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遊義皇二十一話(前)(旧) - (2010/07/25 (日) 22:46:49) のソース

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&html(<font color="#ff0000">(作者視点)</font)

大阪のとあるキャンプ場、いつもならば親しい人間同士のバーベキューやカレー作りの音が聞こえてきそうな秋の夕暮れ。
だがしかし、今日に至っては何かが震えるような奇な音が幾重にも轟いていた。

その音源はいえば、ふたりの決闘者の周囲をグルっと取り囲んでいる十数名の山伏風の白装束を着た男女だ。
年齢こそバラバラだが、全員が同じ『聖耳法堂連合万歳』と書かれたハチマキを額に巻き、三味線を軽快に弾いている。


べんべらべんべかべんだべっん べんだらだったべんだらべっべん


一縷の狂いも無く、全く同じタイミングでエンドレスで演奏される音楽は、その中央に居る2人……、
現在対戦中のデュエリスト、ウォンビックと鵜殿 八兵衛に全く異なる影響を与え続けていた。

   「んん~、この音響、たまりまへんなぁ、耳が洗われるようですわ。 あんさんもそう思いますやろ?」

和服に身を包んだ決闘者、鵜殿 八兵衛は楽しそうに対戦相手、ウォンビックに問いかけたが、ウォンビックにそれに答える余裕は無い。

   「あ……う……がぁ……ッッ。」

   「ブラックマイン様ッ! ブラックマイン様ァぁっ!」

泣きじゃくるトガを横目に、身長240センチメートルの巨漢は方膝を大地につけ、その顔は苦痛の脂汗がじっとり浮かんでいる。

   「これぞぉぉぉぉ、」

   「我等、聖耳法堂連合が秘技。」

   「汚耳慈振陣っ!」

三味線を弾きながら器用に叫ぶ白装束たち。
だが、それにツッコミを入れる余裕はウォンビックにもトガにもない。


&html(<ruby><rb>汚耳<rt>おじ)・&html(<ruby><rb>慈振陣<rt>じしんじん)――、
聖耳法堂連合という耳掃除に狂った集団が編み出した、これまた狂った技だ。
この技自体は歴史的にはそう古い物ではなく、60年前にある耳掃除を愛する芸子が『汚れし耳は良き音によって清め、聖耳に至るべし。』という信念によって研究・開発し……、
―――と、始点から語ればとても冗長となるので省くが、つまるところ、この技は複数の三味線を同時に演奏することで特殊な音波を作り出す技である。
そしてその音波は耳カスが溜まった耳には凄まじい騒音に聞こえる、という技らしい。

常日頃多忙で、数年間耳掃除をやっていないウォンビックはこの技を直に受け、不秩序で混沌とした大音量のオーケストラ地獄に捉えられていた。
――むろん、騒音といってもただの音であり、耳を塞ぐとかすればなんの問題もないのだが………ウォンビックはゲーム開始から100ターン以上、耳を放置している。

   「&html(<font color="#00008b">ブラックマイン様、耳をふさいでくださいっ! 相手のプレイは私がジェスチャーで伝えますっ!</font)」

   「&html(<font color="#00008b">何度も言わせるな、トガ。</font)
    &html(<font color="#00008b">デュエル中、相手の言葉を聞き、その上で判断を下すのは当然のマナーだ、とな。</font)
    &html(<font color="#00008b">相手が音楽を聴いているというだけで、それを覆すことはできん。</font)」

   「&html(<font color="#00008b">何がマナーですかっ、敵はブラックマイン様を攻撃してるではないですかっ。</font)
    &html(<font color="#00008b">敵の狙いは明らかにブラックマイン様の妨害ですッ、現に……ブラックマイン様は……</font)」

言い難そうに言葉詰まるトガ。

   「&html(<font color="#00008b">自分でも信じられん。 まさか、この程度の音で……プレイングミスを連発するとはな。</font)」

ロック系列のデッキによるデュエルというのは、通常のデッキに比べてお互いの手札が増えやすいので取れる戦術の幅が増えていく。
故に、相手のプレイングから敵方の戦法の裏の裏まで慮る……つまり、観察・洞察・推察を行使する集中力が必要となる。
だがしかし、この騒音の中ではその集中力には波が生じ、3時間超の長期デュエルではプレイングミスも生じるという物。


鵜殿 八兵衛のターン

ウォンビック・ブラックマイン:ライフポイント:3200 手札6枚 デッキ枚数・42枚
モンスター:きつね火 綿毛トークン
魔法・罠:伏せカード 伏せカード

鵜殿 八兵衛:ライフポイント:6200 手札6枚 デッキ枚数・1373枚
モンスター:おジャマトークン おジャマトークン 第一時刻守 シネ 第五時刻守り シンタツ
魔法・罠:十二方天護寺 ヤクシデラ(フィールド) 伏せカード 伏せカード 伏せカード


