがお前のは感情が半端に乗ってて濁り、遅く軽いから防ぎやすい」
感情論だ、そう断言したかった。
だが、事実として道場破りは福助のブロックを突破できずにいた。
「で、俺はお前に全霊の一撃を見舞う。
これを食らって生き延びるには俺の突きをエネルギーに変換・吸収するしかない、降参するか?」
その回答は、最初から無い。
道場破りはラッシュをやめて、両腕を戻して防御姿勢に入る。
「結局、お前、名前なんていうんだ?」
「…&html(<ruby><rb>我道希<rt>がどうき)、&html(<ruby><rb>列効<rt>れっこう)&html(<ruby><rb>我道希<rt>がどうき)」
名乗りに、福助は今日始めての表情を覗かせた。
驚きだ。恐怖や疑問を含まない、純然たる驚きだった。
「列効って…お前、身内に二封気って人、いないか?」
確認に道場破りこと我道希は無言で首肯し、楽しそうに福助は拳を構えた。
傍でマイカンが喚いているが、気にもしない。
「来い、福助ェッ!」
握っていた足首を基点に、福助が我道希を放り投げた。
ただ浮かせただけだが、その瞬間に福助の拳が真っ直ぐに我道希の胴体へと向かっていた。
――拳が遅い、一向に近づかない。 まだ遠い。
それどころか、我道希の脳内には様々な思い出が浮かんでいた。
四才のときに親に殴られて自分の弱さを感じたとき。
十才のときに修行の旅にでたとき。
十二才のときに師匠にであったとき。
十三才のときに自分より大きい獣を殺したとき…その他もろもろ。
幾度目かの走馬灯、その中でも最大のピンチ。
この思考的猶予に打撃のエネルギーをなんとかする方法を考えなければならない。
「(来た来た来た来たァ!)」
つぶれ、へしゃげ、ゆがみ、くしゃくしゃになる音。
風を切る、重力を振り切って空へと向かう。
「…をー、飛んだ飛んだ」
先ほど我道希が投げたタタミジャングルが貫いた天井の穴を我道希が飛んでいく。
「なにを考えてるんですか福助さん! 吸収できない人間にあなたの突きには耐えられるわけ…!」
「耐えたよ、我道希は。
俺の直突きで上に飛んでったってことはエネルギーを拡散できたってことだ。
そうじゃなければ、破裂して内蔵を撒き散らしてる…えーっと…この辺りかな?」
そういって、福助は雲もない日本晴れの空を見上げ、マイカンも従う。
まだまだ上昇しているらしく、マイカンの視力では影すら捉えられないが福助には見えているようだった。
「えーっと…うーん…ここだな、ここ」
「…なにしてるんですか?」
「我道希のヤツ、どうにもエネルギーは拡散したが急に加速して気絶してるらしい。
さすがにこの高さで落下したら死ぬからさ、受け止めてやらねえと」
「…見えてるんですか?」
「そりゃあな、せいぜい高度200メートルぐらいだし」
福助は、凡フライを捕る野手のように仰け反り、空を眺め、そして受け止めた。
もちろん、落ちてきたのは道場破り男、列効我道希だ。
全身打撲の状態で意識も無いが、生きてはいる。
「俺はもう行く…多分、我道希のヤツ、意識を取り戻したらもう一度戦え、とか云うだろうしな」
「? どうしてわかるんです?」
「…ガキの頃の俺が、同じことをしたことあるからだよ」
門下生が呼んだのだろう、救急車のサイレンが鳴り響いた。
その音に目覚めが近いらしく、我道希が呻いた。
「じゃあ、俺は行くから。 あとよろしく」
相槌も待たない大跳躍によって、福助の赤いジャンパーが空の青に飲み込まれる。
残されたマイカンは、ただ呆然とするしかなかった。
「どうしよう…あたし…!」
急転直下にマイカンは取り残されていた。
シャウトの行きそうな場所の手掛かりなんてない。
自分以外の弟子たちも同じ状況だろうし、福助以外の四天王もまた同じだろう。
呆然とする中、我道希が平然と立ち上がり、周囲を見渡した。
「オイ! 女ァッ! 倉塔福助はどこに行った!?」
「…福助さんならもう居ません、もう出発しました」
「だから、どこに行ったと訊いているんだ!」
「…知りません、あたしが知りたいくらいです」
「ならば、探せ!」
「何度も言わせないでください、どこに行ったかもわからないんですッ!」
「そんなことはどうだっていい! 判らないから探しに行くんだろうが!」
「…え?」
自信過剰、それがマイカンの我道希に対する印象だったし、それは今も変わっていない。
だが、それこそが、シャウタスや福助を追う上で、自分に必要なものだった。
「おーい、キミたち! 大丈夫かー!」
サイレンの音はいつの間にか止まっていた。
救急隊員と警察官がセットになってボロボロの道場に入ってきていた。
捕まれば面倒で大幅なタイムロスが待っているのは目に見えていた。
「俺は行くが、女、キサマも一緒に来い、福助の使った技の説明をしろ」
「女、じゃなくて、あたし、マイカン・ブラックマインって云います。
我道希くん?」
それは孤児院育ちのマイカンの無意識でのちょっとしたルールだった。
年上が相手であっても、対等な相手ならば“さん”ではなく、“くん”を尊称として使う。
今、我道希は自前のリュックサックを背負い、マイカンを横抱きにして飛び上がった。
広大な空の下、福助の背中はもう見えなくなっていたが、それでも我道希は探し出せる気がしていた。
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&html(<table border="1" bgcolor="#D7F2F2" width="1200"><tr><td><font size="2"><center>)
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2010-10-29T22:57:36+09:00
1288360656
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開幕宣言
https://w.atwiki.jp/84gzatu/pages/169.html
&html(<table border="1" bgcolor="#D7F2F2" width="1200"><tr><td><font size="2"><center>)
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「――さあ! 最後の1人が決まった!
これより、第三回ドリアード・ザ・ドリアード、決勝トーナメントを開催ッ! ですッ!」
スピーカーから響いた声に、熱気と喚喜がコロッセオに渦巻く。
ドリアード・ザ・ドリアード決勝大会のためだけに作られ、四年に一度のみの出番となるドリアードコロシアム。
コロシアムに、3回目の熱気が吹き荒れていた。
「実況・解説は私、&html(<ruby><rb>白馬<rt>しらうま) &html(<ruby><rb>亮一<rt>りょういち)がお送りします!
四日間、一緒に大会で盛り上がってまいりましょう!」
彼自身もデュエリストであるが、実力以上に饒舌が評価され、解説として有名である。
シラウマという苗字がシマウマに似ていることから付いたあだ名がゼブラ。
その気になった彼自身も髪に白いメッシュを入れて、
白黒二色のオールバック…それが彼、ゼブラ亮一である。
「さて! 決勝トーナメントは、明日の11月2日が一回戦!
翌3日から二回戦、4日から準決勝、5日の決勝戦!
テレビもラジオもCMナシ。
選手入場を待つ間、この大会のルールを解説していきましょう!」
ドリアード・ザ・ドリアードは、国家的規模のデュエル大会。
よってテレビ局が複数ある国では全て国営放送が行い、さらに云えばテレビがある国ではほとんど放送している。
「ドリアード・ザ・ドリアードは、デュエルモンスターズの大会。
始まりは10年前の〔リチュアル・フュージョン〕発売。
それは長きに渡るドリアード・ザ・ドリアードの歴史の始まりでした。
カードゲームのプレイ環境が新発売のカードによって変わることは多々ありました。
しかし、あのカードの登場は、変化というよりも革命!」
&html(<Table Border BorderColor="#0f9926" Border="2"><Tr><Td>リチュアル・フュージョン</Td><Td>儀式魔法</Td></Tr><Td ColSpan="4">同じ属性の2体以上の儀式モンスターをRFし、新たなモンスターとする。<BR>この効果でRFされたモンスターは、素材モンスターの効果とRF専用効果を得る。<BR>攻撃力・守備力は、素材となったモンスターの中で最も低い数値に、最も高い数値の半分を足した数値となる。<BR>レベル・種族・カード名は全ての素材モンスターを合わせたものになる。</Td></Table>)
デュエルモンスターズの環境は、何度も変化をしてきた。
リバース効果モンスターの登場、速攻魔法の登場、禁止カードの制定、
チューナーとシンクロ召喚の台頭、デュエルターミナルの起動、度重なるマイナーチェンジ。
たった1枚のカードが歴史を覆すことは数え切れず、その中で最大の変化、それが〔リチュアル・フュージョン〕だった。
「このカードの登場によって、〔精霊術師 ドリアード〕が最強カードの一角になりました。
“ドリアードはドリアードでしか倒せない”は流行語となったのも懐かしいところ。
一億人近い参加希望者から、各国家ごとに大会出資金額に応じた人数の代表選手を選定します!」
コロッセオの中央巨大モニターにその代表選出のときの光景が映し出される。
普通にデュエルして決めたアメリカ。
ドリアードなしでのデュエルで決めたフランス。
殴り合いでのバトルロイヤルで決めたロシア…など。
「今大会でもデュエリスト自身の体力を特殊な機械で測定、ライフポイントに変換します。
触れる立体映像、実体映像は一部の団体からの反対を押し切り、今回も使用です。
これにより、体術に抜きん出ていなければ、〔レオ・ウィザード〕級の直接攻撃でも致命傷となりうるわけです!」
&html(<Table Border BorderColor="#ccb028" Border="2"><Tr><Td>レオ・ウィザード</Td><Td>地属性</Td><Td>魔法使い族</Td><Td>レベル5</Td><Td>ATK1350</Td><Td>DEF1200</Td></Tr><Td ColSpan="6">黒いマントをはおった魔術師。正体は言葉を話すシシ。</Td></Table>)
なぜカードゲームで殴りあうか、そんな疑問を持った常識的読者の皆様もいらっしゃるだろう。
そのような方は、次なるゼブラの解説に目を向けていただきたい。
「エンターテイメントは無意味!
だからこそ燃える! だからこそ加熱する!
球を棒で打とうが、運任せのクジだとか、馬の競走だろうが意味なんかない!
燃えてしまえば、もう燃えてしまえば! それがエンターティンメントォォッ!」
全世界から国籍や種族すら越えて集った一億人の参加希望者が、二千人まで絞られる。
(中には『匹』と称すべき一派も存在するのだが)
そして、地球全土を舞台とし、十一か月の予選を経て、十六人まで絞り込まれる。
「さあ! 十六人の選手の為にだけ用意され、使用されるのは四年に一度!
ドライアド・オブ・デュエル結晶大会、開幕です!」
再び、コロッセオに歓声が響き渡る。
その歓声は電波を通じて広がり、世界全土が歓喜の雄叫びを上げた。
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&html(<table border="1" bgcolor="#D7F2F2" width="1200"><tr><td><font size="2"><center>)
&counter()
2010-10-29T22:36:57+09:00
1288359417
-
遊義皇21話
https://w.atwiki.jp/84gzatu/pages/63.html
&html(<table border="1" bgcolor="#D7F2F2" width="1200"><tr><td><font size="2"><center>)
[[前へ戻る。>http://www11.atwiki.jp/84gzatu/62.html]] [[次へ進む。>http://www11.atwiki.jp/84gzatu/64.html]] [[遊義皇トップへ>http://www12.atwiki.jp/wahamuda84g/12.html]] [[小説置き場に戻る>http://www12.atwiki.jp/wahamuda84g5.html]]
&html(<Table Border><Tr><Td>第一条</Td> <Td>A&BVS壱&弐という組み合わせの場合、A→壱→B→弐→A、のローテーションでゲームが進行する。</Td> </Tr><Tr><Td>第二条</Td> <Td>攻撃宣言は、後攻1ターン目からとする。</Td> </Tr><Tr><Td>第三条</Td> <Td>パートナー同士は、ライフポイント・フィールド・墓地・除外置き場・勝敗を共有するものとする。</Td> </Tr><Tr><Td>第四条</Td> <Td>パートナーのターンが来るたびに、自分自身のデュエルディスクは待機状態になり、手札・デッキは無いものとして扱われ、サレンダー等の権利確認以外の入力ができない。<BR>例:壱のモンスターがある状態で弐のターンになった場合、そのモンスターは弐が操作し、壱は手札に誘発即時効果のモンスター等が有っても使用できない。</Td> </Tr></Table>)
----
二封気&空蝉
・LP:6300
・二封気:手札5
・空蝉:手札0
・モンスター:なし
・魔法・罠:なし
ウォンビック&神次郎
・LP:5600
・ウォンビック:手札2
・神次郎:手札1
・モンスター:〔越境トークン〕
・魔法・罠:伏せ 伏せ 伏せ
----
「手札から〔ゲール・ドグラ〕ァッ!」
&html(<Table Border BorderColor="#cc7a28" Border="2"><Tr><Td>ゲール・ドグラ</Td><Td>地属性</Td><Td>昆虫族</Td><Td>レベル2</Td><Td>ATK650</Td><Td>DEF600</Td></Tr><Td ColSpan="6">3000ライフポイントを払って発動する。<BR>自分の融合デッキからモンスター1体を墓地に捨てる。</Td></Table>)
虫には間違いないが、なんの虫がモチーフなのかはよくわからない異形のモンスター。
貧相な羽に貧相な毒針、そんな中で凶暴な視線と効果だけが出番を待つ爆弾のように妙に艶やかに光る。
「優先権によりそのまま効果発動ォッ!
