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ホリチュン1 【残像の恋】


『実体のない私が感情論を語るのも愚かだと思うがね』

教師であり、親であり、創造主である、半透明のからだをした男は言った。

『人間の感情の発露というものは、植物の苗を土に慣らすような簡単なものではない。それは、わかるだろう?』

ゆるゆるとこの世界で生きてゆくための知識を流し込まれながら、語らう日々はまるで今思い返すと、熱のないセピア色に染まっている。

『怒り、哀しみ、喜び、憐れみ…名前がなくとも人間の感情は豊かにして膨大、そして繊細なものだ。それは機械の数値でも表現しつくせない』

これが懐古というものなのだろうか。

『こればかりは私も教えることはできない』
『ホリックは、何でもできるんだと思っていた…』
『買いかぶられたと言うべきか、それとも、お褒めにあずかり光栄だと言うべきかな』

グラススコープの下、細いナイフで刻んだような薄い笑み。

『私は確かにヒトを超えたモノではある。けれど、ヒトのすべてを把握する…いわゆる神ではない』

おまえを私が創ったように。
私もまた、ヒトが創りしものだから。

『この私の感情というものも、複雑にプログラムされたもの。自我はあっても、基本的な思考回路は制御されている』
『じゃあ、俺もホリックにプログラムされているのか? その、感情とか自我とか…』

遠い日、実体を持たない<マシン・ゴースト>は否、と言った。

『おまえは私が創りし個体。体の構成も遺伝子の情報も私が組み上げたもの。けれど』

おまえの感情だけは、おまえが育むものだ。
育ちきらない知能しか持ち得なかったエレクトロはただ見あげるまま、ホリックの影のない腕の抱擁を受けた。