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オリジナル 逃亡者4


目覚めると外は絶景の銀世界だった。8月なのに。

「すいません…」

ベッドの上でしょんぼりと肩を落とした少年に、ゼツは笑ってみせた。

「冷房いらずで電気代が浮くね」

ちょっとばかし凍死の可能性があるけど。


避暑地として名高い高原の端っこにゼツが仮の住まいを決めたのは一月ほど前のことだった。気ままに暑さを凌ごうと思っていたので、人里離れたログハウスはそこそこ気に入っている。
そこに転がりこんできたのが、雪童という雪女の親戚みたいな妖怪だった。

「雪女さんたちのほうが断然有名ですし、僕らはちょっとマイナーなんです…」

雪童は成長段階にある吹雪の妖精であり、雪山などで夭逝した子供がよくなるのだそうだ。
せった、という名前の彼もまた数年前に命を落とした少年であるそうだが、悲壮さは感じられない。
夏の間は永久凍土の山に籠もっていたりと酷暑を凌ぐわけだが、どうやら雪童の一団とはぐれてしまったらしい。
せったは10歳ほどのふくふくした子供だったが、青ざめた頬だけが少し痛々しい。

「立冬になったらみんなも帰ってくるので、それまでここにいてもいいですか…?」
「それまで俺がここにいればねー」

リアル冷房入らずのせったの肌は冷たくて気持ちがよかった。
最終更新:2006年07月26日 04:55