ライフを3000払って、デッキから〔十二眼の暴攻竜〕を墓地に捨てるッ!」
二封気LP:4300→1300
Exデッキ:十二眼の暴攻竜
「そして、手札より〔ロウ・ブレイク・フュージョン〕ッ!
墓地に存在する〔十二眼の暴攻竜〕と〔カオス・ソルジャー〕を融合ォッ!」
&html(<Table Border BorderColor="#0f9926" Border="2"><Tr><Td>ロウ・ブレイク・フュージョン</Td><Td>通常魔法</Td></Tr><Td ColSpan="4">自分フィールド上または墓地から、<BR>融合モンスターカードによって決められたレベル5以上のモンスターを除外し、融合モンスター1体を特殊召喚する。<BR>このカードで融合素材とするモンスターに同名モンスターを使うことはできない。(この特殊召喚は融合召喚扱いとする)</Td></Table>)
「…〔龍の鏡〕のマイナーチェンジか…ッ!」
「融合召喚! 〔&html(<ruby><rb>創始界竜総督<rt>アドミラル・オブ・ジェネシス)〕ゥッ!!!」
墓地:十二眼の暴功竜→除外
墓地:カオス・ソルジャー →墓地
Exデッキ:創始界竜総督→場
&html(<Table Border BorderColor="#6b23b2" Border="2"><Tr><Td>創始界竜総督(ドラゴンアドミラル・オブ・ジェネシス)</Td><Td>光属性</Td><Td>ドラゴン族</Td><Td>レベル12</Td><Td>ATK8000</Td><Td>DEF8000</Td></Tr><Td ColSpan="6">「カオス・ソルジャー」+「十二眼の暴攻竜」<BR>「青眼の究極竜」+「黒炎防護戦士」<BR>「真紅眼の守護竜」+「究極竜騎士」<BR>このカードは融合召喚でしか召喚できず、上記の3組の内の1つを融合しなければならない。<BR>またこのカードのコントローラーのバトルフェイズ中、このカード以外の全てのカードの攻撃力・守備力は0となり、効果は無効となる。<BR>(このカードは自分のスタンバイフェイズに融合デッキに戻る。)(オリカ)</Td></Table>)
「始めの〔未来融合〕で〔ユーフォロイド・ファイター〕は…ッ!
秋蒔きのごとく、種を蒔いたというわけか…ッ! このための種をッ!」
「このカードの前ではバトルフェイズ中ならば、全ての効果は無効となる! 戦神ってわけだッ!
そのトークンには影響ないんだろうが…起動効果なら問題もねえ、バトルフェイズ!」
「ならば、バトルフェイズに入る前に止めるしかあるまいッ!
手札の〔エフェクト・ヴェーラー〕の効果発動! 〔創始界竜総督〕の効果を無効にする!」
手札:エフェクト・ヴェーラー →墓地
&html(<Table Border BorderColor="#cc7a28" Border="2"><Tr><Td>エフェクト・ヴェーラー</Td><Td>光属性</Td><Td>魔法使い族</Td><Td>レベル1</Td><Td>ATK0</Td><Td>DEF0</Td></Tr><Td ColSpan="6">チューナー:このカードを手札から墓地へ送り、相手フィールド上に表側表示で存在する効果モンスター1体を選択して発動する。<BR>選択した相手モンスターの効果をエンドフェイズ時まで無効にする。この効果は相手のメインフェイズ時のみ発動する事ができる。</Td></Table>)
「っち、〔手札抹殺〕が裏目にでたか…! アレで引かれたッ!」
「裏目かどうかは、攻撃しなくちゃ分からないぜっっ!」
〔創始界竜総督〕の持つ、カードの効果を無効にする効果は失われた。
攻撃を躊躇させる為の最後の足掻きか、創始界竜総督を葬る為の布石か。
「ここまで来て!引くわけはいかねぇよ!
越境トークンを攻撃! &html(<ruby><rb>断・首・刃<rt>アドミラル・エグゼキューション)ッ!」
効果を無効にされたとはいえ、創始界竜総督の攻撃力は脅威の8000。
〔越境トークン〕の攻撃力を0にできなくとも、戦闘の結果には何ら影響しない。
「引けないのは俺とて変わらんッ!
バトルフェイズに入ったことにより、ライフを500払って〔血の代償〕を発動!
俺は通常召喚の権利を得る!」
&html(<Table Border BorderColor="#b21162" Border="2"><Tr><Td>血の代償</Td><Td>永続罠</Td></Tr><Td ColSpan="4">500ライフポイントを払う事で、モンスター1体を通常召喚する。<BR>この効果は自分のメインフェイズ及び相手ターンのバトルフェイズ時にのみ発動する事ができる。</Td></Table>)
ウォンビックLP:1600→1100
ハリケーンで戻された事でフィールドから姿を消していた血の代償が再び発動される。
通常召喚の権利―――――ここで創始界竜総督の攻撃をかわすには………こうするしかない。
「俺は〔越境トークン〕をリリースし、モンスターをセットする!
さらに、おジャマの特性を受け継いだ〔越境トークン〕の特性により、1000のダメージッ!」
&html(<Table Border BorderColor="#cc7a28" Border="2"><Tr><Td>越境トークン</Td><Td>光属性</Td><Td>戦士族</Td><Td>レベル8</Td><Td>ATK3000</Td><Td>DEF2500</Td></Tr><Td ColSpan="6">「デーモンと名のつくモンスター」+「おジャマと名のつくモンスター」+「霞の谷と名のつくモンスター」<BR>1ターンに1度、サイコロを1回振り、出た目の数だけフィールド上に存在するカードを持ち主の手札に戻す。<BR>この効果を発動するターン、このカードは攻撃する事ができない。<BR>このカードが破壊以外の方法でフィールドを離れた時、相手プレイヤーに1000ポイントのダメージを与える。<BR>(トークン)</Td></Table>)
二封気LP1300→300
「ずうっ!?」
〔創始界竜総督〕の尋常ではない攻撃力を以ってしても、守備モンスター相手にはダメージを与えることは適わない。
一撃必殺故に、二発目を許されないデメリット故に、出したターンに決まらないのはあまりにも痛い。
「…ッチぃっ! 今伏せられたモンスターにそのまま攻撃だ!」
○創始界竜総督Atk8000 ×ドラゴン・アイスDef2200
&html(<Table Border BorderColor="#cc7a28" Border="2"><Tr><Td>ドラゴン・アイス</Td><Td>水属性</Td><Td>ドラゴン族</Td><Td>レベル5</Td><Td>ATK1800</Td><Td>DEF2200</Td></Tr><Td ColSpan="6">相手がモンスターの特殊召喚に成功した時、<BR>自分の手札を1枚捨てる事で、このカードを手札または墓地から特殊召喚する。<BR>「ドラゴン・アイス」はフィールド上に1枚しか表側表示で存在できない。</Td></Table>)
「伏せカードを2枚セットして………終了だ!(手札1・伏せ2)」
「ふん、私の〔血の代償〕や敵の〔手札抹殺〕に頼ったとはいえ、ここはよく耐えたと褒めてやろう!
盾代わりのウォンビック・ブラックマインよ、ここは神の剣たる私が決めてやろう! ドローッ!
…私は〔ライトロード・モンク エイリン〕を召喚!」
&html(<Table Border BorderColor="#cc7a28" Border="2"><Tr><Td>ライトロード・モンク エイリン</Td><Td>光属性</Td><Td>戦士族</Td><Td>レベル4</Td><Td>ATK1600</Td><Td>DEF1000</Td></Tr><Td ColSpan="6">このカードが守備表示モンスターを攻撃した場合、<BR>ダメージ計算前にそのモンスターをデッキに戻す。<BR>このカードが自分フィールド上に表側表示で存在する限り、<BR>自分のエンドフェイズ毎に、自分のデッキの上からカードを3枚墓地に送る。</Td></Table>)
「〔エイリン〕で〔ゲール・ドグラ〕を攻撃!」
「させねえッ! 〔皆既日蝕の書〕を発動!」
&html(<Table Border BorderColor="#0f9926" Border="2"><Tr><Td>皆既日食の書</Td><Td>速攻魔法</Td></Tr><Td ColSpan="4">フィールド上に表側表示で存在するモンスターを全て裏側守備表示にする。<BR>このターンのエンドフェイズ時に相手フィールド上に裏側守備表示で存在するモンスターを全て表側守備表示にし、<BR>その枚数分だけ相手はデッキからカードをドローする。</Td></Table>)
創始界竜総督 攻撃表示→裏側守備表示
ゲール・ドグラ 攻撃表示→裏側守備表示
ライトロード・モンク エイリン 攻撃表示→裏側守備表示
「くッ、止められたかッ!」
今の防御は理想的、といえる防御だった。
〔ゲール・ドグラ〕への攻撃をかわしただけでなく、〔創始界竜総督〕がスタンバイフェイズに戻ることも防いだ。
「だが〔皆既日蝕の書〕のもう1つの効果を忘れたとは言わせんっ!
1枚伏せ、ターン終了! 私の場のモンスターは全て表になり、カードを2枚ドロー!」
おジャマ・イエロー 裏側守備表示→表側守備表示
ライトロード・モンク エイリン 裏側守備表示→表側守備表示
デッキ:2枚→手札
「さらに、〔エイリン〕の効果により3枚のカードが墓地へ落ちる。
来い! 〔ライトロード・ビースト ウォルフ〕ッ!」
「なにぃっ!?」
&html(<Table Border BorderColor="#cc7a28" Border="2"><Tr><Td>ライトロード・ビースト ウォルフ</Td><Td>光属性</Td><Td>獣戦士族</Td><Td>レベル4</Td><Td>ATK2100</Td><Td>DEF300</Td></Tr><Td ColSpan="6">このカードは通常召喚できない。<BR>このカードがデッキから墓地に送られた時、このカードを自分フィールド上に特殊召喚する。</Td></Table>)
デッキ:墓守の番兵→墓地
デッキ:ADチェンジャー→墓地
デッキ:神の宣告→墓地
「…オイ、墓地に送られていないと思うのだが?」
「ええい! 〔ウォルフ〕めぇえええ!
神をも恐れぬカードよ! 命拾いをさせてやったぞ、空蝉! 列効ッ!