&html(<Table Border BorderColor="#cc7a28" Border="2"><Tr><Td>きつね火</Td><Td>火属性</Td><Td>炎族</Td><Td>レベル2</Td><Td>ATK300</Td><Td>DEF200</Td></Tr><Td ColSpan="6">表側表示で存在するこのカードが戦闘で破壊されたターンのエンドフェイズ時、<BR>このカードを墓地から自分フィールド上に特殊召喚する。<BR>このカードは生け贄召喚のための生け贄にはできない。</Td></Table>)

&html(<Table Border BorderColor="#ccb028" Border="2"><Tr><Td>綿毛トークン</Td><Td>風属性</Td><Td>植物族</Td><Td>レベル1</Td><Td>ATK0</Td><Td>DEF0</Td></Tr><Td ColSpan="6">(トークン)</Td></Table>)

&html(<Table Border BorderColor="#cc7a28" Border="2"><Tr><Td>第一時刻守り シネ</Td><Td>光属性</Td><Td>獣族</Td><Td>レベル4</Td><Td>ATK2200</Td><Td>DEF200</Td></Tr><Td ColSpan="6">このカードは相手プレイヤーを直接攻撃でき、相手に与える戦闘ダメージは100になる。<BR>エンドフェイズ時、このカードをデッキに戻し、デッキから「時刻守り」と名の付くカードを2体までをデッキから特殊召喚する。<BR>その後、デッキをシャッフルする。(オリカ)</Td></Table>)

&html(<Table Border BorderColor="#cc7a28" Border="2"><Tr><Td>第五時刻守り シンタツ</Td><Td>炎属性</Td><Td>ドラゴン族</Td><Td>レベル4</Td><Td>ATK1400</Td><Td>DEF1000</Td></Tr><Td ColSpan="6">このカードは相手プレイヤーを直接攻撃でき、相手に与える戦闘ダメージは100になる。<BR>このカードが相手に戦闘ダメージを与えた時、このカードより攻撃力の低いモンスター1体を破壊する。<BR>このカードが相手にダメージを与えたエンドフェイズ時、このカードをデッキに戻し、デッキから「第六時刻守り シミ」を特殊召喚する。<BR>その後、デッキをシャッフルする。(オリカ)</Td></Table>)

&html(<Table Border BorderColor="#ccb028" Border="2"><Tr><Td>おジャマトークン</Td><Td>光属性</Td><Td>獣族</Td><Td>レベル2</Td><Td>ATK0</Td><Td>DEF1000</Td></Tr><Td ColSpan="6">おジャマトークンが破壊された時、コントローラーに300ポイントのダメージを与える。(トークン)</Td></Table>)

&html(<Table Border BorderColor="#0f9926" Border="2"><Tr><Td>十二方天護寺 ヤクシデラ</Td><Td>フィールド魔法</Td></Tr><Td ColSpan="4">このカードが存在する限り、お互いのメインフェイズ1をスキップする。<BR>相手ターンに1度だけ、お互いのプレイヤーは自分のフィールド上に存在する「時刻守」と名の付くモンスターをデッキに戻すことで、<BR>そのカードに記されているモンスターをデッキから特殊召喚する。 その後、デッキをシャッフルする。(オリカ) </Td></Table>)

&html(<Table Border BorderColor="#b21162" Border="2"><Tr><Td>リビングデッドの呼び声</Td><Td>永続罠</Td></Tr><Td ColSpan="4">自分の墓地からモンスター1体を選択し、攻撃表示で特殊召喚する。<BR>このカードがフィールド上に存在しなくなった時、そのモンスターを破壊する。<BR>そのモンスターが破壊された時このカードを破壊する。 </Td></Table>)

   「私のバトルフェイズどす。 〔シンタツ〕でダイレクトアタック。」

&html(<Table Border BorderColor="#cc7a28" Border="2"><Tr><Td>第五時刻守り シンタツ</Td><Td>炎属性</Td><Td>ドラゴン族</Td><Td>レベル4</Td><Td>ATK1400</Td><Td>DEF1000</Td></Tr><Td ColSpan="6">このカードは相手プレイヤーを直接攻撃でき、相手に与える戦闘ダメージは100になる。<BR>このカードが相手に戦闘ダメージを与えた時、このカードより攻撃力の低いモンスター1体を破壊する。<BR>このカードが相手にダメージを与えたエンドフェイズ時、このカードをデッキに戻し、デッキから「第六時刻守り シミ」を特殊召喚する。<BR>その後、デッキをシャッフルする。(オリカ)</Td></Table>)

