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葉取5 目を開けて最初に君を見たい


「マミーズいこーぜ! かーま…ちっ?」

勢いよく、3年A組に飛び込んできた葉佩だったが、
目の前で真っ白く小さな指が一本立てられた。

「九サマ、おしずかに…ですの」
「え、え…リカちゃん? どしたの」

今日も目にも綾な完全ゴスロリ少女・椎名リカは口の前に指をたてて、しぃ…というポーズをとった。同い年であっても彼女がとるとその動きは少女めいていて、クラスのあちこちから溜息が漏れる。

「おやすみ中ですの」
「誰が?」
「お姫様」

くすくす笑ってみせるリカは、窓際の席を差した。
突っ伏しても尚余りある腕が、机の合板からだらりと垂れ、それでも昼下がりの光を暖かそうに受け止めている。

「…うお、めずらし…」
「ですわよねぇ? どこかのもじゃもじゃさんならともかく、取手君がお昼寝なさってるんですもの」

もじゃもじゃさんてもしかしてアイツのことか、と某アロマパイプ常用者を思い出すが、それはさておき。
リカが静かにさせているとはいえ、昼時の學園のうわついた雑音が彼に届いていないわけがない。それゆえ、珍しくてしょうがないのだ。

「でも王子様が来てくださったなら、話は別ですの」
「へ?」

ほらほら、と背中を押されて葉佩は鎌治の傍に立たされた。
うっとりとした眼差しのリカは元の位置に戻って、起こしてあげるのですの、とジェスチャーしている。

「鎌治」

肩をゆすぶるのではなく、黒髪に隠れた耳殻のある辺りに囁いてみた。

「鎌治?」
「っん」

びくと持ち上がった頭が、煩わしげにぶるぶると震える。まるで起きるのを嫌がる犬のようだ。

「鎌治」

再度呼び掛けると、ようやっと腕に埋まっていた鎌治の頭が横を向き、葉佩のほうに薄目をあけた。

「ぁ…はっちゃ…ん?」
「うん」

葉佩が笑みを浮かべると、それにつられるように鎌治も顔をほころばせて返す。淡泊な表情しか浮かべない鎌治の、滅多に拝めない、それも寝起きという無意識のオプションがついた無防備な笑顔など、SSランクの宝より貴重でレアで秘宝モノだ。
その瞬間にこの教室の連中がみんないなくなればいいと思ったなどとは、葉佩の胸中にしまっておくことにする。

「マミーズ、いこ。鎌治、もう昼だ」
「え、あ…うん…」

来た時よりさらに機嫌の良さそうな葉佩は、惜しみない笑顔を向けながら鎌治を教室から連れ出していった。



「お姫様は王子様が起こすものですものね」

ようやっと日常のざわめきを取り戻したA組の教室で、リカはそう呟いて聖母のように微笑んだ。








葉取+リカ。応援してくれるリカちゃん最強。
リカ→(かわいい)→鎌治
鎌治→(頼りになる)→リカ
リカ→(もじゃもじゃですのォ)→皆守
皆守→(危険な存在)→リカ
葉取のそばにいる親友のアロマが邪魔~と思っていたりするとなお良し!