「遊義皇第6話」(2008/11/01 (土) 23:30:48) の最新版変更点
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&html(<Table Border Bordercolor="#1e332c" Cellspacing="10" cellpadding="5"><Td BgColor="#b2a5cc">フォウズ・B・ウノンテ氏(94)自殺?<BR>アメリカで大手シェアを誇る株式企業、「ウノンテソーセージ」の社長、ウノンテ氏の遺体が昨晩発見された。<BR>氏はウノンテソーセージの所有するビルの屋上から落下したとされているが、氏は車椅子無しできないにも関わらず、<BR>飛び降りたとされる屋上に車椅子はなく、(車椅子は社長室と自宅に1台ずつ有った。)<BR>自殺であるはずがないが、廊下の防犯カメラには誰の姿も映っていなかった。<BR>以上、一犯新聞より抜粋。<BR></Td></Table>)
(壱華視点)
クソ寒い秋の夕暮れ、私は明日には都会に帰るであろうクロック・ジュフのイカサマを看破すべく、
カゼが治ったばかりの病み上がりの身体を動かした。
だが、刀都屋前には見覚えの無いベンツが止まっていた。
この村に業務用トラック以外の車が有ったのか?
気配を断ち、刀都屋のシャッター前に行って立ち聞く。
「第1・第4両幹部の命令を完遂すべく、二封気氏とのデュエルを要求します。」
見覚えの無い女だし、それに言っている言葉のいともよく理解できないが………、
「あぁー、その根拠は?」
「話が付かない時はデュエルで決着を付けるが正念党の公式ルールですし、
私はシャモン様の命令以外にもホーティック第3幹部の『期待』も受けています。
ですからクロック第4幹部の命令1つでは引けません……受けていただけますか? 二封気さん?」
…デュエルするらしい……面白そうだ。
(二封気視点)
巳式ドローフェイズ、ドロー前。
二封気:LP8000 手札手札4枚 巳式:LP7500 手札4枚(1枚は異次元トレーナー)
場:ダーク・ヒーロー ゾンバイア 伏せ0 場:無し 伏せ1
……さてさて、〔暴政〕が破壊されたら、
巳式のコンボを防げるかどうかは分からないな、全く反則だなサイクロン・ブレイクは。
「カードを1枚引き、(手札5枚)私は〔異次元トレーナー〕を攻撃表示で召喚します。」
&html(<Table Border BorderColor="#ccb028" Border="2"><Tr><Td>異次元トレーナー</Td><Td>闇属性</Td><Td>悪魔族</Td><Td>レベル1</Td><Td>ATK100</Td><Td>DEF2000</Td></Tr><Td ColSpan="6">異次元に吸い込まれてしまった哀れなゴブリン、しかし、今新たな向かって日々努力している。</Td></Table>)
次元の狭間から場に、眼帯を付けたゴブリンを背中に乗せた奇形モンスターが泣きながら出現した……攻撃表示?
「あぁー、守備力が2000有るモンスターを攻撃表示だぁ? なめてんのか?」
「良いんですよ、私は伏せカード〔同姓同名同盟〕を使います。」
&html(<Table Border BorderColor="#b21162" Border="2"><Tr><Td>同姓同名同盟</Td><Td>通常罠</Td></Tr><Td ColSpan="4">自分フィールド上に表側表示で存在するレベル2以下の通常モンスター1体を選択して発動する。<BR>自分のデッキから選択したカードと同名のカードを可能な限り自分フィールド上に特殊召喚する。 </Td></Table>)
さっきの奇形モンスターと同じ様に2体のモンスターが続き出現する。
異次元トレーナー:デッキ→フィールド
異次元トレーナー:デッキ→フィールド
「この狂獣のように貴方にも泣いてもらいます! 〔トライアングルパワー〕を2枚使います!」
&html(<Table Border BorderColor="#0f9926" Border="2"><Tr><Td>トライアングルパワー</Td><Td>通常魔法</Td></Tr><Td ColSpan="4">自分フィールド上に表側表示で存在する全てのレベル1通常モンスター(トークンを除く)の元々の攻撃力と守備力は2000ポイントアップする。<BR>エンドフェイズ時に自分フィールド上に存在するレベル1通常モンスターを全て破壊する。</Td></Table>)
二重に出現したピラミッド型立体の下で、狂獣はゴブリンの支持の下、筋肉を苛め抜き、腕や足を磨き上げる!
異次元トレーナー:攻撃力100→攻撃力2100→攻撃力4100 守備力2000→守備力4000→守備力6000
異次元トレーナー:攻撃力100→攻撃力2100→攻撃力4100 守備力2000→守備力4000→守備力6000
異次元トレーナー:攻撃力100→攻撃力2100→攻撃力4100 守備力2000→守備力4000→守備力6000
「あぁー、3体の総攻撃力は余裕で8000オーバー、凄いな。」
「もし〔暴政〕が有れば止められたかも知れませんが残念でしたね! 〔異次元トレーナー〕で〔ゾンバイア〕を攻撃!」
いかに死神の肉体を持つゾンバイアといえども、
ゴブリンのコーチングによって鍛え抜かれた狂獣の強靭な足腰から繰り出されるタックルには耐え切れず、破壊された。
〔異次元トレーナー〕(攻撃力4100)VS(攻撃力1900)〔ダーク・ヒーロー ゾンバイア〕→ゾンバイア、破壊・墓地へ、二封気LP8000→LP5800
だがしかし、二封気もただ自分のモンスターを破壊されるのを黙って見過ごすわけも無い!
「この瞬間、俺は手札から〔ノロボー〕を発動!」
&html(<Table Border BorderColor="#cc7a28" Border="2"><Tr><Td>ノロボー</Td><Td>闇属性</Td><Td>悪魔族</Td><Td>レベル2</Td><Td>ATK100</Td><Td>DEF100</Td></Tr><Td ColSpan="6">コントローラーがライフにダメージを受けた時、手札からこのカードを捨てる事ができる。<BR>捨てたターンのエンドフェイズまでコントローラーはダメージを受けない。(オリカ)</Td></Table>)
ダメージを感知し、俺の手札から小さな悪魔がフィールドに降り立つ。
「な、なんですか、そのカードは!?」
「こいつは種族的にトロい〔クリボー〕の中でも特にトロくてな、
ダメージを止めるのも受けてから、効果が消えるのもターンが終了してからだ。」
二封気LP5800→5800→5800
「前にホーティックの1キル対策用に入れたソレ、まだ入れてたのか?」
クロックは懐かしそうにノロボーを見て、ボソっと一言。
「俺のデッキはゴツイモンスターが多いから、
マスコット代わりに入れっぱなしだったんだが……最強コンボも止められたし、結果オーライだ。」
まさかノロボーがここまで活躍する日が来るとは。
俺は自分でも引くぐらいにニヤニヤしていると思う。 爽快!