竜頭の亜人モンスターは奇声をあげながら、壁モンスターを跳躍によって飛び越え、ウォンビックの腹にパンチを浴びせた。
だがしかし、いかに屈強なモンスターといえど、パンチ一発で身長240センチのウォンビックを弾き飛ばせるはずも無い。

ウォンビック:LP3200→3100

しかし、それでも竜頭のモンスターは不敵に笑って見せた。

   「〔シンタツ〕の効果発動どす。 この効果で私のフィールド上の〔おジャマトークン〕を一体駆除します。」

おじゃまトークン:フィールド→消滅(トークンは墓地に行かない)
鵜殿:LP6200→LP5900

   「続くは、〔シネ〕の直接攻撃……こっちも100ポイントどす。」

   「&html(<font color="#00008b">っちぃ……!</font)」

前歯の出たげっ歯類の獣人(おそらくモチーフはハツカネズミ)のモンスターも先ほどの竜頭のモンスターと同じく、ウォンビックに深い傷は与えられなかった。

ウォンビック:LP3100→3000

   「そして、ターン終了(手札6・伏せ3・発動中1)……ここで〔シンタツ〕の効果発動……デッキから次なる時守り、〔シミ〕を特殊召喚します。」

第五時刻守り シンタツ:フィールド→デッキへ
第六時刻守り シミ:デッキ→フィールドへ

&html(<Table Border BorderColor="#cc7a28" Border="2"><Tr><Td>第六時刻守り シミ</Td><Td>風属性</Td><Td>爬虫類族</Td><Td>レベル4</Td><Td>ATK1200</Td><Td>DEF1200</Td></Tr><Td ColSpan="6">このカードは相手プレイヤーを直接攻撃でき、相手に与える戦闘ダメージは100になる。<BR>このカードが相手に戦闘ダメージを与えた時、大蛇トークン(爬虫類族・地・星3・攻/守1500)を1体を特殊召喚する。<BR>このカードが相手にダメージを与えたエンドフェイズ時、このカードをデッキに戻し、デッキから「第七時刻守り ゴウマ」を特殊召喚する。<BR>その後、デッキをシャッフルする。(オリカ)</Td></Table>)

フィールドの竜頭のモンスターが消え去り、代わって舌をチョロチョロと出すヘビ顔のもモンスターが現れた。

これこそ、時刻守り十二支シリーズの真骨頂。
干支になぞらえた十二体のモンスターが次々と移り変わり、変則的な効果で攻める。
だがしかし、五の次は六であることから分かるとおり、あくまでも時間の順序は正確であり、12種全てを暗記していれば次の攻撃パターンも読める。
――鵜殿の切り札、〔第一時刻守り シネ〕さえなければ。

   「続き、〔シネ〕の効果発動……そうですね、〔第十二時刻守り ガイイ〕と〔第五時刻守り シンタツ〕を召喚します。」

ネズミ獣人と入れ違いに出てきたのは、さきほど消えたはずの竜頭のモンスターと、見覚えの無い人の上半身に、イノシシの頭と下半身を生やした二足歩行モンスター。

第十二時刻守り ガイイ:デッキ→フィールド
第五時刻守り シンタツ:デッキ→フィールド

&html(<Table Border BorderColor="#cc7a28" Border="2"><Tr><Td>第十二時刻守り ガイイ</Td><Td>風属性</Td><Td>獣族</Td><Td>レベル4</Td><Td>ATK100</Td><Td>DEF2400</Td></Tr><Td ColSpan="6">このカードは相手プレイヤーを直接攻撃でき、相手に与える戦闘ダメージは100になる。<BR>このカードが相手に戦闘ダメージを与えた時、相手フィールド上に存在するセットカードを全て破壊する。<BR>このカードが相手にダメージを与えたエンドフェイズ時、このカードをデッキに戻し、デッキから「第一時刻守り シネ」を特殊召喚する。<BR>その後、デッキをシャッフルする。(オリカ)</Td></Table>)

時間は順序どおりにしか動かない、だがしかし、全ての数字の祖たる『1』だけは例外で、他の数字を2つまで呼ぶことができる。
ウォンビックは、先ほどからこのシネから繰り出される多種多様な11種のモンスター全てに対策を練らなければならず、それが騒音と相まって強い精神的負荷=ストレスとなっていた。