お前たちのターンだぁ!(手札0・伏せ3)」
「そりゃどうも…。
俺のターン! 墓地の〔アイツ〕をゲームから除外し、〔聖炎の大天使 ミカエル〕を特殊召喚!」
&html(<Table Border BorderColor="#cc7a28" Border="2"><Tr><Td>聖炎の大天使 ミカエル</Td><Td>炎属性</Td><Td>天使族</Td><Td>レベル8</Td><Td>ATK2800</Td><Td>DEF2800</Td></Tr><Td ColSpan="6">このカードは通常召喚できない。<BR>フィールドまたは墓地に存在する炎属性・天使族モンスター1体をゲームから除外した場合にのみ、このカードを特殊召喚できる。<BR>このカードが戦闘によってモンスターを破壊し墓地へ送った時、以下の効果から1つを選択して適応する。<BR>●破壊したモンスターの攻撃力分のダメージを相手ライフに与える。<BR>●破壊したモンスターの効果を無効にし、持ち主のデッキの一番下に戻す。</Td></Table>)
〔ラファエル〕と同じく、全然天使っぽくはない。
メタリックスフィアな容姿にフレイムペイントで、学童向けの新しいオモチャか何かのようだ。
一応、申し訳程度に両刃の剣が装着されているが、それだけである。
「攻撃力が高いから強いと思うのが素人のあさはかさよォッ!
いかなるカードも無効にして破壊すれば、たかだか1枚の紙切れよッ〔神の宣告〕ッ!!」
&html(<Table Border BorderColor="#b21162" Border="2"><Tr><Td>神の宣告</Td><Td>カウンター罠</Td></Tr><Td ColSpan="4">ライフポイントを半分払って発動する。<BR>魔法・罠カードの発動、モンスターの召喚・反転召喚・特殊召喚のどれか1つを無効にし破壊する。</Td></Table>)
神次郎LP:1100→550
×聖炎の大天使 ミカエル→墓地
前のターンに〔エイリン〕の効果で落ちたのは、〔ADチェンジャー〕。
〔ゲール・ドグラ〕を攻撃表示にされて攻撃されれば、即座にゲームエンド。
だが、攻撃表示にされても攻撃力950未満のモンスターならば繋がる、〔エイリン〕さえ倒せば繋がる。
「〔創始界竜総督〕を反転召喚し、バトルフェイズ。 〔エイリン〕にアタックだ。」
○創始界竜総督Atk8000 ×ライトロード・モンク エイリンDef0
「ターン終了。(手札0・伏せ1)」
これで神次郎達の場に残っているのは〔おジャマ・イエロー〕のみ。
しかし、次のスタンバイフェイズには〔創始界竜総督〕も消滅し、双方に攻め手がなくなる。
「俺のターン…〔血の代償〕を墓地へ送り、〔マジック・プランター〕を発動。」
&html(<Table Border BorderColor="#0f9926" Border="2"><Tr><Td>マジック・プランター</Td><Td>通常魔法</Td></Tr><Td ColSpan="4">自分フィールド上に表側表示で存在する永続罠カード1枚を墓地へ送って発動する。<BR>自分のデッキからカードを2枚ドローする。</Td></Table>)
場:血の代償→墓地
デッキ:2枚→手札
「カードを2枚セット、ターン終了。(手札0・伏せ4)」
カードをセットし、ターンを終えるウォンビック。
顔には出していないが焦っているのは二封気、現在場に出ているカードは全て二封気のカード。
当然、そのカード及びデッキ内のカードの組み合わせで出来ることは把握している。
逆転や延命ができるカードも何枚かあるし、問題はそのカードを引けるかどうか。
「俺のターン!」
二封気の次に控えるのは神次郎。
これまでの戦いの中で、彼のデッキの中はアタッカーだらけな事がわかっている。
〔皆既日蝕〕で手札も強化してしまった今、このターンがラストチャンスだった。
「…ドローッ!」
ドローカード:〔融合〕
この状況では、いや、このデュエルではもう何の役にも立たないカード。
二封気は一度視線を切り、再び戻すが、やはりそこに有るのは〔封魔の呪印〕で封印された〔融合〕があるだけ。
後は〔創始界竜総督〕が消え、ターンを終了するだけ。
「何を引いたかは知らんが、これで終わりだ。伏せカード発動、〔おジャマピン〕。」
&html(<Table Border BorderColor="#b21162" Border="2"><Tr><Td>おジャマピン</Td><Td>通常罠</Td></Tr><Td ColSpan="4">相手フィールド上に「おジャマトークン」(獣族・光・星2・攻0/守1000)を1体守備表示で特殊召喚する。<BR>(生け贄召喚のための生け贄にはできない)<BR>「おジャマトークン」が破壊された時、トークンのコントローラーは1体につき300ポイントダメージを受ける。<BR>(KOBオリジナル)</Td></Table>)
おジャマトークン→場
「………!?」
ダメ出し、と言わんばかりにウォンビックの最後の攻撃が動いていた。
「借りるぞ、ジロウ。 〔ヒーロー・ブラスト〕だ。」
&html(<Table Border BorderColor="#b21162" Border="2"><Tr><Td>ヒーロー・ブラスト</Td><Td>通常罠</Td></Tr><Td ColSpan="4">自分の墓地に存在する「E・HERO」と名のついた通常モンスター1体を選択し手札に加える。<BR>そのモンスターの攻撃力以下の相手フィールド上表側表示モンスター1体を破壊する。</Td></Table>)
「墓地に存在する〔アナザー・ネオス〕を手札に戻す。
そして、このカードよりも攻撃力の低いモンスター、〔おジャマトークン〕を破壊する。」
「これは、ヤベェっ?!」
〔おジャマトークン〕には、破壊された時にコントローラーに300のダメージを与える効果を持っている。
二封気の残りライフは300、ジャスト。
地面が割れ、颯爽と〔アナザー・ネオス〕が飛び出す。
そして華麗な蹴りが宙を切った。
「早くトドメを刺したかった…って気持ちは分かるがな、ここは礼を言わせて貰うわ。
“助かったぜ” だ。」
「…なに?」
「伏せカード発動ぉぉぉ! 〔合身〕ッ!!」
&html(<Table Border BorderColor="#b21162" Border="2"><Tr><Td>合身</Td><Td>通常罠</Td></Tr><Td ColSpan="4">融合カードに定められたモンスターを融合する。</Td></Table>)
「なに!?」
「〔創始界竜総督〕が消えるのを待ってから発動していたら、それで終わりだった。
1フェイズ、動くのが早かったな。 〔創始界竜総督〕と〔おジャマトークン〕を融合!」
場:創始界竜総督→墓地
場:おジャマトークン→消滅
Exデッキ:神の化身→場
&html(<Table Border BorderColor="#6b23b2" Border="2"><Tr><Td>神の化身</Td><Td>光属性</Td><Td>ドラゴン族</Td><Td>レベル6</Td><Td>ATK2500</Td><Td>DEF1300</Td></Tr><Td ColSpan="6">このカードは融合召喚でしか特殊召喚できない。<BR>2体の元々の属性が同じモンスターを融合素材とする。このカードの属性は、融合素材にしたモンスターの属性になる。</Td></Table>)
墓地:E・HERO アナザー・ネオス→手札
ウォンビックの墓地には、相手の特殊召喚時に手札1枚をコストに復活するドラゴン・アイスがいる。
しかし、チェーン1のヒーロー・ブラストの効果処理によって、その発動タイミングさえも逃してしまう。
「〔ゲール・ドグラ〕を反転召喚し、バトルフェイズ。
〔神の化身〕で、〔おジャマ・イエロー〕を攻撃ッ!!」
○神の化身Atk2500 ×おジャマ・イエローDef1000
「〔ゲール・ドグラ〕! マグラスピンでダイレクトアタック!」
ウォンビックLP:550→0
&html(<font size="10"color="#8b4513">第21話</font><font size="10"color="#b28455"> 勝っても拭えぬ負け犬根性</font>)
&html(<font size="5"color="#191970">デュエルブレイン:矮鶏様</font>)
&html(<font size="5"color="#32cd32">編集・作成:84g</font>)
「…1フェイズ差…か。
早すぎても見えん、勝利というヤツは…。」
「…ふん! 私の〔神の化身〕や〔神次郎の宣告〕を渡さねば、負けはしなかったわッ!」
「そうだな。 お前ら連携良いわ。
〔神の化身〕分、追いついて追い越せたって感じだったしな。」
云いつつ、エクストラデッキから2枚の〔神の化身〕を抜き出し、スローなカード手裏剣で渡す。
空蝉も抜き出し、例のルール用USBと交換する。
「タッグ専門か? お前ら?
攻撃とか防御とか、やたらに息が合ってたぜ?」
「ッな…!? ふざけるぬァぁッ!
四つの国家の血統を継ぐ私が、こんな単血人種と二人三脚専門なんぞできるくぁっ!」
空蝉の質問に、神次郎はキレて応える。
彼にとっては、ひとりで戦うことに最も意義があるのだろう。
「それはそれとして、俺に会ったってことはシャモンに云わない方が良いぞ?
…お前たちとはまたデュエルしたいからな。」
「…? どういう意味だ?」
「あいつの性格からすると、俺(二封気)に会ったのに何も云わなかった…って云ったら多分…。
“電話越しででも俺がデュエルするよ!”
“もう両手足ブっ千切ってでもいいから連れてきてよ!”
…とか云って、お前らの骨の一本や二本折るかもしれないからな。」
二封気のモノマネ交じりの説明に、“云いそうだなぁ”と肯くクロック。
「…云わんわけにもいかんだろう。
怒りを買ったら買ったときの話だ。 さっさと帰るぞ。」
「了解です。」
「ふん…次は勝つからなァっ! 空蝉高差っ! 列効二封気ッ!」
「あぁー…じゃ、まあ俺からは応援もできねぇけど、ほどほどに、な。
っと、云い忘れだ。 二封気。 耳貸せ。」
ウォンビックと神次郎がデュエルディスクを持ち運びできるサイズまで分解する最中、クロックは声を絞った。
「? なんだ?」
「…近くまで福助と蕎祐が来てるぞ。
なんでも、全力のお前とデュエルしてぇ…とかなんとか福助が云ってた。
ナニワカップに参戦するって云ってたな。」
人外的なまでの聴力を持つ元音楽家の神次郎、身体能力のスペックがいちいち規格外なウォンビックに聞こえない程度の細い声。
声量とは裏腹に、その言葉が二封気に与えた衝撃は小さくなかった。
「…追ってきてるのか。 アイツら。」
「あぁー、まあ、どうするかは任すけどな。 ただ福助も頑張ってんだ。 無視とかするなよ。」
“任す”といいつつ、無視は禁止らしい。
クロック自身も気が付いていないが、まあ、そういうことだ。
「…OK。 考えておくわ。
サンキュな、クロック。」
「あぁー、そういうのは全部終ってからにしろよ。
…死ぬなよ、お前も。」
「…なんの話をしてるのかは知らんが、帰るぞ。 クロック。」
いつの間にか普通の調子で喋っていた2人。
慌てながらもクロックは神次郎・ウォンビック・トガと共に背を向け、大通りへと足早に去っていった。
しかし、ウォンビックの歩幅が他のメンバーの三倍近いので、途中でトガを抱きかかえ、クロックを担いだ。
「乗らんでも遅れん!」
とかいいつつ、神次郎は小走りになり、それを見届けてからウォンビックも小走りになる。
それを見て、神次郎は次は全力疾走で追いつくだけではなく、全力でウォンビックを追い越す。
やめとけばいいのに、ウォンビックも走り出してみたりし…途端に四人の姿は見えなくなった。
「…で、あいつらは誰だったんだ? やたらに強かったが。」
終ってみて、空蝉は至極当然の質問をした。
彼らが誰であろうと、二転三転するデュエルをしたら誰でも良かった――答えを聞くまでは。
「ん? ああ、正念党って聞いたことないか? そこの最高幹部の七人衆。」
凍りついた。
自分が捜し求める正念党の手掛かりが、あんなに近くにあったことに。
「な…マジだぁっ!?」
「うん。」
子供のような二封気の答えに、空蝉は走っていた。
既に見えなくなっており、追いつくには偶然を必要とするのかもしれない。
そんな空蝉の理性を振り切り、空蝉の激情は肉体を支配していた。
「…逃がさねぇ、逃がさねえぞ…正念党…!」
――見逃してくよお…大事な…カードなんだよォ
――別に構いませんよ。
ホーティックを見つけ出し、倒しても自分の無様な命乞いの記憶が払拭されるとは限らない。
だが、消えないとしても、取り戻しに行かなければならないのだ。 自分の言葉を。
「居たッ!」
人生には、感情が客観的確率を越えることが多々存在する。
それを人は奇跡と呼ぶわけだが、この日も空蝉の激情が実を結んだ。
見えた。 ウォンビックの巨大な背中が。
「オイ! 待て! お前らッ!」
両手が千切れて飛んでしまうんじゃないか、と思わせるほどに振り回す空蝉。
それはウォンビックたちの耳に届き、瞳に写った。
「なんだ? 空蝉…だな?」
「フフン! 私たちの見送りか! 中々に礼儀を弁えているな!」
神次郎の解釈に納得したのか、ウォンビックは応えるように軽く手を振った。
大きく振りたかっただろうが、既にウォンビックの両肩にはクロックとトガが乗っている。
「今は花を預けるが…次は骨の髄まで負けをしみこませてくれるわ!」
「また会おう! 楽しみにしている!」
「…っ!」
敗者たる二人には、卑屈さなど微塵もなかった。
空蝉の身体と心は、数秒間、動けなくなっていた。
「落とさないつもりだが…落としても恨むなよ。」
「はいっ! ブラックマイン様!」
「あぁー、ま、安全跳躍で頼むわ。」
そして、正念党員たちは大きく跳躍した。
マシラ(猿)の如く…というべきか、猿以上の動きでビルや電信柱の上や横を無音で駆け抜けていく。
ウォンビックにいたっては二人も担いでいるが、その二人に落下の不安を与えないほどの流麗さも備えている。
「…ウ…クソォッ!」
追いかけられなかった。
あんなことをやる身体能力は空蝉にはないが、有ったとしても追いかけられなかっただろう。
負けたはずの二人の言葉は、次の勝利を信じる言葉だった。
レアハンターである彼ら以上に、ホーティックに負けたときの自分は醜かった。
「…小さすぎるじゃないか…俺は…ッ!」
一時、心が折れた。
気高い敗者たる二人の澄み切った言葉に。
なぜ自分もあの言葉が云えなかったのか、悔恨が空蝉の身体を金縛っていた。
「しゃあねえ、二封気のところに戻って、正念党のことを聞き出さなくちゃァならねえな。」
大通りで人目も気にせずに独り言を云う空蝉を制するようになる携帯電話、着メロは…空蝉の彼女からだった。
「…もしもし、高差だ。」
「 (私だ、ザインだ。 さっさと帰って来い。)」
いつもどおり、男のような口調で空蝉の彼女ことザインは空蝉の事情も聞かずに用件だけを押し付ける。
「ちょっと待ってくれよ、ザイン。
俺、ちょっとこれから二封気のところに行って、正念党のことを聞かなくちゃならないんだよ。」
「(…二封気が正念党の情報を知っているのか?)」
「いや、分からねえけど、可能性はあるんだ。」
「(高差、二封気の電話番号は持っているのだろう?)」
「ん、ああ、知ってるけど…。」
「(なら後で電話で聞け。
電話で答えられないような情報なら、会っても教えてはくれないだろう。)」
「…わかった。 今すぐ帰る。」
その言葉を合図に、ザインは電話を切った。
――本来ならば今すぐ確かめたいところだった。
しかし、ザインの云うことにも一理あり、冷静さを持っている状態では空蝉はザインへの拒否権を持つことができなかった。
「ふう…とにかく、正念党七人衆が来てるってことは…次のナニワカップで動く!