「それでは、私のバトルフェイズはここで終了です、いいですね?」
コンボの不成立に落胆するかと思ったが、巳式の表情にはまだ余裕がある……いや、逆に力がみなぎっている!?
「うれしいですよ、二封気さん。 大抵の相手はこのカードを使う前に倒せるんでね……。」
ヤベェ、なんかスゲェのが来そうだ。
……ちょっち、楽しみだな。
「私は3体の〔異次元トレーナー〕を生贄に捧げ、〔幻魔皇 ラビエル〕を特殊召喚しますッッ。」
&html(<Table Border BorderColor="#cc7a28" Border="2"><Tr><Td>幻魔皇ラビエル</Td><Td>闇属性</Td><Td>悪魔族</Td><Td>レベル10</Td><Td>ATK4000</Td><Td>DEF4000</Td></Tr><Td ColSpan="6">このカードは通常召喚できない。<BR>自分フィールド上に存在する悪魔族モンスター3体を生け贄に捧げた場合のみ特殊召喚する事ができる。<BR>相手がモンスターを召喚する度に、自分フィールド上に「幻魔トークン」(悪魔族・闇・星1・攻/守1000)を1体特殊召喚する。<BR>このトークンは攻撃宣言を行う事はできない。<BR>1ターンに1度だけ自分フィールド上のモンスター1体を生け贄に捧げる事で、<BR>このターンのエンドフェイズ時までこのカードの攻撃力は生け贄に捧げたモンスターの元々の攻撃力分アップする。 </Td></Table>)
三匹の悪魔を礎とし、蒼き悪魔がフィールドに降り立つ!
その姿は、俺が現役レアハンター時代に見た、三幻神:オベリスクの巨神兵にすら似る。
「ちょっと……いや、かなり驚いたぜ。 まさかそんなスピードで〔ラビエル〕を召喚するとはよ。」
「あぁー、大したことねぇだろ、〔ラビエル〕なんざぁ。」
俺が感嘆の声を漏らす中、クロックはひとり冷めている。
「高攻撃力のモンスターつっても、バトルフェイズでちょっと大きくダメージを与えられる以外は他のモンスターとかわらねぇ。
それをバトルフェイズが終わってから召喚してもよォ、ただの除去効果の的だぜ。」
「普通ならそうでしょうけどね、私の手札にはこれがあります。
続き、手札から第3のパワードカード、〔無限の力〕を装備します!」
……あ?
&html(<Table Border BorderColor="#0f9926" Border="2"><Tr><Td>無限の力</Td><Td>装備魔法</Td></Tr><Td ColSpan="4">このカードを装備したモンスターは魔法・罠・モンスターの効果を受けず、攻撃力・守備力を2000ポイントアップする。(オリカ)</Td></Table>)
幻魔皇 ラビエル 攻撃力4000・守備力4000→攻撃力6000・守備力6000
「あぁー、〔トライアングルパワー〕のデメリットを生贄と言う手段で中和、
更に〔無限の力〕で除去効果を遮断し、ダメ押しで攻撃力アップ、〔無限の力〕を除去るか攻撃力6000以上を叩き出す、難しいな。」
冷静に状況を考察するクロックを横目に、俺は〔無限力〕に強い憤りを感じていた。
「私はここでターン終了とさせていただきます。(手札1枚・伏せ0枚)」
「巳式つったか……面白くないぞ、そのカード。」
「……でしょうね、貴方にとっては。」
「巳式、お前がせっかく考えた〔同姓同名同盟〕から〔ラビエル〕召喚に繋ぐコンボを、そんなパワーカードに頼っちまっていいのか?
そこは、カウンター罠で除去効果を無効にするとか、手札破壊系のカードで俺の手札を破壊するとか、そういう方が面白いんじゃないか?」
「……貴方が〔無限の力〕を除去できない言い訳ですか?」
おそらく、無限の力を手に入れる前の巳式には、除去効果などに対する対応策もデッキに組み込まれていたのだろう。
それを、ただ強いカードを手に入れたという理由からそちらへ移行する………デュエリストとしては正しいが、何か……空しい。
「確かに俺の手札に〔無限の力〕を除去する手段は無いが、
……ドロー(手札4枚)……コイツがある。 俺は手札から〔デビル・フランケン〕を通常召喚する。」
俺の自慢のノーマルカードを見た途端、巳式が失笑をひとつ。
「フフフフ…… 確かに融合モンスターの中には魔法・罠の除去能力を持つモンスターも存在しますが、
ですが仮に〔無限の力〕を無効に出来たとしても、攻撃力4000のラビエルには勝てないかと思いますが……?」
「そういうのはな、相手の手を楽しみに待てば良いんだよ。」
巳式は笑うのをやめ、手で『どうぞ』とアピールする。
「確かにそうですね。
……とりあえず、〔ラビエル〕の効果で〔幻魔トークン〕を発生させます。」
幻魔トークン:無→巳式のフィールド。
「いくぜぇっ! 俺は〔デビル・フランケン〕の効果で、〔青眼の究極竜〕を特殊召喚するッ!」
機械人間は大量のライフを召喚エネルギーに転化し、そのエネルギーを映写機のように空間に投影し、
そのエネルギーの影は、瞬間的に立体となり、そのまま質量を持って一体の巨大な竜となった。
&html(<Table Border BorderColor="#cc7a28" Border="2"><Tr><Td>デビル・フランケン</Td><Td>闇属性</Td><Td>機械族</Td><Td>レベル2</Td><Td>ATK700</Td><Td>DEF500</Td></Tr><Td ColSpan="6">5000ライフポイントを払い、自分の融合デッキから融合モンスター1体をフィールド上に攻撃表示で特殊召喚する。 </Td></Table>)
&html(<Table Border BorderColor="#6b23b2" Border="2"><Tr><Td>青眼の究極竜(ブルーアイズ・アルティメット・ドラゴン)</Td><Td>光属性</Td><Td>ドラゴン族</Td><Td>レベル12</Td><Td>ATK4500</Td><Td>DEF3800</Td></Tr><Td ColSpan="6">「青眼の白龍」+「青眼の白龍」+「青眼の白龍」</Td></Table>)
二封気LP5800→二封気LP800
融合デッキ→二封気の場、青眼の究極竜
「究極の名を持つドラゴンとはいえ〔無限の力〕を持つ〔ラビエル〕には届きませんよ?」
「届かないなら質を変える、〔突然変異〕!」
&html(<Table Border BorderColor="#0f9926" Border="2"><Tr><Td>突然変異</Td><Td>通常魔法</Td></Tr><Td ColSpan="4">自分のフィールド上モンスター1体を生け贄に捧げる。<BR>生け贄に捧げたモンスターのレベルと同じレベルの融合モンスターを融合デッキから特殊召喚する。 </Td></Table>)
青眼の究極竜:フィールド→墓地へ。
真紅眼の守護竜:融合デッキ→二封気のフィールド
&html(<Table Border BorderColor="#6b23b2" Border="2"><Tr><Td>真紅眼の守護竜(レッドアイズガーディアンドラゴン)</Td><Td>闇属性</Td><Td>ドラゴン族</Td><Td>レベル11</Td><Td>ATK3800</Td><Td>DEF4500</Td></Tr><Td ColSpan="6">「真紅眼の黒竜」+「真紅眼の黒竜」+「真紅眼の黒竜」(オリカ)</Td></Table>)
「あぁー、質もさほど変わってないぞ、二封気。」
「アハハハ…ゲフゥガフォ!」
笑って腹筋を押さえて倒れ付す巳式…良いんだよ、これで。
「クロック! お前に貰ったカードを使うぜ!
