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遊義皇第15話

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第一条 バイクの停止はそのままサレンダーとなる。
第二条 チェックポイントを先に通過したプレイヤーは、5秒以内に対戦相手がチェックポイントを通過できない場合、カードを1枚ドローする。
このドローはドローフェイズのドローと同じく、効果とは扱われない。
第三条 ゴールまで行っても決着が着かない場合、ライフポイントの多いプレイヤーの勝利。
第四条 ロールウィッツのライフが減った場合、その数値に応じて〔闇〕のビジョンが適応される。
ライフが50ポイント減少するごとに1%ずつ〔闇〕が増し、50ポイント回復するたびに1パーセント薄れる。


   「…あぁー…普通の決着の倍率、こんない低いのかよ…。」


クロックは、トライクバイクに取り付けられた羅列文章の中から、最も笑えないポイントを発見した。
賭けデュエルでは、“どちらが勝つか”以外に“どんな決着をするか”も賭けの対象となる。
ライフ切れ、デッキ切れ、特殊勝利、サレンダー……そしてコースアウト。
倍率から推察すると、賭けている人間の大多数がコースアウトで決着する、と予想している。


   「俺も賭けるならコースアウトだけど、な。
    俺たちはともかく、ロールウィッツは〔闇〕で目隠しされた状態で走る。
    …何を考えてるんだよ、あいつは…。」


クロックは刃咲の心境を察していた。
オセロ村には決して存在しなかった異星人的に考え方の異なるロールウィッツ、想像すらできない思考法への恐怖。


   「あぁー…蕎祐、男には命をオモチャにしたくなる時期、ってのがあんだよ。」


   「いきなりなんだ? 意味がわからねぇ…ダメ大人?」


   「あぁー、なんつったらいいんだろうなァー…。
    チョロQに飽きてミニ四駆をやって、それも飽きると本物のフェラーリが欲しくなる。
    それでフェラーリを持ったら、そのあとはスペースシャトルが欲しくなるっつーか。
    そんな感じで…あぁー…金や他人で遊び飽きたら、もう男には命で遊ぶしか残ってないんだよ。」


   「やっぱり意味が分からねエよ、もっと纏めろ。」


本当は分かっていた。
分かっていたが、なぜだか分かりたくなかった。


   「あぁー…纏めるなら、ああいうバカを理解できるのは同じバカだけ。
    蕎祐みてぇに頭の良いヤツじゃ考えてもわかんねぇから、考えるだけ無駄ってこった。」


   「…お前は分かるのか? クロック?」


   「あぁー…俺も二封気に会うまで“命賭け症候群”だったからな。
    二封気に命を賭けるより面白い賭ける物を貰った…なんだか教えて欲しいか?
    ヒント1は…あぁー…見えるんだけど見えないもの。 ヒント2はちょっと青臭い!」


話が一瞬で脱線した。
こういうところがダメ大人と言われる部分だとクロック自身は理解していない。


   「それが友情ってオチじゃないなら聞きてぇな。」


冷ややかな視線とセットで投げつけられた言葉に、クロックは明後日の方を向いた。


   「…あぁー、アレだな、他人の口から言われると…ちょっと…あぁー…アレだ。」


   「恥ずかしがるなら最初から振るな。 そういう話。」


   「あぁー…とにかくだ、ロールウィッツは自分の命で遊びたいだけのバカだ。
    バカとのデュエルをビビることはねぇ。
    適当にやって、あぁー…なんだったらサレンダーしたっていい。 気軽にやれ。」


   「最初からそういえよ。
    ……長いんだよ話が。」


適当に話しているだけのようだったが、刃咲の恐怖は確実に軽減されていた。





第15話 バカVSお利巧さん





   【ベットタイム終了!
    下馬評どおり、一番人気は『刃咲・ジュフ組のライフ切れ負け』
    世界初のバイクに乗りながらのデュエル、ライディング・デュエル!
    間もなくスタートです!】