   「&html(<font color="#00008b">俺のターン、ドロー。(手札7)……</font)」

   「ここで〔十二方天護寺 ヤクシデラ〕の効果発動……ウォンビックはんのメインフェイズ1はスキップや。」

&html(<Table Border BorderColor="#0f9926" Border="2"><Tr><Td>十二方天護寺 ヤクシデラ</Td><Td>フィールド魔法</Td></Tr><Td ColSpan="4">このカードが存在する限り、お互いのメインフェイズ1をスキップする。<BR>相手ターンに1度だけ、お互いのプレイヤーは自分のフィールド上に存在する「時刻守」と名の付くモンスターをデッキに戻すことで、<BR>そのカードに記されているモンスターをデッキから特殊召喚する。 その後、デッキをシャッフルする。(オリカ) </Td></Table>)

そして、そこに追い討ちをかけるフィールド魔法、ヤクシデラ。
ソリッドビジョンによって生まれたその姿は普通の古寺といった風なのだが、
その実、メインフェイズ1を封じらるという効果があり、メインフェイズ1でモンスターを召喚してバトルフェズで攻撃する、というデュエルモンスターズの王道パターンを破壊する。
――まあ、それはロックタイプであるウォンビックにはさほど痛手にはならないが、もうひとつの効果がウォンビックにとって難渋だった。

   「&html(<font color="#00008b">俺は手札から、〔ライトニング・ボルテックス〕を発動する。</font)」

&html(<Table Border BorderColor="#0f9926" Border="2"><Tr><Td>ライトニング・ボルテックス</Td><Td>通常魔法</Td></Tr><Td ColSpan="4">手札を1枚捨てる。<BR>相手フィールド上に表側表示で存在するモンスターを全て破壊する。 </Td></Table>)

おジャマ・グリーン:手札→墓地(ライトニング・ボルテックスのコスト)

   「&html(<font color="#00008b">って、あ、ダメ! ブラックマイン様!</font)」

発動はもう終わっている。 時既に遅し。

   「ブラックマインはん、〔ヤクシデラ〕の効果発動や。
    〔第六時刻守り シミ〕をデッキに戻して、魔法無効化能力のある〔第七時刻守り ゴウマ〕を特殊召喚。」

ヘビ顔のモンスターは、古寺に置いてあったに賽銭箱に飛び込み、寺の中からケンタウロスのように下半身が馬になったチョンマゲを結ったモンスターが出現する。

第六時刻守り シミ:フィールド→デッキ
第七時刻守り ゴウマ:デッキ→フィールド

&html(<Table Border BorderColor="#cc7a28" Border="2"><Tr><Td>第七時刻守り ゴウマ</Td><Td>光属性</Td><Td>獣戦士族</Td><Td>レベル4</Td><Td>ATK1000</Td><Td>DEF1400</Td></Tr><Td ColSpan="6">このカードは相手プレイヤーを直接攻撃でき、相手に与える戦闘ダメージは100になる。<BR>このカードがフィールドに存在する限り、フィールド上の「時刻守り」と名の付くカードは魔法カードの効果を受けない。<BR>このカードが相手にダメージを与えたエンドフェイズ時、このカードをデッキに戻し、デッキから「第八時刻守り ミヒツジ」を特殊召喚する。<BR>その後、デッキをシャッフルする。(オリカ)</Td></Table>)

表れた和製ケンタウロスは、同胞たちに降り注ぐ電撃を刀で掃い、雷撃を受けたのはおジャマトークンだけだった。
相手ターンでも時刻守りへを入れ替えて相手の攻撃を的確にガードする、これが鵜殿の時刻守りロックだ。

おじゃまトークン:フィールド→消滅
鵜殿:LP5900→LP5600

   「記憶が曖昧なようですなぁ、ブラックマインはん?
    魔法を無効にする〔ゴウマ〕は午だから子・丑・寅・卯・辰・巳・午で7番め。
    6番の〔シミ〕の次やから、ヤクシデラで出せるやろ?」

   「&html(<font color="#00008b">カードを1枚セットして、ターン、終了。(手札4・伏せ3)</font)」

取り合わず、そのまま終了宣言をするウォンビック。 その声と表情には疲労と焦燥がビッシリと詰まっている。

   「私のターン(手札7)、〔第七時刻守り ゴウマ〕〔第十二時刻守り ガイイ〕〔第五時刻守り シンタツ〕でダイレクトアタックどすぇ。」

   「&html(<font color="#00008b">ぐ、づぉっ!</font)」

ウォンビック:LP3100→LP3000→LP2900→LP2800

たった100ポイントに過ぎないダメージだが、それでも80発叩き込めれば8000削りきれる。
ロック同士でデッキ切れを待つという気長なデュエルでは、そのダメージでも十二分に致命傷になりうる。
すなわち、ウォンビックはデッキ切れとライフポイント、共に追い詰められていた。

