84pの小説 大人のためのレオ・ウィザード 【後】


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【参】

   「ドロー!(手札4)
    手札から〔BF-疾風のゲイル〕を召喚!」


BF-疾風のゲイル 闇属性 鳥獣族 レベル3 ATK1300 DEF400
チューナー:自分フィールド上に「BF-疾風のゲイル」以外の「BF(ブラックフェザー)」と名のついたモンスターが存在する場合、このカードを手札から特殊召喚する事ができる。
1ターンに1度、相手モンスター1体の攻撃力・守備力を半分にする事ができる。



   「……おや?」


   「〔ゲイル〕の効果発動! 〔スターダスト〕の攻撃力を半分にする!」


スターダスト・ドラゴン:攻撃力2500→攻撃力1250


   「そして俺のバトルフェイズ、〔ゲイル〕で弱体化した〔スターダスト〕をブッ叩く!」


〔BF-疾風のゲイル〕(攻撃力1300)VS(攻撃力1250)〔スターダスト・ドラゴン〕
→スターダスト・ドラゴン、破壊、墓地へ。


シュバルツガイスト:LP2250→LP2200


   「〔スターダスト・ドラゴン〕、撃破ァっ! ターン・エンド!(手札3・伏せ1)」


苦労して出した上級モンスターも、他カードのアシスト無しではあっさりとやられる、それも醍醐味。


   「俺のターン、ドロー! (手札3)
    この瞬間、〔封印の黄金櫃〕の効果で除外された〔聖なるバリア〕を手札に!」


聖なるバリア-ミラーフォース-:除外置き場→手札


   「さらに!……伏せカード発動、〔正統なる血統〕!」


正統なる血統 永続罠
自分の墓地から通常モンスター1体を選択し、攻撃表示で特殊召喚する。
このカードがフィールド上に存在しなくなった時、そのモンスターを破壊する。
そのモンスターがフィールド上に存在しなくなった時、このカードを破壊する。


   「蘇らせるモンスターは、当然俺のデッキの最強モンスター、〔レオ・ウィザード〕ッ!」


レオ・ウィザード:墓地→フィールド


   「〔レオ・ウィザード〕の攻撃! 獅・子・魔・導!(レオ・マジック)!」


〔レオ・ウィザード〕(攻撃力1350)VS(攻撃力1300)〔BF-疾風のゲイル〕
→〔BF-疾風のゲイル〕破壊、墓地へ。


枯刃:LP5500→LP5450


獅子の口から放たれた衝撃波をゲイルは両翼でブロックするが、惜しいところで防ぎきれず、撃墜された。
レベル5のモンスターとレベル3のモンスターの戦闘であるにも関わらず、攻撃力差は実に50。
………ツッコミは無用である。


   「っち……俺の〔ゲイル〕があんなザコに……!」


   「そして、メインフェイズ2!
    〔召喚師のスキル〕でデッキから〔レオ・ウィザード〕をサーチ。」


召喚師のスキル 通常魔法
自分のデッキからレベル5以上の通常モンスターカード1枚を選択して手札に加える。


   「……って、ぇぁぉぁあああおァ!?
    2枚目の〔レオ・ウィザード〕ォオオオッッ!?」


   「何を驚いてるんですかね? 俺のデッキの最強モンスターなんだから3枚積みに決まってるでしょうよ。
    壁モンスターを召喚、そして2枚のカードをセット、さア、ターン・エンド!(手札2・発動中1・伏せ3)」


枯刃はブルーアイズ使いの社長やら、心を読む隻眼の男、ヒャハハハが口癖の千年の敵……そんな敵とは戦ったことはない。
しかしながら、デュエルで強敵に当る事は日常茶飯事、自分のライトロードが通じない相手というのも珍しくもない。
だが、その中でもシュバルツガイストという男は異質な強さを持っている。


   「……は、っはぁっ!
    俺は武藤遊戯でも、海馬瀬人でも、インセクター羽蛾でもねぇっ!
    デュエルで何がスカっとするかってよぉ、カスデッキのザコをボコボコにすることだァラがォ!
    それがなんだぁ! ゴミデッキで……歯向かって来やがってよぉっ!」