迎え撃ってやるぜ…ホーティック・モーガンッ!」
人垣なんか気にしない、それでも空蝉は叫んでいた。 自分自身への誓いを。
やはり、全ては明日、ナニワカップだ。
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&html(<table border="1" bgcolor="#D7F2F2" width="1200"><tr><td><font size="2"><center>)
&counter()
2010-07-25T23:11:27+09:00
1280067087
-
遊義皇二十一話(旧)(後)
https://w.atwiki.jp/84gzatu/pages/118.html
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前編のあらすじ! [[前編>http://www11.atwiki.jp/84gzatu/167.html]]を読め!
「&html(<font color="#00008b">……ならば、俺はその後に〔覇者の一括〕を発動させ、このターンのバトルフェイズはスキップさせてもらう。。</font)」
&html(<Table Border BorderColor="#b21162" Border="2"><Tr><Td>覇者の一括</Td><Td>通常罠</Td></Tr><Td ColSpan="4">相手スタンバイフェイズで発動可能。<BR>発動ターン相手はバトルフェイズを行う事ができない。</Td></Table>)
「どっちにしてもこのターンでロックは終わりどす!
手札から〔トラップ・おジャマスター〕を対象に〔ソウルテイカー〕を発動しますえ!」
&html(<Table Border BorderColor="#0f9926" Border="2"><Tr><Td>ソウルテイカー</Td><Td>通常魔法</Td></Tr><Td ColSpan="4">相手フィールド上に表側表示で存在するモンスター1体を破壊する。<BR>この効果によって破壊した後、相手プレイヤーは1000ライフポイント回復する。 </Td></Table>)
………
ERROR(エラー)
……
「……い?」
ソウル・テイカーの発動は、ソリッドビジョン的なエフェクトはなく、ERRORと鵜殿のデュエルディスクのライフ表示バーに表示されただけだった。
「&html(<font color="#00008b">人の捨てたカードぐらい確認するんだな。 鵜殿。</font)」
その言葉は鵜殿には通じず、鵜殿の考えがマジック・ジャマーへと至るまでには数秒を要した。
&html(<font color="#00008b">手札の〔おジャマッド〕を捨て、〔マジック・ジャマー〕だ。</font)
&html(<font color="#00008b">手札の〔おジャマッド〕を捨て、</font)
&html(<font color="#00008b">〔おジャマッド〕を捨て、</font)
&html(<font color="#00008b">〔おジャマッド〕</font)
&html(<Table Border BorderColor="#0f9926" Border="2"><Tr><Td>おジャマッド</Td><Td>魔法</Td></Tr><Td ColSpan="4">このカードが墓地に送られた時、このカードのコントローラーは2000ポイントのダメージを受ける。<BR>このカードが墓地に送られたターンの任意のフェイズ1つをスキップし、カードを1枚ドローする。</Td></Table>)
「……!?」
ウォンビック:LP2800→LP800
「&html(<font color="#00008b">俺が指定したのは、お前のメインフェイズ1……</font)
&html(<font color="#00008b">よって、〔覇者の一括〕と組み合わさり、このターンはメインフェイズを行えない。</font)」
おジャマッドの効果によって擬似的にスカラベロックが起動し、鵜殿を封じ込めた、というわけか。
「く……でも、ブラックマインはん! それはあくまで延命策や! ターンエンド!(手札6)」
確かにおジャマッドはヤクシデラとは異なり、1ターン限定の効果でしかない。
「&html(<font color="#00008b">俺のターン、ドロー(3)。 俺は手札から〔十二方天護寺 ヤクシデラ〕を発動する。</font)」
「……へ?」
&html(<Table Border BorderColor="#0f9926" Border="2"><Tr><Td>十二方天護寺 ヤクシデラ</Td><Td>フィールド魔法</Td></Tr><Td ColSpan="4">このカードが存在する限り、お互いのメインフェイズ1をスキップする。<BR>相手ターンに1度だけ、お互いのプレイヤーは自分のフィールド上に存在する「時刻守」と名の付くモンスターをデッキに戻すことで、<BR>そのカードに記されているモンスターをデッキから特殊召喚する。 その後、デッキをシャッフルする。(オリカ) </Td></Table>)
十二方天護寺 ヤクシデラ:ウォンビックの手札→ウォンビックのフィールド。
「……え、」
&html(<font size="4">ええええええええええええええッっ!?</font>)
「&html(<font color="#00008b">言ったはずだ、スカラベロックは俺が名付けたコンボだ、と。</font)
&html(<font color="#00008b">その俺がデッキに〔ヤクシデラ〕を入れているのは、当たり前だと思うが。</font)」
言ったはずだ、って、貴方の英語を全員が理解してるわけではありません。
「だぁから、××××なのよね。 あんたたち。
さっきまでは〔ヤクシデラ〕が鵜殿のカードだったから〔非常食〕で除去できたけど、
〔ツイスター〕や〔サイクロン〕じゃ、ブラックマイン様のカウンター罠に止められるだけよ?」
「…………〔第二時刻守り チュウシ〕×3、〔第三時刻守り イントラ〕×3、〔第四時刻守り ボウ〕×3、
〔第五時刻守り シンタツ〕×3、〔第六時刻守り シミ〕×3、〔第七時刻守り ゴウマ〕×2、〔第八時刻守り ミヒツジ〕×2
〔第九時刻守り シンサル〕×3、〔第十時刻守り ユウトリ〕×2、「第十一時刻守り ジュツィヌ」×2、〔第十二時刻守り ガイイ〕×3……」
「? 姫様はなにをしてらっしゃるんだ?」
口には出さないものの、ほとんどの見物人が同じことを思った。
「アンタ、ノウミソが×××してんじゃないの? あれはデッキ内容の確認でしょ?」
「デッキの内容って……1500枚のデッキの!?」
「鵜殿のレベルのデュエリストなら、何枚だろうと自分の使うデッキ内容を忘れるなんてありえないわ。
自分のデッキの中に、このコンボを切り崩す可能性のあるカードがあるのかどうかを探してるのよ。」
鵜殿は残りのデッキを眺め、自分のデッキ内容を反芻する。 呟きは4分ほど続いた。
「〔仕込みマシンガン〕×2、〔積み上げる幸福〕×2……以上。」
言い終わると同時に、鵜殿はデッキトップに手を置いた。
「降参、や。 ブラックマインはん。 私のデッキにそのコンボを破れるカードはあらしまへん。」
サレンダー・カード、自ら敗北を認め、ライフポイントを0にする行為――。
「ま……さか……姫様が……負けた!?」
「う、うそだ、ウソだ、嘘だああああ!」
「うあああああ!」
神同然に崇拝していた女性の敗北に、信者たちは頭(こうべ)を垂れ、膝をついて泣き喚く。
――だがしかし、頭を垂れて倒れたのは信者達だけでなく、ブラックマインも同じだった。
「&html(<font color="#00008b">ブラックマイン様!?</font)」
自身を賭けて長時間の騒音に晒されて圧倒的に不利なデュエルをするというストレスは精神衰弱を呼び、ウォンビックの強靭な肉体を大地に転がした。
「へえ、ブラックマインはん、動けへんの?」
そんなウォンビックを見据えながら、鵜殿は懐からホットドックのウィンナーのような大きさの耳かきボウを取り出した。
――そう、まるでウォンビックの巨大サイズの耳を掃除するためのような、巨大な耳かき棒である。
「&html(<font color="#00008b">ちょっと、××××、何のよ――!?</font)」
鵜殿は、背後に赤黒いオーラ……例えるなら、血が出ても耳かきをやめず、軟骨まで腫れさせるほどのプレッシャーだ。
「&html(<font color="#00008b">あんた、勝負に負けたんだから諦めなさい!</font)
&html(<font color="#00008b">近づくな! ブラックマイン様に! 近づくな!</font)」
伝わらないと分かっているはずなのに、トガは鵜殿のオーラに気圧されて無我夢中で、英語で騒ぐ。
鵜殿はトガの眼前で立ち止まり、例の特大耳かき棒をトガに突き出した。
「……!?」
「うらやましいわぁ、トガはん。
私が……聖耳法堂連合なんか継承せぇへんで、兄さんみたいに旅でもしてれば……。
もしかしたら、あんたさんよりも早くブラックマインはんに会えたかも知れへんのになぁ。」
鵜殿は赤黒い………悲壮感を纏って、トガの手に特大耳かき棒を握らせた。
「どんな時でも言葉が通じない相手にでも覚悟を伝えはる。
こんなにええ耳をしたお人も初めてやけど、耳以外に心も欲しいと思った人、初めてやで?」
決闘前までは、間違いなく耳にしか興味がなかった鵜殿。
しかし故人曰く、格闘家は拳を合わせることでお互いの人生を読み取り、料理人は前菜でだけで半生を語る。
同様にデュエリストは、熱戦によって互いの魂を共振させる。 デュエルをして相手の心を読み取るのはデュエリストならば珍しくは無い。
「この耳かき棒、うちの家宝やけど……トガはんにあげるわ。
普通の耳かきじゃブラックマインはんの耳はキレイにはできないやろうし、これでキレイにしたってや、奥方。」
トガは左手で耳かき棒を受け取り、無言で右腕を差し出した。
鵜殿も無言でそれに応え、トガの右手に己の右手を重ねる……すなわち、握手。
「それと、十二支1セット……これも、できれば、トガはんに使って欲しいわ。」
「でも、アンティは基本的に七人衆のエビエスって人が管理してるから――」
「無理やったらええ、ただ、思いも一緒に持っていって欲しいいんや。
耳掃除はどんなにキレイにしても、いつかは汚れる………永遠の戦いどす。
その戦いに、私の魂も一緒に連れて行って欲しいんどす。」
言っている意味はよくわからないが、トガと鵜殿の間では何か通じ合っているらしい。
「&html(<font color="#00008b">どうした、トガ、何かあったのか?</font)」
「&html(<font color="#00008b">……いえ、ちょっと雑談を。 ブラックマイン様、立てますか?</font)」
ウォンビックはフン、っと気合を込めてたとうとするが……膝が完全に脱力し、力が入っていない。
「&html(<font color="#00008b">不甲斐ないが無理そうだ。 トガ、ウチデとキンノウを呼んでくれ。</font)」
性格上、動けなくなるほどウォンビックが疲れるのは1年に3~6回はあるが、
その動けなくなったウォンビックの巨体を運べるのは、数多いウォンビックの部下の中でも同じ孤児院に出身のウチデとキンノウしかいない。
