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1    「うう……ぁあ…。」 血と糞便、そして火薬の臭いが混じる空気を吸いながら、洞窟を改造した防空壕の中、『彼』は死を覚悟した。 名前もウロ覚えの国の兵隊が放った弾丸は、彼の左肩を貫いて心臓の上をかすめたため、『彼』の体には既に血液はほとんど残されていない。 輸血さえすれば助かるかもしれない、だが…現在は敵国と衝突中、誰がこの敵地まで来て『彼』を救ってくれると言うのだろうか?    「救ってやろう、私、ガーブ・ジェンダーがね。」 狙いすましたように『彼』の目の前に現れたのは、左耳の無い40代の男。    「傷も痛むだろう、軍人としては戦う事も出来ないのは辛いだろう――だから私が美しい死をもって救ってやろう。」 優しく、ゆっくりとした動作で、ガーブはゆったりとした動作でナイフを向ける。 軍人はガーブの手を払おうとするが、ほとんど体が動かない。 ガーブの手が軍人に触れようとする、正に刹那。 プァッーン! 軍人の首に届く前に、ガーブの手はスパークしながら絶対零度で凍ったバラのように砕け散った。 弾丸の軌道を振り返り、射撃した男を今までの安らかな顔からは想像できない怒号の表情で睨み付けた。    「ぐ、っがああああああ?!」    「た…いちょぉ……?」    「生きているようだな、イワクィリ伍長。」 軍人ことイワクィリ・ガーストンの上官、ジョージ・ジョースター2世はガーブの動向を警戒しつつイワクィリの無事も確認する。    「んなことよりもどうして俺の腕を砕いたんだぁ?     理由によっちゃあ許してやるぜぇええ! テメェの国での敬愛の風習とかならよぉー!」    「ただちに状況を把握して降伏しろ、私はいつでもお前を殺害することができる。」    「降伏? 降伏? 降伏するのが俺の幸福ってかー!?     だったら……こうすれば良いんじゃねぇーかぁー!?」 ガーブは素早くイワクィリを拾い上げ、社交ダンスのパートナーを支えるようにしっかりと抱きかかえた。    「これでぇえええッ俺の勝ちだなァアアア! てめぇーは部下を見殺しにはできねぇー!」 ガーブはジョージ・ジョースターの性格をその瞳に宿る闘志から把握していた。 『あの瞳をしている奴が部下を見殺しにするはずは無い!』と。 仮に見殺しにしたとしても、イワクィリの体が盾となり、胴体や頭部には当てることはできない。    「たい…ちょ……」 ジョージの決断に関わらず自分の死を感じていたイワクィリは『自分ごと殺せ』と言うつもりだったが、 その弱々しい声は逆に、ジョージの心に「情」として負担をかけ、ジョージのライフルの銃口を地面に向かせる結果となった。    「ふハハハハハハァっ! 逝ねぇい!」 左腕にイワクィリを抱えたまま、ガーブはジョージへと走る! ほんの数秒の間に3人のさまざまな思いが絡み合いながらも残りの距離が2メートルと迫った刹那、ジョージは下ろした銃口を跳ね上げた。 この動作はガーブの表情に驚きと同時に深い笑みを与えた。    「正しいぜー! 結局部下よりも自分の命だよなァー!」 ガーブの罵声には取り合わず、ジョージは正確に引き金を絞った。 ダーァゥッ! ジョージの放った弾丸に心臓を正確に貫かれ、ガーブは抱えていたイワクィリを取り落とした。    「が・……バ……カな……弾丸が『盾』をすり抜けるなんて……」    「イワクィリ伍長の肩にはこの暗闇の中でもはっきり分かるほどの大きな傷が有った、私は…その穴を通しただけだ。」 距離がほとんど無く、勝利への余裕で停止していたとはいえ、軍で受けた訓練がキチンと実を結んでいた、と言うわけだ。    「ぐ……うお…。」 ダゥッ ダァアッッ! 続くジョージのライフル弾がガーブの頭部を砕くのを見届けて、イワクィリの意識は闇へ落ちていった。 2    「はっ!」 次にイワクィリの意識が戻ったのは10日後、軍病院の小さなベッドの上だった。    「おれは…ここはどこだ……?」    「あ、気付かれましたか、イワクィリさん。」 話し掛けたのはまだ若い白衣の青年、どう見ても軍医だ。    「ジョースターさんに感謝してくださいね、あなたをここまで連れてきただけじゃなく、     必要だった大量の輸血もしてくれたんですから。」 イワクィリの心には、ジョースターへの感謝が満ち溢れ、歩こうと体を動かすが…。    