「大人のためのレオ・ウィザード 【前】」の編集履歴(バックアップ)一覧はこちら
「大人のためのレオ・ウィザード 【前】」(2010/03/29 (月) 00:03:53) の最新版変更点
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&html(<font color="#ff0000">【壱】</font)
「枯刃さぁん、カウントダウン見たいんですけど…。」
汗とタバコの匂いが充満し、パソコンの起動音とタイピング音だけが鳴る手狭な部屋に、若いスタッフは独り言のように提案した。
「今は良いぞ。」
枯刃と呼ばれた男は、こけた頬骨、血色が悪い細長い手足…種族分けをしたらアンデット族・闇属性に指定されそうだ。
そんな外見とはピッタリなシャガレ声で、枯刃は若いスタッフの要望を簡潔に認めた。
「すいません、これ見ないと年末、って感じがしないんで…。」
若いスタッフはリモコンを探すが、年末の大掃除もしていないこの職場では一度埋まったリモコンを発掘することはほぼ不可能。
とりあえず3時間ぶりに立ち上がり、テレビの据付ボタンで操作し、カウントダウン中の音楽番組を探し出した
【――れでは、今年もあと30秒を残すまでとなりました!
……10! 9! 8! 7! 6! 5! 4! 3! 2! 1! ゼロ!
ア、ハッピーニューイヤァー! 1997年、あけましておめでとうございまぁーッ】
プツン、とそこで刃枯がリモコンでテレビを消した。
リモコンは埋まっていたのではなく、刃枯が使ったまま定位置に戻していなかったらしい。
「カウントダウンが見たいと言ったから見せた。 働け。」
1996年から1997年になっても、彼らの作業は変わらない。
おせち料理もなく、カップ麺の天ぷらソバで年を越した彼らの仕事はコナミの下請けでソリッドビジョンのプログラミングをしていた。
米国がプラズマ・チャフとして軍事開発した立体映像の技術が4年遅れで日本に流通し、『デュエルディスク』を完成、発売させた。
当たり前なのだが、デュエルディスクからは立体映像が出る。 出るものは作っているヤツがいることになる。
「おい、アイアン・ハーツ・ドラゴンのデータは誰が持ってる?
俺のデモン・アイズ・ドラゴン、そいつの上腕のデータが必要なんだが。」
二次元のイラスト1枚で命をすり減らす思いで製作するのがクリエイターである。
それを3次元……いや、動画なのでアイザック・アシモフに習って四次元と言うべきだろうか? 立体映像製作の過酷さは想像に難くない。
テンプレートや既存カードのビジョンを流用、色やサイズを変えて使うのは常套手段だった。
「え? 枯刃さん、デモン・アイズ・ドラゴンは俺の受け持ちですよ? もう作りました。」
言われ、枯刃は自分の作った自分の受け持ち分のカードリストを見て、アンデットっぽい顔が更に険しくなった。
「……俺の受け持ちカード、“デモン・アイズ・ドラゴン”じゃないな。
“デーモンズ・アイス・ドラゴン”だ。」
現在、デュエルモンスターズのコミックは、学童誌、少年誌、青年誌と三つの雑誌があり、テレビアニメも三つ。
それぞれで新しいカードがどんどん発表されている。
このスタジオ以外にもデュエルディスク用のソリッドビジョンを製作しているスタジオはあるが、主要モンスターはほとんどここで製作されている。
「……胴体まで作ったんだが。」
口調こそ平静だが、周りのスタッフは知っている。
枯刃のその仕草は、苛立ちをぶつける対象を探している時だ。
付け入る隙を与えたら憂さ晴らしの口撃を受け、受けた側がノック・アウトされてしまう。
「山本、お前の作ったデモン・アイズ・ドラゴンを見せてみろ。」
呼ばれた新人プログラマーは、青ざめながらも先ほど作ったデータを有線で枯刃の手元のパソコンに転送する。
「……腰のラインが酷いな、こんな物じゃ公開した途端に問い合わがくるぞ、『デモンアイスのデータがバグってます』ってよ。
うちの事務所を潰す気なのか? お前は?」
「…いいえ。」
確かにそのデータは、枯刃の作ったものに比べて立体感に欠け、見る角度によっては薄っぺらく見えてしまう。
しかしながらそれはミスではなく、新人プログラマーにとっては全霊を尽した表現であり、公開に堪えるレベルではある。
このスタジオのリーダーにして天才たる枯刃と比べては不憫以外の何者でもない。
「……枯刃さんが作った物と、替えてください。」
「は? 人任せか? それで一人前に給料を貰うつもりなのかお前は。 いつまで見習い気分なんだ?」
「すみません…。」
ほとんど野良犬に噛まれたような物である。
「俺の作ったデータを使わせてやる、直しておけ。」
苛立ちを撒き散らしつつ、枯刃はスタジオを出た。
&html(<font color="#ff0000">【弐】</font)
「……。」
スタジオ・カレバの代表取締役兼作業部長、&html(<ruby><rb>枯刃<rt>かれば)&html(<ruby><rb>猛<rt>たけし)は、自社がテナントを借りているビルの屋上でタバコの火で蛍を気取っていた。
財布も持たずに飛び出し、行ける場所もないし、行きたい場所もない。
眼下を見下ろせば真夜中だというのに朝と変わらない明るさと騒々しさで、年明けを祝っている。
デュエルディスクでハキハキとデュエルをしている子供も見える。 陽気な物だ、製作者がここで腐っているというのに。
「あァー…ーァあ」
イライラする。
自分が悪いのだ。 確認もせずにソリッドビジョンを作り出して。 部下は何も悪い事はしていなかった。
当り散らす必要も資格もない、それでも苛立ちが止まらない自分に自己嫌悪が止まらない、自己嫌悪がまた苛立ちを深める。
タバコを吸ってもスカっとはしなし、健康を軽視しているわけでもないが、それでも吸わずに居られない、そんな自分にやはり腹が立ち、イライラが募る。
「スカっとしねぇな……。」
「スカっとしたいんですか?」
一瞬、空耳かと思った。
この屋上は立ち入りは自由だが、低くもなければ高くもなく、狭くもなければ広くもない。
そんな屋上に、年の始めに来る人間が自分以外に居るとは信じられなかった……だが、振り返ってみればそこには声の主が立っていた。
「ウォッス。
あけましておめでとうございます、枯刃さん。」
「……おめでとう。」
枯刃の名前を相手は知っていたが、枯刃は相手に見覚えがない。
その男は学生なのか、前時代的な詰襟の学ランを着込み、何を思ったか左目に眼帯のようにネクタイを巻き付けている。
地上から昇ってきたネオンサインにしっかりと照らされた男の左右の腕には、1枚ずつデュエルディスクが握られている。
「俺の名前は……そう、シュバルツガイスト……黒い精神とでも名乗っておきましょうかねぇ。
スカっとしたいならどうです? 俺とデュエルでもしませんか?