ヘルメットを確認し、厳重に座るクロックと刃咲だが、ロールウィッツにはさらに一手間することがあった。


   「あぁー…なに着けてんだ? お前?」


   「バッカがぁ、これはなぁ、マントっつーんだ! 知らねぇのかァッ?」


艶があり、風にたなびく黒いマント。
ホラー映画で吸血伯爵が着けていてもおかしくない高級品…なのだろうが、ボロボロで穴まで空いている。


   「それは分かってる。 クロックが言いたいのはそれを付けたまま走る気か、ってことだろ。」


   「当然だ!」


   「あぁー、それ、タイヤに巻き込まれたら死ぬぞ、あんた。」


   「このウェンディエゴ様がミスるか、バァッカ!
    マントは常に靡き、風になる! 俺がスピードを落とさない限り!」


中途半端な減速はしない、という彼なりのパフォーマンスらしい。
放送用のデュエルとは、そこまでリスクを上げる必要があるのだろうか。


   【実況はこの俺、エビル大滝だぁっ!
    解説には刃咲のダチ、倉塔福助を呼んで有るぜ!】


   【よろしくお願いします。
    今回は勉強させていただきます。】


   【無駄に丁寧だなッ!
    俺たちは実況車で両チームを後方から映していくぜ!
    それじゃ、デュエルスタートッ!】


モニターに『先攻:刃咲&ジュフ』の文字が表示される。
先攻が決まると同時に、カードを5枚引く。


   『デュエルッ!』


合言葉に続き、アクセルを吹かして加速するクロックとロールウィッツ。
タイヤが大地と抱き合い、2台のマシンを風にする。 それに数秒遅れ、アナウンス用の車が発車した。


   「っげ…。」


開始した瞬間、思わず初期手札に呻く刃咲。


刃咲:手札 
〔強欲な瓶〕
〔アルティメット・インセクト LV7〕
〔デビルドーザー〕
〔アルティメット・インセクト LV5〕
〔強制転移〕


初手から下級モンスターが存在しない。
引きが悪いと自覚していた刃咲だが、まさか人生初のテレビ出演中に古典的手札事故をやるとは思ってなかった。


   「ハァー! どうしたぁっ! 早く来い! ホラァッ!」


   「うるせえ! 耳元で騒ぐな、落ち着け!」


バイクに乗ってデュエルする以上、肉声での意思の疎通は不可能。
そのため、ヘルメットに据え付けられたスピーカーを用いる。
つまるところ、ロールウィッツがハイになって一番困るのはその声が耳に直接響く刃咲なのだ。


   「バッカモノがぁっ! 落ち着いてデュエルができるかァっ!
    ハイになるんだよォ! 真っ白になるまで、行くぜぇッ、ダイナのダイアナぁッ!」


ロールウィッツの乗っているマシンは、ハーレーダビットソンのダイナ。
ダイナだからダイアナ、三毛猫だからミケ、とか名付けるのと同じ次元だろうか。


   「黙れっつってんだろ! ドロー!(手札6)」


ドローカード:〔手札断殺〕


   「…よし…!
    手札から〔手札断殺〕を発動、全てのプレイヤーはカードを2枚捨てて2枚引くッ!」


手札断殺 速攻魔法
お互いのプレイヤーは手札を2枚墓地へ送り、デッキからカードを2枚ドローする。


〔アルティメット・インセクト LV5〕:刃咲の手札→墓地
〔アルティメット・インセクト LV7〕:刃咲の手札→墓地

〔ノーブル・ド・ノワール〕:ロールウィッツの手札→墓地
〔アンデット・ワールド〕:ロールウィッツの手札→墓地


   「ほお、昆虫使いかァッ!」


   「そっちはアンデットってわけだな。」


最初の1ターンで、互いに相手のデッキパターンを推測した。
そして刃咲は、〔手札断殺〕によって通常召喚できるモンスターを得た。


神斬り虫かみきりむし 風属性 昆虫族 レベル4 ATK1500 DEF1000
このカードがレベル5以上のモンスターと戦闘を行う場合、ダメージ計算を行わずそのモンスターをゲームから除外する。
また、このカードがレベル4以下のモンスターと戦闘を行った場合、相手プレイヤーはカードを1枚ドローする。


上級モンスターを倒すことに特化した下級モンスター。
上級を使わないデッキに対しては無力だが、先ほどの捨て札からしてロールウィッツにその杞憂は無用。
むしろ、切り札となりうるカードである。