   「ああ、若い社員に陰湿に当るよりカッコいいですよ、今のキレっぷり。」


ブチ☆ ブチ☆
星マークなんぞ付けつつ、コミカルなまでに枯刃の頭に筋が浮かび上がる。


   「……俺のターン、ドロー!(手札4)
    墓地の〔ゲイル〕と〔ルミナス〕を除外し、〔カオス・ソーサラー〕ッ!」


カオス・ソーサラー 闇属性 魔法使い族 レベル6 ATK2300 DEF2000
このカードは通常召喚できない。
自分の墓地の光属性と闇属性モンスターを1体ずつゲームから除外して特殊召喚する。
フィールド上に表側表示で存在するモンスター1体をゲームから除外する事ができる。
この効果を発動する場合、このターンこのカードは攻撃する事ができない。
この効果は1ターンに1度しか使用できない。


   「伏せカードは〔ミラーフォース〕だろうが! 効果で除去する分には関係ねぇ!
    〔カオス・ソーサラー〕の効果発動! 対象は〔レオ・ウィザード〕ッ!」


   「あー……感嘆符をいっぱいつけちゃって、まァ。
    もうちょっとリラックス、リラックス。
    ……チェーンして、〔ディメンション・マジック〕発動。」


ディメンション・マジック 速攻魔法
自分フィールド上に魔法使い族モンスターが表側表示で存在する場合に発動する事ができる。
自分フィールド上のモンスター1体を生け贄に捧げ、手札から魔法使い族モンスター1体を特殊召喚する。
その後、フィールド上のモンスター1体を破壊する事ができる。


ソーサラーの生み出した時空の裂け目に獅子面の魔術師が落ちるその刹那。
裂け目の中に現れた奇術用の木箱、そして木箱に空いた穴にいつの間にか挟まっているレオ・ウィザード。
木箱が開いた。 その中には……同じく獅子面の魔術師の姿があった!


   「で、2体の〔レオ〕のコンビネーションで、〔カオス・ソーサラー〕を破壊します。
    ……まあ、最初の方の〔レオ〕は〔ディメマ〕でリリースしたから、墓地に行っちゃいますけどね。」


レオ・ウィザード:フィールド→墓地へ。
カオス・ソーサラー:フィールド→破壊。


   「ギっぎぃ……俺はモンスターをセット、ターン終了だ。(手札2・伏せ1)」


   「ドロー! (手札2)
    ……手札から〔痛み分け〕を発動しますよ、このカードはお互いに一体ずつモンスターをリリースするカード。」


痛み分け 通常魔法
自分フィールド上のモンスター1体をリリースして発動する。相手はモンスター1体をリリースしなければならない。


   「俺はセットしてた〔ダーク・スプロケッター〕をリリース、枯刃さんは?」


   「……伏せモンスターだ。」


ダーク・スプロケッター:フィールド→墓地へ。
ライトロード・ハンター ライコウ:フィールド→墓地へ。


これで枯刃の場はがら空き、である。


   「さらに俺の最強モンスターに向け、伏せカード発動! 〔義賊の極意書〕ッ!」


義賊の極意書 通常罠
自分フィールド上に表側表示で存在する通常モンスター1体を選択して発動する。
このターン選択したモンスターが相手ライフに戦闘ダメージを与えた時、相手はランダムに手札を2枚捨てる。


   「〔レオ・ウィザード〕、ダイレクトアタック、獅子小僧シャウター!」


ネズミ小僧という義賊が居たが、それにかけて〔義賊の極意書〕発動中だから『獅子小僧』……面倒くさくないのだろうか。
ソリッドビジョンは先ほどと同じく、口からの衝撃波である。


枯刃:LP5400→LP4050


   「そして、手札破壊!」


邪帝ガイウス:枯刃の手札→墓地へ。
洗脳-ブレインコントロール:枯刃の手札→墓地へ。


   「これで手札はゼロだな、枯刃さん!」


   「(これで俺に残されたのは、ハッタリで伏せた〔地砕き〕のみ…。
    ……〔ルミナス〕で捨てるカードをミスったか、〔月の書〕を残しておけば違ったのか…!?)」


   「俺はターン・エンド、枯刃さんのターンだぜ?(手札1・伏せ1)」


側頭に血が溜まる気がする。 額が熱くなる。 
過去にここまでの状態になったことは3回、アスファルトを殴ればクレーターができ、破片が飛び散るほどの怒りだ。
まあ、枯刃は実際にアスファルトを殴ったことはあるが、その時は拳が割れて完治するのに