新年一発目、初夢ならぬ初デュエルというわけです。」
見ず知らずの男だが、実際やることもない。 暇潰しにちょうどよかった。
「悪くないな……待ってろ、デッキを取ってくる。」
「いえいえ、枯刃さん。 あなたのデッキはここにありますよ。」
ス、っとシュバルツガイストが手渡したものは、真っ赤なペイントに枯刃が製作に携わったアニメキャラのストラップ。
間違いなく、それは枯刃愛用のデュエルディスクだった。
「……なんで持ってる?」
「今はそんなことはどうだっていいと思うんですがねぇ。
細かい事を気にすると、さらにイライラが止まりませんぜ?」
苛立った。
人をバカにし切った態度をしているシュバルツガイストに。
だが、それにムキになって問い詰めるのも枯刃のプライドが許さなかった。
「……デッキに細工はしてねぇだろうな?」
「カードを盗む気なら、話しかけたりしやしませんよ。」
「てめー……俺にスカっとしてほしいのか? それとも苛立ってほしいのか? どっちだ?」
「まあぶっちゃければ、ただデュエルがしたいだけでしてね。
楽しみやしょう。」
アニメや漫画、小説なんかではここで『決闘(デュエル)!!』と開戦宣言といくわけだが、正月とはいえ深夜12時……近所迷惑だ。
「それじゃあ、俺の先攻から行かせていただきやす。(手札6)
魔・罠ゾーンに1枚セット、終了です(手札5・伏せ1)。」
伏せ状態の立体映像が1つ出現しただけで、モンスターを召喚しないというのは退屈な絵面である。
これが派手な強力カードが飛び交うヒーロー・コミックスならば『攻撃を誘っている!?』とかなんとか思うところである。
しかしながら、現実ではモンスターを召喚しない理由といえば『手札に出せるモンスターが居ない』が大半を占め、シュバルツガイストも例外ではなかった。
「俺のターン(手札6)。
手札から〔ライトロード・ウォリアー ガロス〕を捨てて、〔ソーラー・エクスチェンジ〕を発動だ。」
&html(<Table Border BorderColor="#0f9926" Border="2"><Tr><Td>ソーラー・エクスチェンジ</Td><Td>通常魔法</Td></Tr><Td ColSpan="4">手札から「ライトロード」と名のついたモンスターカード1枚を捨てて発動する。<BR>自分のデッキからカードを2枚ドローし、その後デッキの上からカードを2枚墓地に送る。 </Td></Table>)
ライトロード・ウォリアー ガロス:手札→墓地へ。
その光に照らされ、周囲には鏡のような幕が周囲を包む。
中々に幻想的だが、それだけではなかった。
「(〔正統なる血統〕、〔痛み分け〕、〔ディメンション・マジック〕、〔召喚師のスキル〕、
……ああ、ありゃあ〔マジシャンズ・サークル〕だ。)」
作り出されたソリッドビジョンは、まさに鏡だった。
鏡は光の反射を繰り返し、ある角度から見るとデュエリストの背中からのような視点を得ることができる。
つまり、枯刃は手札交換だけでなく、1枚の発動でシュバルツガイストの手札を確認した。
「(よくあるブラックマジシャンデッキ、ってところか。 マンガ再現のファンデッカーか。)」
裁きの龍:デッキ→墓地へ。(ソーラー・エクスチェンジの効果)
増援:デッキ→墓地へ。(ソーラー・エクスチェンジの効果)
脅威がないことを確認し、退屈そうに枯刃は次のカードに手を掛ける。
「〔ライトロード・パラディン ジェイン〕を通常召喚し、何もないならバトルフェイズでダイレクトだが?」
&html(<Table Border BorderColor="#cc7a28" Border="2"><Tr><Td>ライトロード・パラディン ジェイン</Td><Td>光属性</Td><Td>戦士族</Td><Td>レベル4</Td><Td>ATK1800</Td><Td>DEF1200</Td></Tr><Td ColSpan="6">このカードは相手モンスターに攻撃する場合、ダメージステップの間攻撃力が300ポイントアップする。<BR>このカードが自分フィールド上に表側表示で存在する限り、自分のエンドフェイズ毎に、自分のデッキの上からカードを2枚墓地に送る。</Td></Table>)
「O・K。
伏せカードはもちろん、手札から発動する類のカードもありはしない。」
それは当然だった。 さっき枯刃が確認した時、シュバルツガイストの手札には使えもしない魔法カードばかりだった。
チェーンの確認が終るとジェインが飛び掛り、磨きぬかれた剣は銀光を引き、シュバルツガイストに一撃を叩き込む……が、所詮は立体映像。
大の大人が攻撃されたぐらいで『うわあ!』とか『ぐああ!』とか言うヤツなんて、アニメの声優以外に居はしない。
「ぐ、うわああああ~~。」
だが、シュバルツガイストはノリノリでリアクションを取っていた。
「バカにしてんのか?」
「いや、割とマジメっすよ?」
シュバルツガイスト:LP8000→LP6200
「エンドフェイズ、終了時に〔ジェイン〕の効果でデッキを削る。」
ライトロード・ビースト ウォルフ:デッキ→墓地へ。
オネスト:デッキ→墓地へ。
「……良いカードが落ちたぜ、〔ウォルフ〕の効果発動、特殊召喚だ。」
&html(<Table Border BorderColor="#cc7a28" Border="2"><Tr><Td>ライトロード・ビースト ウォルフ</Td><Td>光属性</Td><Td>獣戦士族</Td><Td>レベル4</Td><Td>ATK2100</Td><Td>DEF300</Td></Tr><Td ColSpan="6">このカードは通常召喚できない。このカードがデッキから墓地に送られた時、このカードを自分フィールド上に特殊召喚する。</Td></Table>)