手札から〔龍の鏡〕 を発動し、墓地の〔青眼〕と場の〔真紅眼〕を融合して〔十二眼の暴攻竜〕!」
&html(<Table Border BorderColor="#0f9926" Border="2"><Tr><Td>龍の鏡</Td><Td>通常魔法</Td></Tr><Td ColSpan="4">自分のフィールド上または墓地から、融合モンスターカードによって決められたモンスターをゲームから除外し、<BR>ドラゴン族の融合モンスター1体を融合デッキから特殊召喚する。(この特殊召喚は融合召喚扱いとする) </Td></Table>)
&html(<Table Border BorderColor="#6b23b2" Border="2"><Tr><Td>十二眼の暴攻竜(ツウェルブアイズ・バスタードラゴン)</Td><Td>地属性</Td><Td>ドラゴン族</Td><Td>レベル12</Td><Td>ATK6500</Td><Td>DEF6000</Td></Tr><Td ColSpan="6">「青眼の究極竜」+「真紅眼の守護竜」<BR>このカードは融合召喚でしか特殊召喚できず、このカードの融合召喚に成功した場合、カードを3枚ドローする。(オリカ)</Td></Table>)
青眼の究極竜:フィールド→除外
真紅眼の守護竜:フィールド→除外
十二眼の暴攻竜:融合デッキ→二封気のフィールド
二封気手札:1枚→4枚(十二眼の暴攻竜の効果)
「ハハハハハハハハハ…え?」
空間の狭間から灰色の巨大な塊が降り立った…首こそは3本だが、
それぞれの頭部は、融合前の火炎の真紅・海の群青の瞳を2つずつを闘志と共に受け継いでいる。
「あぁー、(ラビエルの攻撃力を)超えたなぁ、さすがは元オレのカードってところか。」
「まだまだァッ! 手札から〔融合〕を発動ッ!
場の〔十二眼〕と手札の〔カオス・ソルジャー〕を〔融合〕し――創始界竜総督を特殊召喚する。」
灰色の巨体は分解し、混沌の剣士に青い装飾の付いた白い鎧と、真紅の刃の黒い剣として収束する。
創始界竜総督:融合デッキ→二封気のフィールド
&html(<Table Border BorderColor="#0f9926" Border="2"><Tr><Td>融合</Td><Td>通常魔法</Td></Tr><Td ColSpan="4">決められたモンスターとモンスターを融合させる。</Td></Table>)
&html(<Table Border BorderColor="#6b23b2" Border="2"><Tr><Td>創始界竜総督(ドラゴンアドミラル・オブ・ジェネシス)</Td><Td>光属性</Td><Td>ドラゴン族</Td><Td>レベル12</Td><Td>ATK8000</Td><Td>DEF8000</Td></Tr><Td ColSpan="6">「カオス・ソルジャー」+「十二眼の暴攻竜」<BR>「青眼の究極竜」+「黒炎防護戦士」<BR>「真紅眼の守護竜」+「究極竜騎士」<BR>このカードは融合召喚でしか召喚できず、上記の3組の内の1つを融合しなければならない。<BR>またこのカードのコントローラーのバトルフェイズ中、このカード以外の全てのカードの攻撃力・守備力は0となり、効果は無効となる。<BR>(このカードは自分のスタンバイフェイズに融合デッキに戻る。)(オリカ)</Td></Table>)
「そんな……〔ブルーアイズ〕や〔レッドアイズ〕を融合素材にした無限融合シリーズ……!?
しかも、第三形態で攻撃力8000!? ありえない……!」
無限融合とは、融合モンスターをさらに融合させることで更なる可能性を生み出す融合シリーズであり、
その中でも最強といわれるシリーズでは、最終形態である第五融合体でも攻撃力5000、
青眼の白龍や真紅眼の黒竜を素材に使っているといっても、破格の数値であり、巳式の驚きも分かっていただけると思う。
(無限融合については、詳しくは遊戯王KOB、「月の書」を参照。)
「驚いて欲しいのは1ターンで第3形態まで融合した俺の融合使いとしての腕と、こいつの能力なんだがな。」
フィールドに創始世界を総べる龍戦士が降り立った瞬間、
三幻魔のラビエル含む全てのモンスターがまるで見えない重りを背負うように跪いた。
「全てのモンスターは、本能的に〔総督〕との格差を理解し、
己の護身や無限の力すらも放棄して、自ら首を献上し、攻守は0と為る!」
幻魔皇 ラビエル:攻撃力6000→守備力0 守備力6000→守備力0
デビル・フランケン:攻撃力700→攻撃力0 守備力500→守備力0
幻魔トークン:攻撃力1000→攻撃力0 守備力1000→守備力0
「……んなァッ!?」
「そして攻撃! 孤高督戦式・断首刃(アドミラルエグゼキューショナァアアア)ッッ!」
大声で叫んだ必殺技名とは対照的に、総督はゆったりとした動作で跪くラビエルへと近づき、居合い切りのような姿勢で振り抜いた、
刃はすり抜けるように滑らかにラビエルの体を上下に寸断し、そのまま延長線上に立つ巳式のライフも等しく削る。
〔創始界竜総督〕(攻撃力8000)VS(攻撃力0)〔幻魔皇 ラビエル〕→ラビエル、破壊・墓地へ、巳式LP7500→0
「俺の勝ちだな…あー、疲れた。」
俺は肩を回しながら、ディスクの電源を切る。
「あぁー、腕堕ちてねぇんじゃねーか、二封気。無限融合最弱のシリーズでそこまでやれりゃあ充分。」
「さ……最弱!?」
クロックの賛辞を、巳式は魂消たらしい。
……ああ、そうか、このシリーズ、公式には発売記録すらないんだっけか。
「このカードゲームでは、破壊力よりも、カード消費や安定性が重視されえるからな。
俺の使ってる青眼・真紅眼シリーズは、初期素材に最上級を使ってる分、破壊力は高いが、
手札はバカバカ消費するわ、安定性は低いわで、普通に使ったんじゃ勝率は10%切るんじゃないか?」
「最弱に負けたのか…私は…。」
「……で、ありゃ?」
やべ、またやっちまったか?