   「1枚セットしてターン、終了どす(手札6・伏せ4)!」

ターン終了宣言と同時に、ゴウマ、ガイイ、シンタツはそれぞれ、次の数字へと変化する。

第五時刻守り シンタツ:フィールド→デッキ
第七時刻守り ゴウマ:フィールド→デッキ
第十二時刻守り ガイイ:フィールド→デッキ

第六時刻守り シミ:デッキ→フィールド
第八時刻守り ミヒツジ:デッキ→フィールド
第一時刻守り シネ:デッキ→フィールド

&html(<Table Border BorderColor="#cc7a28" Border="2"><Tr><Td>第六時刻守り シミ</Td><Td>風属性</Td><Td>爬虫類族</Td><Td>レベル4</Td><Td>ATK1200</Td><Td>DEF1200</Td></Tr><Td ColSpan="6">このカードは相手プレイヤーを直接攻撃でき、相手に与える戦闘ダメージは100になる。<BR>このカードが相手に戦闘ダメージを与えた時、大蛇トークン(爬虫類族・地・星3・攻/守1500)を1体を特殊召喚する。<BR>このカードが相手にダメージを与えたエンドフェイズ時、このカードをデッキに戻し、デッキから「第七時刻守り ゴウマ」を特殊召喚する。<BR>その後、デッキをシャッフルする。(オリカ)</Td></Table>)

&html(<Table Border BorderColor="#cc7a28" Border="2"><Tr><Td>第八時刻守り ミヒツジ</Td><Td>闇属性</Td><Td>獣族</Td><Td>レベル4</Td><Td>ATK800</Td><Td>DEF1600</Td></Tr><Td ColSpan="6">このカードは相手プレイヤーを直接攻撃でき、相手に与える戦闘ダメージは100になる。<BR>このカードが相手に戦闘ダメージを与えた時、墓地に存在する「時刻守り」と名の付く全てのカードをデッキに戻す。<BR>このカードが相手にダメージを与えたエンドフェイズ時、このカードをデッキに戻し、デッキから「第九時刻守り シンサル」を特殊召喚する。<BR>その後、デッキをシャッフルする。(オリカ)</Td></Table>)

&html(<Table Border BorderColor="#cc7a28" Border="2"><Tr><Td>第一時刻守り シネ</Td><Td>光属性</Td><Td>獣族</Td><Td>レベル4</Td><Td>ATK2200</Td><Td>DEF200</Td></Tr><Td ColSpan="6">このカードは相手プレイヤーを直接攻撃でき、相手に与える戦闘ダメージは100になる。<BR>エンドフェイズ時、このカードをデッキに戻し、デッキから「時刻守り」と名の付くカードを2体までをデッキから特殊召喚する。<BR>その後、デッキをシャッフルする。(オリカ)</Td></Table>)

   「&html(<font color="#00008b">俺のターン……(手札5) 伏せカードの〔レベル制限B地区〕を発動する。</font)」

&html(<Table Border BorderColor="#0f9926" Border="2"><Tr><Td>レベル制限B地区</Td><Td>永続魔法</Td></Tr><Td ColSpan="4">レベル4以上のモンスターは守備表示に変更される。</Td></Table>)

ウォンビックは、このターンにドローした防御系のカードを無防備に発動したが……それを許可する鵜殿ではない。

   「伏せカード発動、〔ツイスター〕!
    それにチェーンしおして〔ゴブリンのやりくり上手〕、ついで〔重なる不幸〕ぉっ、
    トドメに〔ツイスター〕・〔やりくり〕・〔重なる不幸〕の3枚を墓地に送って〔非常食〕やっ!」

&html(<Table Border BorderColor="#0f9926" Border="2"><Tr><Td>ツイスター</Td><Td>速攻魔法</Td></Tr><Td ColSpan="4">500ライフポイントを払う。<BR>フィールド上に存在する表側表示の魔法または罠カード1枚を破壊する。 </Td></Table>)

&html(<Table Border BorderColor="#b21162" Border="2"><Tr><Td>ゴブリンのやりくり上手</Td><Td>通常罠</Td></Tr><Td ColSpan="4">自分の墓地に存在する「ゴブリンのやりくり上手」の枚数+1枚をデッキからドローし、<BR>手札からカードを1枚選択してデッキの一番下に戻す。 </Td></Table>)

&html(<Table Border BorderColor="#b21162" Border="2"><Tr><Td>重なる不幸</Td><Td>通常罠</Td></Tr><Td ColSpan="4">相手のデッキの一番上からこのカードの発動時に積まれているチェーン数×2枚を墓地に送る。<BR>同一チェーン上に複数回同名カードの効果が発動されている場合、このカードは発動できない。 (製作協力:KOBチャット)</Td></Table>)