「&html(<font color="#00008b">ふたりなら、ブラックマイン様が決闘中にホーティックから預かった携帯電話で連絡しました。</font)」
その言葉を合図にしたように、キャンプ場に剛風が吹き荒れた。
黒く塗装され、浮いてるだけでプロペラ回転で騒音を出す空飛ぶ科学の利器、ヘリコプターだ。
「&html(<font color="#00008b">ウォンビックお兄様ー! 無事ですかー!</font)
&html(<font color="#00008b">そしてトガー! できればあなたは死んでいてくださいませー!</font)」
ヘリコプターのドアから身を乗り出し、歳は15だが、身長190センチを超える少女とは言いがたい少女:ウチデ・ブラックマインはプロペラ音に負けじと大声で叫んだ。
「&html(<font color="#00008b">ウチデぇ、トガさんにはヘリコの音で聞こえないだろうし、ウォンビックは日本語分からないっつってもよ、それはマズイじゃねえの?</font)」
ヘリコプターの運転席から、テレビに対して野次を飛ばす中高年のようなテンションで不備を指摘する身長140センチほどの今年20の小男:キンノウ・ブラックマイン。
「&html(<font color="#00008b">キンノウお兄様は気になりませんのっ!?</font)
&html(<font color="#00008b">忌々しいトガったらうちの孤児院の兄弟でもないクセにお兄様にベッタリだしっ!</font)」
プロペラ回転による風圧で髪をボサボサにしながら、ウチデは包み隠さず断言する。
「&html(<font color="#00008b">何言ってるんだよ、トガさんは孤児院のガキどもの遊び相手もしてくれるいい子だよ。</font)
&html(<font color="#00008b">トガがキライ、っつてんのは、ウチデみてぇにウォンビックを兄弟じゃなく、男として見ちまってる奴らだけだろ?</font)」
作者注:キンノウは正念党内の階級ではウォンビックより格下となる。
しかし、同じ孤児院出身で兄弟同然の関係で、20歳のキンノウにとっては18歳のウォンビック義弟にあたるため呼び捨てている。
「&html(<font color="#00008b">お兄様を異性としてみてる兄弟がトガを嫌いならば、姉妹の3分の1はキライでしょう?</font)」
そのやりとりも地上のトガやウォンビックには、プロペラ音にかき消されて届かない。
しかし、耳を浄化し、人外といえるほどの耳を持つ鵜殿には容易に聞き取ることができ、苦笑をひとつ。
――やっぱり、競争率高いんやなぁ、トガはん、頑張ったってや。――
「&html(<font color="#00008b">っと、こうしてる場合じゃねえな、ウチデ。 さっさとウォンビックを引き上げてやりな。</font)」
「&html(<font color="#00008b">先に突っ掛かったのはキンノウお兄様でしょうに。</font)」
言ってから太さがウチデの手首ほどもある極太のロープの先端を持ち、他は全て蹴り落とすウチデ。
そのロープを下ではトガが慣れた手つきでウォンビックの身体にしっかりと巻きつけ、懐に12枚のカードと耳かき棒をしまいこみ自分自身もロープを掴んだ。
「耳かき棒、ありがとね。」
「それじゃ、トガはん、お元気で。」
上空では、ヘリコプターがウォンビックの重量に傾いた。
「&html(<font color="#00008b">ウォンビックお兄様ならば喜んで引き上げますけど、なんであのトガも一緒に持ち上げるのか理解に苦しみますわ。</font)
…ふ……うどぅらぁぁあああ!」
ウチデは自身をコマのように回転させ、ロープを高速で巻き取っていく。
そして、下ではウォンビックとトガの身体が重力に逆らい、空中に浮いてく。
「ぐぅ、ううう……&html(<font color="#00008b">すまんな、キンノウ、ウチデ。 いつもいつも。</font)」
ウチデに引き上げられながら辛うじてヘリコプターに乗り込み、ウォンビックは息を整えた。
通常、ウォンビックほどの体重になると機内で少し重心を変えるだけで墜落の危険すらあるのだが、キンノウはそんな可能性を微塵も感じさせない安定した操縦をしている。
「&html(<font color="#00008b">ウォンビック、お前は自分で思ってるほど強くない。</font)
&html(<font color="#00008b">もうちょっと早く俺やウチデを呼ぶか、トガさんにもっと頼れ。</font)」
「……&html(<font color="#00008b">人を頼るのは、その人間に負荷をかける。</font)」
「&html(<font color="#00008b">互いに信頼して負荷を掛けられる間柄のことを仲間というんだよ。 ボケ。</font)」
真っ白な肌の身長140センチに満たないキンノウが、身長240センチの黒人:ウォンビックの兄である、という普通なら目新しい光景なのだが、トガやウチデにとってはもうよく有る光景だ。
「つうことで、俺たちを信頼してるホーティックさんから支援要請だ。 ターゲットの空蝉って男を追跡中らしい。」
「……&html(<font color="#00008b">着いたら起こせ。少し疲れた。</font)」
狭いヘリコプターのイスは事前から取り外されており、ウォンビックでも充分に横になれるスペースが用意されている。
―――この後、トガがウチデとウォンビックの耳かきを賭けてデュエルすることになったりするが、それはまた別の話。
&html(<font color="#ff0000">(作者視点)</font)
入り口に『清掃中』の看板の掛かった公衆便所にて、便座の数より多い人数が入室していた。
「あー、お礼参りッスか? 俺、ケンカとかは卒業してマジメな学生サンになったんで、お断りっス。」
そう言った少年は、驚くほどに描写に困る容姿をしていた。
中肉中背な体格、シンプルに刈られた坊主頭、服装は学ラン、荷物も飾り気の無い黒い皮製のカバンのみ。
特徴といえば、アゴと頬の間辺りにある『ヒゲソリで失敗したの?』程度の古傷ぐらいか。
「いえ、私たちはレアハンターの正念党です。
空蝉高差さんですよね、あなたの持っている〔聖炎の王子ミカエル〕を懸けてデュエルしていただきたいのです。」
普段はイタリアの超絶美形少年、といった風だが、今は数日前にトガに鼻を折られて絆創膏をつけているホーティック。
今日は十数人のデュエリストを侍らせている。 その中には爬露巳式やニック・ゴールドなどなど、読者の皆さんにはお馴染みのメンバーもいる。
「俺、アンティデュエルもしねーって約束してんスよ。引き上げてくんねースか。」
空蝉と呼ばれた高校生は、トイレの隅へと追い込まれてなおマイペースだった。
「私にも仲間との約束がありましてね。 あなたのカードは必ず持ち帰らなくてはなりません。」
ホーティックは瞳に闘志を点し、一歩ずつ詰め寄った。
「――アレっスね、グっとくる覚悟ッスね。 でも――俺も約束があるんで、ここは逃げさせてもらうッス。」
空蝉は素早く踵を返し、ラクガキされた小便器を踏み台にし、換気用の窓をガラっと開け、頭からダイブした。
「逃がしません!」
レアハンター達は、反射的に空蝉の足を掴みかかったが、それは失敗だった。
「……アンタら、アタマがアレッスね。 トンボ並み。」
空蝉は瞬間的に窓枠を鷲掴みして半分ほど出た身体を強引に室内に押し戻した。
しかし、ホーティックを先頭に据えたレアハンターたちはその空間に突進する。
――結果。
&html(<font size="2">ズガッシャッァアア!</font>)
先頭のホーティックの顔面に空蝉の足刀がめり込んだ。 噴出す鼻血。 赤く染まる便所。 卒倒するホーティック。
「だ、第三幹部ーッ!?」
狼狽する正念党の面々、そして不敵に笑う空蝉。
「……アレっすねェ。 不慮の事故でリーダーさんが倒れちゃったけど、まだデュエルしますか。」
ニヤニヤとする空蝉に、表情を怒りに崩すレアハンターの面々。
「きっさまぁあああッ!」
レアハンターが数人飛び出し、空蝉へと踊りかかる。
しかし空蝉は最初からそれを予想していたようで、笑みをさらに深めた。
「コレ、アレッスよね、正当防衛ッスよね?」
空蝉は素早く腰を落とし、下方から2本の腕を2人のレアハンターの喉元に絡めて、首を圧迫し……
「空蝉くーん、なにしてるのかなー?」
トイレの入り口から掛かった耳に付く女性の声に、空蝉は腕を放した。
「し、&html(<ruby><rb>子組<rt>しぐみ)先生……これはアレっスよ、正当防衛ッスよ。」
今までニヤニヤと笑っていた空蝉の顔は一気にゆがみ、挙動不審なまでにビクついている。
「そこで鼻血出してる人は? 空蝉くんがやったの?」
「え、や、それはアレッスよ、事故ッスよ。 その人が突っ込んできて……先生こそ、なにしにきたんスか?」
レアハンターを掻き分けて、男子便所にヅカヅカと侵入してくる子組と呼ばれた女性。
「空蝉くんの追試が決まったから教えに来たの。
あと、空蝉くん? 私との約束を言ってみようか?」
「……1:暴力は振るわない。 2:賭けデュエルはしない。 3:イルカに憧れない。 4:一人前のデュエリストになる。」
「はい、よく言えました。……それでは皆さん、お騒がせしてすみませんでした。」
「ちょっと待って。 こっちも子供の使いできてるわけじゃ……」
去ろうとする2人を止めるべく、巳式が子組の肩を持つ。
「……ホーティックさんを病院に連れて行ったほうがいいですよ? その出血じゃ本当に危ないので。」
「!? 名乗った覚えは、ないんだけど?」
ホーティックくらいのデュエリストになると、顔が売れるとそれだけでレアハンターとして支障が出てくる。
そのため、誰かがホーティックの顔を知ったとしても、その顔を広めようとする者は報復の攻撃を覚悟しなければならない。
……ぶっちゃけると、巳式の記憶ではホーティックの顔は雑誌やネットなどの一般の情報網では晒されていない。
そのため、目の前の女はなんらかの『一般的ではない情報網』を持っている、ということになる。
「デュエルするにしても、出直した方がいいと思いますよ? それでは、失礼します。」
子組は空蝉の襟首を掴み、ズルズルと引っ張りながらその場をあとにした。
「えーっと、先生? 俺、なんか間違ってたんスか? 結構頑張ったつもりだったんスけど。」
「空蝉くん? 前も言ったけど、マークシートの塗り潰す場所は確認してね?」
2人が歩み去るのをただ眺めるレアハンター一同。
……結果として、今回のカードハントでは狙われた五人のターゲットで、空蝉は唯一奪われなかった男となった。
※ちなみに他の4名は、エビエスに戦術模倣されたシグ・ゴールド、
ウォンビックにロック合戦で破れた鵜殿 八兵衛、
神次郎とプリッツ対決で負けたロールウィッツ・ウェンディエゴ、
クロックのターゲットでありながらシャモンに倒された神成 鏡真、の四人。
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2010-07-25T22:47:24+09:00
1280065644
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遊義皇二十一話(前)(旧)