    「ここは…墓地の2体の昆虫を除外し、〔デビルドーザー〕を特殊召喚!」


〔アルティメット・インセクト LV5〕:刃咲の墓地→除外
〔アルティメット・インセクト LV7〕:刃咲の墓地→除外
〔デビルドーザー〕:刃咲の手札→特殊召喚


デビルドーザー 地属性 昆虫族 レベル8 ATK2800 DEF2600
このカードは通常召喚できない。自分の墓地の昆虫族モンスター2体をゲームから除外した場合のみ特殊召喚する事ができる。
このカードが相手ライフに戦闘ダメージを与えた時、相手のデッキの上からカードを1枚墓地へ送る。


道路に着地した巨大なムカデは、その足をフルに稼動させてトライクと併走する。
たまにソリッドビジョンが道路からはみ出したり、斜面にめり込んだりするのはご愛嬌。


    【初手からの攻撃力2800ッ! こいつはスゲェッ!
     解説の福助ぇ、こういう戦術を使うのかぁ、あいつはッ!】


    【〔デビルドーザー〕も〔アルティメットインセクト〕も刃咲くんのエースモンスターです。
     いつもなら序盤から使うカードじゃないんだけど…どうしたんだろ。】
【手が早いな】
【急ぎすぎじゃない?】
【断殺はこの伏線ね。】
【このあとでアルインのレベル3とか引いたら笑うw】

刃咲のモニターに、ネットの視聴者のコメントが表示される。
有料視聴のメリットで、選手にリアルタイムの声援が届けられる。
だが、手札事故を起こして使わざるをえなかったと読みきった人間はおらず、
〔神斬り虫〕を温存しつつ、高い攻撃力で場を制す…という刃咲の構想も読まれていない。


   「カードを1枚セット、ターン・エンド!(手札3・伏せ1)」


   「俺のターン、ドロォッ!(手札6)
    初手からウケるプレイングをする…ならば、それに応えなければなるまい!
    来い! 〔ピラミッドタートル〕!」


現れたのは、その名の通りピラミッド型の甲羅を背負ったカメ。
ビジョンにおいてはとてもスローに歩いているが、それでもロールウィッツのハーレーと併走できている。
高速移動のソリッドビジョンがないのは仕方ないのだが、違和感を与える。


ピラミッド・タートル 地属性 アンデット族 レベル4 ATK1200 DEF1400
このカードが戦闘によって墓地へ送られた時、
自分のデッキから守備力2000以下のアンデット族モンスター1体を自分フィールド上に特殊召喚する事ができる。


   「バトルフェイズ! 〔ピラミッド・タートル〕、攻撃だぁッ!」
【魂を削る死霊?】
【壁を出すなら亀を守備表示で出せば良いんじゃね】
【ピラタで出せてドーザーを倒せるカードって何かあったか?】
【ウィッツは突進入れてたし、それじゃねぇ?】
攻撃力で劣るモンスターの攻撃、それは当然、効果狙い。
だが、リクルーターの用途が広すぎるため、実況も刃咲も視聴者も読みきれないで居た。


〔ピラミッド・タートル〕(攻撃力1200)VS(攻撃力2800)〔デビルドーザー〕
→〔ピラミッド・タートル〕、破壊・墓地へ。 ロールウィッツ:LP8000→LP6400


〔ドラゴン・ゾンビ〕:ロールウィッツのデッキ→墓地へ。(デビルドーザーの効果)
〔ジャック王 ランターン・パンプキング〕:ロールウィッツのデッキ→墓地へ。(デビルドーザーの効果)


ライフ減少を合図に、ロールウィッツの周囲が暗くなった。
50ポイント減るたびに周囲が1%暗くなり、100%になると完全な〔闇〕となる。
1600減ったので32%の視界遮断、楽では無いが決して運転できないレベルでもない。


   「…どのモンスターが来る…?」


   「ウェンディエゴ様が呼ぶモンスターは…〔ピラミッド・タートル〕!」


ピラミッド・タートル 地属性 アンデット族 レベル4 ATK1200 DEF1400
このカードが戦闘によって墓地へ送られた時、
自分のデッキから守備力2000以下のアンデット族モンスター1体を自分フィールド上に特殊召喚する事ができる。