鵜殿:LP5900→LP5400(ツイスターのコスト)

チェーンブロック
チェーン5:非常食
チェーン4:重なる不幸
チェーン3:ゴブリンのやりくり上手
チェーン2:ツイスター
チェーン1:レベル制限B地区
※チェーンは後に発動した(=上から順に)処理する。

   「〔非常食〕で3枚墓地に送って3000回復、〔重なる不幸〕で6枚デッキ破壊、〔やりくり上手〕で手札調整。
    〔ツイスター〕で〔レベル制限B地区〕を破壊……ブラックマインはん、無駄に終わってもうたなぁ。」

鵜殿:LP5400→LP8400
ウォンビックデッキ:6枚墓地へ。
鵜殿:手札6→手札8→手札7(ゴブリンのやりくり上手の効果)
レベル制限B地区:フィールド→破壊、墓地へ。

   「&html(<font color="#00008b">……やっと、〔非常食〕と〔ツイスター〕を使ったか、それを待っていた。</font)」

   「………何ていうた、今?」

英語は通じていないが、ウォンビックの不敵な笑みを見れば、誰だって聞きかえす。

   「&html(<font color="#00008b">伏せカード、〔融合〕を発動する。</font)
    &html(<font color="#00008b">手札の〔おジャマ・バイオレッド〕と〔おジャマ・グリーン〕を融合し、融合デッキから〔おジャマ・トラップマスター〕を召喚したい。</font)」

&html(<Table Border BorderColor="#0f9926" Border="2"><Tr><Td>融合</Td><Td>通常魔法</Td></Tr><Td ColSpan="4">決められたモンスターとモンスターを融合させる。</Td></Table>)

&html(<Table Border BorderColor="#6b23b2" Border="2"><Tr><Td>トラップ・おジャマスター</Td><Td>光属性</Td><Td>獣族</Td><Td>レベル6</Td><Td>ATK0</Td><Td>DEF3000</Td></Tr><Td ColSpan="6">「おジャマ・バイオレッド」+「おジャマ・グリーン」<BR>1ターンに1度だけ、手札1枚をデッキの1番下に戻すことで、墓地に存在する罠カード1枚を手札に加えることができる。</Table>)

現れたのは、ジャガイモのようにデコボコとした顔面に黒いマントを着たモンスター。
ロック使いということからおジャマ系のカードを使うというのは理解できるが、『不動巨人:ウォンビックが融合を使う』なんて情報は初耳だ。

   「あんさん、なしてでロックデッキで、融合なんてコンボを狙ってはるの!?」

ロックデッキというのは、必然的に長期戦となり、消耗戦となることも多く、複数のカードを揃えるコンボカードを組み込むことは敬遠される。
そして、ウォンビックはデッキ枚数が多いのでコンボカードが手札に揃う確率も低いので、入れるはずが無いのだ。
このデッキタイプの変化は、部下であるトガですら初見だった。

   「&html(<font color="#00008b">ブラックマイン様……いつ〔融合〕なんて入れたんですか?</font)」

トガは、戦術の変化に戸惑いを隠せなかった。
昨日、二封気と決闘した時点では融合なんて入ってなかったし、ウォンビックはデッキ枚数ゆえにデッキ調整もそうちょくちょくできるわけでもない。

   「&html(<font color="#00008b">ニ封気が楽しそうに融合を使っていたんでな、俺も久しぶりに使いたくなっただけだ。</font)」

   「&html(<font color="#00008b">久しぶり……?</font)」

   「&html(<font color="#00008b">融合おジャマはレアハンターをやる前に使っていた戦術でな。</font)
    &html(<font color="#00008b">デッキレシピも頭に入っているし、直すだけならば30分もあれば直せる。</font)」

トガにとってはウォンビックが融合を使っていたなんて初耳だし、そもそも『使いたくなった』という理由でカードを使うことも無かった。

   「&html(<font color="#00008b">……俺は〔トラップ・おジャマスター〕の効果で、俺はこのターンのドローをデッキに戻し、〔覇者の一括〕を手札に戻す!</font)」

おジャマ・イエロー:ウォンビック手札→デッキ
覇者の一括:墓地→ウォンビックの手札

そして、これは初見ではなく、強敵との戦いごとにそうだったが、ウォンビックは実に楽しそうにデュエルしていた。
――しかし、トガはウォンビックとはテストデュエルを幾度となくしてきたが、彼をここまで熱くさせるほどのデュエルはできたことが無い。
デュエリストを階級付ける『星(レベル)』、 星5のトガと星6の鵜殿には雲泥の差があるのは仕方ないことではあるのだが……それでも無性に、トガは自分の実力が腹立たしかった。

