84pの小説

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84gzatu

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夜の1時。 ボクは目を覚ました。


   「…お父さんたちに聞いて見ようかな、わかんないし。」


気になったら仕方ないじゃないか。 眠れないし。
誰も起こさないように静かに歩いて、ボクはお父さんとお母さんが寝てる部屋まで来た。
…中から声が聞こえるし、まだ起きてるね。


   「お父さーん、聞きたいことが有るんだけどー。」


   「うおぁっ!?」


ビックリさせちゃったみたいで、裸で添い寝ている父さんと母さんは慌てて…よく判らない行動をしている。

   「どどどどどど、どうしたの!? コウキ!?」


そんなに驚かせちゃったかな。 静かに来たんだけど。

   「ねぇ、ぼくは何処から来たの?」

ぼくがそう聞くとお父さんとお母さんが顔を見合わせてから、お母さんが無理矢理作った笑顔で答える、

   「ど、どうしてそんなこと聞くの~? コウキ~?」

   「うん、お風呂屋さんのバスタスクさんがね?
    『助姫も蕎祐を作った時はカワイイ女だったんだぞ~?』って言ってたなんだけど、どうやって子供って作るの?」

ぼくがそう言うと、かなり沈痛な面持ちで口を開く父さん。

   「それは…アレだ、お前はキャベツ畑から生まれて…。
    そのあとにコウノトリさんが運んできたんだ。」

無農薬かな? それとも農薬をガンガン使った美味しくないキャベツかな?

   「じゃあそのコウノトリさんは誰が運んできたの?」

   「コウノトリは……アレだ、卵で生まれてくるに決まってるだろ。」

   「じゃあその卵は誰が作るの? キャベツから卵は出来ないよね?」

   「た…卵は天使様が作るのよ、天使様が光のエネルギーでバシバシっ、っと!」

2人がどんどん答えてくれるんだけど、ぼくの心の中のモヤは全く晴れない。

   「ふーん、天使様は誰が作ってくれたの?」

   「あああ! もおォッ!」

ここまで聞いて、父さんが大声を出した。 皆が起きちゃうのに、お父さんはよくわからない。
でもお父さんは、何秒か置いていきなりスッキリとした顔で答えてくれた。

   「それはなコウキ、天使様は神様が作って、神様は自分で自分を創ったんだ、
    つまり神様は何でも出来るから、自分が生まれる前に、自分自身で自分を作ったんだよ……これで満足か?」

…あー、なるほどね~、お父さんが滅茶苦茶 投槍なのが気に為るけど。

   「うん、ありがとね、お父さん、お母さん。」

   「コウキ、おやすみなさい。」

部屋から出て行ったところで、ぼくはもう1つ妙な事に気が付いて戻ろうとしたけど…。
中からお父さんとお母さんの声がするし、忙しそうだから止めよう。





次の朝、起きたら時計はもう11時を回っていた。
お父さんやお兄ちゃんはもう学校や会社に出かけていたし、
お母さんは梅雨明けだから洗濯物を干すのに忙しいみたい。
誰かに昨日の質問を聞きたいけど、誰か居ないかな、今の時間、暇な人。
そう考えるうちに、玄関から呼び出し音が聞こえた。

