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オリジナル 逃亡者2 【「…お悔やみを」】


根を張らないまま生活を続けていると、そのうちにどこかで行き倒れる可能性はあるだろうと思いつつも、今日も逃亡者の生活を続けている。
もはやそれはライフワーク。悲壮感もなにもありゃしない。
とある街で、ひっかかるように滞在していた時に派手な葬列に出会った。赤や黄色や金に銀、様々に鮮やかな衣装をつけて、一様に笑いさざめきながらガラスの箱に収めた死体を担いで街中を練り歩く。

「こりゃカーニバル?」

うっそり尋ねてみると、オレンジ売りの爺が涙型に刳りぬいたオレンジの皮を張り付けた帽子の影で首を振った。

「この街の伝統的な葬式だよ」
「ずいぶん賑やかだねい。楽しくなりそ」
「悲しみも憎しみも死ぬことへの喪失には勝てないさ」
「じいさんポエマー」
「これでも毎日日報の自由詩欄の常連じゃわい」

そいつは失礼しました。
義眼だと一目でわかる風体の彼にひとつオレンジを恵んでやりながら、爺は狂気めいた行列を眺める。

「ああして祭りの最中は三日三晩大騒ぎをし、祭りの始末をするころには夢を見ることもなく眠れるのさ。この街一流の、最高の送り出し方だ」
「じゃあ俺もああして送り出してもらえるかな」
「そうよな、おまえさんがうちの孫をヨメに貰ってくれたらの」

今年で十になるところの、そんな幼妻は後に残すのが可哀想だからやめておくよ交わしておく。

「イイ記憶しか残らない、送られる側も気持ちよく、清々しく天国か地獄に行けるわけだね」

それでは俺の国流の言葉は言わないでおこう。けして悲しみを助長させるためにこの国では口にはしない。