   「(あああ、なんだコレ、もうこれ誰のせいなんだよコレがああああ……うううァ…)
    アアアアアァああアアッッ!」


   「うわ、びっくりした。 どうしたんですかい? いきなり大声出して?」


   「ッフゥ。
    ……潰す、このドローで殺す! ドロー! (手札1)
    召喚、〔裁きの龍〕ッ!」


裁きの龍 光属性 ドラゴン族 レベル8 ATK3000 DEF2600
このカードは通常召喚できない。
自分の墓地に「ライトロード」と名のついたモンスターカードが4種類以上存在する場合のみ特殊召喚する事ができる。
1000ライフポイントを払う事で、このカードを除くフィールド上のカードを全て破壊する。
このカードが自分フィールド上に表側表示で存在する場合、自分のエンドフェイズ毎に、デッキの上からカードを4枚墓地に送る。


現れたドラゴンは、白く神々しかったが、大きさは小学生高学年か中学生の子供ぐらい。
若干小さすぎるが、ソリッドビジョンが大きすぎると防犯上不都合があるとかで、条例で大きさが規制されているのだ。
だが、それでも、そのうねる身体には怒りと力が漲っている。


   「……あれ?」


   「ライフを1000ポイント払いぃいいいーッ!」


枯刃:LP4050→LP3050


   「全破壊だオルアぁあああっ!」


地砕き:フィールド→墓地へ。
レオ・ウィザード:フィールド→墓地へ。
聖なるバリア-ミラーフォース-:フィールド→墓地へ。


   「……えーっと。」


   「これで今度は……お前の場がガラ空きだなぁ、シュバルツガイストさんよぉ?」


   「そのようで……」


   「俺のバトルフェイズ、〔裁きの龍〕! ダイレクトアタァック!」


シュバルツガイスト:LP2200→LP0


シュバルツガイストのデュエルディスクの表記がゼロになると同時に、枯刃のデュエルディスクに『WIN』の表記。


   「いいいいいっ、しゃあああああああッッ!」


近所迷惑なんぞ知ったことではない、そんな調子の枯刃の声が屋上にこだました。
――その時、彼はあることに気が付いた。


【肆】


奇妙な感覚だった。
ただ勝っただけなのに、全てからなにかやたらにスッキリしている。


   「(って、あれ? なんで俺、こんなに喜んでんだ? ただ勝っただけ…だよな?)」


   「スカっとしたっしょ?」


   「……あ?」


手札や墓地を片付けつつ、シュバルツガイストは言う。


   「イライラすることは悪いことじゃないですよ、正常そのもの。
    現代社会でイライラしないなんて無理っすから。 スカっとすりゃあいいだけなんですよ。」


   「……。」


   「ストレスはバネですよ。
    溜めて溜めて……発散する時はスカっとする。
    枯刃さんにはデュエルモンスターズって趣味があるんですから、楽なもんでしょ?」


   「……じゃあ何か、今のデュエル、態と負けたとでも言う気か?」


   「まっさかぁ。
    スカっとするかしないかは、勝敗とは関係ないでしょ。
    俺が楽しいデュエルをすれば相手も楽しいでしょうし、ゲームが楽しけりゃそれでスッキリする。
    ……もしかして俺が、仙人か聖人か……それこそ闇のゲームの審判みたいに、深い考えがあるとでも思ってましたか?」


そこにきて、枯刃は忘れていた疑問を思い出した。
至極シンプルな、当然の疑問だ。


   「……じゃあ、お前ってヤツは誰だ?」


   「ん? だからシュバルツガイスト、って名乗りませんでした?」


   「それ偽名だろ? 本名は?」


   「本名は俺も作者も知らない、ってヤツですよ。
    マジンガーZのボスってキャラのセリフですけど知りません?」


本名を言う気がない、その意思だけは分った。
名前の事は諦め、他の質問を紡ぎだした。


   「質問2:俺の名前はどうして知ってた?
    質問3:なんで俺がイラついてることを知ってた?
    質問4:どうしてこんなところにいるんだ?
    質問5:なんで俺のデュエルディスクなんて持ってた?」


   「回答2:ソリッドビジョン作りの天才、枯刃猛の名前なんて子供でも知ってますよ。
    回答3:枯刃さんがイラついてるのも顔を見れば子供でも分りますよ。
    回答4:屋上にくるのはなんとなくっすよ、ダチと初参りしてたら風に当りたくなったんで。
    回答5:デュエルディスクはアレですよ……ええーっと、そこに偶然落ちてたんで。」