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&html(<font color="#ff0000">(作者視点)</font)
大阪のとあるキャンプ場、いつもならば親しい人間同士のバーベキューやカレー作りの音が聞こえてきそうな秋の夕暮れ。
だがしかし、今日に至っては何かが震えるような奇な音が幾重にも轟いていた。
その音源はいえば、ふたりの決闘者の周囲をグルっと取り囲んでいる十数名の山伏風の白装束を着た男女だ。
年齢こそバラバラだが、全員が同じ『聖耳法堂連合万歳』と書かれたハチマキを額に巻き、三味線を軽快に弾いている。
べんべらべんべかべんだべっん べんだらだったべんだらべっべん
一縷の狂いも無く、全く同じタイミングでエンドレスで演奏される音楽は、その中央に居る2人……、
現在対戦中のデュエリスト、ウォンビックと鵜殿 八兵衛に全く異なる影響を与え続けていた。
「んん~、この音響、たまりまへんなぁ、耳が洗われるようですわ。 あんさんもそう思いますやろ?」
和服に身を包んだ決闘者、鵜殿 八兵衛は楽しそうに対戦相手、ウォンビックに問いかけたが、ウォンビックにそれに答える余裕は無い。
「あ……う……がぁ……ッッ。」
「ブラックマイン様ッ! ブラックマイン様ァぁっ!」
泣きじゃくるトガを横目に、身長240センチメートルの巨漢は方膝を大地につけ、その顔は苦痛の脂汗がじっとり浮かんでいる。
「これぞぉぉぉぉ、」
「我等、聖耳法堂連合が秘技。」
「汚耳慈振陣っ!」
三味線を弾きながら器用に叫ぶ白装束たち。
だが、それにツッコミを入れる余裕はウォンビックにもトガにもない。
&html(<ruby><rb>汚耳<rt>おじ)・&html(<ruby><rb>慈振陣<rt>じしんじん)――、
聖耳法堂連合という耳掃除に狂った集団が編み出した、これまた狂った技だ。
この技自体は歴史的にはそう古い物ではなく、60年前にある耳掃除を愛する芸子が『汚れし耳は良き音によって清め、聖耳に至るべし。』という信念によって研究・開発し……、
―――と、始点から語ればとても冗長となるので省くが、つまるところ、この技は複数の三味線を同時に演奏することで特殊な音波を作り出す技である。
そしてその音波は耳カスが溜まった耳には凄まじい騒音に聞こえる、という技らしい。
常日頃多忙で、数年間耳掃除をやっていないウォンビックはこの技を直に受け、不秩序で混沌とした大音量のオーケストラ地獄に捉えられていた。
――むろん、騒音といってもただの音であり、耳を塞ぐとかすればなんの問題もないのだが………ウォンビックはゲーム開始から100ターン以上、耳を放置している。
「&html(<font color="#00008b">ブラックマイン様、耳をふさいでくださいっ! 相手のプレイは私がジェスチャーで伝えますっ!</font)」
「&html(<font color="#00008b">何度も言わせるな、トガ。</font)
&html(<font color="#00008b">デュエル中、相手の言葉を聞き、その上で判断を下すのは当然のマナーだ、とな。</font)
&html(<font color="#00008b">相手が音楽を聴いているというだけで、それを覆すことはできん。</font)」
「&html(<font color="#00008b">何がマナーですかっ、敵はブラックマイン様を攻撃してるではないですかっ。</font)
&html(<font color="#00008b">敵の狙いは明らかにブラックマイン様の妨害ですッ、現に……ブラックマイン様は……</font)」
言い難そうに言葉詰まるトガ。
「&html(<font color="#00008b">自分でも信じられん。 まさか、この程度の音で……プレイングミスを連発するとはな。</font)」
ロック系列のデッキによるデュエルというのは、通常のデッキに比べてお互いの手札が増えやすいので取れる戦術の幅が増えていく。
故に、相手のプレイングから敵方の戦法の裏の裏まで慮る……つまり、観察・洞察・推察を行使する集中力が必要となる。
だがしかし、この騒音の中ではその集中力には波が生じ、3時間超の長期デュエルではプレイングミスも生じるという物。
鵜殿 八兵衛のターン
ウォンビック・ブラックマイン:ライフポイント:3200 手札6枚 デッキ枚数・42枚
モンスター:きつね火 綿毛トークン
魔法・罠:伏せカード 伏せカード
鵜殿 八兵衛:ライフポイント:6200 手札6枚 デッキ枚数・1373枚
モンスター:おジャマトークン おジャマトークン 第一時刻守 シネ 第五時刻守り シンタツ
魔法・罠:十二方天護寺 ヤクシデラ(フィールド) 伏せカード 伏せカード 伏せカード
&html(<Table Border BorderColor="#cc7a28" Border="2"><Tr><Td>きつね火</Td><Td>火属性</Td><Td>炎族</Td><Td>レベル2</Td><Td>ATK300</Td><Td>DEF200</Td></Tr><Td ColSpan="6">表側表示で存在するこのカードが戦闘で破壊されたターンのエンドフェイズ時、<BR>このカードを墓地から自分フィールド上に特殊召喚する。<BR>このカードは生け贄召喚のための生け贄にはできない。</Td></Table>)
&html(<Table Border BorderColor="#ccb028" Border="2"><Tr><Td>綿毛トークン</Td><Td>風属性</Td><Td>植物族</Td><Td>レベル1</Td><Td>ATK0</Td><Td>DEF0</Td></Tr><Td ColSpan="6">(トークン)</Td></Table>)
&html(<Table Border BorderColor="#cc7a28" Border="2"><Tr><Td>第一時刻守り シネ</Td><Td>光属性</Td><Td>獣族</Td><Td>レベル4</Td><Td>ATK2200</Td><Td>DEF200</Td></Tr><Td ColSpan="6">このカードは相手プレイヤーを直接攻撃でき、相手に与える戦闘ダメージは100になる。<BR>エンドフェイズ時、このカードをデッキに戻し、デッキから「時刻守り」と名の付くカードを2体までをデッキから特殊召喚する。<BR>その後、デッキをシャッフルする。(オリカ)</Td></Table>)
&html(<Table Border BorderColor="#cc7a28" Border="2"><Tr><Td>第五時刻守り シンタツ</Td><Td>炎属性</Td><Td>ドラゴン族</Td><Td>レベル4</Td><Td>ATK1400</Td><Td>DEF1000</Td></Tr><Td ColSpan="6">このカードは相手プレイヤーを直接攻撃でき、相手に与える戦闘ダメージは100になる。<BR>このカードが相手に戦闘ダメージを与えた時、このカードより攻撃力の低いモンスター1体を破壊する。<BR>このカードが相手にダメージを与えたエンドフェイズ時、このカードをデッキに戻し、デッキから「第六時刻守り シミ」を特殊召喚する。<BR>その後、デッキをシャッフルする。(オリカ)</Td></Table>)
&html(<Table Border BorderColor="#ccb028" Border="2"><Tr><Td>おジャマトークン</Td><Td>光属性</Td><Td>獣族</Td><Td>レベル2</Td><Td>ATK0</Td><Td>DEF1000</Td></Tr><Td ColSpan="6">おジャマトークンが破壊された時、コントローラーに300ポイントのダメージを与える。(トークン)</Td></Table>)
&html(<Table Border BorderColor="#0f9926" Border="2"><Tr><Td>十二方天護寺 ヤクシデラ</Td><Td>フィールド魔法</Td></Tr><Td ColSpan="4">このカードが存在する限り、お互いのメインフェイズ1をスキップする。<BR>相手ターンに1度だけ、お互いのプレイヤーは自分のフィールド上に存在する「時刻守」と名の付くモンスターをデッキに戻すことで、<BR>そのカードに記されているモンスターをデッキから特殊召喚する。 その後、デッキをシャッフルする。(オリカ) </Td></Table>)
&html(<Table Border BorderColor="#b21162" Border="2"><Tr><Td>リビングデッドの呼び声</Td><Td>永続罠</Td></Tr><Td ColSpan="4">自分の墓地からモンスター1体を選択し、攻撃表示で特殊召喚する。<BR>このカードがフィールド上に存在しなくなった時、そのモンスターを破壊する。<BR>そのモンスターが破壊された時このカードを破壊する。 </Td></Table>)
「私のバトルフェイズどす。 〔シンタツ〕でダイレクトアタック。」
&html(<Table Border BorderColor="#cc7a28" Border="2"><Tr><Td>第五時刻守り シンタツ</Td><Td>炎属性</Td><Td>ドラゴン族</Td><Td>レベル4</Td><Td>ATK1400</Td><Td>DEF1000</Td></Tr><Td ColSpan="6">このカードは相手プレイヤーを直接攻撃でき、相手に与える戦闘ダメージは100になる。<BR>このカードが相手に戦闘ダメージを与えた時、このカードより攻撃力の低いモンスター1体を破壊する。<BR>このカードが相手にダメージを与えたエンドフェイズ時、このカードをデッキに戻し、デッキから「第六時刻守り シミ」を特殊召喚する。<BR>その後、デッキをシャッフルする。(オリカ)</Td></Table>)
竜頭の亜人モンスターは奇声をあげながら、壁モンスターを跳躍によって飛び越え、ウォンビックの腹にパンチを浴びせた。
だがしかし、いかに屈強なモンスターといえど、パンチ一発で身長240センチのウォンビックを弾き飛ばせるはずも無い。
ウォンビック:LP3200→3100
しかし、それでも竜頭のモンスターは不敵に笑って見せた。
「〔シンタツ〕の効果発動どす。 この効果で私のフィールド上の〔おジャマトークン〕を一体駆除します。」
おじゃまトークン:フィールド→消滅(トークンは墓地に行かない)
鵜殿:LP6200→LP5900
「続くは、〔シネ〕の直接攻撃……こっちも100ポイントどす。」
「&html(<font color="#00008b">っちぃ……!</font)」
前歯の出たげっ歯類の獣人(おそらくモチーフはハツカネズミ)のモンスターも先ほどの竜頭のモンスターと同じく、ウォンビックに深い傷は与えられなかった。
ウォンビック:LP3100→3000
「そして、ターン終了(手札6・伏せ3・発動中1)……ここで〔シンタツ〕の効果発動……デッキから次なる時守り、〔シミ〕を特殊召喚します。」
第五時刻守り シンタツ:フィールド→デッキへ
第六時刻守り シミ:デッキ→フィールドへ