ライトロード・ビースト ウォルフ:墓地→フィールド
「で、ターンエンド。(手札5・伏せ0)。」
「ドロー(手札6)……よっし、良いカードだ。
〔封印の黄金櫃〕を発動して、デッキから〔聖なるバリア-ミラーフォース-〕を除外する。」
&html(<Table Border BorderColor="#0f9926" Border="2"><Tr><Td>封印の黄金櫃</Td><Td>通常魔法</Td></Tr><Td ColSpan="4">自分のデッキからカードを1枚選択し、ゲームから除外する。<BR>発動後2回目の自分のスタンバイフェイズ時にそのカードを手札に加える。/Td></Table>)
聖なるバリア-ミラーフォース-:デッキ→ゲームから除外。
「さらに伏せカードをセット、終了。(手札4・伏せ2)」
先ほど確認した位置からすると、今伏せたのは〔マジシャンズ・サークル〕。
魔法使い族の攻撃宣言に誘発し、お互いにデッキから魔法使い族モンスターを召喚できる通常罠カード。
「(狙いは〔ブラマジガール〕、〔D・D・M〕、〔魔法の操り人形〕ってとこか。
さらに〔櫃〕で〔聖なるバリア〕を除外したってことは、あの伏せカードが〔聖なるバリア〕ってこともねぇ。
〔激流葬〕は禁止カードだし、安心して攻撃できるってものだぜ……ナメやがって……。)」
不正行為であるカード効果以外の手札の確認をした挙句、一方的な怒りを煮立たせる枯刃。
その苛立ちを乗せ、枯刃はカードをドローする。 これで枯刃の手札は6枚だ。
「……デッキがふざけてるだけじゃなく、モンスターも召喚しないとはな……ムカつくぜ。」
「ん? 俺のデッキがわかったんですかい? まだカードの1枚も表側で出してないんですがね?」
「……どうでもいいぜ。
〔ライトロード・サモナー ルミナス〕を通常召喚。」
&html(<Table Border BorderColor="#cc7a28" Border="2"><Tr><Td>ライトロード・サモナー ルミナス</Td><Td>光属性</Td><Td>魔法使い族</Td><Td>レベル3</Td><Td>ATK1000</Td><Td>DEF1000</Td></Tr><Td ColSpan="6">1ターンに1度、手札を1枚捨てる事で自分の墓地に存在するレベル4以下の「ライトロード」と名のついたモンスター1体を自分フィールド上に特殊召喚する。<BR>このカードが自分フィールド上に表側表示で存在する場合、自分のエンドフェイズ毎に、自分のデッキの上からカードを3枚墓地に送る。</Td></Table>)
「〔ルミナス〕の効果を発動、〔月の書〕を捨てて墓地から〔ガロス〕を特殊召喚するぜ。」
ライトロード・ウォリアー ガロス:墓地→フィールド
&html(<Table Border BorderColor="#cc7a28" Border="2"><Tr><Td>ライトロード・ウォリアー ガロス</Td><Td>光属性</Td><Td>戦士族</Td><Td>レベル4</Td><Td>ATK1850</Td><Td>DEF1300</Td></Tr><Td ColSpan="6">自分フィールド上に表側表示で存在する「ライトロード・ウォリアー ガロス」以外の「ライトロード」と名のついたモンスターの効果によって<BR>自分のデッキからカードが墓地に送られる度に、自分のデッキの上からカードを2枚墓地に送る。<BR>このカードの効果で墓地に送られた「ライトロード」と名のついたモンスター1体につき、自分のデッキからカードを1枚ドローする。</Td></Table>)
「バトルフェイズ、〔ガロス〕のダイレクトアタックだ。」
「あ、伏せカードは発動しないぜ。
……ぐうう・うわああ~~~~、痛ぇええ~~。」
シュバルツガイストは真面目に演技してるつもりなんだろうが、大根すぎた。
これは枯刃でなくてもイライラするかもしれない。
シュバルツガイスト:LP6200→LP4350
「……。
〔ウォルフ〕でも攻撃。」
「通す。
ぬあああああーー、痛すぎるー。」
シュバルツガイスト:LP4350→LP2250
「こりゃ……ヤバイっすかね。
残ってる〔ジェイン〕と〔ルミナス〕のダイレクトがくると負けるわ。」
「(ヌケヌケと言いやがる。
〔ルミナス〕は〔マジシャンズ・サークル〕の発動条件を満たす魔法使い族、モンスターを出されちまう。
このターンでの決着は無理だ。 だが……。)」
内心では計略を立てつつ、そ知らぬ顔で攻撃操作をデュエルディスクに加える枯刃。
アニメのように音声認識だけで攻撃、というのも技術的に不可能ではないのだが、
優先権やフェイズ変更の都合で逆に面倒になるので、アナログなキーボード操作となっている。
「〔ルミナス〕! ダイレクトアタック!」
「そいつだ! 伏せカード発動! 〔マジシャンズ・サークル〕!」
&html(<Table Border BorderColor="#b21162" Border="2"><Tr><Td>マジシャンズ・サークル</Td><Td>通常罠</Td></Tr><Td ColSpan="4">魔法使い族モンスターの攻撃宣言時に発動する事ができる。<BR>お互いのプレイヤーは、それぞれ自分のデッキから攻撃力2000以下の魔法使い族モンスター1体を表側攻撃表示で特殊召喚する。 </Td></Table>)
思わずニヤリ、の枯刃。
「バカが! どの魔法使い族を召喚しても所詮攻撃力2000以下。
〔ジェイン〕は自身の効果で攻撃力を増し、最大攻撃力は2100……敵じゃねエなっ!」
思い通りに事が進み、ストレスが収まった様子の枯刃。
「忘れてるみたいだから付け加えておこうッ!