「おーっとイワクィリさん、10日間も栄養注射のみで生きてたんですからまだ動けませんよ、体力が戻るまでしばらくゴロゴロしててください。」    「っく…だが…隊長に礼を言うだけだ…。」    「ジョースターさんは飛行機で本部へ報告に行っています、どちらにしても報告できるのは明日以降ですよ。    「……仕方ない、か。」 しかし、ジョージは本部から指令を受けたことで、終戦までイワクィリの入る支部に戻る事は無かった。 そして、イワクィリは自分の足でジョージの自宅を訪ね、一言の礼をいうためにリハビリに励んでいた。 だがしかし、イワクィリが自力で便所まで行ける程度に回復した頃、悲劇は起きた。 飛行機のエキスパートだったはずのジョージ・ジョースターはなんと、飛行機の事故によって死んだという情報がイワクィリの耳に入った! (ジョジョの奇妙な冒険単行本12巻74~80ぺージ参照。) ジョージの死を聞いたイワクィリは驚愕し、命を賭して助けてくれた相手に恩を返す事が出来なかったことを後悔した、 それからの『礼』を尽くすべき相手を失い、軍人を辞めて靴屋を開業した。 イワクィリは生涯、一切気にすることは無かった事実が幾つか存在する。 その中でも特筆すべきは、心臓を掠ってジョージの弾丸も通ったあの傷は何十針と縫う手術となり、その形は星形の傷となって残ったことと、 そして、この五年後に生まれる彼の息子にもなぜか同じアザを持って生まれ、更にその子供達にもその傷を受け継いでいったという事実だ。 これは偶然なのか? 運命なのか? それは彼らが決めるべきことなのだろう――。 これがこの物語の主人公、牛城 宮定(うしじろ・みやさだ)のルーツであり、彼自身が不思議に思っている血液から漲るパワーの正体だ。 ―――だが勘違いしないでほしい。 彼がこの運命を進んだのは紛れもなく彼自身の意思であり、『血統』や『運命に』に巻き込まれただけではない。 彼は選んだのだ、戦ってでも敵が多かろうとも、妥協せずに、己の道を貫く事を。
1    「うう……ぁあ…。」 血と糞便、そして火薬の臭いが混じる空気を吸いながら、洞窟を改造した防空壕の中、『彼』は死を覚悟した。 名前もウロ覚えの国の兵隊が放った弾丸は、彼の左肩を貫いて心臓の上をかすめたため、『彼』の体には既に血液はほとんど残されていない。 輸血さえすれば助かるかもしれない、だが…現在は敵国と衝突中、誰がこの敵地まで来て『彼』を救ってくれると言うのだろうか?    「救ってやろう、私、ガーブ・ジェンダーがね。」 狙いすましたように『彼』の目の前に現れたのは、左耳の無い40代の男。    「傷も痛むだろう、軍人としては戦う事も出来ないのは辛いだろう――だから私が美しい死をもって救ってやろう。」 優しく、ゆっくりとした動作で、ガーブはゆったりとした動作でナイフを向ける。 軍人はガーブの手を払おうとするが、ほとんど体が動かない。 ガーブの手が軍人に触れようとする、正に刹那。 プァッーン! 軍人の首に届く前に、ガーブの手はスパークしながら絶対零度で凍ったバラのように砕け散った。 弾丸の軌道を振り返り、射撃した男を今までの安らかな顔からは想像できない怒号の表情で睨み付けた。    「ぐ、っがああああああ?!」    「た…いちょぉ……?」    「生きているようだな、イワクィリ伍長。」 軍人ことイワクィリ・ガーストンの上官、ジョージ・ジョースター2世はガーブの動向を警戒しつつイワクィリの無事も確認する。    「んなことよりもどうして俺の腕を砕いたんだぁ?     理由によっちゃあ許してやるぜぇええ! テメェの国での敬愛の風習とかならよぉー!」    「ただちに状況を把握して降伏しろ、私はいつでもお前を殺害することができる。」    「降伏? 降伏? 降伏するのが俺の幸福ってかー!?     だったら……こうすれば良いんじゃねぇーかぁー!?」 ガーブは素早くイワクィリを拾い上げ、社交ダンスのパートナーを支えるようにしっかりと抱きかかえた。    「これでぇえええッ俺の勝ちだなァアアア! てめぇーは部下を見殺しにはできねぇー!」 ガーブはジョージ・ジョースターの性格をその瞳に宿る闘志から把握していた。 『あの瞳をしている奴が部下を見殺しにするはずは無い!』と。 仮に見殺しにしたとしても、イワクィリの体が盾となり、胴体や頭部には当てることはできない。    