&html(<Table Border BorderColor="#cc7a28" Border="2"><Tr><Td>第六時刻守り シミ</Td><Td>風属性</Td><Td>爬虫類族</Td><Td>レベル4</Td><Td>ATK1200</Td><Td>DEF1200</Td></Tr><Td ColSpan="6">このカードは相手プレイヤーを直接攻撃でき、相手に与える戦闘ダメージは100になる。<BR>このカードが相手に戦闘ダメージを与えた時、大蛇トークン(爬虫類族・地・星3・攻/守1500)を1体を特殊召喚する。<BR>このカードが相手にダメージを与えたエンドフェイズ時、このカードをデッキに戻し、デッキから「第七時刻守り ゴウマ」を特殊召喚する。<BR>その後、デッキをシャッフルする。(オリカ)</Td></Table>)
フィールドの竜頭のモンスターが消え去り、代わって舌をチョロチョロと出すヘビ顔のもモンスターが現れた。
これこそ、時刻守り十二支シリーズの真骨頂。
干支になぞらえた十二体のモンスターが次々と移り変わり、変則的な効果で攻める。
だがしかし、五の次は六であることから分かるとおり、あくまでも時間の順序は正確であり、12種全てを暗記していれば次の攻撃パターンも読める。
――鵜殿の切り札、〔第一時刻守り シネ〕さえなければ。
「続き、〔シネ〕の効果発動……そうですね、〔第十二時刻守り ガイイ〕と〔第五時刻守り シンタツ〕を召喚します。」
ネズミ獣人と入れ違いに出てきたのは、さきほど消えたはずの竜頭のモンスターと、見覚えの無い人の上半身に、イノシシの頭と下半身を生やした二足歩行モンスター。
第十二時刻守り ガイイ:デッキ→フィールド
第五時刻守り シンタツ:デッキ→フィールド
&html(<Table Border BorderColor="#cc7a28" Border="2"><Tr><Td>第十二時刻守り ガイイ</Td><Td>風属性</Td><Td>獣族</Td><Td>レベル4</Td><Td>ATK100</Td><Td>DEF2400</Td></Tr><Td ColSpan="6">このカードは相手プレイヤーを直接攻撃でき、相手に与える戦闘ダメージは100になる。<BR>このカードが相手に戦闘ダメージを与えた時、相手フィールド上に存在するセットカードを全て破壊する。<BR>このカードが相手にダメージを与えたエンドフェイズ時、このカードをデッキに戻し、デッキから「第一時刻守り シネ」を特殊召喚する。<BR>その後、デッキをシャッフルする。(オリカ)</Td></Table>)
時間は順序どおりにしか動かない、だがしかし、全ての数字の祖たる『1』だけは例外で、他の数字を2つまで呼ぶことができる。
ウォンビックは、先ほどからこのシネから繰り出される多種多様な11種のモンスター全てに対策を練らなければならず、それが騒音と相まって強い精神的負荷=ストレスとなっていた。
「&html(<font color="#00008b">俺のターン、ドロー。(手札7)……</font)」
「ここで〔十二方天護寺 ヤクシデラ〕の効果発動……ウォンビックはんのメインフェイズ1はスキップや。」
&html(<Table Border BorderColor="#0f9926" Border="2"><Tr><Td>十二方天護寺 ヤクシデラ</Td><Td>フィールド魔法</Td></Tr><Td ColSpan="4">このカードが存在する限り、お互いのメインフェイズ1をスキップする。<BR>相手ターンに1度だけ、お互いのプレイヤーは自分のフィールド上に存在する「時刻守」と名の付くモンスターをデッキに戻すことで、<BR>そのカードに記されているモンスターをデッキから特殊召喚する。 その後、デッキをシャッフルする。(オリカ) </Td></Table>)
そして、そこに追い討ちをかけるフィールド魔法、ヤクシデラ。
ソリッドビジョンによって生まれたその姿は普通の古寺といった風なのだが、
その実、メインフェイズ1を封じらるという効果があり、メインフェイズ1でモンスターを召喚してバトルフェズで攻撃する、というデュエルモンスターズの王道パターンを破壊する。
――まあ、それはロックタイプであるウォンビックにはさほど痛手にはならないが、もうひとつの効果がウォンビックにとって難渋だった。
「&html(<font color="#00008b">俺は手札から、〔ライトニング・ボルテックス〕を発動する。</font)」
&html(<Table Border BorderColor="#0f9926" Border="2"><Tr><Td>ライトニング・ボルテックス</Td><Td>通常魔法</Td></Tr><Td ColSpan="4">手札を1枚捨てる。<BR>相手フィールド上に表側表示で存在するモンスターを全て破壊する。 </Td></Table>)
おジャマ・グリーン:手札→墓地(ライトニング・ボルテックスのコスト)
「&html(<font color="#00008b">って、あ、ダメ! ブラックマイン様!</font)」
発動はもう終わっている。 時既に遅し。
「ブラックマインはん、〔ヤクシデラ〕の効果発動や。
〔第六時刻守り シミ〕をデッキに戻して、魔法無効化能力のある〔第七時刻守り ゴウマ〕を特殊召喚。」
ヘビ顔のモンスターは、古寺に置いてあったに賽銭箱に飛び込み、寺の中からケンタウロスのように下半身が馬になったチョンマゲを結ったモンスターが出現する。
第六時刻守り シミ:フィールド→デッキ
第七時刻守り ゴウマ:デッキ→フィールド
&html(<Table Border BorderColor="#cc7a28" Border="2"><Tr><Td>第七時刻守り ゴウマ</Td><Td>光属性</Td><Td>獣戦士族</Td><Td>レベル4</Td><Td>ATK1000</Td><Td>DEF1400</Td></Tr><Td ColSpan="6">このカードは相手プレイヤーを直接攻撃でき、相手に与える戦闘ダメージは100になる。<BR>このカードがフィールドに存在する限り、フィールド上の「時刻守り」と名の付くカードは魔法カードの効果を受けない。<BR>このカードが相手にダメージを与えたエンドフェイズ時、このカードをデッキに戻し、デッキから「第八時刻守り ミヒツジ」を特殊召喚する。<BR>その後、デッキをシャッフルする。(オリカ)</Td></Table>)
表れた和製ケンタウロスは、同胞たちに降り注ぐ電撃を刀で掃い、雷撃を受けたのはおジャマトークンだけだった。
相手ターンでも時刻守りへを入れ替えて相手の攻撃を的確にガードする、これが鵜殿の時刻守りロックだ。
おじゃまトークン:フィールド→消滅
鵜殿:LP5900→LP5600
「記憶が曖昧なようですなぁ、ブラックマインはん?
魔法を無効にする〔ゴウマ〕は午だから子・丑・寅・卯・辰・巳・午で7番め。
6番の〔シミ〕の次やから、ヤクシデラで出せるやろ?」
「&html(<font color="#00008b">カードを1枚セットして、ターン、終了。(手札4・伏せ3)</font)」
取り合わず、そのまま終了宣言をするウォンビック。 その声と表情には疲労と焦燥がビッシリと詰まっている。
「私のターン(手札7)、〔第七時刻守り ゴウマ〕〔第十二時刻守り ガイイ〕〔第五時刻守り シンタツ〕でダイレクトアタックどすぇ。」
「&html(<font color="#00008b">ぐ、づぉっ!</font)」
ウォンビック:LP3100→LP3000→LP2900→LP2800
たった100ポイントに過ぎないダメージだが、それでも80発叩き込めれば8000削りきれる。
ロック同士でデッキ切れを待つという気長なデュエルでは、そのダメージでも十二分に致命傷になりうる。
すなわち、ウォンビックはデッキ切れとライフポイント、共に追い詰められていた。
「1枚セットしてターン、終了どす(手札6・伏せ4)!」
ターン終了宣言と同時に、ゴウマ、ガイイ、シンタツはそれぞれ、次の数字へと変化する。
第五時刻守り シンタツ:フィールド→デッキ
第七時刻守り ゴウマ:フィールド→デッキ
第十二時刻守り ガイイ:フィールド→デッキ
第六時刻守り シミ:デッキ→フィールド
第八時刻守り ミヒツジ:デッキ→フィールド
第一時刻守り シネ:デッキ→フィールド
&html(<Table Border BorderColor="#cc7a28" Border="2"><Tr><Td>第六時刻守り シミ</Td><Td>風属性</Td><Td>爬虫類族</Td><Td>レベル4</Td><Td>ATK1200</Td><Td>DEF1200</Td></Tr><Td ColSpan="6">このカードは相手プレイヤーを直接攻撃でき、相手に与える戦闘ダメージは100になる。<BR>このカードが相手に戦闘ダメージを与えた時、大蛇トークン(爬虫類族・地・星3・攻/守1500)を1体を特殊召喚する。<BR>このカードが相手にダメージを与えたエンドフェイズ時、このカードをデッキに戻し、デッキから「第七時刻守り ゴウマ」を特殊召喚する。<BR>その後、デッキをシャッフルする。(オリカ)</Td></Table>)
&html(<Table Border BorderColor="#cc7a28" Border="2"><Tr><Td>第八時刻守り ミヒツジ</Td><Td>闇属性</Td><Td>獣族</Td><Td>レベル4</Td><Td>ATK800</Td><Td>DEF1600</Td></Tr><Td ColSpan="6">このカードは相手プレイヤーを直接攻撃でき、相手に与える戦闘ダメージは100になる。<BR>このカードが相手に戦闘ダメージを与えた時、墓地に存在する「時刻守り」と名の付く全てのカードをデッキに戻す。<BR>このカードが相手にダメージを与えたエンドフェイズ時、このカードをデッキに戻し、デッキから「第九時刻守り シンサル」を特殊召喚する。<BR>その後、デッキをシャッフルする。(オリカ)</Td></Table>)
&html(<Table Border BorderColor="#cc7a28" Border="2"><Tr><Td>第一時刻守り シネ</Td><Td>光属性</Td><Td>獣族</Td><Td>レベル4</Td><Td>ATK2200</Td><Td>DEF200</Td></Tr><Td ColSpan="6">このカードは相手プレイヤーを直接攻撃でき、相手に与える戦闘ダメージは100になる。<BR>エンドフェイズ時、このカードをデッキに戻し、デッキから「時刻守り」と名の付くカードを2体までをデッキから特殊召喚する。<BR>その後、デッキをシャッフルする。(オリカ)</Td></Table>)
「&html(<font color="#00008b">俺のターン……(手札5) 伏せカードの〔レベル制限B地区〕を発動する。</font)」
&html(<Table Border BorderColor="#0f9926" Border="2"><Tr><Td>レベル制限B地区</Td><Td>永続魔法</Td></Tr><Td ColSpan="4">レベル4以上のモンスターは守備表示に変更される。</Td></Table>)
ウォンビックは、このターンにドローした防御系のカードを無防備に発動したが……それを許可する鵜殿ではない。
「伏せカード発動、〔ツイスター〕!