   「コウキー、誰か見てきてー。」

パジャマのまま、ボクは玄関まで行ってドアを開けた。

   「いよう、コウキ、お前の護像鬼兄さん居るか?
    頼まれてたカードを手に入れてきたんだけどよぉ。」


バクタスクさんとボクのお兄さんは、同じカードゲームをやっている。
ボクもやってみたけど、よく判らないゲームだ。

   「お兄ちゃんなら学校だけど、ちょうど良かった。
    ヒマな大人の人に聞きたいことがあったんだよ。」

   「…いや、ヒマだけどな?
    確かに掃除も終って、開業時間までヒマだけどな?」

なんか不満そうなバクタスクさん。 ヒマがあるっていいことだと思うんだけど。

   「あら、いらっしゃいバクタスクさん。
    そうめん茹でますけどよろしければいかがですか?」

   「アメリカの実家に『呼ばれた食事は金を払ってでも食え』という家訓がありましてね、もちろんご馳走に為りますよ。」

2人の会話を聞きつつ、さっきまで寝てた布団を畳んで、ボクはバクタスクさんの座るスペースを作った。

   「おおう、それで? どうして俺に会いに来たかったんだ?」

   「昨日の夜、お父さんに『人間は間接的に神様が作った』って聞いたんだけど、どうして神様は人間を作ったの?」

   「…作りたかったからだろ?」

   「でも地球上の生物が他の物を生産する力…。
    キャベツが子供を生み出すような能力は、それが必要だからだと思うんだ。
    生んだ人間にキャベツの種蒔きや畑を耕して欲しいし、生み出しているんだと思うんだ、
    だけど自分自身で自分を作っちゃうほどの力が有ったなら 他の人の助けなんて要らないんじゃないの?」

バクタスクさんは“なるほど”と頷いてから切り出した。

   「あれだ、神様は生贄とかが必要なんじゃねーの? そんで生贄を確保するために……」

   「それは無いと思う。
    生物は必要なエネルギーしか補給しないように進化するはずだから、
    神様が何も無いところから生まれたって言うんだったら維持エネルギーなんかなく生きていけるはずだよ。」

   「一理有るなぁ……コウキ、それに関するお前の意見は?」

   「ぼく、まだ子供だし神様のことなんかよく分からないから自信は無いんだけど…。
    ……神様は今のぼくみたい“考えたかった”んじゃないかな……。」

   「? 考える?」

   「神様が生まれた世界には、神様が1人だけしか居なかった。
    だから、何かを知りたくても自分を知るしか出来なかった、
    だから、自分が知ることのできない何かが欲しかったんだと思うんだ。
    人が暇を潰すためにゲームを作るみたいに……。」

言ってぼくはカードゲームをする護像鬼兄さんとバクタスクさんの姿が頭に浮かんだ。
ゲームで一番面白いのは相手との交流なんだ。

   「だから、地球が何をしたらどんな環境になるか。
    人間が何をしたら幸せを感じるか、ホームページを作るとしたらどんなホームページを作るか、とね。」

   「……面白い考え方だな、神様は退屈だったのか。」

退屈で、とても暇で暇で何もする事ができなくて、自分を垣間見ることしかできなくて。
護像鬼兄ちゃんの好きな……なんとかって小説でこんなセリフが有った。


俺は一人では生きていけない弱い人間だ、

だが全ての人間はひとりでは生きていけない、だから俺が弱いわけじゃない、おまえ等も弱いんだ!」



神様は寂しかったんじゃないだろうか。
神様は誰かに『俺が弱いんじゃない!』と言いたかったんじゃないだろうか。
他に誰も居ないなら寂しがるのをからかう奴も居ない。
昨日のぼくのように誰かに“どこから子供は来るの?”という質問をする事もされる事も無い。

   「じゃあ、神様はどうして人前に姿を現さないの?
    自分で会話したりコミュニケーションをとった方が絶対に楽しいのに。」

   「感性の違いだろ、見てるだけで楽しいって事も有るしな。
    それに自分の存在を知ると勝手な押し付け合いが始まる、宗教ってのは戦争の元だからな。」

   「そうかなぁ、神様の本当の姿を見せれば、みんな納得して戦争なんてしないと思うけど。」

   「干渉しちまったらどう進化するか予測できるだろ、
    それに自分を助けない、自分を見てくれない、そんな神様は誰も信じねぇよ。」

   「……神様ってどんな人かな?」

   「さあな、どっちにしても―――」

   「バクタスクさーん、コウキー、そうめんできましたよー。」

   「そうめんが美味しく食える事には、感謝しようぜ。」

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