昔からの俺の悪いクセだ、デュエルを楽しんだ後だと、どうにも発言が無神経になっちまう。
巳式は踵を返し、振り向きもせずにベンツに乗って去って行く…アレ?
ベンツから感じる気配は2つ……来る時は気付かなかったが、誰か乗ってたのか?
(クロック視点)
「あぁー、俺らも帰るか、酒も飲みたいしな。
……って、オイオイ、巳式のヤツ、俺らを忘れて行っちまいやがって。 歩きじゃあ30分ぐれぇ掛かるぜ?」
「それよりもクロック、シャモンは一度言ったら俺を戻すのを諦めないだろうし、次は……シャモン自身が来る筈だ。」
俺は少し考えてから首を縦に振った。
まあ、アイツの性格だしな。
「あぁー、十中八九、シャモンが来るな……だが、それに勝てればなんとか…。」
「……無理だ……。」
は? 俺やホーティックならいざ知らず、二封気ならシャモンとは互角ぐれーだろ。
巳式戦を見た限り、弱くもなってねーハズだしな。
「あぁー? 無理? どういう事だ?」
「……シャモンは俺より各段に強い。」
「あぁー、なるほど……っで、えええええ!?」
その時の俺は、いつものクールでカッコイイ俺からはイメージ出来ないほどのバカ面をしていたとハズだ。
二封気の現役時代からずっと正念党内では、組織の二大巨頭として二封気・シャモンが君臨し、実力は互角というのが俺や他メンバーの共通認識だった。
「世界のプロ制度『星』で計るなら、俺が星8と星9の間ぐらいだとすると、シャモンは……。」
「あぁー、オレが大体7ぐらいだが、1や2なんて誤差だぞ?
俺でも二封気と10回やれば3~5回は勝てるぐれーだしな。」
「4~5ぐらいの星の差だったら奇跡を信じれるんだが……アイツの星は……20ぐらいだ。」
破顔一笑。
「んなド○ゴンボールや幽遊白書の戦闘力みたいなインフレが有るかァアアア!」
「他には無いだろうが、シャモンの力を形容する数字はソレぐらいになっちまうんだよ。
俺だ脱党する前に、俺と灸焔長男で2対1でやっても、僅差で負けたからな。」
星の数は基本的に合計値が同じならばそれでほぼ互角とされている。
星8・5の二封気と星9の灸焔長男を合わせれば単純計算で17・5、
二人のコンビネーションがタッグ専用コンビほどじゃなかったにしても、相性が底まで悪いわけでもないはずだし、
………それが勝てなったならば、確かに「20」と言う数字も妥当かもしれないが……。
「で? どうするんだ? 選択肢は逃げるか、正念党に戻るか、だな。」
「……俺は、正念党に戻るわけにはいかないんだ。」
「俺としては、お前が主催のデュエル大会も見てみてーし、
お前の本気度合いによっちゃぁ、多少の手伝いもできるが……。」
言いながらデュエルディスクを構える俺。
「さっきのデュエルのせいでよぉ、
また一緒にバカやりてぇとも思ってる、目の前の男がお前を連れ戻す。
――とりあえず話せよ、お前の事情ってヤツをよ。」
「……クロックはそもそも正念党が何の組織か知ってるか?」
あ?
「あぁー? カード強奪組織だろ、グールズ以外の唯一の。」
「それがな? 元々の正念党はグールズにカードを奪われたヤツに護身術・デュエルテクを教える組織なんだよ。」
……あぁぁ?
「……嘘だろ?」
「いや、事実だ。創設から数ヶ月の間だけだったけどな。」
本気の目なんだよなぁ、二封気の目。
「あぁー、それがなんで真逆のカードハント組織に為ったんだよ?」
「それは、1人の正念党員が自分のカードを奪ったレアハンターを見つけた事で始まった。
――そいつがどうやったかは分からないが、グールズの情報網から情報を入手し、
『猩々鬼』……つまり俺の教えた護身武術とデュエルテクニックでリベンジを果たした。」
俺は次に何が起きたかを予想しながらも黙って二封気の言葉を聞いていた。
「その後も何人かが報復しちまってな。
何人かは自分のレアカードを取り戻したが、正念党は完全にグールズを敵に回しちまった。」
むしろ、なんで最初からそれを想定してなかった?
「ま、小さいとは言っても正念党も組織は組織。
組織単位で襲われときながら反撃しねぇんじゃぁ、グールズも組織として成立しねェしな。」
「仲間を守る為に選択肢は無かったしな、俺やシャモンが居たが、途中からは戦力差が当然生じた。」
それはそうだろうな、敵はレアカードや強力カードが使い放題で…ってオイ、まさか……。
「正念党の中に、無関係の人間からカードを奪い取る連中が出てきた……、
いや違うな、ほとんどのメンバーがカードハントをするようになった。」
「あぁー、そこまで予想通りの展開だと逆に驚くな。
二封気、お前の最大の失敗は、仲間を信頼しすぎて、そいつらの裏切りを考えなかったことだ。」
沈痛な面持ちで、二封気は『自覚してる』と頷いた。
「そんなこんなで、組織が内部崩壊をする寸前、
幸か不幸かは知らんが、当時グールズ内でかなりの力を持っていた灸焔3兄弟がデュエルを仕掛けてきて……こっからは知ってるよな?」
「あぁー、そうだな、俺が正念党に入党したのはそこからだからな。」
当時は事情も知らず、とりあえず二封気を助ける一心だった、後悔は無いが若かったな、俺。
「あの事件で、クロックと灸焔3兄弟が入党してくれたお陰で戦力比が大分動いて、
その後の別組織が台頭して引っ掻き回してくれたことも有って、何とか落ち着いた。」
「あぁー…メデタシメデタシじゃねえか、それでどうして抜けたんだ? 正念党を?