   「&html(<font color="#00008b">カードを1枚セットし、ターン終了だ。(手札2・伏せ1)</font)」

   「私のターン、ドローどす…ッ(手札7)」

   「&html(<font color="#00008b">俺はお前のスタンバイフェイズで〔覇者の一括〕を発動し、お前のバトルフェイズをスキップする。</font)」

&html(<Table Border BorderColor="#b21162" Border="2"><Tr><Td>覇者の一括</Td><Td>通常罠</Td></Tr><Td ColSpan="4">相手スタンバイフェイズで発動可能。<BR>発動ターン相手はバトルフェイズを行う事ができない。</Td></Table>)

鵜殿:バトルフェイズスキップ

   「&html(<font color="#00008b">デュエルモンスターズのルールでは、バトルフェイズが行われない場合、同時にメインフェイズ2もスキップされる。</font)
    &html(<font color="#00008b">このターン、お前ができるのはドローフェイズ、スタンバイフェイズ、エンドフェイズだけだ。</font)」

メインフェイズはその名の通り、ゲーム展開の基盤を担うフェイズである。
本来はメインフェイズ2はバトルフェイズのあとにカードを出したりする補助的なフェイズだが、今は鵜殿自身の〔ヤクシデラ〕によってメインフェイズ1は封印されている。
そのため、鵜殿は結果的に2度のメインフェイズを共に封じられれ、打つべき手は存在していなかった。

   「た、ターン終了どすえ。(手札7・伏せ0)」

   「&html(<font color="#00008b">俺のターン、ドロー(手札3)。</font)
    &html(<font color="#00008b">このターンのドローカードをコストにして、〔トラップ・おジャマスター〕の効果を発動。</font)
    &html(<font color="#00008b">〔覇者の一括〕を手札に加え、リバースカードを1枚セット、ターン終了だ。(手札2・伏せ2)</font)」

魔力転送:ウォンビック手札→デッキ
覇者の一括:墓地→ウォンビックの手札

   「私のターン(手札8)……スタンバイフェイズどす。」

鵜殿が行うフェイズ確認を、ウォンビックは無造作に伏せカードを発動した。

   「&html(<font color="#00008b">〔覇者の一括〕、だ。</font)」

鵜殿:バトルフェイズスキップ

フィールドでは1ターン前と同じ光景が再現されていた。

   「む……無限ループじゃないか……!?」

鵜殿の信者の一人が、そう口走った。

ウォンビックは義務として、毎ターンドローするので、トラップ・おジャマスターのコストが尽きることはありえない。
そのため覇者の一括は何回でも手札に戻すことができるので、鵜殿のメインフェイズ1・2及びバトルフェイズはスキップされ続ける。
そのため鵜殿のターンは、ドローフェイズにドローし、エンドフェイズに手札を調整するしかすることがない……つまるところ、



&html(<font size="6">鵜殿のデッキは減っていく!</font>)



一方のウォンビックはトラップ・おジャマスターのコストとして、1枚ドローすると同時にカード1枚をデッキに戻しているので、



&html(<font size="8">ウォンビックのデッキは減らない!</font>)



鵜殿のデッキが何枚残っているかは関係ない!
ウォンビックの消費は0である以上、僅かでも消費する鵜殿のほうが先にデッキが尽きるのは究極的に当然。
――そう、このコンボは相手だけが消耗し、自分は永遠に消耗しない、真の意味での無限コンボなのだ!

   「&html(<font color="#00008b">フンコロガシが己が排泄したフンをまた己のエネルギーにするように俺は消耗しない。</font)
    &html(<font color="#00008b">故にこの技、その名をスカラベ・ロックと名付けた。</font)」

名付けた、って、お前が発案のコンボなのか、ウォンビック。

   「負けるのか……? 姫様が……!?」

   「んな……!?」

ウォンビックを苦しめていた三味線は何時の間にか止んだ。
その静寂は、まるで世界がウォンビックの勝利を認めたかのようでもある。

   「まだまだ! 私のデッキには、まだ〔ツイスター〕・〔サイクロン〕が1枚ずつ眠っとりやす!
    メインフェイズがスキップされても、私の〔十二方天護寺 ヤクシデラ〕を破壊すれば、ロックは崩壊どすえ!」

   「メインフェイズもスキップされるから、魔法カードは使えないと思うけど?」

   「あくまでもスキップされ取るんわ、メインフェイズ1・2とバトルフェイズ。
    速攻魔法の〔非常食〕や〔ツイスター〕なら、スタンバイフェイズやドローフェイズで発動できるで?」