そのカードの効果は俺も特殊召喚が許される……。
デッキから〔ライトロード・マジシャン ライラ〕を特殊召喚する。」
&html(<Table Border BorderColor="#cc7a28" Border="2"><Tr><Td>ライトロード・マジシャン ライラ</Td><Td>光属性</Td><Td>魔法使い族</Td><Td>レベル4</Td><Td>ATK1700</Td><Td>DEF200</Td></Tr><Td ColSpan="6">自分フィールド上に表側攻撃表示で存在するこのカードを表側守備表示に変更し、相手フィールド上の魔法または罠カード1枚を破壊する。<BR>この効果を発動した場合、次の自分のターン終了時までこのカードは表示形式を変更できない。<BR>このカードが自分フィールド上に表側表示で存在する限り、自分のエンドフェイズ毎に、自分のデッキの上からカードを3枚墓地に送る。</Td></Table>)
「ああ、分ってる。」
「あ?」
「……だから、俺は最強のモンスターを出す。
俺のデッキに眠る、最強のカードをなッ!」
まるでアニメの主人公のように力強い口調で断言するシュバルツガイスト。
こちらは先ほどのダメージの時の演技とは違い、中々サマになっている。
「ほおー…。
ならば、出してみろ。 最強のカードとやらを、な。」
「見よ、最強モンスター、〔レオ・ウィザァアアアアド〕ッ!」
レオ・ウィザード:デッキ→フィールド
ライトロード・マジシャン ライラ:デッキ→フィールド
一瞬、枯刃は自分も知らない新しいカードかと思った。
&html(<Table Border BorderColor="#ccb028" Border="2"><Tr><Td>レオ・ウィザード</Td><Td>地属性</Td><Td>魔法使い族</Td><Td>レベル5</Td><Td>ATK1350</Td><Td>DEF1200</Td></Tr><Td ColSpan="6">黒いマントをはおった魔術師。正体は言葉を話すシシ。</Td></Table>)
黒いマントからはみ出した獅子面、眠り足りないのか薄目で笑っている。
このカードゲームの創成期に作られたカードの1枚であり、しかも攻守の合計値が2550でレベル5のモンスターはこいつだけ。
“最弱のカード”というのは“最強のカード”と同じく定義付けが難しくはあるが、このカードはその候補として有力すぎるカードなのだ。
「な……な……ッ」
ストレスと言うのは不思議な物である。
収まった直後に些細な苛立ちを覚えると、リバウンドして数倍に跳ね上がったりもする。
「ナメてんのかァーッ!!
バッアじゃっ! ワアァーッってんだっかーッ!?」
怒りのあまりに何を言ってるのかがわからない、恐らくは罵倒しているんだろう。
「まだ俺のバトルフェイズは終わってねぇッ! しィねっ!
〔ジェイン〕で〔レオ・ウィザード〕を撃破し、〔ライラ〕の直接攻撃でトドメだァッ!」
「…ナメてるのはそちらさんだろ? 俺が最強モンスターだッつってんのに……侮って攻撃してよ。
〔レオ・ウィザード〕への攻撃宣言時に伏せカードを使う。」
シュバルツガイストの最初のターンに伏せられた、唯一枯刃が確認していないカード手を伸ばし、堂々と開く。
「トラップカード発動、〔ジャスティブレイク〕ッ!」
&html(<Table Border BorderColor="#b21162" Border="2"><Tr><Td>ジャスティブレイク</Td><Td>通常罠</Td></Tr><Td ColSpan="4">自分フィールド上に表側表示で存在する通常モンスターが攻撃宣言を受けた時に発動する事ができる。<BR>フィールド上に存在する表側攻撃表示の通常モンスター以外のモンスターを全て破壊する。 </Td></Table>)
レオ・ウィザードを基点にし、閃熱が広がる。
場を焼く、空を焦がす、大地を割る、枯刃のモンスターを打ち砕く。
「千尋熱波ッ! 燃え尽きろォぉおっ!」
ライトロード・パラディン ジェイン:破壊
ライトロード・ビースト ウォルフ:破壊
ライトロード・サモナー ルミナス:破壊
ライトロード・ウォリアー ガロス:破壊
ライトロード・マジシャン ライラ:破壊
「……い……ッ!?」
枯刃のフィールドを埋め尽くしていた5体のモンスターは塵も残さず、墓地に置かれた。
「い…イライラすんだよぉっ!
バカにしやがって……カードを1枚セット、ターンエンドだ!(手札3・伏せ1)」
「俺のターン!(手札5)
手札からレベル3チューナー、〔カオスエンドマスター〕を召喚して〔レオ・ウィザード〕とチューニング!
獅子の叫は風となり、大いなる宇宙を走り抜ける……出でよ、〔スターダスト・ドラゴン〕ッッ!」
スターダスト・ドラゴン:エクストラデッキ→フィールド
&html(<Table Border BorderColor="#d3e589" Border="2"><Tr><Td>スターダスト・ドラゴン</Td><Td>風属性</Td><Td>ドラゴン族</Td><Td>レベル8</Td><Td>ATK2500</Td><Td>DEF1200</Td></Tr><Td ColSpan="6">チューナー+チューナー以外のモンスター1体以上:「フィールド上のカードを破壊する効果」を持つ魔法・罠・効果モンスターの効果が発動した時、<BR>このカードをリリースする事でその発動を無効にし破壊する。<BR>この効果を適用したターンのエンドフェイズ時、この効果を発動するためにリリースされ墓地に存在するこのカードを自分フィールド上に特殊召喚する事ができる。</Td></Table>)
「な……っ!?」
「〔レオ・ウィザード〕は、特殊召喚しやすい低ステータスに、シンクロしやすい高レベル。
その特性こそ、最強のシンクロ素材たる所以!
〔スターダスト・ドラゴン〕の攻撃! シューティング・ソニック!」
星屑を撒き散らし、巨竜の一撃が枯刃を叩く。
もちろん枯刃はリアクションなんてしない。
枯刃:LP8000→LP5500
「カードを2枚セット、ターンエンド。(手札2・伏せ2)」
「(どうして……こうなった…!?