まさか今更、『ボクはカードハントは怖いんです』なーんて言わないよな、レッドアイズ使いよぉ。」
アンティデュエルは違法行為ではないし、
二封気が切り札にしている3枚のレッドアイズは、成り行きとは言え、
灸焔3兄弟とのアンティデュエルで奪ったカードであり、何度もそれで勝利している。
「それは『コレ』の理由だ。」
言いながらデュエルディスクを指し、本題を告げた。
実に嘘臭い内容だったが、確かに辞めざるを得ない理由であり、手助けしてやりたい内容だった。
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&html(<Table Border Bordercolor="#1e332c" Cellspacing="10" cellpadding="5"><Td BgColor="#b2a5cc">フォウズ・B・ウノンテ氏(94)自殺?<BR>アメリカで大手シェアを誇る株式企業、「ウノンテソーセージ」の社長、ウノンテ氏の遺体が昨晩発見された。<BR>氏はウノンテソーセージの所有するビルの屋上から落下したとされているが、氏は車椅子無しできないにも関わらず、<BR>飛び降りたとされる屋上に車椅子はなく、(車椅子は社長室と自宅に1台ずつ有った。)<BR>自殺であるはずがないが、廊下の防犯カメラには誰の姿も映っていなかった。<BR>以上、一犯新聞より抜粋。<BR></Td></Table>)
(壱華視点)
クソ寒い秋の夕暮れ、私は明日には都会に帰るであろうクロック・ジュフのイカサマを看破すべく、
カゼが治ったばかりの病み上がりの身体を動かした。
だが、刀都屋前には見覚えの無いベンツが止まっていた。
この村に業務用トラック以外の車が有ったのか?
気配を断ち、刀都屋のシャッター前に行って立ち聞く。
「第1・第4両幹部の命令を完遂すべく、二封気氏とのデュエルを要求します。」
見覚えの無い女だし、それに言っている言葉のいともよく理解できないが………、
「あぁー、その根拠は?」
「話が付かない時はデュエルで決着を付けるが正念党の公式ルールですし、
私はシャモン様の命令以外にもホーティック第3幹部の『期待』も受けています。
ですからクロック第4幹部の命令1つでは引けません……受けていただけますか? 二封気さん?」
…デュエルするらしい……面白そうだ。
(二封気視点)
巳式ドローフェイズ、ドロー前。
二封気:LP8000 手札手札4枚 巳式:LP7500 手札4枚(1枚は異次元トレーナー)
場:ダーク・ヒーロー ゾンバイア 伏せ0 場:無し 伏せ1
……さてさて、〔暴政〕が破壊されたら、
巳式のコンボを防げるかどうかは分からないな、全く反則だなサイクロン・ブレイクは。
「カードを1枚引き、(手札5枚)私は〔異次元トレーナー〕を攻撃表示で召喚します。」
&html(<Table Border BorderColor="#ccb028" Border="2"><Tr><Td>異次元トレーナー</Td><Td>闇属性</Td><Td>悪魔族</Td><Td>レベル1</Td><Td>ATK100</Td><Td>DEF2000</Td></Tr><Td ColSpan="6">異次元に吸い込まれてしまった哀れなゴブリン、しかし、今新たな向かって日々努力している。</Td></Table>)
次元の狭間から場に、眼帯を付けたゴブリンを背中に乗せた奇形モンスターが泣きながら出現した……攻撃表示?
「あぁー、守備力が2000有るモンスターを攻撃表示だぁ? なめてんのか?」
「良いんですよ、私は伏せカード〔同姓同名同盟〕を使います。」
&html(<Table Border BorderColor="#b21162" Border="2"><Tr><Td>同姓同名同盟</Td><Td>通常罠</Td></Tr><Td ColSpan="4">自分フィールド上に表側表示で存在するレベル2以下の通常モンスター1体を選択して発動する。<BR>自分のデッキから選択したカードと同名のカードを可能な限り自分フィールド上に特殊召喚する。 </Td></Table>)
さっきの奇形モンスターと同じ様に2体のモンスターが続き出現する。
異次元トレーナー:デッキ→フィールド
異次元トレーナー:デッキ→フィールド
「この狂獣のように貴方にも泣いてもらいます! 〔トライアングルパワー〕を2枚使います!」
&html(<Table Border BorderColor="#0f9926" Border="2"><Tr><Td>トライアングルパワー</Td><Td>通常魔法</Td></Tr><Td ColSpan="4">自分フィールド上に表側表示で存在する全てのレベル1通常モンスター(トークンを除く)の元々の攻撃力と守備力は2000ポイントアップする。<BR>エンドフェイズ時に自分フィールド上に存在するレベル1通常モンスターを全て破壊する。</Td></Table>)
二重に出現したピラミッド型立体の下で、狂獣はゴブリンの支持の下、筋肉を苛め抜き、腕や足を磨き上げる!
異次元トレーナー:攻撃力100→攻撃力2100→攻撃力4100 守備力2000→守備力4000→守備力6000
異次元トレーナー:攻撃力100→攻撃力2100→攻撃力4100 守備力2000→守備力4000→守備力6000
異次元トレーナー:攻撃力100→攻撃力2100→攻撃力4100 守備力2000→守備力4000→守備力6000
「あぁー、3体の総攻撃力は余裕で8000オーバー、凄いな。」
「もし〔暴政〕が有れば止められたかも知れませんが残念でしたね! 〔異次元トレーナー〕で〔ゾンバイア〕を攻撃!」
いかに死神の肉体を持つゾンバイアといえども、
ゴブリンのコーチングによって鍛え抜かれた狂獣の強靭な足腰から繰り出されるタックルには耐え切れず、破壊された。
〔異次元トレーナー〕(攻撃力4100)VS(攻撃力1900)〔ダーク・ヒーロー ゾンバイア〕→ゾンバイア、破壊・墓地へ、二封気LP8000→LP5800
だがしかし、二封気もただ自分のモンスターを破壊されるのを黙って見過ごすわけも無い!
「この瞬間、俺は手札から〔ノロボー〕を発動!」
&html(<Table Border BorderColor="#cc7a28" Border="2"><Tr><Td>ノロボー</Td><Td>闇属性</Td><Td>悪魔族</Td><Td>レベル2</Td><Td>ATK100</Td><Td>DEF100</Td></Tr><Td ColSpan="6">コントローラーがライフにダメージを受けた時、手札からこのカードを捨てる事ができる。<BR>捨てたターンのエンドフェイズまでコントローラーはダメージを受けない。(オリカ)</Td></Table>)
ダメージを感知し、俺の手札から小さな悪魔がフィールドに降り立つ。
「な、なんですか、そのカードは!?」
「こいつは種族的にトロい〔クリボー〕の中でも特にトロくてな、
ダメージを止めるのも受けてから、効果が消えるのもターンが終了してからだ。」
二封気LP5800→5800→5800
「前にホーティックの1キル対策用に入れたソレ、まだ入れてたのか?」
クロックは懐かしそうにノロボーを見て、ボソっと一言。
「俺のデッキはゴツイモンスターが多いから、
マスコット代わりに入れっぱなしだったんだが……最強コンボも止められたし、結果オーライだ。」
まさかノロボーがここまで活躍する日が来るとは。
俺は自分でも引くぐらいにニヤニヤしていると思う。 爽快!