   【…え、なん、ウィッツッ!?】
【魂を削る死霊?】
【壁を出すなら亀を守備表示で出せば良いんじゃね】
【ピラタで出せてドーザーを倒せるカードって何かあったか?】
【ウィッツは突進入れてたし、それじゃねぇ?】

   「なんだ、どういうことだ…?」


自滅攻撃からの同名モンスターの召喚。
珍しいことではないが、今するべき行動でもない。
刃咲自身も〔ドラゴンフライ〕や〔共鳴虫〕といった同系統のモンスターを使う。
そのため、この類のカードの応用の広さは深く知っているが、その広さゆえに未だに読みきれない。


   「もう一回行くぜェ、〔ピラミッド・タートル〕ッ! 攻撃だ!」


先ほどのリピートのように繰り返される光景。


〔ピラミッド・タートル〕(攻撃力1200)VS(攻撃力2800)〔デビルドーザー〕
→〔ピラミッド・タートル〕、破壊・墓地へ。 ロールウィッツ:LP6400→LP4800


〔馬頭鬼〕:ロールウィッツのデッキ→墓地へ。(デビルドーザーの効果)
〔闇よりいでし絶望〕:ロールウィッツのデッキ→墓地へ。(デビルドーザーの効果)


   「ヒィッハ! 落ちたぁッ!」


   「…あっ…!」


闇より出でし絶望 闇属性 アンデット族 レベル8 ATK2800 DEF3000
このカードが相手のカードの効果によって手札またはデッキから墓地に送られた時、
このカードをフィールド上に特殊召喚する。


〔闇よりいでし絶望〕:墓地→フィールド


   「ウソだろ…ッ!?」


最初からこれを狙っての自滅攻撃…完全に〔デビルドーザー〕を利用された。


   「サーチするカードは〔ピラミッド・タートル〕…自滅攻撃!」


〔ピラミッド・タートル〕(攻撃力1200)VS(攻撃力2800)〔デビルドーザー〕
→〔ピラミッド・タートル〕、破壊・墓地へ。 ロールウィッツ:LP4800→LP3200


〔ゾンビ・パウダー〕:ロールウィッツのデッキ→墓地へ。
〔ミイラの呼び声〕:ロールウィッツのデッキ→墓地へ。


   「…あぶねェ…!」


   「ッチ、2枚目と3枚目が落ちれば不正疑惑で盛り上がったんだが…しゃあねぇっ!
    〔ピラミッド・タートル〕の効果で、デッキから〔ヴァンパイア・ロード〕を特殊召喚する!」


ヴァンパイア・ロード 闇属性 アンデット族 レベル5 ATK2000 DEF1500
このカードが相手プレイヤーに戦闘ダメージを与える度に、カードの種類(モンスター、魔法、罠)を宣言する。
相手はデッキからその種類のカード1枚を選択して墓地に送る。
また、このカードが相手のカードの効果で破壊され墓地に送られた場合、
次の自分のスタンバイフェイズにフィールド上に特殊召喚される。


美形のエースモンスター出現。 しかし注目すべきはそこじゃない。


   【出たァアア! ローゥルウィッツ節だァー~ッ!
    96%の闇にもビビらず、モンスター展開を優先! これがアイアンバルーンのエースッ!】


既に前はうっすらとしか見えていないはず。
それでもロールウィッツはサレンダーどころか減速するそぶりも見せず、アクセルを捻る。


   「4%見えれば…十二分ッ! っしゃぁあッ!」


   「どぅあおっっとォ!?」


猛追を掛けるロールウィッツに、クロックは反射的に道を譲った。


   「良い判断だ、クロック!」


   「あぁー…てっきり、『どうして道を譲った!?』とか言われると思ったけどな。」


   「カマ掘られるよりゃマシだ、これでいい!」


2台のマシンがポジションを入れ返る瞬間を狙い、ロールウィッツが宣言を続ける。
モンスター同士がお互いのコントローラーの乗るバイクに合わせてスピードを増減するため、かなり接近している。