優勢だった、優勢すぎるほどだった。
モンスターを5体並べたて、勝てるデュエルだったはずだった……だった?)」
イライラの天才こと枯刃は自分の思考にまで、苛立ちを覚えた。
「……勝てるデュエルだった、って、まだ負けてねぇ……。
イラつく、ムカつく……ブチ切れっぞォラ~~~ーーーッッ!」
「ガンガン来ていいんですぜ? 遠慮は無用。」
許せない、ブッ倒す。
自身すら傷つけるほどの覚悟めいた怒りが、枯刃の中で渦巻きはじめた。
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&html(<table border="1" bgcolor="#D7F2F2" width="1200"><tr><td><font size="2"><center>)
&counter()
&html(<table border="1" bgcolor="#D7F2F2" width="1200"><tr><td><font size="2"><center>)
[[次へ進む。>http://www11.atwiki.jp/84gzatu/156.html]] [[シュバガイトップへ>http://www12.atwiki.jp/wahamuda84g/707.html]] [[小説置き場に戻る>http://www12.atwiki.jp/wahamuda84g/5.html]][[小説置き場に戻る>http://www12.atwiki.jp/wahamuda84g/5.html]]
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「枯刃さぁん、カウントダウン見たいんですけど…。」
汗とタバコの匂いが充満し、パソコンの起動音とタイピング音だけが鳴る手狭な部屋に、若いスタッフは独り言のように提案した。
「今は良いぞ。」
枯刃と呼ばれた男は、こけた頬骨、血色が悪い細長い手足…種族分けをしたらアンデット族・闇属性に指定されそうだ。
そんな外見とはピッタリなシャガレ声で、枯刃は若いスタッフの要望を簡潔に認めた。
「すいません、これ見ないと年末、って感じがしないんで…。」
若いスタッフはリモコンを探すが、年末の大掃除もしていないこの職場では一度埋まったリモコンを発掘することはほぼ不可能。
とりあえず3時間ぶりに立ち上がり、テレビの据付ボタンで操作し、カウントダウン中の音楽番組を探し出した
【――れでは、今年もあと30秒を残すまでとなりました!
……10! 9! 8! 7! 6! 5! 4! 3! 2! 1! ゼロ!
ア、ハッピーニューイヤァー! 1997年、あけましておめでとうございまぁーッ】
プツン、とそこで刃枯がリモコンでテレビを消した。
リモコンは埋まっていたのではなく、刃枯が使ったまま定位置に戻していなかったらしい。
「カウントダウンが見たいと言ったから見せた。 働け。」
1996年から1997年になっても、彼らの作業は変わらない。
おせち料理もなく、カップ麺の天ぷらソバで年を越した彼らの仕事はコナミの下請けでソリッドビジョンのプログラミングをしていた。
米国がプラズマ・チャフとして軍事開発した立体映像の技術が4年遅れで日本に流通し、『デュエルディスク』を完成、発売させた。
当たり前なのだが、デュエルディスクからは立体映像が出る。 出るものは作っているヤツがいることになる。
「おい、アイアン・ハーツ・ドラゴンのデータは誰が持ってる?
俺のデモン・アイズ・ドラゴン、そいつの上腕のデータが必要なんだが。」
二次元のイラスト1枚で命をすり減らす思いで製作するのがクリエイターである。
それを3次元……いや、動画なのでアイザック・アシモフに習って四次元と言うべきだろうか? 立体映像製作の過酷さは想像に難くない。
テンプレートや既存カードのビジョンを流用、色やサイズを変えて使うのは常套手段だった。
「え? 枯刃さん、デモン・アイズ・ドラゴンは俺の受け持ちですよ? もう作りました。」
言われ、枯刃は自分の作った自分の受け持ち分のカードリストを見て、アンデットっぽい顔が更に険しくなった。
「……俺の受け持ちカード、“デモン・アイズ・ドラゴン”じゃないな。
“デーモンズ・アイス・ドラゴン”だ。」
現在、デュエルモンスターズのコミックは、学童誌、少年誌、青年誌と三つの雑誌があり、テレビアニメも三つ。
それぞれで新しいカードがどんどん発表されている。
このスタジオ以外にもデュエルディスク用のソリッドビジョンを製作しているスタジオはあるが、主要モンスターはほとんどここで製作されている。
「……胴体まで作ったんだが。」
口調こそ平静だが、周りのスタッフは知っている。
枯刃のその仕草は、苛立ちをぶつける対象を探している時だ。
付け入る隙を与えたら憂さ晴らしの口撃を受け、受けた側がノック・アウトされてしまう。
「山本、お前の作ったデモン・アイズ・ドラゴンを見せてみろ。」
呼ばれた新人プログラマーは、青ざめながらも先ほど作ったデータを有線で枯刃の手元のパソコンに転送する。
「……腰のラインが酷いな、こんな物じゃ公開した途端に問い合わがくるぞ、『デモンアイスのデータがバグってます』ってよ。
うちの事務所を潰す気なのか? お前は?」
「…いいえ。」
確かにそのデータは、枯刃の作ったものに比べて立体感に欠け、見る角度によっては薄っぺらく見えてしまう。
しかしながらそれはミスではなく、新人プログラマーにとっては全霊を尽した表現であり、公開に堪えるレベルではある。
このスタジオのリーダーにして天才たる枯刃と比べては不憫以外の何者でもない。
「……枯刃さんが作った物と、替えてください。」
「は? 人任せか? それで一人前に給料を貰うつもりなのかお前は。 いつまで見習い気分なんだ?」
「すみません…。」
ほとんど野良犬に噛まれたような物である。
「俺の作ったデータを使わせてやる、直しておけ。」
苛立ちを撒き散らしつつ、枯刃はスタジオを出た。
&html(<font color="#ff0000">【弐】</font)
「……。」
スタジオ・カレバの代表取締役兼作業部長、&html(<ruby><rb>枯刃<rt>かれば)&html(<ruby><rb>猛<rt>たけし)は、自社がテナントを借りているビルの屋上でタバコの火で蛍を気取っていた。
財布も持たずに飛び出し、行ける場所もないし、行きたい場所もない。
眼下を見下ろせば真夜中だというのに朝と変わらない明るさと騒々しさで、年明けを祝っている。
デュエルディスクでハキハキとデュエルをしている子供も見える。 陽気な物だ、製作者がここで腐っているというのに。
「あァー…ーァあ」
イライラする。
自分が悪いのだ。 確認もせずにソリッドビジョンを作り出して。 部下は何も悪い事はしていなかった。
当り散らす必要も資格もない、それでも苛立ちが止まらない自分に自己嫌悪が止まらない、自己嫌悪がまた苛立ちを深める。
タバコを吸ってもスカっとはしなし、健康を軽視しているわけでもないが、それでも吸わずに居られない、そんな自分にやはり腹が立ち、イライラが募る。
「スカっとしねぇな……。」
「スカっとしたいんですか?」
一瞬、空耳かと思った。
この屋上は立ち入りは自由だが、低くもなければ高くもなく、狭くもなければ広くもない。
そんな屋上に、年の始めに来る人間が自分以外に居るとは信じられなかった……だが、振り返ってみればそこには声の主が立っていた。
「ウォッス。
あけましておめでとうございます、枯刃さん。」
「……おめでとう。」
枯刃の名前を相手は知っていたが、枯刃は相手に見覚えがない。
その男は学生なのか、前時代的な詰襟の学ランを着込み、何を思ったか左目に眼帯のようにネクタイを巻き付けている。
地上から昇ってきたネオンサインにしっかりと照らされた男の左右の腕には、1枚ずつデュエルディスクが握られている。
「俺の名前は……そう、シュバルツガイスト……黒い精神とでも名乗っておきましょうかねぇ。
スカっとしたいならどうです? 俺とデュエルでもしませんか?