「それでは、私のバトルフェイズはここで終了です、いいですね?」
コンボの不成立に落胆するかと思ったが、巳式の表情にはまだ余裕がある……いや、逆に力がみなぎっている!?
「うれしいですよ、二封気さん。 大抵の相手はこのカードを使う前に倒せるんでね……。」
ヤベェ、なんかスゲェのが来そうだ。
……ちょっち、楽しみだな。
「私は3体の〔異次元トレーナー〕を生贄に捧げ、〔幻魔皇 ラビエル〕を特殊召喚しますッッ。」
&html(<Table Border BorderColor="#cc7a28" Border="2"><Tr><Td>幻魔皇ラビエル</Td><Td>闇属性</Td><Td>悪魔族</Td><Td>レベル10</Td><Td>ATK4000</Td><Td>DEF4000</Td></Tr><Td ColSpan="6">このカードは通常召喚できない。<BR>自分フィールド上に存在する悪魔族モンスター3体を生け贄に捧げた場合のみ特殊召喚する事ができる。<BR>相手がモンスターを召喚する度に、自分フィールド上に「幻魔トークン」(悪魔族・闇・星1・攻/守1000)を1体特殊召喚する。<BR>このトークンは攻撃宣言を行う事はできない。<BR>1ターンに1度だけ自分フィールド上のモンスター1体を生け贄に捧げる事で、<BR>このターンのエンドフェイズ時までこのカードの攻撃力は生け贄に捧げたモンスターの元々の攻撃力分アップする。 </Td></Table>)
三匹の悪魔を礎とし、蒼き悪魔がフィールドに降り立つ!
その姿は、俺が現役レアハンター時代に見た、三幻神:オベリスクの巨神兵にすら似る。
「ちょっと……いや、かなり驚いたぜ。 まさかそんなスピードで〔ラビエル〕を召喚するとはよ。」
「あぁー、大したことねぇだろ、〔ラビエル〕なんざぁ。」
俺が感嘆の声を漏らす中、クロックはひとり冷めている。
「高攻撃力のモンスターつっても、バトルフェイズでちょっと大きくダメージを与えられる以外は他のモンスターとかわらねぇ。
それをバトルフェイズが終わってから召喚してもよォ、ただの除去効果の的だぜ。」
「普通ならそうでしょうけどね、私の手札にはこれがあります。
続き、手札から第3のパワードカード、〔無限の力〕を装備します!」
……あ?
&html(<Table Border BorderColor="#0f9926" Border="2"><Tr><Td>無限の力</Td><Td>装備魔法</Td></Tr><Td ColSpan="4">このカードを装備したモンスターは魔法・罠・モンスターの効果を受けず、攻撃力・守備力を2000ポイントアップする。(オリカ)</Td></Table>)
幻魔皇 ラビエル 攻撃力4000・守備力4000→攻撃力6000・守備力6000
「あぁー、〔トライアングルパワー〕のデメリットを生贄と言う手段で中和、
更に〔無限の力〕で除去効果を遮断し、ダメ押しで攻撃力アップ、〔無限の力〕を除去るか攻撃力6000以上を叩き出す、難しいな。」
冷静に状況を考察するクロックを横目に、俺は〔無限力〕に強い憤りを感じていた。
「私はここでターン終了とさせていただきます。(手札1枚・伏せ0枚)」
「巳式つったか……面白くないぞ、そのカード。」
「……でしょうね、貴方にとっては。」
「巳式、お前がせっかく考えた〔同姓同名同盟〕から〔ラビエル〕召喚に繋ぐコンボを、そんなパワーカードに頼っちまっていいのか?
そこは、カウンター罠で除去効果を無効にするとか、手札破壊系のカードで俺の手札を破壊するとか、そういう方が面白いんじゃないか?」
「……貴方が〔無限の力〕を除去できない言い訳ですか?」
おそらく、無限の力を手に入れる前の巳式には、除去効果などに対する対応策もデッキに組み込まれていたのだろう。
それを、ただ強いカードを手に入れたという理由からそちらへ移行する………デュエリストとしては正しいが、何か……空しい。
「確かに俺の手札に〔無限の力〕を除去する手段は無いが、
……ドロー(手札4枚)……コイツがある。 俺は手札から〔デビル・フランケン〕を通常召喚する。」
俺の自慢のノーマルカードを見た途端、巳式が失笑をひとつ。
「フフフフ…… 確かに融合モンスターの中には魔法・罠の除去能力を持つモンスターも存在しますが、
ですが仮に〔無限の力〕を無効に出来たとしても、攻撃力4000のラビエルには勝てないかと思いますが……?」
「そういうのはな、相手の手を楽しみに待てば良いんだよ。」
巳式は笑うのをやめ、手で『どうぞ』とアピールする。
「確かにそうですね。
……とりあえず、〔ラビエル〕の効果で〔幻魔トークン〕を発生させます。」
幻魔トークン:無→巳式のフィールド。
「いくぜぇっ! 俺は〔デビル・フランケン〕の効果で、〔青眼の究極竜〕を特殊召喚するッ!」
機械人間は大量のライフを召喚エネルギーに転化し、そのエネルギーを映写機のように空間に投影し、
そのエネルギーの影は、瞬間的に立体となり、そのまま質量を持って一体の巨大な竜となった。
&html(<Table Border BorderColor="#cc7a28" Border="2"><Tr><Td>デビル・フランケン</Td><Td>闇属性</Td><Td>機械族</Td><Td>レベル2</Td><Td>ATK700</Td><Td>DEF500</Td></Tr><Td ColSpan="6">5000ライフポイントを払い、自分の融合デッキから融合モンスター1体をフィールド上に攻撃表示で特殊召喚する。 </Td></Table>)
&html(<Table Border BorderColor="#6b23b2" Border="2"><Tr><Td>青眼の究極竜(ブルーアイズ・アルティメット・ドラゴン)</Td><Td>光属性</Td><Td>ドラゴン族</Td><Td>レベル12</Td><Td>ATK4500</Td><Td>DEF3800</Td></Tr><Td ColSpan="6">「青眼の白龍」+「青眼の白龍」+「青眼の白龍」</Td></Table>)
二封気LP5800→二封気LP800
融合デッキ→二封気の場、青眼の究極竜
「究極の名を持つドラゴンとはいえ〔無限の力〕を持つ〔ラビエル〕には届きませんよ?」
「届かないなら質を変える、〔突然変異〕!」
&html(<Table Border BorderColor="#0f9926" Border="2"><Tr><Td>突然変異</Td><Td>通常魔法</Td></Tr><Td ColSpan="4">自分のフィールド上モンスター1体を生け贄に捧げる。<BR>生け贄に捧げたモンスターのレベルと同じレベルの融合モンスターを融合デッキから特殊召喚する。 </Td></Table>)
青眼の究極竜:フィールド→墓地へ。
真紅眼の守護竜:融合デッキ→二封気のフィールド
&html(<Table Border BorderColor="#6b23b2" Border="2"><Tr><Td>真紅眼の守護竜(レッドアイズガーディアンドラゴン)</Td><Td>闇属性</Td><Td>ドラゴン族</Td><Td>レベル11</Td><Td>ATK3800</Td><Td>DEF4500</Td></Tr><Td ColSpan="6">「真紅眼の黒竜」+「真紅眼の黒竜」+「真紅眼の黒竜」(オリカ)</Td></Table>)
「あぁー、質もさほど変わってないぞ、二封気。」
「アハハハ…ゲフゥガフォ!」
笑って腹筋を押さえて倒れ付す巳式…良いんだよ、これで。
「クロック! お前に貰ったカードを使うぜ!