   「〔絶望〕で〔デビルドーザー〕を攻撃! ザッ・ディスピア・クロォオオォッ!」


亡霊の爪が、ムカデのアゴが、双方をえぐり、削り、破壊しあう。


〔闇より出でし絶望〕(攻撃力2800)VS(攻撃力2800)〔デビルドーザー〕
→両者、破壊・墓地へ。


   「相殺ッ! 続けて〔ヴァンパイア・ロード〕の攻撃! ヴラッド・スティール!」


マントから無数に発生したコウモリがトライクバイクに殺到するが、視界は妨げないように配慮された位置だ。
その辺り、ハイテクさを思い知らされる。


刃咲:LP8000→LP6000
【あれ? バグ?】
【刃咲&ジュフペアは闇は発生しないぜ?】
【ウィッツが勝手にやってるだけだから】

   「効果発動! デッキからトラップカードを捨てろ!」


   「…俺は〔働き蜂の報酬〕を捨てる。」


〔働き蜂の報酬〕:刃咲のデッキ→墓地へ(ヴァンパイア・ロードの効果)


   「カードを2枚セットォ、終了!(手札3・伏せ2)」


   「ドロー(手札4)…よし…ッ!」


刃咲はドローカードに思わず笑みをこぼした。
自虐的にライフを減らしたロールウィッツだが、刃咲はそこに付け込む作戦を立てた。
〔闇〕が100%になれば視界は0、続行はできるわけもなくサレンダーは確実。
…100%になるまで、あと4%、ライフポイントに換算すればあと200ポイント。


   「〔ドラゴンフライ〕を召喚し…続けて、〔強制転移〕!」


強制転移 通常魔法
お互いが自分フィールド上モンスターを1体ずつ選択し、そのモンスターのコントロールを入れ替える。
選択されたモンスターは、このターン表示形式の変更はできない。(オリカ)


ドラゴンフライ 風属性 昆虫族 レベル4 ATK1400 DEF900
このカードが戦闘によって墓地へ送られた時、
デッキから攻撃力1500以下の風属性モンスター1体を自分のフィールド上に表側攻撃表示で特殊召喚する事ができる。



   【出た! 刃咲くんの十八番! 〔強制転移〕ッ!】


   【どうやら切り札の様子! 序盤からトばすぜ! このガキ!
    〔強制転移〕は効力が強い分、妨害も簡単な除去カード、ウィッツはどう防ぐ!?】


   「チェーンは無し。」


あっさりと言い切るロールウィッツ。
が、2枚の伏せカードがある以上、油断できる状況でもない。


   「俺は当然、〔ドラゴンフライ〕を指定する。」


   「〔ヴァンパイア・ロード〕。」


〔ヴァンパイア・ロード〕:ロールウィッツのフィールド→刃咲のフィールド
〔ドラゴンフライ〕:刃咲のフィールド→ロールウィッツのフィールド


   「バトルフェイズ、〔ヴァロン〕で〔ドラゴンフライ〕を攻撃する。」


先ほど刃咲を殴ったときと同じく、コウモリが敵へと殺到する。
ここで何も無ければ、〔闇〕の実体化が100%を超え、ロールウィッツをサレンダーに導くことができる。


   「伏せカード発動ォッ! 2枚ともだ!」


   「…だよな。」


通すわけは無い。 それは確実だった。
だが、それが『悪あがき』なのか『効果的な防御』なのか、それは見てみないと分からない。


   「2枚ともトラップだ。 〔リビングデッドの雄叫び〕、〔群雄割拠〕だ。」


リビングデッドの雄叫び 通常罠
相手モンスターの攻撃宣言時に墓地に存在するアンデット族モンスター1体を選択して発動する。
選択したモンスターを自分フィールド上に特殊召喚する。


群雄割拠 永続罠
お互いのプレイヤーはそれぞれ種族が1種類になるように、フィールド上の自分モンスターを墓地へ送る。
このカードがフィールド上で存在する限り、お互いに自分のフィールド上に出せるモンスターの種族はそれぞれ1種類だけになる。