新年一発目、初夢ならぬ初デュエルというわけです。」
見ず知らずの男だが、実際やることもない。 暇潰しにちょうどよかった。
「悪くないな……待ってろ、デッキを取ってくる。」
「いえいえ、枯刃さん。 あなたのデッキはここにありますよ。」
ス、っとシュバルツガイストが手渡したものは、真っ赤なペイントに枯刃が製作に携わったアニメキャラのストラップ。
間違いなく、それは枯刃愛用のデュエルディスクだった。
「……なんで持ってる?」
「今はそんなことはどうだっていいと思うんですがねぇ。
細かい事を気にすると、さらにイライラが止まりませんぜ?」
苛立った。
人をバカにし切った態度をしているシュバルツガイストに。
だが、それにムキになって問い詰めるのも枯刃のプライドが許さなかった。
「……デッキに細工はしてねぇだろうな?」
「カードを盗む気なら、話しかけたりしやしませんよ。」
「てめー……俺にスカっとしてほしいのか? それとも苛立ってほしいのか? どっちだ?」
「まあぶっちゃければ、ただデュエルがしたいだけでしてね。
楽しみやしょう。」
アニメや漫画、小説なんかではここで『決闘(デュエル)!!』と開戦宣言といくわけだが、正月とはいえ深夜12時……近所迷惑だ。
「それじゃあ、俺の先攻から行かせていただきやす。(手札6)
魔・罠ゾーンに1枚セット、終了です(手札5・伏せ1)。」
伏せ状態の立体映像が1つ出現しただけで、モンスターを召喚しないというのは退屈な絵面である。
これが派手な強力カードが飛び交うヒーロー・コミックスならば『攻撃を誘っている!?』とかなんとか思うところである。
しかしながら、現実ではモンスターを召喚しない理由といえば『手札に出せるモンスターが居ない』が大半を占め、シュバルツガイストも例外ではなかった。
「俺のターン(手札6)。
手札から〔ライトロード・ウォリアー ガロス〕を捨てて、〔ソーラー・エクスチェンジ〕を発動だ。」
&html(<Table Border BorderColor="#0f9926" Border="2"><Tr><Td>ソーラー・エクスチェンジ</Td><Td>通常魔法</Td></Tr><Td ColSpan="4">手札から「ライトロード」と名のついたモンスターカード1枚を捨てて発動する。<BR>自分のデッキからカードを2枚ドローし、その後デッキの上からカードを2枚墓地に送る。 </Td></Table>)
ライトロード・ウォリアー ガロス:手札→墓地へ。
その光に照らされ、周囲には鏡のような幕が周囲を包む。
中々に幻想的だが、それだけではなかった。
「(〔正統なる血統〕、〔痛み分け〕、〔ディメンション・マジック〕、〔召喚師のスキル〕、
……ああ、ありゃあ〔マジシャンズ・サークル〕だ。)」
作り出されたソリッドビジョンは、まさに鏡だった。
鏡は光の反射を繰り返し、ある角度から見るとデュエリストの背中からのような視点を得ることができる。
つまり、枯刃は手札交換だけでなく、1枚の発動でシュバルツガイストの手札を確認した。
「(よくあるブラックマジシャンデッキ、ってところか。 マンガ再現のファンデッカーか。)」
裁きの龍:デッキ→墓地へ。(ソーラー・エクスチェンジの効果)
増援:デッキ→墓地へ。(ソーラー・エクスチェンジの効果)
脅威がないことを確認し、退屈そうに枯刃は次のカードに手を掛ける。
「〔ライトロード・パラディン ジェイン〕を通常召喚し、何もないならバトルフェイズでダイレクトだが?」
&html(<Table Border BorderColor="#cc7a28" Border="2"><Tr><Td>ライトロード・パラディン ジェイン</Td><Td>光属性</Td><Td>戦士族</Td><Td>レベル4</Td><Td>ATK1800</Td><Td>DEF1200</Td></Tr><Td ColSpan="6">このカードは相手モンスターに攻撃する場合、ダメージステップの間攻撃力が300ポイントアップする。<BR>このカードが自分フィールド上に表側表示で存在する限り、自分のエンドフェイズ毎に、自分のデッキの上からカードを2枚墓地に送る。</Td></Table>)
「O・K。
伏せカードはもちろん、手札から発動する類のカードもありはしない。」
それは当然だった。 さっき枯刃が確認した時、シュバルツガイストの手札には使えもしない魔法カードばかりだった。
チェーンの確認が終るとジェインが飛び掛り、磨きぬかれた剣は銀光を引き、シュバルツガイストに一撃を叩き込む……が、所詮は立体映像。
大の大人が攻撃されたぐらいで『うわあ!』とか『ぐああ!』とか言うヤツなんて、アニメの声優以外に居はしない。
「ぐ、うわああああ~~。」
だが、シュバルツガイストはノリノリでリアクションを取っていた。
「バカにしてんのか?」
「いや、割とマジメっすよ?」
シュバルツガイスト:LP8000→LP6200
「エンドフェイズ、終了時に〔ジェイン〕の効果でデッキを削る。」
ライトロード・ビースト ウォルフ:デッキ→墓地へ。
オネスト:デッキ→墓地へ。
「……良いカードが落ちたぜ、〔ウォルフ〕の効果発動、特殊召喚だ。」
&html(<Table Border BorderColor="#cc7a28" Border="2"><Tr><Td>ライトロード・ビースト ウォルフ</Td><Td>光属性</Td><Td>獣戦士族</Td><Td>レベル4</Td><Td>ATK2100</Td><Td>DEF300</Td></Tr><Td ColSpan="6">このカードは通常召喚できない。このカードがデッキから墓地に送られた時、このカードを自分フィールド上に特殊召喚する。</Td></Table>)