手札から〔龍の鏡〕 を発動し、墓地の〔青眼〕と場の〔真紅眼〕を融合して〔十二眼の暴攻竜〕!」
&html(<Table Border BorderColor="#0f9926" Border="2"><Tr><Td>龍の鏡</Td><Td>通常魔法</Td></Tr><Td ColSpan="4">自分のフィールド上または墓地から、融合モンスターカードによって決められたモンスターをゲームから除外し、<BR>ドラゴン族の融合モンスター1体を融合デッキから特殊召喚する。(この特殊召喚は融合召喚扱いとする) </Td></Table>)
&html(<Table Border BorderColor="#6b23b2" Border="2"><Tr><Td>十二眼の暴攻竜(ツウェルブアイズ・バスタードラゴン)</Td><Td>地属性</Td><Td>ドラゴン族</Td><Td>レベル12</Td><Td>ATK6500</Td><Td>DEF6000</Td></Tr><Td ColSpan="6">「青眼の究極竜」+「真紅眼の守護竜」<BR>このカードは融合召喚でしか特殊召喚できず、このカードの融合召喚に成功した場合、カードを3枚ドローする。(オリカ)</Td></Table>)
青眼の究極竜:フィールド→除外
真紅眼の守護竜:フィールド→除外
十二眼の暴攻竜:融合デッキ→二封気のフィールド
二封気手札:1枚→4枚(十二眼の暴攻竜の効果)
「ハハハハハハハハハ…え?」
空間の狭間から灰色の巨大な塊が降り立った…首こそは3本だが、
それぞれの頭部は、融合前の火炎の真紅・海の群青の瞳を2つずつを闘志と共に受け継いでいる。
「あぁー、(ラビエルの攻撃力を)超えたなぁ、さすがは元オレのカードってところか。」
「まだまだァッ! 手札から〔融合〕を発動ッ!
場の〔十二眼〕と手札の〔カオス・ソルジャー〕を〔融合〕し――創始界竜総督を特殊召喚する。」
灰色の巨体は分解し、混沌の剣士に青い装飾の付いた白い鎧と、真紅の刃の黒い剣として収束する。
創始界竜総督:融合デッキ→二封気のフィールド
&html(<Table Border BorderColor="#0f9926" Border="2"><Tr><Td>融合</Td><Td>通常魔法</Td></Tr><Td ColSpan="4">決められたモンスターとモンスターを融合させる。</Td></Table>)
&html(<Table Border BorderColor="#6b23b2" Border="2"><Tr><Td>創始界竜総督(ドラゴンアドミラル・オブ・ジェネシス)</Td><Td>光属性</Td><Td>ドラゴン族</Td><Td>レベル12</Td><Td>ATK8000</Td><Td>DEF8000</Td></Tr><Td ColSpan="6">「カオス・ソルジャー」+「十二眼の暴攻竜」<BR>「青眼の究極竜」+「黒炎防護戦士」<BR>「真紅眼の守護竜」+「究極竜騎士」<BR>このカードは融合召喚でしか召喚できず、上記の3組の内の1つを融合しなければならない。<BR>またこのカードのコントローラーのバトルフェイズ中、このカード以外の全てのカードの攻撃力・守備力は0となり、効果は無効となる。<BR>(このカードは自分のスタンバイフェイズに融合デッキに戻る。)(オリカ)</Td></Table>)
「そんな……〔ブルーアイズ〕や〔レッドアイズ〕を融合素材にした無限融合シリーズ……!?
しかも、第三形態で攻撃力8000!? ありえない……!」
無限融合とは、融合モンスターをさらに融合させることで更なる可能性を生み出す融合シリーズであり、
その中でも最強といわれるシリーズでは、最終形態である第五融合体でも攻撃力5000、
青眼の白龍や真紅眼の黒竜を素材に使っているといっても、破格の数値であり、巳式の驚きも分かっていただけると思う。
(無限融合については、詳しくは遊戯王KOB、「月の書」を参照。)
「驚いて欲しいのは1ターンで第3形態まで融合した俺の融合使いとしての腕と、こいつの能力なんだがな。」
フィールドに創始世界を総べる龍戦士が降り立った瞬間、
三幻魔のラビエル含む全てのモンスターがまるで見えない重りを背負うように跪いた。
「全てのモンスターは、本能的に〔総督〕との格差を理解し、
己の護身や無限の力すらも放棄して、自ら首を献上し、攻守は0と為る!」
幻魔皇 ラビエル:攻撃力6000→守備力0 守備力6000→守備力0
デビル・フランケン:攻撃力700→攻撃力0 守備力500→守備力0
幻魔トークン:攻撃力1000→攻撃力0 守備力1000→守備力0
「……んなァッ!?」
「そして攻撃! 孤高督戦式・断首刃(アドミラルエグゼキューショナァアアア)ッッ!」
大声で叫んだ必殺技名とは対照的に、総督はゆったりとした動作で跪くラビエルへと近づき、居合い切りのような姿勢で振り抜いた、
刃はすり抜けるように滑らかにラビエルの体を上下に寸断し、そのまま延長線上に立つ巳式のライフも等しく削る。
〔創始界竜総督〕(攻撃力8000)VS(攻撃力0)〔幻魔皇 ラビエル〕→ラビエル、破壊・墓地へ、巳式LP7500→0
「俺の勝ちだな…あー、疲れた。」
俺は肩を回しながら、ディスクの電源を切る。
「あぁー、腕堕ちてねぇんじゃねーか、二封気。無限融合最弱のシリーズでそこまでやれりゃあ充分。」
「さ……最弱!?」
クロックの賛辞を、巳式は魂消たらしい。
……ああ、そうか、このシリーズ、公式には発売記録すらないんだっけか。
「このカードゲームでは、破壊力よりも、カード消費や安定性が重視されえるからな。
俺の使ってる青眼・真紅眼シリーズは、初期素材に最上級を使ってる分、破壊力は高いが、
手札はバカバカ消費するわ、安定性は低いわで、普通に使ったんじゃ勝率は10%切るんじゃないか?」
「最弱に負けたのか…私は…。」
「……で、ありゃ?」
やべ、またやっちまったか?