「たい…ちょ……」 ジョージの決断に関わらず自分の死を感じていたイワクィリは『自分ごと殺せ』と言うつもりだったが、 その弱々しい声は逆に、ジョージの心に「情」として負担をかけ、ジョージのライフルの銃口を地面に向かせる結果となった。    「ふハハハハハハァっ! 逝ねぇい!」 左腕にイワクィリを抱えたまま、ガーブはジョージへと走る! ほんの数秒の間に3人のさまざまな思いが絡み合いながらも残りの距離が2メートルと迫った刹那、ジョージは下ろした銃口を跳ね上げた。 この動作はガーブの表情に驚きと同時に深い笑みを与えた。    「正しいぜー! 結局部下よりも自分の命だよなァー!」 ガーブの罵声には取り合わず、ジョージは正確に引き金を絞った。 ダーァゥッ! ジョージの放った弾丸に心臓を正確に貫かれ、ガーブは抱えていたイワクィリを取り落とした。    「が・……バ……カな……弾丸が『盾』をすり抜けるなんて……」    「イワクィリ伍長の肩にはこの暗闇の中でもはっきり分かるほどの大きな傷が有った、私は…その穴を通しただけだ。」 距離がほとんど無く、勝利への余裕で停止していたとはいえ、軍で受けた訓練がキチンと実を結んでいた、と言うわけだ。    「ぐ……うお…。」 ダゥッ ダァアッッ! 続くジョージのライフル弾がガーブの頭部を砕くのを見届けて、イワクィリの意識は闇へ落ちていった。 2    「はっ!」 次にイワクィリの意識が戻ったのは10日後、軍病院の小さなベッドの上だった。    「おれは…ここはどこだ……?」    「あ、気付かれましたか、イワクィリさん。」 話し掛けたのはまだ若い白衣の青年、どう見ても軍医だ。    「ジョースターさんに感謝してくださいね、あなたをここまで連れてきただけじゃなく、     必要だった大量の輸血もしてくれたんですから。」 イワクィリの心には、ジョースターへの感謝が満ち溢れ、歩こうと体を動かすが…。    「おーっとイワクィリさん、10日間も栄養注射のみで生きてたんですからまだ動けませんよ、体力が戻るまでしばらくゴロゴロしててください。」    「っく…だが…隊長に礼を言うだけだ…。」    「ジョースターさんは飛行機で本部へ報告に行っています、どちらにしても報告できるのは明日以降ですよ。    「……仕方ない、か。」 しかし、ジョージは本部から指令を受けたことで、終戦までイワクィリの入る支部に戻る事は無かった。 そして、イワクィリは自分の足でジョージの自宅を訪ね、一言の礼をいうためにリハビリに励んでいた。 だがしかし、イワクィリが自力で便所まで行ける程度に回復した頃、悲劇は起きた。 飛行機のエキスパートだったはずのジョージ・ジョースターはなんと、飛行機の事故によって死んだという情報がイワクィリの耳に入った! (ジョジョの奇妙な冒険単行本12巻74~80ぺージ参照。) ジョージの死を聞いたイワクィリは驚愕し、命を賭して助けてくれた相手に恩を返す事が出来なかったことを後悔した、 それからの『礼』を尽くすべき相手を失い、軍人を辞めて靴屋を開業した。 イワクィリは生涯、一切気にすることは無かった事実が幾つか存在する。 その中でも特筆すべきは、心臓を掠ってジョージの弾丸も通ったあの傷は何十針と縫う手術となり、その形は星形の傷となって残ったことと、 そして、この五年後に生まれる彼の息子にもなぜか同じアザを持って生まれ、更にその子供達にもその傷を受け継いでいったという事実だ。 これは偶然なのか? 運命なのか? それは彼らが決めるべきことなのだろう――。 これがこの物語の主人公、牛城 宮定(うしじろ・みやさだ)のルーツであり、彼自身が不思議に思っている血液から漲るパワーの正体だ。 ―――だが勘違いしないでほしい。 彼がこの運命を進んだのは紛れもなく彼自身の意思であり、『血統』や『運命に』に巻き込まれただけではない。 彼は選んだのだ、戦ってでも敵が多かろうとも、妥協せずに、己の道を貫く事を。 [[ジョジョの奇妙な冒険PAT5・5 魂の磁力に戻る。>http://www11.atwiki.jp/84gzatu/31.html]] [[1話へ。>http://www11.atwiki.jp/84gzatu/5.html]]

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