ライトロード・ビースト ウォルフ:墓地→フィールド
「で、ターンエンド。(手札5・伏せ0)。」
「ドロー(手札6)……よっし、良いカードだ。
〔封印の黄金櫃〕を発動して、デッキから〔聖なるバリア-ミラーフォース-〕を除外する。」
&html(<Table Border BorderColor="#0f9926" Border="2"><Tr><Td>封印の黄金櫃</Td><Td>通常魔法</Td></Tr><Td ColSpan="4">自分のデッキからカードを1枚選択し、ゲームから除外する。<BR>発動後2回目の自分のスタンバイフェイズ時にそのカードを手札に加える。/Td></Table>)
聖なるバリア-ミラーフォース-:デッキ→ゲームから除外。
「さらに伏せカードをセット、終了。(手札4・伏せ2)」
先ほど確認した位置からすると、今伏せたのは〔マジシャンズ・サークル〕。
魔法使い族の攻撃宣言に誘発し、お互いにデッキから魔法使い族モンスターを召喚できる通常罠カード。
「(狙いは〔ブラマジガール〕、〔D・D・M〕、〔魔法の操り人形〕ってとこか。
さらに〔櫃〕で〔聖なるバリア〕を除外したってことは、あの伏せカードが〔聖なるバリア〕ってこともねぇ。
〔激流葬〕は禁止カードだし、安心して攻撃できるってものだぜ……ナメやがって……。)」
不正行為であるカード効果以外の手札の確認をした挙句、一方的な怒りを煮立たせる枯刃。
その苛立ちを乗せ、枯刃はカードをドローする。 これで枯刃の手札は6枚だ。
「……デッキがふざけてるだけじゃなく、モンスターも召喚しないとはな……ムカつくぜ。」
「ん? 俺のデッキがわかったんですかい? まだカードの1枚も表側で出してないんですがね?」
「……どうでもいいぜ。
〔ライトロード・サモナー ルミナス〕を通常召喚。」
&html(<Table Border BorderColor="#cc7a28" Border="2"><Tr><Td>ライトロード・サモナー ルミナス</Td><Td>光属性</Td><Td>魔法使い族</Td><Td>レベル3</Td><Td>ATK1000</Td><Td>DEF1000</Td></Tr><Td ColSpan="6">1ターンに1度、手札を1枚捨てる事で自分の墓地に存在するレベル4以下の「ライトロード」と名のついたモンスター1体を自分フィールド上に特殊召喚する。<BR>このカードが自分フィールド上に表側表示で存在する場合、自分のエンドフェイズ毎に、自分のデッキの上からカードを3枚墓地に送る。</Td></Table>)
「〔ルミナス〕の効果を発動、〔月の書〕を捨てて墓地から〔ガロス〕を特殊召喚するぜ。」
ライトロード・ウォリアー ガロス:墓地→フィールド
&html(<Table Border BorderColor="#cc7a28" Border="2"><Tr><Td>ライトロード・ウォリアー ガロス</Td><Td>光属性</Td><Td>戦士族</Td><Td>レベル4</Td><Td>ATK1850</Td><Td>DEF1300</Td></Tr><Td ColSpan="6">自分フィールド上に表側表示で存在する「ライトロード・ウォリアー ガロス」以外の「ライトロード」と名のついたモンスターの効果によって<BR>自分のデッキからカードが墓地に送られる度に、自分のデッキの上からカードを2枚墓地に送る。<BR>このカードの効果で墓地に送られた「ライトロード」と名のついたモンスター1体につき、自分のデッキからカードを1枚ドローする。</Td></Table>)
「バトルフェイズ、〔ガロス〕のダイレクトアタックだ。」
「あ、伏せカードは発動しないぜ。
……ぐうう・うわああ~~~~、痛ぇええ~~。」
シュバルツガイストは真面目に演技してるつもりなんだろうが、大根すぎた。
これは枯刃でなくてもイライラするかもしれない。
シュバルツガイスト:LP6200→LP4350
「……。
〔ウォルフ〕でも攻撃。」
「通す。
ぬあああああーー、痛すぎるー。」
シュバルツガイスト:LP4350→LP2250
「こりゃ……ヤバイっすかね。
残ってる〔ジェイン〕と〔ルミナス〕のダイレクトがくると負けるわ。」
「(ヌケヌケと言いやがる。
〔ルミナス〕は〔マジシャンズ・サークル〕の発動条件を満たす魔法使い族、モンスターを出されちまう。
このターンでの決着は無理だ。 だが……。)」
内心では計略を立てつつ、そ知らぬ顔で攻撃操作をデュエルディスクに加える枯刃。
アニメのように音声認識だけで攻撃、というのも技術的に不可能ではないのだが、
優先権やフェイズ変更の都合で逆に面倒になるので、アナログなキーボード操作となっている。
「〔ルミナス〕! ダイレクトアタック!」
「そいつだ! 伏せカード発動! 〔マジシャンズ・サークル〕!」
&html(<Table Border BorderColor="#b21162" Border="2"><Tr><Td>マジシャンズ・サークル</Td><Td>通常罠</Td></Tr><Td ColSpan="4">魔法使い族モンスターの攻撃宣言時に発動する事ができる。<BR>お互いのプレイヤーは、それぞれ自分のデッキから攻撃力2000以下の魔法使い族モンスター1体を表側攻撃表示で特殊召喚する。 </Td></Table>)
思わずニヤリ、の枯刃。
「バカが! どの魔法使い族を召喚しても所詮攻撃力2000以下。
〔ジェイン〕は自身の効果で攻撃力を増し、最大攻撃力は2100……敵じゃねエなっ!」
思い通りに事が進み、ストレスが収まった様子の枯刃。
「忘れてるみたいだから付け加えておこうッ!