   「…あ?」


   「モンスターが死に帰った直後、〔群雄割拠〕が適応。
    これで自陣に2種の種族、昆虫とアンデットがいるので…昆虫族の〔ドラゴンフライ〕はトラッシュだ。
    …ああ、〔闇より出でし絶望〕は守備表示で戻させてもらうぜ?」


〔闇より出でし絶望〕:墓地→ロールウィッツのフィールド


〔ドラゴンフライ〕:フィールド→刃咲の墓地へ


   「墓地から死に返るのがアンデット流だッぜェ!」


もちろん、肉声で会話できる状況ではない。
機体にセットしていた画面とマイク越しに会話している。


   「っち…。
    バトルフェイズ終了、カードを1枚セット、終了だ(手札1・伏せ2)」


   「ハッハァ、俺のターン(手札4)。
    墓地の〔馬頭鬼〕を除外し、〔ノーブル・ド・ノワール〕を特殊召喚するェぁッ。」


馬頭鬼 地属性 アンデット族 レベル4 ATK1700 DEF800
墓地に存在するこのカードをゲームから除外する事で、
自分の墓地からアンデット族モンスター1体を特殊召喚する。


ノーブル・ド・ノワール 闇属性 アンデット族 レベル5 ATK2000 DEF1400
このカードがフィールド上に表側表示で存在する限り、
相手モンスターの攻撃対象はこのカードのコントローラーが選択する。


〔馬頭鬼〕:墓地→ゲームから除外
〔ノーブル・ド・ノワール〕:墓地→ロールウィッツのフィールド


   「モンスターをセット、エンドだ(手札3・発動中1)。」


   「…攻撃、しないのか…?」


   「ヒーッハゥ! このウェンディエゴ様は親切じゃぁねーっ! するわけあるかぁっ!」
【??どゆこと??】
【召喚できないってことじゃね?】
【群雄割拠が利いてるから】
【アンデットワールドも使わずにロックになったよww】
【強制転移が完全に裏目だね。】
  「ドロー(手札2)…攻撃できない…ロック?
    ロックで…アンデットで…伏せモンスター…って! アレか!」


   「頭は悪くないようだがハンパだなぁッ!  ハンパは一番弱ェんだよッ!」


   「この手札では…!
    伏せカード発動、〔強欲な瓶〕、手札を1枚補充だ。」


強欲な瓶 通常罠
自分のデッキからカードを1枚ドローする。


刃咲:手札2→手札3


   「クソッ! 対応カードがこねぇ…! 終了だ!(手札3・伏せ1)」


   「悪くない頭に、悪すぎるツキ!
    イイ! イイッ! 最高のカマセ犬だッ! ドロォッ!(手札4)
    …行くぜ? 〔デス・ラクーダ〕を反転召喚ッ!」


デス・ラクーダ 地属性 アンデット族 レベル3 ATK500 DEF600
このカードは1ターンに1度だけ裏側守備表示にする事ができる。
このカードが反転召喚に成功した時、自分のデッキからカードを1枚ドローする。


   「やっぱりそれかよッ!」


ロールウィッツ:手札4→手札5


   「効果を使用して〔ラクーダ〕を守備表示に戻すッ
    ターンエンド(手札5・発動中1・伏せ0)…ッ!」


〔デス・ラクーダ〕:裏側守備表示
【攻撃はノワールが止めて、駱駝で手札を稼ぐ、でおk?】
【セコッ!】
【刃咲、カルクヤバイ】
【前のターンで処理できなないとかww】
【流石素人】
【っつーか、ウィッツ、これで大丈夫なのか?】
【何が?】
【長期戦やって、途中で横転したりしたら死ぬぞ】
【自分の墓穴を掘るのがアンデット流】
【墓穴ww】

攻撃は〔ノーブル〕の効果で守備表示の〔絶望〕に変更され、通ることはない。
戦闘が無ければ〔ヴァンパイア・ロード〕が除去されず、刃咲は〔群雄割拠〕の効果で昆虫族を召喚できない。
その間、ロールウィッツは一方的に手札を増やし続ける…一刻も早く解除しなくてはならない。


   「…強ェ、コイツ…ッ!」


   「気付くのが遅ェんだよッ!」







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