それにチェーンしおして〔ゴブリンのやりくり上手〕、ついで〔重なる不幸〕ぉっ、
トドメに〔ツイスター〕・〔やりくり〕・〔重なる不幸〕の3枚を墓地に送って〔非常食〕やっ!」
&html(<Table Border BorderColor="#0f9926" Border="2"><Tr><Td>ツイスター</Td><Td>速攻魔法</Td></Tr><Td ColSpan="4">500ライフポイントを払う。<BR>フィールド上に存在する表側表示の魔法または罠カード1枚を破壊する。 </Td></Table>)
&html(<Table Border BorderColor="#b21162" Border="2"><Tr><Td>ゴブリンのやりくり上手</Td><Td>通常罠</Td></Tr><Td ColSpan="4">自分の墓地に存在する「ゴブリンのやりくり上手」の枚数+1枚をデッキからドローし、<BR>手札からカードを1枚選択してデッキの一番下に戻す。 </Td></Table>)
&html(<Table Border BorderColor="#b21162" Border="2"><Tr><Td>重なる不幸</Td><Td>通常罠</Td></Tr><Td ColSpan="4">相手のデッキの一番上からこのカードの発動時に積まれているチェーン数×2枚を墓地に送る。<BR>同一チェーン上に複数回同名カードの効果が発動されている場合、このカードは発動できない。 (製作協力:KOBチャット)</Td></Table>)
鵜殿:LP5900→LP5400(ツイスターのコスト)
チェーンブロック
チェーン5:非常食
チェーン4:重なる不幸
チェーン3:ゴブリンのやりくり上手
チェーン2:ツイスター
チェーン1:レベル制限B地区
※チェーンは後に発動した(=上から順に)処理する。
「〔非常食〕で3枚墓地に送って3000回復、〔重なる不幸〕で6枚デッキ破壊、〔やりくり上手〕で手札調整。
〔ツイスター〕で〔レベル制限B地区〕を破壊……ブラックマインはん、無駄に終わってもうたなぁ。」
鵜殿:LP5400→LP8400
ウォンビックデッキ:6枚墓地へ。
鵜殿:手札6→手札8→手札7(ゴブリンのやりくり上手の効果)
レベル制限B地区:フィールド→破壊、墓地へ。
「&html(<font color="#00008b">……やっと、〔非常食〕と〔ツイスター〕を使ったか、それを待っていた。</font)」
「………何ていうた、今?」
英語は通じていないが、ウォンビックの不敵な笑みを見れば、誰だって聞きかえす。
「&html(<font color="#00008b">伏せカード、〔融合〕を発動する。</font)
&html(<font color="#00008b">手札の〔おジャマ・バイオレッド〕と〔おジャマ・グリーン〕を融合し、融合デッキから〔おジャマ・トラップマスター〕を召喚したい。</font)」
&html(<Table Border BorderColor="#0f9926" Border="2"><Tr><Td>融合</Td><Td>通常魔法</Td></Tr><Td ColSpan="4">決められたモンスターとモンスターを融合させる。</Td></Table>)
&html(<Table Border BorderColor="#6b23b2" Border="2"><Tr><Td>トラップ・おジャマスター</Td><Td>光属性</Td><Td>獣族</Td><Td>レベル6</Td><Td>ATK0</Td><Td>DEF3000</Td></Tr><Td ColSpan="6">「おジャマ・バイオレッド」+「おジャマ・グリーン」<BR>1ターンに1度だけ、手札1枚をデッキの1番下に戻すことで、墓地に存在する罠カード1枚を手札に加えることができる。</Table>)
現れたのは、ジャガイモのようにデコボコとした顔面に黒いマントを着たモンスター。
ロック使いということからおジャマ系のカードを使うというのは理解できるが、『不動巨人:ウォンビックが融合を使う』なんて情報は初耳だ。
「あんさん、なしてでロックデッキで、融合なんてコンボを狙ってはるの!?」
ロックデッキというのは、必然的に長期戦となり、消耗戦となることも多く、複数のカードを揃えるコンボカードを組み込むことは敬遠される。
そして、ウォンビックはデッキ枚数が多いのでコンボカードが手札に揃う確率も低いので、入れるはずが無いのだ。
このデッキタイプの変化は、部下であるトガですら初見だった。
「&html(<font color="#00008b">ブラックマイン様……いつ〔融合〕なんて入れたんですか?</font)」
トガは、戦術の変化に戸惑いを隠せなかった。
昨日、二封気と決闘した時点では融合なんて入ってなかったし、ウォンビックはデッキ枚数ゆえにデッキ調整もそうちょくちょくできるわけでもない。
「&html(<font color="#00008b">ニ封気が楽しそうに融合を使っていたんでな、俺も久しぶりに使いたくなっただけだ。</font)」
「&html(<font color="#00008b">久しぶり……?</font)」
「&html(<font color="#00008b">融合おジャマはレアハンターをやる前に使っていた戦術でな。</font)
&html(<font color="#00008b">デッキレシピも頭に入っているし、直すだけならば30分もあれば直せる。</font)」
トガにとってはウォンビックが融合を使っていたなんて初耳だし、そもそも『使いたくなった』という理由でカードを使うことも無かった。
「&html(<font color="#00008b">……俺は〔トラップ・おジャマスター〕の効果で、俺はこのターンのドローをデッキに戻し、〔覇者の一括〕を手札に戻す!</font)」
おジャマ・イエロー:ウォンビック手札→デッキ
覇者の一括:墓地→ウォンビックの手札
そして、これは初見ではなく、強敵との戦いごとにそうだったが、ウォンビックは実に楽しそうにデュエルしていた。
――しかし、トガはウォンビックとはテストデュエルを幾度となくしてきたが、彼をここまで熱くさせるほどのデュエルはできたことが無い。
デュエリストを階級付ける『星(レベル)』、 星5のトガと星6の鵜殿には雲泥の差があるのは仕方ないことではあるのだが……それでも無性に、トガは自分の実力が腹立たしかった。
「&html(<font color="#00008b">カードを1枚セットし、ターン終了だ。(手札2・伏せ1)</font)」
「私のターン、ドローどす…ッ(手札7)」
「&html(<font color="#00008b">俺はお前のスタンバイフェイズで〔覇者の一括〕を発動し、お前のバトルフェイズをスキップする。</font)」
&html(<Table Border BorderColor="#b21162" Border="2"><Tr><Td>覇者の一括</Td><Td>通常罠</Td></Tr><Td ColSpan="4">相手スタンバイフェイズで発動可能。<BR>発動ターン相手はバトルフェイズを行う事ができない。</Td></Table>)
鵜殿:バトルフェイズスキップ
「&html(<font color="#00008b">デュエルモンスターズのルールでは、バトルフェイズが行われない場合、同時にメインフェイズ2もスキップされる。</font)
&html(<font color="#00008b">このターン、お前ができるのはドローフェイズ、スタンバイフェイズ、エンドフェイズだけだ。</font)」
メインフェイズはその名の通り、ゲーム展開の基盤を担うフェイズである。
本来はメインフェイズ2はバトルフェイズのあとにカードを出したりする補助的なフェイズだが、今は鵜殿自身の〔ヤクシデラ〕によってメインフェイズ1は封印されている。
そのため、鵜殿は結果的に2度のメインフェイズを共に封じられれ、打つべき手は存在していなかった。
「た、ターン終了どすえ。(手札7・伏せ0)」
「&html(<font color="#00008b">俺のターン、ドロー(手札3)。</font)
&html(<font color="#00008b">このターンのドローカードをコストにして、〔トラップ・おジャマスター〕の効果を発動。</font)
&html(<font color="#00008b">〔覇者の一括〕を手札に加え、リバースカードを1枚セット、ターン終了だ。(手札2・伏せ2)</font)」
魔力転送:ウォンビック手札→デッキ
覇者の一括:墓地→ウォンビックの手札
「私のターン(手札8)……スタンバイフェイズどす。」
鵜殿が行うフェイズ確認を、ウォンビックは無造作に伏せカードを発動した。
「&html(<font color="#00008b">〔覇者の一括〕、だ。</font)」
鵜殿:バトルフェイズスキップ
フィールドでは1ターン前と同じ光景が再現されていた。
「む……無限ループじゃないか……!?」
鵜殿の信者の一人が、そう口走った。
ウォンビックは義務として、毎ターンドローするので、トラップ・おジャマスターのコストが尽きることはありえない。
そのため覇者の一括は何回でも手札に戻すことができるので、鵜殿のメインフェイズ1・2及びバトルフェイズはスキップされ続ける。
そのため鵜殿のターンは、ドローフェイズにドローし、エンドフェイズに手札を調整するしかすることがない……つまるところ、
&html(<font size="6">鵜殿のデッキは減っていく!</font>)
一方のウォンビックはトラップ・おジャマスターのコストとして、1枚ドローすると同時にカード1枚をデッキに戻しているので、
&html(<font size="8">ウォンビックのデッキは減らない!</font>)
鵜殿のデッキが何枚残っているかは関係ない!
ウォンビックの消費は0である以上、僅かでも消費する鵜殿のほうが先にデッキが尽きるのは究極的に当然。
――そう、このコンボは相手だけが消耗し、自分は永遠に消耗しない、真の意味での無限コンボなのだ!
「&html(<font color="#00008b">フンコロガシが己が排泄したフンをまた己のエネルギーにするように俺は消耗しない。</font)
&html(<font color="#00008b">故にこの技、その名をスカラベ・ロックと名付けた。</font)」
名付けた、って、お前が発案のコンボなのか、ウォンビック。
「負けるのか……? 姫様が……!?」
「んな……!?」
ウォンビックを苦しめていた三味線は何時の間にか止んだ。
その静寂は、まるで世界がウォンビックの勝利を認めたかのようでもある。
「まだまだ! 私のデッキには、まだ〔ツイスター〕・〔サイクロン〕が1枚ずつ眠っとりやす!
メインフェイズがスキップされても、私の〔十二方天護寺 ヤクシデラ〕を破壊すれば、ロックは崩壊どすえ!」
「メインフェイズもスキップされるから、魔法カードは使えないと思うけど?」
「あくまでもスキップされ取るんわ、メインフェイズ1・2とバトルフェイズ。
速攻魔法の〔非常食〕や〔ツイスター〕なら、スタンバイフェイズやドローフェイズで発動できるで?」
&html(<Table Border BorderColor="#0f9926" Border="2"><Tr><Td>ツイスター</Td><Td>速攻魔法</Td></Tr><Td ColSpan="4">500ライフポイントを払う。<BR>フィールド上に存在する表側表示の魔法または罠カード1枚を破壊する。 </Td></Table>)
&html(<Table Border BorderColor="#0f9926" Border="2"><Tr><Td>サイクロン</Td><Td>速攻魔法</Td></Tr><Td ColSpan="4">フィールド上に存在する魔法または罠カード1枚を破壊する。 </Td></Table>)
普通ならばデッキにここまで対抗カードがあるわけもないのだが、そこは流石の1500枚デッキ。
既に鵜殿はツイスターをこのゲーム中に2枚使っているのだが、汎用性の高い魔法・罠の除去ツールをフル装備していたらしい。
「&html(<font color="#00008b">……ほお。</font)」
「姫さん、あんた、××××だわ。」
「……何?」
トガは何時の間にか余裕を取り戻し、腰に両拳を当て、ふんぞり返っている。
「あんたのデッキはまだ1300枚もあるカードの中から2枚だけしかないカードを引けるわけ無いでしょ?」
「ほ、ほ、確かに、引くまでに20~30ターン掛かるかもしれへん、
せやけど、それでもブラックマインはんのデッキよりは多くの枚数を残せる自信はありおすえ!」
はあ、とため息をひとつ吐くトガ。
「あのねぇ? ブラックマイン様のデッキにあと何枚の魔法カードを無効にするカードがあると思ってるの?」
……あ。
「ブラックマイン様のデッキは残り40枚で、魔法を無効にするカードは2枚以上確実に有る。
そのカードを引いたらそれを伏せて、別のカードをデッキに戻して〔トラップ・おジャマスター〕の効果を使えばいい。
むしろ、今伏せてあるカードが魔法無効カードである可能性も高い……あんたがまだ勝てる気だったら、よっぽど脳味噌が×××ってるとしか思えないわ。」
「それでも……それでも、私は諦めへん! なんとしてでも……ブラックマインはんの耳は、私が頂きおす! 手札を6枚に調整して終了!(手札6)」
諦めず、真っ直ぐな瞳をウォンビックの耳へと向ける鵜殿。
「&html(<font color="#00008b">ドロー(手札・2)、〔トラップ・おジャマスター〕の効果でカードで〔覇者の一括〕をサーチ。</font)
&html(<font color="#00008b">そしてカードをセット、終了だ。(手札2・伏せ2)</font)」
おジャマ・ブラック:ウォンビック手札→デッキ
覇者の一括:墓地→ウォンビックの手札
「私のターンや、ドロー(手札7)! ……そうや、これがあったんや! 逆転や! ブラックマインはん!
魔法カード発動! 〔非常食〕! 発動した瞬間、コストとして〔十二方天護寺 ヤクシデラ〕を墓地に送るで!」
十二方天護寺 ヤクシデラ:フィールド→墓地へ
絶望と希望は、中国の陰陽(インヤン)のように、異なる物でありながら片方だけでは存在し得ない。
特にデュエルでは、ひとりが絶望を捨てることができれば、その相手がその絶望を拾わなければならない。
「……××××! 〔ヤクシデラ〕が墓地にッ!」
「&html(<font color="#00008b">………伏せカード発動、手札の〔おジャマッド〕を捨て、〔マジック・ジャマー〕だ。</font)」
&html(<Table Border BorderColor="#0f9926" Border="2"><Tr><Td>非常食</Td><Td>速攻魔法</Td></Tr><Td ColSpan="4">このカードを除く自分フィールド上の魔法または罠カードを墓地へ送る。<BR>墓地へ送ったカード1枚につき、自分は1000ライフポイント回復する。</Td></Table>)
&html(<Table Border BorderColor="#b21162" Border="2"><Tr><Td>マジック・ジャマー</Td><Td>カウンター罠</Td></Tr><Td ColSpan="4">手札を1枚捨てる。<BR>魔法カードの発動を無効にし、それを破壊する。 </Td></Table>)
「無駄どすえ! ブラックマインはん!
このカードは発動した瞬間、コストとしてカードを墓地に送りおす!
例えば、〔死者への手向け〕の発動が無効にされたとしても、捨てた手札コストが戻らないのと同じで、
効果が無効にされただけでは、墓地に送った〔ヤクシデラ〕は戻らないぃ!」
これは当然のルールであり、マジック・ジャマーで無効にできるのは、非常食のライフ回復効果だけである。
鵜殿の宣告が野山に駆け巡る中、[[後半>http://www11.atwiki.jp/84gzatu/118.html]]へ続く!
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2010-07-25T22:46:49+09:00
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