質問に逐一正確に答えるシュバルツガイストに、初めて枯刃は笑った。


   「つまり…。
    2:偶然俺の名を知ってるお前が、
    3:偶然俺がイラついてるときに、
    4:偶然風に当りたくなり、
    5:偶然俺のデュエルディスクを拾ったんだな?」


   「……まあ、そんなところですね。」


この時点で、枯刃には“追求しても無駄だろう”、そんな確信じみた感覚があった。


   「まあ、なんでもいいけどな。スッキリしたのは事実だし。
    ……で、質問の6だが……連絡先を教えてもらっていいか?
    なんか、改めて礼がしたいんだ。」


   「あー、俺……なんつったらいいんですかね、携帯電話とか持ってないんですよ。
    ま……近いうち、また会えますよ。」


   「それじゃ俺の気が……あれ?」


その時、枯刃は突如として足から力が抜けた。


   「……何日か寝てないですよね、枯刃さん。
    ストレスってヤツは気付け薬みたいな物です、イライラしてる間は緊張して眠くもない。
    スカっとしたから、眠くなったんですよ。」


言葉の意味もよくわからないほど、天才ソリッドビジョン職人の意識は混濁していた。


【伍】


初日が差す中、枯刃の脳内に小さな残響が発生し始めた。


   「枯刃さん、枯刃さん! 大丈夫ですか!」


その声は、先ほど叱り飛ばした新米クリエイターだ、眠い頭でもピンときた。


   「ああ、山本……さっきは悪かった……当っちまって…。
    それに…お前らが頑張ってる中、寝ちまってて……。」


   「謝らなくていいですから! 早く戻ってくださいよ!
    大変なんですよ、さっき新しいカードの発注が来ちゃって大変なんです!」


   「……ああ、なんだ? 今なら……なんでもできるぜ?」


   「遊闘伝Gデュエルの主人公、シュバルツガイストの切り札の1枚……」


その言葉に、枯刃の脳はスパークが走ったように覚醒した。


   「シュバルツガイストって……あれ、どんなヤツだっけ?」


応えるように山本は、小脇に抱えていた漫画雑誌を渡した。
ビジョンの製作を依頼したカード会社が送ってきた参考資料だ。
その中には、学ランにネクタイの眼帯……先ほどデュエルしていた男と口調から顔の出来までそっくりなキャラクターが描かれていた。


   「これ…って…。」


デュエルモンスターズをしている人間なら、漫画ぐらいは読むだろう。
その名を語っただけ、年始にコスプレしていただけ……それだけ、なのだろうか?
周囲を見渡せば、枯刃の隣には愛用のデュエルディスクが置かれ、毛布代わりにあの学ランが掛かっていた。
夢ではない、そんなわけはないのだ。


   「まあ、いいか。」


仮に夢だったとしても、現実としてストレスは消えている。
もう一度会ってみたい気はするが、どうでもいいかもしれない。


   「いや、よくないですよ。 早くソリッドビジョンを作ってもらわないと。」


   「フフ……ああ、そうだな。
    最高のソリッドビジョン、作ってやるぜ。」


屋上のドアを明け、静かに、それでいて力強く降りていく。


   「ああ、作るモンスターは新しいカードじゃないんです。
    シュバルツガイストは復刻パックの売り上げ推進のキャラなので、作中で1枚も新規カードを使わない主人公なんで。
    今までは需要がなくてソリッドビジョンが作られてなかったカードです、それは…」


   「〔レオ・ウィザード〕、だろ?」


   「あれ、シュバルツガイストってキャラ、忘れてたんじゃないんですか?」


彼の発言は、肯定も含んでいた。


   「見た連中がスカっとするビジョンが作れるぜ、これなら。
    何せ……〔レオ・ウィザード〕の最高のビジョンはもう見たからな。」


そう……戦ったシュバルツガイストを名乗る男は、ソリッドビジョンの存在しないはずの〔レオ・ウィザード〕を確かに召喚していた。
今になってみれば、あの〔レオ・ウィザード〕はかなりクオリティが高かった。
天才たる枯刃でもあれほどのモノは片手で足りるほどしか作れたことがないというのに。


   「アレに負けないソリッドビジョン、作ってやろうじゃないか。」


   「??? 何の話ですか? 枯刃さん?」


1997年元旦。
今年も、枯刃も、まだまだこれからである。






































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