そのカードの効果は俺も特殊召喚が許される……。
デッキから〔ライトロード・マジシャン ライラ〕を特殊召喚する。」
&html(<Table Border BorderColor="#cc7a28" Border="2"><Tr><Td>ライトロード・マジシャン ライラ</Td><Td>光属性</Td><Td>魔法使い族</Td><Td>レベル4</Td><Td>ATK1700</Td><Td>DEF200</Td></Tr><Td ColSpan="6">自分フィールド上に表側攻撃表示で存在するこのカードを表側守備表示に変更し、相手フィールド上の魔法または罠カード1枚を破壊する。<BR>この効果を発動した場合、次の自分のターン終了時までこのカードは表示形式を変更できない。<BR>このカードが自分フィールド上に表側表示で存在する限り、自分のエンドフェイズ毎に、自分のデッキの上からカードを3枚墓地に送る。</Td></Table>)
「ああ、分ってる。」
「あ?」
「……だから、俺は最強のモンスターを出す。
俺のデッキに眠る、最強のカードをなッ!」
まるでアニメの主人公のように力強い口調で断言するシュバルツガイスト。
こちらは先ほどのダメージの時の演技とは違い、中々サマになっている。
「ほおー…。
ならば、出してみろ。 最強のカードとやらを、な。」
「見よ、最強モンスター、〔レオ・ウィザァアアアアド〕ッ!」
レオ・ウィザード:デッキ→フィールド
ライトロード・マジシャン ライラ:デッキ→フィールド
一瞬、枯刃は自分も知らない新しいカードかと思った。
&html(<Table Border BorderColor="#ccb028" Border="2"><Tr><Td>レオ・ウィザード</Td><Td>地属性</Td><Td>魔法使い族</Td><Td>レベル5</Td><Td>ATK1350</Td><Td>DEF1200</Td></Tr><Td ColSpan="6">黒いマントをはおった魔術師。正体は言葉を話すシシ。</Td></Table>)
黒いマントからはみ出した獅子面、眠り足りないのか薄目で笑っている。
このカードゲームの創成期に作られたカードの1枚であり、しかも攻守の合計値が2550でレベル5のモンスターはこいつだけ。
“最弱のカード”というのは“最強のカード”と同じく定義付けが難しくはあるが、このカードはその候補として有力すぎるカードなのだ。
「な……な……ッ」
ストレスと言うのは不思議な物である。
収まった直後に些細な苛立ちを覚えると、リバウンドして数倍に跳ね上がったりもする。
「ナメてんのかァーッ!!
バッアじゃっ! ワアァーッってんだっかーッ!?」
怒りのあまりに何を言ってるのかがわからない、恐らくは罵倒しているんだろう。
「まだ俺のバトルフェイズは終わってねぇッ! しィねっ!
〔ジェイン〕で〔レオ・ウィザード〕を撃破し、〔ライラ〕の直接攻撃でトドメだァッ!」
「…ナメてるのはそちらさんだろ? 俺が最強モンスターだッつってんのに……侮って攻撃してよ。
〔レオ・ウィザード〕への攻撃宣言時に伏せカードを使う。」
シュバルツガイストの最初のターンに伏せられた、唯一枯刃が確認していないカード手を伸ばし、堂々と開く。
「トラップカード発動、〔ジャスティブレイク〕ッ!」
&html(<Table Border BorderColor="#b21162" Border="2"><Tr><Td>ジャスティブレイク</Td><Td>通常罠</Td></Tr><Td ColSpan="4">自分フィールド上に表側表示で存在する通常モンスターが攻撃宣言を受けた時に発動する事ができる。<BR>フィールド上に存在する表側攻撃表示の通常モンスター以外のモンスターを全て破壊する。 </Td></Table>)
レオ・ウィザードを基点にし、閃熱が広がる。
場を焼く、空を焦がす、大地を割る、枯刃のモンスターを打ち砕く。
「千尋熱波ッ! 燃え尽きろォぉおっ!」
ライトロード・パラディン ジェイン:破壊
ライトロード・ビースト ウォルフ:破壊
ライトロード・サモナー ルミナス:破壊
ライトロード・ウォリアー ガロス:破壊
ライトロード・マジシャン ライラ:破壊
「……い……ッ!?」
枯刃のフィールドを埋め尽くしていた5体のモンスターは塵も残さず、墓地に置かれた。
「い…イライラすんだよぉっ!
バカにしやがって……カードを1枚セット、ターンエンドだ!(手札3・伏せ1)」
「俺のターン!(手札5)
手札からレベル3チューナー、〔カオスエンドマスター〕を召喚して〔レオ・ウィザード〕とチューニング!
獅子の叫は風となり、大いなる宇宙を走り抜ける……出でよ、〔スターダスト・ドラゴン〕ッッ!」
スターダスト・ドラゴン:エクストラデッキ→フィールド
&html(<Table Border BorderColor="#d3e589" Border="2"><Tr><Td>スターダスト・ドラゴン</Td><Td>風属性</Td><Td>ドラゴン族</Td><Td>レベル8</Td><Td>ATK2500</Td><Td>DEF1200</Td></Tr><Td ColSpan="6">チューナー+チューナー以外のモンスター1体以上:<BR>「フィールド上のカードを破壊する効果」を持つ魔法・罠・効果モンスターの効果が発動した時、<BR>このカードをリリースする事でその発動を無効にし破壊する。<BR>この効果を適用したターンのエンドフェイズ時、この効果を発動するためにリリースされ墓地に存在するこのカードを自分フィールド上に特殊召喚する事ができる。</Td></Table>)
「な……っ!?」
「〔レオ・ウィザード〕は、特殊召喚しやすい低ステータスに、シンクロしやすい高レベル。
その特性こそ、最強のシンクロ素材たる所以!
〔スターダスト・ドラゴン〕の攻撃! シューティング・ソニック!」
星屑を撒き散らし、巨竜の一撃が枯刃を叩く。
もちろん枯刃はリアクションなんてしない。
枯刃:LP8000→LP5500
「カードを2枚セット、ターンエンド。(手札2・伏せ2)」
「(どうして……こうなった…!?
優勢だった、優勢すぎるほどだった。
モンスターを5体並べたて、勝てるデュエルだったはずだった……だった?)」
イライラの天才こと枯刃は自分の思考にまで、苛立ちを覚えた。
「……勝てるデュエルだった、って、まだ負けてねぇ……。
イラつく、ムカつく……ブチ切れっぞォラ~~~ーーーッッ!」
「ガンガン来ていいんですぜ? 遠慮は無用。」
許せない、ブッ倒す。
自身すら傷つけるほどの覚悟めいた怒りが、枯刃の中で渦巻きはじめた。
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