&html(<Table Border BorderColor="#0f9926" Border="2"><Tr><Td>ツイスター</Td><Td>速攻魔法</Td></Tr><Td ColSpan="4">500ライフポイントを払う。<BR>フィールド上に存在する表側表示の魔法または罠カード1枚を破壊する。 </Td></Table>)

&html(<Table Border BorderColor="#0f9926" Border="2"><Tr><Td>サイクロン</Td><Td>速攻魔法</Td></Tr><Td ColSpan="4">フィールド上に存在する魔法または罠カード1枚を破壊する。 </Td></Table>)

普通ならばデッキにここまで対抗カードがあるわけもないのだが、そこは流石の1500枚デッキ。
既に鵜殿はツイスターをこのゲーム中に2枚使っているのだが、汎用性の高い魔法・罠の除去ツールをフル装備していたらしい。

   「&html(<font color="#00008b">……ほお。</font)」

   「姫さん、あんた、××××だわ。」

   「……何?」

トガは何時の間にか余裕を取り戻し、腰に両拳を当て、ふんぞり返っている。

   「あんたのデッキはまだ1300枚もあるカードの中から2枚だけしかないカードを引けるわけ無いでしょ?」

   「ほ、ほ、確かに、引くまでに20~30ターン掛かるかもしれへん、
    せやけど、それでもブラックマインはんのデッキよりは多くの枚数を残せる自信はありおすえ!」

はあ、とため息をひとつ吐くトガ。

   「あのねぇ? ブラックマイン様のデッキにあと何枚の魔法カードを無効にするカードがあると思ってるの?」

……あ。

   「ブラックマイン様のデッキは残り40枚で、魔法を無効にするカードは2枚以上確実に有る。
    そのカードを引いたらそれを伏せて、別のカードをデッキに戻して〔トラップ・おジャマスター〕の効果を使えばいい。
    むしろ、今伏せてあるカードが魔法無効カードである可能性も高い……あんたがまだ勝てる気だったら、よっぽど脳味噌が×××ってるとしか思えないわ。」


   「それでも……それでも、私は諦めへん! なんとしてでも……ブラックマインはんの耳は、私が頂きおす! 手札を6枚に調整して終了!(手札6)」

諦めず、真っ直ぐな瞳をウォンビックの耳へと向ける鵜殿。

   「&html(<font color="#00008b">ドロー(手札・2)、〔トラップ・おジャマスター〕の効果でカードで〔覇者の一括〕をサーチ。</font)
    &html(<font color="#00008b">そしてカードをセット、終了だ。(手札2・伏せ2)</font)」

おジャマ・ブラック:ウォンビック手札→デッキ
覇者の一括:墓地→ウォンビックの手札

   「私のターンや、ドロー(手札7)! ……そうや、これがあったんや! 逆転や! ブラックマインはん!
    魔法カード発動! 〔非常食〕! 発動した瞬間、コストとして〔十二方天護寺 ヤクシデラ〕を墓地に送るで!」

十二方天護寺 ヤクシデラ:フィールド→墓地へ

絶望と希望は、中国の陰陽(インヤン)のように、異なる物でありながら片方だけでは存在し得ない。
特にデュエルでは、ひとりが絶望を捨てることができれば、その相手がその絶望を拾わなければならない。

   「……××××! 〔ヤクシデラ〕が墓地にッ!」

   「&html(<font color="#00008b">………伏せカード発動、手札の〔おジャマッド〕を捨て、〔マジック・ジャマー〕だ。</font)」

&html(<Table Border BorderColor="#0f9926" Border="2"><Tr><Td>非常食</Td><Td>速攻魔法</Td></Tr><Td ColSpan="4">このカードを除く自分フィールド上の魔法または罠カードを墓地へ送る。<BR>墓地へ送ったカード1枚につき、自分は1000ライフポイント回復する。</Td></Table>)

&html(<Table Border BorderColor="#b21162" Border="2"><Tr><Td>マジック・ジャマー</Td><Td>カウンター罠</Td></Tr><Td ColSpan="4">手札を1枚捨てる。<BR>魔法カードの発動を無効にし、それを破壊する。 </Td></Table>)

   「無駄どすえ! ブラックマインはん!
    このカードは発動した瞬間、コストとしてカードを墓地に送りおす!
    例えば、〔死者への手向け〕の発動が無効にされたとしても、捨てた手札コストが戻らないのと同じで、
    効果が無効にされただけでは、墓地に送った〔ヤクシデラ〕は戻らないぃ!」

これは当然のルールであり、マジック・ジャマーで無効にできるのは、非常食のライフ回復効果だけである。


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