昔からの俺の悪いクセだ、デュエルを楽しんだ後だと、どうにも発言が無神経になっちまう。
巳式は踵を返し、振り向きもせずにベンツに乗って去って行く…アレ?
ベンツから感じる気配は2つ……来る時は気付かなかったが、誰か乗ってたのか?
(クロック視点)
「あぁー、俺らも帰るか、酒も飲みたいしな。
……って、オイオイ、巳式のヤツ、俺らを忘れて行っちまいやがって。 歩きじゃあ30分ぐれぇ掛かるぜ?」
「それよりもクロック、シャモンは一度言ったら俺を戻すのを諦めないだろうし、次は……シャモン自身が来る筈だ。」
俺は少し考えてから首を縦に振った。
まあ、アイツの性格だしな。
「あぁー、十中八九、シャモンが来るな……だが、それに勝てればなんとか…。」
「……無理だ……。」
は? 俺やホーティックならいざ知らず、二封気ならシャモンとは互角ぐれーだろ。
巳式戦を見た限り、弱くもなってねーハズだしな。
「あぁー? 無理? どういう事だ?」
「……シャモンは俺より各段に強い。」
「あぁー、なるほど……っで、えええええ!?」
その時の俺は、いつものクールでカッコイイ俺からはイメージ出来ないほどのバカ面をしていたとハズだ。
二封気の現役時代からずっと正念党内では、組織の二大巨頭として二封気・シャモンが君臨し、実力は互角というのが俺や他メンバーの共通認識だった。
「世界のプロ制度『星』で計るなら、俺が星8と星9の間ぐらいだとすると、シャモンは……。」
「あぁー、オレが大体7ぐらいだが、1や2なんて誤差だぞ?
俺でも二封気と10回やれば3~5回は勝てるぐれーだしな。」
「4~5ぐらいの星の差だったら奇跡を信じれるんだが……アイツの星は……20ぐらいだ。」
破顔一笑。
「んなド○ゴンボールや幽遊白書の戦闘力みたいなインフレが有るかァアアア!」
「他には無いだろうが、シャモンの力を形容する数字はソレぐらいになっちまうんだよ。
俺だ脱党する前に、俺と灸焔長男で2対1でやっても、僅差で負けたからな。」
星の数は基本的に合計値が同じならばそれでほぼ互角とされている。
星8・5の二封気と星9の灸焔長男を合わせれば単純計算で17・5、
二人のコンビネーションがタッグ専用コンビほどじゃなかったにしても、相性が底まで悪いわけでもないはずだし、
………それが勝てなったならば、確かに「20」と言う数字も妥当かもしれないが……。
「で? どうするんだ? 選択肢は逃げるか、正念党に戻るか、だな。」
「……俺は、正念党に戻るわけにはいかないんだ。」
「俺としては、お前が主催のデュエル大会も見てみてーし、
お前の本気度合いによっちゃぁ、多少の手伝いもできるが……。」
言いながらデュエルディスクを構える俺。
「さっきのデュエルのせいでよぉ、
また一緒にバカやりてぇとも思ってる、目の前の男がお前を連れ戻す。
――とりあえず話せよ、お前の事情ってヤツをよ。」
「……クロックはそもそも正念党が何の組織か知ってるか?」
あ?
「あぁー? カード強奪組織だろ、グールズ以外の唯一の。」
「それがな? 元々の正念党はグールズにカードを奪われたヤツに護身術・デュエルテクを教える組織なんだよ。」
……あぁぁ?
「……嘘だろ?」
「いや、事実だ。創設から数ヶ月の間だけだったけどな。」
本気の目なんだよなぁ、二封気の目。
「あぁー、それがなんで真逆のカードハント組織に為ったんだよ?」
「それは、1人の正念党員が自分のカードを奪ったレアハンターを見つけた事で始まった。
――そいつがどうやったかは分からないが、グールズの情報網から情報を入手し、
『猩々鬼』……つまり俺の教えた護身武術とデュエルテクニックでリベンジを果たした。」
俺は次に何が起きたかを予想しながらも黙って二封気の言葉を聞いていた。
「その後も何人かが報復しちまってな。
何人かは自分のレアカードを取り戻したが、正念党は完全にグールズを敵に回しちまった。」
むしろ、なんで最初からそれを想定してなかった?
「ま、小さいとは言っても正念党も組織は組織。
組織単位で襲われときながら反撃しねぇんじゃぁ、グールズも組織として成立しねェしな。」
「仲間を守る為に選択肢は無かったしな、俺やシャモンが居たが、途中からは戦力差が当然生じた。」
それはそうだろうな、敵はレアカードや強力カードが使い放題で…ってオイ、まさか……。
「正念党の中に、無関係の人間からカードを奪い取る連中が出てきた……、
いや違うな、ほとんどのメンバーがカードハントをするようになった。」
「あぁー、そこまで予想通りの展開だと逆に驚くな。
二封気、お前の最大の失敗は、仲間を信頼しすぎて、そいつらの裏切りを考えなかったことだ。」
沈痛な面持ちで、二封気は『自覚してる』と頷いた。
「そんなこんなで、組織が内部崩壊をする寸前、
幸か不幸かは知らんが、当時グールズ内でかなりの力を持っていた灸焔3兄弟がデュエルを仕掛けてきて……こっからは知ってるよな?」
「あぁー、そうだな、俺が正念党に入党したのはそこからだからな。」
当時は事情も知らず、とりあえず二封気を助ける一心だった、後悔は無いが若かったな、俺。
「あの事件で、クロックと灸焔3兄弟が入党してくれたお陰で戦力比が大分動いて、
その後の別組織が台頭して引っ掻き回してくれたことも有って、何とか落ち着いた。」
「あぁー…メデタシメデタシじゃねえか、それでどうして抜けたんだ? 正念党を?
まさか今更、『ボクはカードハントは怖いんです』なーんて言わないよな、レッドアイズ使いよぉ。」
アンティデュエルは違法行為ではないし、
二封気が切り札にしている3枚のレッドアイズは、成り行きとは言え、
灸焔3兄弟とのアンティデュエルで奪ったカードであり、何度もそれで勝利している。
「それは『コレ』の理由だ。」
言いながらデュエルディスクを指し、本題を告げた。
実に嘘臭い内容だったが、確かに辞めざるを得ない理由であり、手助けしてやりたい内容だった。
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